このブログを検索

2011年9月20日火曜日

(麻) 麻酔科専門医認定試験口頭試験-2006年症例10-DCM 頻拍発作

本当に恐ろしいのは、DCMという診断がついてない状態で手術室に来てしまうことだと思う。

***
症例
・55 歳男性。160 cm、75 kg。
・早期胃癌に対し胃切除術予定。
・拡張型心筋症を合併、術前TTEで左室駆出率は25%。
・血清Crは1.8 mg/dl 。

1)術前評価と管理
1. この患者の術前状態における問題点を列挙。
・1度肥満 BMI29.2
・DCMで低心機能である
・心不全によるものか、腎疾患によるものか不明だが腎機能障害がある。(簡易式ではCCr 49ml/min)

2. 術前に必要な検査。
・血算、生化、凝固、感染症、胸部腹部Xp、心電図(洞調律なのか、心室性不整脈はないか)、BNP値、ドブタミン負荷心エコー(EFの改善度や不整脈の出現の評価)
・Cr値が上昇しているので利益が不利益に勝ればだが、CAGで冠動脈疾患の有無を見たい
・肥満があるため問診と身体所見から睡眠時無呼吸症候群(SAS)が疑われるようならば、術後の低酸素を避けるべく睡眠時ポリソムノグラフィ検査→CPAP導入をしてもよいと考える。胃癌の進行度および、診療体制によるだろうが。

(補:検査ではないが、既往歴、心不全の既往や治療歴、失神の既往、NYHA分類、内服薬、Cr値上昇の理由を知りたい。TTEの情報では弁逆流や左室内、左房内血栓の有無も知りたい)

*DCMの麻酔管理の原則
・麻酔薬による心筋抑制を最小限にする
・後負荷の上昇を避ける
・循環血液量を維持する

2)麻酔法および術中管理
1. 麻酔法の選択およびその理由について。
抗凝固薬等の内服等の禁忌事項がなければ、硬膜外麻酔併用の全身麻酔(気管挿管)を行う。上腹部切開は術後痛が強い。術後の呼吸機能悪化によって心仕事量が増えることは避けたい。また、術後痛がコントロール出来ないと、交感神経活動が亢進し、術後の血行動態が悪化する可能性がある。

2. 麻酔導入はどのように行うか?具体的に。
・局所麻酔下に動脈圧ライン(洞調律で過度のARなければVigileo-FloTracにて)を挿入。
・麻酔導入はフェンタニル0.2-0.3mg(or ± レミフェンタニル)、ミダゾラム5mg(±プロポフォール)、ロクロニウム60mgで行う。喉頭蓋・声門周囲にリドカインスプレーをして、血圧上昇・頻拍を避けるように細心の注意を払って挿管する。早期胃癌であれば急速導入で良いと考えるが、内視鏡所見や自覚症状などから誤嚥の危険性が高いようならば迅速導入を考慮。気道確保は、肥満があるため、手元に経口エアウェイやLMAを準備した状態で。
・麻酔維持は低濃度のセボフルラン1-1.2%程度とレミフェンタニル0.25γ程度で行う。術中の血行動態維持のためDOAやDOB3-5γ程度,塩酸オルプリノン0.2γ程度を併用する。
・麻酔導入後にCVC、PACを挿入する。

・末梢動脈疾患等の禁忌がなければ、IABPはスタンバイしておいた方がよいと考える。
・DCMに合併する致死性不整脈に備えて経皮ペーシングパッドか体外式除細動器を準備しておいたほうが良いと考える。薬剤はアミオダロンかニフェカラントを準備。

3. 術中に必要とされるモニタリングの選択とその理由。
・FloTrac-VigileoによってSVV,SV,CIの経時的評価
・PACで肺動脈圧、PAWP、SvO2の経時的評価
・CVPは過度の上昇がないかチェック。脱水のチェックには利用しない。
・胃の手術なのでTEEは使用しない

4. 本症例での硬膜外麻酔の使用法について。
過度の血圧低下によって致死性不整脈が術中に発生する可能性があるので、少量投与を原則とする。術中はボーラス投与は行わず、4ml/h程度の使用に留め、鎮痛は主にremifentanilやfentanylで行う。術終盤に血行動態が安定していれば2,3mlずつ局麻を投与し、覚醒時の疼痛がないように努める。


3)術後管理
1. 術後鎮痛と術後注意すべきことは。
・手術が短時間で終了し、出血が少なく、低体温でなく、循環動態が安定していれば手術室内抜管を考慮。抜管の有無に関係なくICUに入室する。
・鎮痛:硬膜外麻酔(0.2%ロピバカインor0.25%レボブピバカイン + フェンタニル2-5ug/ml)を4-6ml/h(2-4ml/1 push, lockout 10-20min)で行う
・術後注意点:輸液過多/過小、不整脈の発生、肥満や麻薬過投与による呼吸抑制

@参考文献
・塩酸オルプリノンが有効であった低心機能非心臓手術3症例の麻酔経験. 麻酔54巻7号 Page757-761(2005.07)
・拡張型心筋症を合併する患者の非心臓手術の麻酔管理. 麻酔53巻12号 Page1360-1368(2004.12)
・他

0 件のコメント: