・15分間で0.5℃以上上昇、最高体温38℃以上 or 麻酔中体温40℃以上
・ダントロレンは1-2mg/kgを10-15分で。一応7mg/kgまで。 46A42
・Ca拮抗薬はダントロレンとの併用で心停止の報告あり慎重投与
・MHに伴う血行動態変化は心筋酸素消費量を4倍に上昇させる。代謝亢進に伴う全身の酸素消費量は約3倍、血中乳酸値は15-20倍
・初発症状はETCO2の上昇 > 急激な体温上昇 > 原因不明の頻脈
(古典的にはSCC投与後の咬筋硬直)
・遺伝子検査では必ずしも異常は認めない
・病因はリアノジン受容体の機能異常により、Caイオンによるカルシウムイオン放出(CICR)が亢進し、細胞内Caイオンの濃度上昇に伴う骨格筋収縮が生じるため
・ジギタリス、笑気は使用可(ダメなのは揮発性麻酔薬とサクシニルコリンである)
@悪性高熱症の治療@悪性症候群neuroleptic malignant syndrome(NMS)
・ダントロレンは蒸留水で溶かす。塩析するため。温めると溶け易い。
・ダントロレンの半減期は少なくとも10時間。
・副作用:効果のピーク時では中等度の筋力低下。また,3週間以上の治療で胆汁うっ滞。他には重篤な合併症は無い
1.全ての麻酔薬投与中止,100%酸素による過換気。人がいっぱいいれば麻酔器交換
2.ダントロレンの複数回投与(2mg/kg。必要なら5分ごとに最大10mg/kgまで。報告では29mg/kg)
3.炭酸水素塩の投与(2-4mEq/kg)
4.38-39℃を目標とした高体温コントロール(冷たい輸液,表面冷却,他)
5.尿量モニター(目標2ml/kg/hr),ミオグロビン尿による尿細管壊死に注意
6.血液ガスをみて,異常値補正
高K血症には
・50%ブドウ糖 50 ml(あるいは20%ブドウ糖 100 ml)に50単位のインスリン(原則CVCから)。(G:I=1g:2) *血中カテコールアミン濃度↑のため、インスリン量が通常より多いことに注意。
・緊急時には塩化カルシウム 400 mgをゆっくり静注して、GI を用意する。
7.不整脈はリドカイン。 *Ca拮抗薬とダントロレンの併用で心停止の報告あり。
8.CK,肝機能,BUN,乳酸,血糖値,凝固系(INR,Plt,Fib,FDP),血清ヘモグロビン,ミオグロビン,尿中ヘモグロビン,ミオグロビン
・ダントロレンは10-12時間ごとに数回投与が必要
・再燃は6.5時間以内に50%
臨床像:
1.全身性の筋硬直,無動症,錐体外路症状,運動機能障害
2.精神障害(昏睡,昏迷,譫妄)
3.高体温(発汗、脱水,血圧心拍の変動),頻呼吸
・薬物投与数時間~数日で発症,7-10日で回復
・合併症:横紋筋融解症,腎不全,DIC,血栓塞栓症,心停止
・スキサメトニウムは筋肉壊死のある患者では高カリウム血症を生じる危険性がある
@MG(神経筋接合部のシナプス後膜に存在するACh受容体に対する自己免疫疾患)
・脱分極性筋弛緩薬(サクシニルコリン:SCC)に対する抵抗性を示すが、phase IIブロック(AChに不感応)に移行しやすい。
・非脱分極性筋弛緩薬に対する感受性は非常に高い。
・ACh受容体数は減少、機能異常
その他神経筋疾患では…
・Eaton-Lambert症候群:SCC・非脱分極性ともに感受性↑
・進行性筋ジストロフィー:SCCに感受性↑(MHや高K血症、心停止を誘発するため禁忌)、非脱分極には対しては正常or反応延長。胎児型ACh受容体が発現する。Duchenne型はXR遺伝。
