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2011年9月20日火曜日

(麻) 麻酔科専門医認定試験口頭試験-2006年症例6 脊髄くも膜下麻酔


専門医試験の口頭試問って、どうしてこう、ちょっと肥満な人が多いんだろ。

症例
・71 歳女性。154cm、82kg。
子宮脱に対して膣式子宮全摘術が予定。
・10 年前から高血圧で内服治療中。術前血圧は166/89 mmHg。
・脊髄くも膜下麻酔が施行された。

質問
1)術前評価と管理

1.この患者の術前の問題点を列挙。
・BMI34.5

・コントロール不良の高血圧

2)麻酔法および術中管理
1. 常は同手術で,脊髄くも膜下麻酔単独で施行する場合どのように行うか?
・高比重ブピバカイン2.0ml程度をL3/4から側臥位で施行。Th10までの麻酔高上昇を確認。


2. 15 分後に右優位のS 領域の知覚低下のみが得られた。脊麻後の麻酔効果が十分に得られない原因を列挙
・クモ膜下腔に入った薬液量が少ない(途中で針先がずれて孔の一部が硬膜外腔等にある or 途中で薬液がこぼれた、など)
・注入した椎間が低い位置だった
・他疾患の合併(くも膜のう胞)など

3.どのように対処するか?
・初回投与量が2.0ml程度であれば、1椎間上から2.0ml(私ならmax4.0mlにする)を投与して効果判定。2回目で麻酔高の上昇が不十分ならば全身麻酔。

・もしくは本症例では下記のようにTNSの危険因子が複数あるので、再施行せず全身麻酔にする、という方針をとる可能性もある。

3)周術期危機管理
翌日、朝、外科医から連絡があり両側大腿部後面に知覚鈍磨と尿閉があるのとの報告を受けた。
1. 鑑別診断を列挙。
・穿刺による神経損傷
・TNS(transient neurologic symptoms; 一過性神経障害、100例に1例くらい。テトラカインとブピバカイン使用で。リドカイン,砕石位,外来手術,肥満,フェニレフリンの添加が危険因子。症状の特徴は,臀部,大腿,ふくらはぎの外側に放散する痛み,または異常感覚で,脊麻の回復から24時間以内に発症し,数日から1週間で消失する。NSAIDが効く)
・馬尾症候群(11万件に1件くらい)
・脊髄くも膜下血腫
・硬膜外血腫(脊麻後、血液逆流ない場合は320000例に1件くらい。報告によっては3万件に1件)、膿瘍

2.脊髄くも膜下麻酔で手術後の神経障害の考えられる原因を列挙
上記

3.麻酔科医としてどのような指示をするか列挙して下さい。
・神経内科医に併診を依頼して、神経所見・鑑別診断を上げてもらう。
・血腫や腰椎疾患を否定するためにMRIの撮影を行う
・血腫があれば手術を考慮
・血腫がなければビタミンB12やステロイド投与をして経過観察。10数日~数カ月の経過で改善してくる可能性がある。
・連日患者さんの診察に自分で行く

@参考文献
・脊髄くも膜嚢胞のため、脊髄くも膜下麻酔の効果発現が不十分であった帝王切開症例. 麻酔58巻12号 Page1521-1523(2009.12)
・凝固異常のない患者で起こった脊髄くも膜下麻酔後の脊髄くも膜下血腫の1症例. 麻酔58巻4号 Page456-459(2009.04)
・27G穿刺針による脊髄くも膜下麻酔後に硬膜外血腫を生じた1症例. 麻酔58巻4号 Page456-459(2009.04)
・脊髄くも膜下麻酔時の局所麻酔薬による神経障害. 日本医事新報4344号 Page63-69(2007.07)
・硬膜外麻酔ならびに脊髄くも膜下麻酔に伴う神経損傷 麻酔関連偶発症例調査2004の集計結果より. 麻酔56巻4号 Page469-480(2007.04)

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