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2010年10月31日日曜日

(音) KamelotのPoetry For The Poisoned (2010年)

5作目「Karma」以来のバンドのファンです。本作は一聴しただけでは全くピンとくるものがありませんでした。#14の「Once upon a time」こそ、これまでのスタイルを踏襲した疾走曲ですが、「Ghost Opera」や「When the Lights are Down」のような強力な疾走曲ではありません。他はミドルテンポ~スローテンポの曲が並びます。そのためでしょう、即効性がないのは。
それでも何度も聴いていると漸く味がじわっと出てくるような、アダルト向けメタル作品に仕上がっているのが分かります。アルバムの良さが分かるまでに聴き込みを要すのは、リスナーに苦行を強いるようで不親切な造りとも言えます。その意味において本作は新規ファンを開拓するだけの力はないかもしれませんが、彼らの熱心なファンにはアピールするだけのものはあると思います。バンドは既に音だけで唯一無二の艶かしい芳醇な世界を描くことに成功していますが、バンドが更に円熟の域に達するための過渡期の一作になることでしょう。秋の夜長に酒を飲みながら聴くにはいいアルバムです。

(走) Training in Rena (其の七十弐-参)

台風14号のためかとても寒いです。
若干の体調不良と右股関節痛のために休んでいたら、前回のランから2週間空いてしまいました。
間が空いても結構走れる体になっていたので一安心しましたが、まだまだ歯磨きレベルの習慣にはなっていないようです。

一足早いですが、誕生日プレゼントに新型のiPod nano(16G)を買ってもらいました。何故か歩数計機能もついています。早速ポケットに入れて聴きながら走ってみましたが、タッチパネルであるために曲の早送りがやりにくいです(袖口にクリップして走るのが正攻法なのでしょうが)。やはりiPod shuffleをランニング用のままにして、iPod classicの替わりにiPod nanoを通勤等で持ち運ぼうと思います。24時間バッテリーがもつというのは大きいです。

ランニング:8.1km、52分 (8.0-12.0km/h)
ランニング:3.0km、23分 (8.0-10.0km/h, 傾斜10.0)
計554.6km (8月 65.8km, 9月 48.5km, 10月 66.6km)  
総時間3484分=58時間04分

11月5km: ねりま光が丘ロードレース(あと14日)
12月21.095km:いたばしリバーサイドハーフマラソン(あと35日)
2011年3月42.195km:板橋Cityマラソン(あと140日)

2010年10月29日金曜日

(雑) 歯科のこと(其の参) 、マンニトールとFFP

歯医者とほぼ無縁の生活を送っていましたが、3ヶ月連続で歯科に通い続けているのは、まさに快挙と言えます。当直明けに早く帰らせてもらえるお陰です。
今日は右下7番を治療していただきました。前回に比べて麻酔がちょっと痛かったですが、処置の際には全く痛みませんでした。(よく効く)麻酔って本当に偉大です。お陰様で10本あった虫歯が7本になりました。
外科手術の上手さで病院を選ぶ患者さんはいても、麻酔の上手さで病院を選ぶ患者さんは恐らくそれほどいないでしょう。歯科で開業されている先生は麻酔の腕も患者さん集めに大きく関わってくるでしょうから大変ですね。

***
脳外科手術で頻用するマンニトールですが、投与後にカリウム値が上昇することがたまにあります。それについての報告は検索すると割と出てきます。

・日本人の報告でVTを起こしています。
Ventricular tachycardia caused by hyperkalemia after administration of hypertonic mannitol. Anesthesiology. 2000 Nov;93(5):1359-61.
のdiscussionでは
we believe that hyperosmolality after administering hypertonic mannitol is causative of hyperkalemia.
と高浸透圧状態が原因ではと推測しています。
そして、より低用量の投与を勧めています。
Administering mannitol in a dose of 1 g/kg caused hyperkalemia in this patient. A dose range of 0.25-1 g/kg mannitol is considered standard for reduction of intracranial pressure. A previous study demonstrated that an increase in plasma osmolality of 10 mOsm necessitates reduction of intracranial pressure, which can be generated by 0.25 g/kg mannitol. Because the extreme osmotic gradient produced by mannitol may cause electrolyte imbalance, we recommend administration of a smaller dose (0.25-0.5 g/kg) and measuring of plasma osmolality. When large doses of mannitol are given, careful monitoring of the electrolyte status is essential.

