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2011年9月18日日曜日

(音) 二胡メタル、のChthonic - 高砂軍 (2011年, 台湾)

二胡といえば「女子十二楽坊」が思い出される方も多いかも知れませんが。その中国の伝統弦楽器である二胡(erhu)を使った台湾台北市のブラックメタルバンド、「ソニック」の6作目のスタジオ・アルバム。バンドは1995年デビュー。
私は本作がこのバンドのアルバム初聴となりますので、過去の作品との比較はまだ出来ませんが。

因みにアルバムタイトルの高砂軍とは...
Takasago Army refers volunteer soldiers in the Imperial Japanese Army, recruited from the Taiwanese aboriginal tribes during World War II. (from wikipedia)

本バンドの音楽ジャンルはブラックメタルに括られているようですが、聴いてみるとパワーメタルとブラック・メタルの間の子くらいの音像です。Cradle of FilthやDimmu BorgirやAnorexia Nervosaのようにオーストレーションで華美に装飾されているわけでもないので煌びやかさはありません。掠れたデスヴォイスのヴォーカルが許容範囲であれば、ブラックメタル門外漢にとっても敷居は低い(聴きやすい)と想像されます。

敷居が低い音像なのは良いのですが、それほどオリジナリティに溢れたメロディでもありません。流麗な二胡の音色が絡んでこなかったら凡百のバンドと大差ない気がします。凡庸な曲をアジアンテイストでアレンジすることでその他無数のメタルバンドとの差別化を図っている…と書くと怒られるかもしれませんが、最初数回聴いただけではイマイチ…という印象でした。
あーぁ、期待したほどじゃなかったなぁ・・・と思ってがっかりしつつも、買うために払ったお金を回収しようとする、せこい精神で何度かリピートしていると、徐々に耳に馴染んできて段々とハマってくるのがわかります。そして自分の耳の感度が非常に鈍かったことも判明してきます。

台湾語のサビがオツな#3や、二胡の美しさが堪能できる#4や、台湾語での「演歌かよ」ってくらいに情念溢れる女性の語りのようなヴォーカルが3分33秒~で突然斬り込んでくる#6。佳曲は多い。そんな中でも極めつけは#7。この曲の、特に4分18秒~の玉音放送的語りに被さる二胡の旋律と狂おしい泣きのヴォーカルは琴線を刺激すること必定です。そして、本作の中で最もブラックメタルっぽさを出しているのは#9でしょう。3分過ぎからエンディングに向けて疾走する様が美しい#10も聴き逃せません。

と初めの数回では、本作の魅力に全くと言っていい程気づきませんでしたが、もしかすると二胡にばかり気を取られてしまっていたためかも知れません。アルバム全体が割とコンパクトなためか何度もリピートしてしまいます。私は高砂軍について全く無知でしたが、本作を通じて、歴史を紐解いてみようかな…と思うに至りました。

1. The Island
2. Legacy Of The Seediq
3. Takao 
4. Oceanquake
5. Southern Cross
6. KAORU
7. Broken Jade 
8. Root Regeneration
9. MAHAKALA
10. Quell The Souls In Sing Ling Temple

因みに本作にはTaiwanese(台湾語)版もあるようで、以下の曲名のようです。
1."冥河島"
2."殘枝"
3."皇軍"
4."震洋"
5."南十字星"
6."薰空"
7."玉碎"
8."歸根"
9."大黑天"
10."鎮魂醒靈寺"

国粋主義マインドを刺激してやまない字面タイトルのオンパレードです。これは台湾語版も聴かなければならないのでしょうか。台湾にもいいメタルバンドがいることが分かって非常に嬉しくなった一作でした。