・筋緊張性ジストロフィー:SCCに感受性↑(筋収縮が数分続き、筋強直を誘発) 非脱分極性には正常だが、抗ChE薬は筋強直を誘発しうるので使わないこと。
・家族性周期性四肢麻痺:SCCには正常、非脱分極性には亢進の可能性あり。
・多発性硬化症:中枢の脱髄。神経筋接合部ではACh受容体数↑、脱分極性筋弛緩薬に対する感受性亢進あり。
@Parkinson病
・MAO阻害薬以外は当日朝まで内服。
・MAO阻害薬はセロトニンやノルアドレナリン、ドパミンなどの神経伝達アミンを増加させる。エフェドリンなどの間接的な交感神経刺激作用を示す薬物に対する異常反応が起こる(MAOI中止後2週間でも異常反応は認められるので、少なくとも2-3週間は休薬する)。また、ペチジンの併用により、痙攣や高体温、昏睡を起こす可能性があることにも注意。
・レボドパの突然の中止は神経遮断薬性悪性症候群の原因になるので注意
・抗ドパミン作用を伴うフェノチアジン系薬物(クロルプロマジン)、ブチロフェノン系薬物(ドロペリドール)、メトクロプラミドなどを避けるべき
@脊髄損傷、自律神経反射亢進(autonomic hyperreflexia(dysreflexia)
・脊髄損傷部以下の皮膚または内臓刺激によって節前交感神経の活性化を招く。異常な血圧反応!
・T6以上の損傷者の手術で約85%に生じる。T10以下では起こらない。
・損傷レベル以下の末梢血管収縮
・損傷レベル以上の血管拡張(潮紅、発汗)、反射性徐脈
・末梢アドレナリン受容体の感受性亢進(昇圧薬が異常に効き易い)⇔高血圧にはニトプロ、NTG、カルシウム拮抗薬。
・血圧低下に代償性の血管収縮も起こりにくい。知覚麻痺領域での血管緊張の低下から容易に低血圧になりやすい。
・体温中枢との隔離により低体温を生じやすい
・脱分極性筋弛緩薬(サクシン)に感受性が高い~反射性の骨格筋攣縮を防ぐために非脱分極性筋弛緩を投与
・鎮静薬として吸入麻酔を使用してもよい。(Anesthesiology 108:858-863,2008)
対応
1.末梢からの求心性の刺激をブロックする方法
2.十分な鎮静を保ち中枢の興奮を抑制する方法
・急性期高位脊髄損傷で徐脈になる。脊髄の興奮性は低下。
・急性期低位脊髄損傷では頻脈になる
非脱分極性筋弛緩薬(Rb, Vb)に対する抵抗性
脱分極性筋弛緩薬(SCC)に対する感受性亢進
@熱傷
・ニコチン性ACh受容体のup-regulationが、受傷24時間以降からみられる。熱傷治癒後も1-2年はこの増加した状態が続く。
・そのため非脱分極性筋弛緩薬に対する抵抗性が増大。必要量が増える
・脱分極性筋弛緩薬は感受性が増大。Kの過剰放出で心停止することも→受傷24時間以降の投与禁忌
@統合失調症
・可能ならば区域麻酔で。☆向精神薬と麻酔薬の相互作用
・吸入麻酔薬 : 効果増強、血圧低下
・麻薬 : 鎮痛・鎮静・呼吸抑制作用増強、低血圧
・バルビタール : 睡眠時間延長
・抗コリン薬 : 末梢性(イレウス、尿閉、緑内障)、中枢性(昏迷、発熱、譫妄)
・昇圧薬 α作用型(α1作用が減弱)、β作用型(α1作用遮断、β2作用増強で血圧低下)~ノルアドを使おう
・内服薬は止められればやめたほうが良いが、無理なことも多い。相互作用に注意して管理するのが現実的。
@弁疾患
・肺動脈閉鎖症では、SVRの低下や循環血液量の減少、心筋抑制を避ける(動脈管を通じて肺に流入する血液量を減少させるため)
・三尖弁閉鎖症:PVRを低下させることで、肺血流量やCOの増大を目的とした管理が必要
@心タンポナーデ
・心嚢内圧が15cmH2O以上で症状が出現