・他にも
Electrolyte changes during craniotomy caused by administration of hypertonic mannitol. J Clin Anesth. 2007 Jun;19(4):307-9.
では長期投与、多量投与、腎機能低下で報告されているようです。
discussionにおいて
The movement of potassium out of the cells and into the extracellular fluid occurs via two mechanisms. First, the intracellular potassium concentration increased by the intracellular water loss, leading to passive potassium exit through potassium channels in the cell membrane. Second, the frictional forces between solvent (water) and solute (potassium) can result in potassium being carried out through the cell membrane, a process called solvent drag. Serum potassium increase secondary to an infusion of mannitol is well documented. It is almost noted only with prolonged infusions, larger doses of mannitol, and often in the setting of decreased renal function. It has rarely been noted, as it was in this case, with a dose of only approximately one g/kg.

・あとは
Two cases of hyperkalemia after administration of hypertonic mannitol during craniotomy. J Anesth. 2005;19(1):75-7.
 の中では、高カリウムの原因は細胞外への移動によるものではないか、としています。
The etiology of hyperkalemia is classified into three categories: increased intake, decreased urinary excretion, and transcellular redistribution of potassium. Our patients were infused at a maximum of 1mEq/Kg/h potassium and underwent no blood transfusion, strongly suggesting no potassium overload. Urine output was maintained at more than 0.5ml/Kg/h around mannitol infusion. Taken together, these characteristics of our patient cohort suggest that hyperkalemia may have been caused by potassium movement from
cells into the extracellular fluid. There are several factors that facilitate the transcellular movement of potassium: an acute increase of plasma osmolality, rhabdomyolysis, hemolysis, and acidosis.

緊急脳外科手術では手術室入室前に頻回の嘔吐等で低カリウム血症のことが多いような印象を受けます。そんな場合でもカリウム値をすぐに補正しないで、マンニトール投与後の採血をチェックしてからの方が安全かもしれません。

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緊急手術患者さんがワルファリン内服中の場合、手術の止血が困難になります。通常、ワルファリンを拮抗するためにビタミンK剤(メナテトレノン。通常10-20mg)を使いますが、それでも出血傾向が続く場合にはFFP(新鮮凍結血漿)も使用します。

そのFFPについて豆知識。
・使用法
融解後3時間を経過すると、失活してしまう凝固因子が存在する。凝固第Ⅴ因子と第Ⅷ因子は、急激に活性が失活する。(融解後にやむを得ず保存する場合には、常温ではなく2-6℃の保冷庫内に保管する。但しそれでも凝固因子の分解がすすむ)
・ナトリウム負荷
200mL 由来の本剤には約0.45g (19mEq) 、400mL 由来の本剤には約0.9g (38mEq) 、成分採血由来のFFP-5(450ml)では約1.6g(69mEq)のナトリウムが含まれている。
・熱量
FFP2 単位製剤中のカロリーは8.4×4=33.6kcal
輸血によって補給された血漿蛋白質は、アミノ酸まで緩除に分解されてから熱源として消費されるため、蛋白質源にもなり得ない。

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日々色々な薬剤を使用して麻酔をしていますが、色々なことを知らずに麻酔をしている事実に恐怖してしまいます。私は私の認識の世界でしか麻酔をかけられません。その「認識している世界」を日々広げて生きたいところです。

