専門医試験前までは、適宜加筆修正します。
@麻酔器の始業点検
http://www.anesth.or.jp/guide/pdf/guideline_checkout.pdf
・酸素濃度計の較正は空気で行う 49A14
・リークテスト:30cmH2Oでガス供給ない状態で30秒維持、圧低下が5cmH2O以下を確認。
・逆流防止弁のない麻酔器では、酸素フラッシュで呼吸バッグを膨らませてもよい 47A8
・吸引供給装置の吸引圧は-300~-500mmHgの陰圧
・麻酔器の酸素フラッシュは二次減圧弁や流量計、気化器を通過しないで、直接ガス共通出口に導かれる。
・低流量ほどガスの粘度が、高流量であるほどガスの密度が流量に影響する 46A40
・酸素流量計は最下流に置くべきである
・低流量(<250ml/min)、高流量(>15L/min)では気化器のダイヤル設定より低い吸入麻酔濃度になる 45B3
・流量計の流量はガスの動粘度、フロート周囲間隙・前後圧力差・重量で規定される
@揮発性麻酔薬の作用 47A3
・プロテインキナーゼCの活性化とそれに続く脱感作がCNSの抑制を導くと考えられている。
・GABA受容体を活性化する ⇔ ガス麻酔薬(N2Oとキセノン)はNMDAタイプのグルタミン酸伝達を抑制するが、GABA作動性伝達にはほとんど影響を与えない。(ミラーp100)
・グルタミン酸受容体には以下の3つがある
1. NMDA受容体
2. AMPA受容体(a-アミノ-3-ヒドロキシ-5-メチル-4-イソキサゾールプロピオン酸)→揮麻で抑制または変化なし *AMPA受容体刺激は疼痛伝達に重要 (49A78)
3. カイニン酸受容体 → 揮発性麻酔薬で活性化される
・ニコチン性ACh受容体に対して濃度依存性に抑制作用を示し、イオン透過性を低下させる。
・一酸化窒素合成酵素(NOS)の活性を阻害。 ⇔ MDZやバルビツレートなどの静麻による影響はない
@麻酔の作用機序理論 49A9
・リポイド説(Overton, Meyer 1901年。麻酔薬が細胞のリポイドに溶解し、細胞機能を低下させて麻酔作用を発揮する、説。脂質への溶解度が高いほど、麻酔作用が強い)
・膜脂質の流動性の変化が、膜タンパク機能に影響して麻酔作用に関与する、説(Hubbell, McConnel)
・Xeの「水和結晶説」の支持者少ない。キセノンは極性がなく、脂質やタンパク質と化学的に反応しない。
@麻酔ボンベ 47A6, 49A7など頻出
・笑気ボンベの充満時内圧は50kgf/cm2(約4.9MPa:酸素ボンベの1/2-1/3の内圧)
☆9割が液体で保存されている(全部液体だと温度上昇でボンベ内圧が上がりボンベが破裂するため)。液体がなくならない限り内圧は低下しない。つまり内圧が低下していれば、ほぼ枯渇状態である。48A10
⇒ ボンベ残量を知るには、重量を測定する必要あり
・笑気1kg=540L (20℃)
・笑気の液化臨界温度(どのような圧を加えても気体を液化できない温度)は36.5℃で、室温では液体。(因みにCO2は31.4℃、酸素は-118.8℃ 49A7)
・酸素ボンベは100-150kgf/cm2(約9.8-14.7MPa)。14.7MPaで500Lくらい。つまり内圧14.7MPa時には、ジャクソンリース回路で10L/min投与していると50分程度もつ。
☆酸素ボンベは気体だけ。内圧を計れば残量分かる
・酸素ボンベの純度は99.5%(薬事法)以上と定められている。47A9
・補助酸素ボンベの充填圧が10kgf/cm2(0.98MPa)以下になったら、直ちに交換必要。49A14
・ボンベ内圧は高いので、減圧弁(圧力調節器)を用いて、麻酔器へのガス供給圧を4.0±0.5kgf/cm2(0.40±0.05MPa程度)まで低下させている(1次減圧)。48A11
→酸素供給圧:4±0.5kgf/cm2
→亜酸化窒素および圧縮空気:酸素供給圧よりも約0.3kgf/cm2低い。
・Joule-Thomson効果・・・高圧ガスが細い管を通って放出されるとき、ガスは急激に膨張、気化熱を奪って周囲の温度を低下させる。
