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2011年9月17日土曜日

(麻) 局所麻酔薬-麻酔科専門医試験に関連した知識

自分用のメモ。何の目新しさもなく、過去問からの選択肢等から狩猟した知識の羅列のため、使い勝手は全く良くない可能性あり。突っ込みどころも多そうですが、試験対策ノートということでご容赦ください。当然ながら、麻酔科学に関する最新の医学情報はここでは得られません。そういうものはお金を払って教科書を買うか、時間を払って論文をお読みください。ここで得た知識で試験に臨むことはお控えください。そうは言っても間違いを晒すのは恥さらしでありますので、適宜加筆修正します。
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@局所麻酔薬(48A21、47A19他多数出題)
・pKa:作用発現時間に大きく影響。低いほど塩基型(非イオン化型)の存在する比率が高くなるので、細胞膜を通過しやすく作用発現が早まる。
(メピバカイン7.6<リドカイン7.9ロピバカイン=ブピバカイン8.1<テトラカイン8.4<プロカイン8.9)
・脂溶性:作用強度と副作用に影響。
(脂溶性の例:リドカイン(2.9)、メピバカイン(0.8)、ロピバカイン(6.1)、ブピバカイン(27.5))
・タンパク結合:作用持続時間に影響。高いほど長く効く
(リドカイン64.3%<メピバカイン77.5%<ロピバカイン94.0%<ブピバカイン95.6%)

・プルキンエ線維の活動電位
0相:Naの急速流入(局麻はこれを抑制する)、1相:Na電流の停止、2相:Caの遅い内向き電流
3相:Ca電流の減少、4相:K電流の漸減とNa電流の漸増

・無髄C線維→Aδ線維→Aβ線維 の順に効果発現 *A線維とB線維は有髄
・痛覚消失→温覚消失→触覚消失→深部感覚消失→骨格筋弛緩 の順で消失
・局麻に最も感受性が高いのは線維(筋緊張) (48A83)
・Aα線維(骨格筋運動)は伝達速度が最速
・痛覚-C(二次疼痛)、Aδ(一次疼痛)線維
・温覚-C線維、冷覚-主にAδ線維 (48B22)
・触覚、固有覚-Aβ(AδとCも関与)
・交感神経節前線維 - B
・交感神経節後線維 - C (47B38)

因みに…
・Aβは脊髄後角第III、IV、V層に入力
・Aδは同I、V層に入力
・C線維は同I、II、V層に入力する

@局所麻酔薬の構造
1.芳香族残基(脂溶性、疎水性、ベンゼン環)-2.中間鎖-3.3級アミノ残基
・1と3がエステル結合しているのがエステル型、アミド結合しているのがアミド型局麻である。
・中間鎖 が 長いほど 麻酔作用増強
・中間鎖 が 長いほど 毒性が増強
・アミノ残基は生理的pHによって陽イオン化するので親水性を示す
・芳香族残基と結合したアルキル基が長くなると脂溶性が増し、麻酔作用は増強される
・ブピバカインはR体とS体が混合したラセミ体である。
・ロピバカインはS(-)-エナンチオマーである。N-ピペリジン環の置換基がブチル基からプロピル基に変更されている。
・レボブピバカインはブピバカインのS体
・立体異性体をもたないリドカインは不斉中心をもたない

@代謝
・エステル型:血漿中の偽コリンエステラーゼにより加水分解
・アミド型:主に肝臓の酵素による。
・リドカイン、ブピバカイン、プロカインは肺で代謝されることも。

@リドカインの血中濃度(単位:μg/ml) と中毒症状
2:舌や口のしびれ感
4:めまい感や耳鳴り
8:顔や指先の筋攣縮
10:意識消失
12:強直性・間代性全身痙攣
20:呼吸停止、循環虚脱
・まず酸素投与、抗けいれん薬(ベンゾジアゼピンやバルビツレート)
*ベンゾジアゼピンは大脳辺縁系(海馬や扁桃体)に作用して抗痙攣作用を示す。 49A5
・痙攣は抑制性ニューロンを抑制することで起こる。また、アシドーシスで起こりやすい。
*因みにブピバカインは4μg/ml程度の血中濃度で痙攣起こす。リドカインの半分くらいですな。
@作用
・Naチャネルの内側にある結合部位に陽イオン型の局所麻酔薬が結合することでNaチャネルが遮断され、Naの伝導が阻害される。
・アミド型とエステル型の2つのクラス間での交差感受性はない。
・溶解度が高いほど力価が高い。

@局所麻酔の神経毒性
・心毒性 : ブピバカイン>レボブピバカイン=ロピバカイン>リドカイン
・神経毒性: リドカイン>テトラカイン>>ブピバカイン>レボブピバカイン>ロピバカイン
・TNSの相対危険度はリドカインがブピバカインの6.7倍
・アナフィラキシーは100万に1人(アミド型)。エステル型は代謝物のパラアミノ安息香酸が化粧品添加物のメチルパラベンに似ているためアナフィラキシー起こしやすい
・痙攣発症時には・・・
・propofol 0.5-1.5mg/kg, Midazolam 0.05-0.1mg/kg, thiopental 1-2mg/kg
・ACLS
・イントラリピッド 1.5ml/kg (だいたい100mlをdrip) → 0.25mg/kg/min 必要に応じて追加 最大8ml/kg

・1898世界初のコカインくも膜下麻酔(Bier) 
・1900日本初の脊麻(北川乙治郎、東良平)
・脊髄くも膜下に局麻を過量投与すると神経毒性がおこる。Root entry zoneのoligodendrocyteによるミエリン鞘が最も脆弱
・Naチャネル遮断は神経毒性には関与が少ない。

@神経障害を避けるために・・・
・血管収縮薬は添加しない
・投与量は最小限にする。リドカインは60mg以下。ブピバカイン、テトラカインは1A以下。(テトラカインは24mg投与で馬尾症候群の報告)
・薬液注入前後で、髄液逆流が確実であるのに麻酔域の広がりが予想に反して仙髄、下部腰髄に限局している場合には脊麻のやり直しを避けるのが無難。
・砕石位は要注意。砕石位→root entry zoneの牽引→傷害増悪→TNS(transient neurologic symptoms)
・馬尾症候群の率:5/40640(Auroy Y, et al. 1997) 3/35439(Auroy Y, et al. 2002)3人ともtransient
・高二酸化炭素血症などのアシドーシスでは、蛋白結合率の低下によって局麻中毒の危険性が高まる
・神経損傷後の除神経に伴う下肢筋電図変化は2-3週間経たないとわからない

@過去問より
・エピネフリン添加局所麻酔薬ではβ作用のために血圧が低下しやすい。:体血管抵抗40%↓、平均動脈圧22%↓
・エピネフリン添加により、運動神経ブロックの効果も高まる(特にリドカインとメピバカイン)
・アシドーシスはタンパク結合率↓となり、局麻の中枢神経毒性を高める
・うっ血性心不全で肝静脈圧↑で肝血流↓ → アミド型局麻のクリアランス↓になる
・局麻は末梢の血管平滑筋に対し二相性作用。リドカインやブピバカインは低濃度で血管収縮、高濃度で血管拡張。 *コカインは濃度に関わらず血管収縮を起こす唯一の局麻(交感神経終末のノルアドレナリンの取り込みを阻害して交感神経性血管収縮を増強するため) 48B15
・ケタミン、アミトリプチリン、ペチジンは局所麻酔作用あり