・Beckの三徴:血圧低下、心音低下、頸静脈怒張
@褐色細胞腫
・β遮断薬単独投与は禁忌。理由:α受容体による血管収縮が生じ、危険な高血圧を起こす可能性。ただしラベタロールのようなα・β遮断薬が投与されることはある
・α遮断薬(フェントラミンなど)で空腹時血糖は低下する。(α刺激→グリコーゲン分解促進、インスリン分泌抑制)
・フェントラミン:作用時間は10-15分、半減期19分。褐色細胞腫には3-10γ程度。
作用:血管平滑筋に対する直接作用(動脈系>静脈系)
副作用:頻脈,肺動脈圧↓,心刺激作用,ヒスタミン様作用
禁忌:胃炎,消化性潰瘍
・α1選択的遮断薬:ドキサゾシン、プラゾシンなど
@中毒
・サリン:有機リン化合物。神経末端のChEを阻害。過剰のAChがムスカリン受容体やニコチン受容体、中枢神経系に蓄積して毒性を示す。
治療:アトロピン、ヨウ化プラリドキシム(PAM:ChEの賦活作用)
・硝酸銀:皮膚や粘膜に強力な腐食性。飲むと致死的な胃腸炎を生じうる。
治療:生食胃内注入
・金属(ヒ素、水銀、鉛、銅、金、ビスマス、クロム、アンチモン):治療にジメルカプロールを使用。体内諸酵素のSH基と金属イオンの結合を阻害して効果を発揮する。
・パラコート:ジピリジル系の除草剤。致死量2-4g.20%濃度は皮膚接触や経口で腐食性障害。3-5日で腎不全。2週間で肺線維症(PF)に。PFは不可逆的で致死性。
治療:特異的なものはない。胃洗浄、下剤、活性炭、強制利尿、血液透析。
・シアン:チトクロム酸化酵素が阻害。
治療:亜硝酸アミル吸入、亜硝酸ナトリウム・チオ硫酸ナトリウムの静注。人工呼吸、代謝性アシドーシスの補正。
・ボツリヌス毒素:神経筋接合部に作用。SNAP-25タンパクを切断してAChの放出を抑制するため、筋収縮抑制
@非ケトン性高浸透圧症候群
・pHは通常7.3以上、Naは脱水の程度によって↑or↓。Kは基準値
・BUNおよび血清Cr濃度は著明に上昇。ときに乳酸が蓄積して軽度の代謝性アシドーシス。
・治療:まず1L程度の生食を30分で→インスリン0.15-0.2u/kgボーラス投与後に0.1u/kg/h持続静注。生食1L/hで持続。→血糖300くらいで1/2生食に変更。
・インスリン投与で早期に低K血症になると思うのだが、46C13では正答がC「輸液を1/2生理食塩水に変更する」になっている。問題の血糖値は810mg/dlなのだが。選択肢同士をよく検討しなくちゃ…。
@TUR-Pに関する知識
・麻酔レベルはなるべくTh10程度にする。あげすぎると血圧が低下、輸液負荷しすぎると潅流液吸収による心不全発症までの安全域を狭くする恐れあり。輸液は少なめで。
・潅流液は大部分が腎代謝。吸収されると数時間で排出。残りはCO2と水になる。3%D-ソルビトールpH 5.0, 浸透圧165mOsm/l 手術1時間越えたら採血考慮。
・出血量多いときは輸血⇒低血圧や精神症状でも出血多量を疑う。
HESは心不全や血液希釈を助長する可能性あり、積極的には使用しない
・TUR症候群:低Na血症と低浸透圧血症が併発。脳細胞浮腫により意識障害や痙攣が起こる。低Naで循環抑制、ECG変化。
予防:早く手術終了してもらう。潅流液袋高さを臍と60-100cm程度に。意識レベル確認(鎮静はするとしても浅めに)。
治療:潅流液袋高さを低くする。輸液を生食に変え、遅くする。ラシックスを10-20mg静注する。高張食塩水10%NaCl 10-20mlなどを静注(低Naのときのみ)
・Na<120mEq/lは注意、ショックに。