・ボンベと麻酔器の接続に可燃性油脂やゴムパッキングを使用してはならない。
・酸素供給圧は亜酸化窒素より高い。低酸素にならないため
・ボンベの最大耐圧(TP)は250kgf/cm2(≒24.5MPa)で、35℃における最高充填圧150kgf/cm2(≒14.7MPa)の5/3に相当する。 47A9
・1次減圧の後、流量計の前で二次減圧が行われ、2.0~2.5kgf/cm2(およそ0.2-0.29MPa)になって流量計へ。
@PISS(Pin index safety system) 49A7他
配管端末器のソケットアセンブリのピン穴(アウトレット)(空気以外は穴2つ)
・酸素:180°
・笑気:135°
・空気:120° (穴3つ)
・吸引:90°
@高圧ガス保安法による色
酸素:黒
亜酸化窒素、窒素、空気:ねずみ色
二酸化炭素:緑
@CO2吸収剤の相互作用(45C1.47C39-40,48A5他)
・揮発性麻酔薬はCO2吸着剤と反応して一酸化炭素を産生する。
・COの生じやすい順に デスフル≧エンフル>イソフル>>ハロタン=セボフルラン(最も発生しにくい)
・CO産生にかかわる因子
1.吸収剤の乾燥程度(乾燥しているほど↑)
2.吸収剤の種類(バラライム>ソーダライム)
3.温度(高温ほど)
4.薬濃度(高いほど↑)
・セボと乾燥したCO2吸収剤と併用した場合、極めて稀だが回路内で発火あるいは異常高熱が起こる。
→ 咳嗽等の気道刺激症状、SpO2低下、気道内圧上昇、換気困難、重度の気道浮腫と紅斑、COヘモグロビンレベルの上昇 (原因は不明)
@対策
・吸収剤の乾燥が疑われたら、製剤を交換
・新しく使う吸収剤を密閉しておく
・吸収剤カニスタの温度を定期的にモニタ
・気化器の設定濃度と患者の吸入濃度がきちんと相関するか。しない場合にはカニスタの過熱状態と関連する可能性がある。
@コンパウンドA産生が高まる条件:
・高いセボフルラン濃度
・低流量麻酔・閉鎖循環麻酔
・CO2吸収剤の温度上昇
・新しいCO2吸収剤
・CO2吸収剤の乾燥
・バラライム(最大産生濃度32ppm)>ソーダライム(23ppm)
・ソーダライムの組成:75%のCa(OH)2、20%のH2O、3%のNaOH、1%のKOH
*カリウムはコンパウンドA産生に関与する
・150ppm時間が腎障害の閾値。腎毒性は、βリアーゼ経路に由来する活性型チオールが原因とされる。(但しヒトの腎組織におけるβリアーゼ活性はマウスの1/30~1/8と著しく低い。だから46B5の(2)の選択肢はバツである。ヒトでは”メイン”ではない)Miller 655あたり。
・セボフルラン麻酔中の血清無機フッ素濃度は、しばしば50μMを超える(無機フッ素の腎毒性値は50μM以上とされる。47A5)
@吸入麻酔薬の蒸気圧 46A4, 46B6他
20℃においてmmHg
・ハロタン:243
・イソフルラン:238
・エンフルラン:175
・セボフルラン:160
・メトキシフルラン:22.5
・デスフルラン:664
・上記蒸気圧は、温度が高くなるほど、指数関数的に上昇する。
・大気圧=蒸気圧が揮発性麻酔薬の沸点 49A4
・一般に250ml/min以下の流量では設定濃度より低い気化器出力になる
・気化器には温度を伝えやすい(熱伝導率の高い)金属が使われる
・気化器には比熱(物質1gの温度を1℃上げるのに必要な熱量)の高い金属が使われる。揮発性麻酔薬の気化による温度変化を最小限に抑えるため
・沸点はセボフルラン58.5℃>イソフルラン48.5℃
・分子量はセボフルラン200>イソフルラン184.5
・代謝率はセボフルラン1-5%>イソフルラン0.2%(イソフルランが揮発性麻酔薬で最も低い)
*因みにハロタン25-45%、メトキシフルラン(フッ素を遊離して腎不全の原因になる)75%
*笑気は0%
・セボフルランは分子量と沸点が一番高い、蒸気圧は(メトキシフルランを除けば)一番低い。
@血液ガス分配係数 →小さいほどFA/FI (肺胞濃度/吸入濃度)の上昇速度は速くなる
・亜酸化窒素 0.47
・デスフルラン 0.45
・セボフルラン 0.65
・イソフルラン 1.4
・ハロタン 2.5
@吸入麻酔薬の取り込み 48A1
体内摂取=λ×Q×(Pa-Pv)
λ:溶解度(血液/ガス分配係数)、Q:肺血流量(心拍出量)、Pa-Pv:肺胞-混合静脈血分圧較差
・肺胞換気量が大きいほど、肺胞へのガスの移行は促進される
・機能的残気量が小さいほど、肺胞気の濃度上昇が速くなる(太っていると効きやすい)
・血液/ガス分配係数が小さいnitrous oxideは、吸入麻酔薬の導入と麻酔からの回復が速い。
・血液溶解度が大きいほど、大量に溶解しないと血中濃度は上がらない。亜酸化窒素は血液溶解度が小さいので、肺胞濃度/吸気濃度(FA/FI)比は、たとえ低換気でも速やかに上昇する。
・心拍出量が多いほど、肺胞内吸入ガス濃度の上昇速度は遅くなる。(吸入したガスが血液に溶け込む量が多くなるため: 47A4) ⇔ ショック患者や心拍出量減少患者では麻酔導入が早くなる。
・血液への移行が大きいほど、肺胞内分圧が低下するため導入は遅くなる
・油/ガス分配係数とMACの積はほぼ一定である。
・脂溶性の高い薬物ほど麻酔作用が強い。
・揮発性麻酔薬の溶解度と分子量には直接の関係がない。:分子量と導入の速さは関係ない
・定常状態のセボフルランの供給濃度と肺胞濃度の比は1.2
*肺胞容量は2.5-3.0Lくらい
*解剖学的死腔は150mlくらい
*肺胞領域でのガス移動は拡散が主体である
@亜酸化窒素 48A6
・長期投与に伴う血液毒性と神経毒性を示す唯一の麻酔薬・健常人では50%笑気の曝露で12時間後に軽度、24時間後に顕著な巨赤芽球性骨髄変化を認める。⇒ 葉酸の大量投与で予防可能
・メチオニン合成酵素(補酵素としてビタミンB12を必要とする)の不可逆的抑制が生じ、メチルテトラヒドロ葉酸とホモシステインからのテトラヒドロ葉酸(THF)とメチオニンへの変換が低下する。⇒DNA塩基に必須なチミジン合成などが抑制される
・臨床症状はビタミンB12欠乏による悪性貧血と同等だが、B12投与で症状緩和しないし回復早まらない。
・大気中の半減期は150年(48B5)
@吸入麻酔薬 48A4
・亜酸化窒素はHPVをわずかに抑制。(臨床的に有意ではない)
・HPVを抑制しないもの:チオペンタール、プロポフォール、ケタミン、フェンタニル、ジアゼパム、ドロペリドール、ペンタゾシン
・亜酸化窒素は肺血管抵抗を上昇させるので、PH(肺高血圧症)の患者には使用しない
・イソフルランは安定化剤を含まない。(ハロタンはチモールを含む。メトキシフルランも安定化剤を含む)
@吸入麻酔薬と冠循環 46B12,48A34
・心筋酸素消費量の低下によって冠血流量が低下する。
・吸入麻酔薬の冠血管拡張作用は、血管平滑筋細胞内のカルシウム調節に影響することで直接的に起こり(Ca流入抑制作用)、NOの産生や放出とは無関係とされる。
・虚血心筋においてはATP感受性Kチャネルの活性化を介して、保護作用が起こる
・心筋プレコンディショニングの機序にはミトコンドリア膜ATP感受性カリウムチャネルに関連48B17
・亜酸化窒素は交感神経系の緊張↑。弱い心機能抑制作用、僅かにHR増加させSVやCOを増加させる。
・セボフルラン1MACにおけるSVの減少はわずか。
・イソフルラン1MACではCIは減少しない。(SV↓だがHR↑のため)
@吸入麻酔使用量の計算式
・時間あたりセボフルラン使用量(ml/h)=3.3 x %(気化器の設定濃度) x F(ガスの流量, L/min)
例:空気3L、酸素1L、Sev1.5%、3時間なら 3.3x1.5x(3+1)=19.8 (L/h) で 3時間で59.4Lとなる
・係数3.3はセボの場合。ハロタンなら2.6、エンフルランやイソフルランなら3.0を使用
@過去問から
・MACは3-6ヶ月児で最高、以後低下
・未熟児のMACは成熟児より低い
・ハロタン肝炎の危険因子:肥満、女性(約2倍)、遺伝性素因。中年が多く、小児は多くない。 47B4
・チオペンタールとデスフルラン以外の全ての揮発性麻酔薬で気道抵抗は減少
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