(本) 20歳を過ぎてから英語を学ぼうと決めた人たちへ ― Hiroyuki Hal Shibata という本がありまして

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iPhone、Kindle、Audio Book、Twitter、Lang-8、レアジョブ、PASORAMAといった最先端の電子機器やWeb Serviceを英語学習に活用!
帰国子女でもない日本人がTOEIC860点を取得し、英語で「聞く」「話す」「書く」ことができるようになる方法を紹介。
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とAmazon.co.jpで本書は紹介されています。自己研鑽に余念がないビジネスパーソンを読者対象としているのかもしれません。でも、できるビジネスパーソンたちは既に英語自体が学習の目的ではない筈でしょうから、このような本を読んで努力している時点で、何かに負けている気がしないでもありません。それでも何もやらないよりはマシなのでしょうか。
私は英語学習において完全に落伍者ですが、本書はそこそこ英語学習する気がある人々のやる気レベルを数倍に押し上げてくれる可能性がある本です。非常に実践的な本です。やる気はあるけど何をやっていいのかわからない、という「先達あらまほしきものたち」は、本書で紹介されている方法いずれかを試せばいいと思います。
私は読了後に本書で紹介されている「大学入試向けの英文法本」や「iTunesで購入できるオーディオブック」を購入して人生で何度目かの英語学習をしてみました。電車での通勤時間に主に活用していますが、どうやっても寝てしまいます。自己啓発の古典「人を動かす(原題:How to win Friends & influence people)」の英語朗読は、私にはプロポフォール並の強力な入眠剤にしかなりませんでした。
紹介されている中で簡単かつ面白いのはiPhoneの[App Stroe]で購入できる「Google Mobile App」です。このアプリを使うと音声検索ができます。そのためiPhoneに向かって自分の英語の発音が正しく認識されるか独りで確かめることができます。私は何度iPhoneに向かって「catheter」と言っても「jessica」と認識されてしまい、げんなりしてしまいました。他にも「vanilla」が「banana」と認識されたり「sit」が「shit」と認識されたりと、英語学習をやる気を無くさせるに十分なアプリです。
このように英語学習が進まずにお金ばかり浪費されるのは、結局のところ、興味と差し迫った危機感がないからでしょう。
・社内の公用語が英語になった
・英語ができないと管理職になれない
・日本人でなくてもできる仕事は、人件費の安い国の優秀な人たちにアウトソーシングされていく
等々。それらの事実や報道や主張や妄想に四面楚歌な私。英語ができないという理由で、私のような英語ができない麻酔科医師が将来食いぶちに困るほどの貧困に追い込まれる可能性を妄想するたびに眩暈がしそうです。本書はそんな私の眩暈と劣等感を増悪させるに十分な力を持った本(つまり、やる気を出させる素晴らしい本)でした。人間もほかの動物と同様、死に物狂いでもがいて生きないと、淘汰されてしまうのでしょうか。

2010年10月27日水曜日

(雑) 小児麻酔レクチャー終了

「第3子誕生後の育児休暇取得を表明した県知事」の下に寄せられた意見の8割は批判的なものだったそうな。「わざわざ時間を割いて人に意見する人」の母集団にはそもそも「文句を言わずにはいられない"自称"批判的な人」が多いのではないでしょうか。と、私は「人を批判する人」を批判しているわけではありませんよ。
意見の8割が「育児休暇が取れるなんて大層な身分だな」等の批判的なものだった、という記事を読んで、「確かにその通りだ、けしからん」などと「批判的な意見をもつ人」の1人になったとしても、その人を批判的な人とは呼ばないでしょう。その時点での彼は、自分の与しやすい意見に同調しているだけですから。
このように始めは他人に同調して批判していただけだったのが、それを繰り返しているうちに気がつくとその人も立派な「批判的な意見をもつ人の内の1人」になっている、ってことはありそうな話です。

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新しいシステムを作るときに障害となるのは、真っ向から対立する批判的な意見とやる気のない構成員。そして最も障害になるのは恐らくそれまでどっぷり漬かって個々の体に染み付いた習慣でしょう。人や組織が老化するとすれば、染み付いた習慣を浄化する力がなくなった時なのかもしれません。今日出席した会議の中では抵抗勢力は全くありませんでしたが、ぼんやりとそのようなことを考えました。

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今日は手術室看護師さん向けに「小児麻酔」のレクチャーをしました(30分+質疑応答10分)。看護師さん相手にレクチャーをするのは今回で5回目になりました。
まだまだ知識も実践も不足しているいることを誰よりも自覚しているのはこの自分自身です。そのため、教える機会が自分の「無知の知」に気づくチャンスになったことは非常に感謝したいことです。人に教えるためには言葉にして吐き出す知識の何倍かの「時間の都合上、言葉にして伝えられない知識の下地」がなくてはなりません。今回は「時間の都合上、言葉に出来ない数倍の知識の下地」を増やすいい機会になりました。同時に普段の麻酔の実践の裏づけとなる知識が教科書なり論文にあるのかどうか、を知るいい機会になりました。日常臨床において自分の麻酔を直接指導してくれる指導医がつかなくなり、自分より若い人たちの指導をするようになると、臨床麻酔はどうしても自己流になりがちです。その「自己流」が正しいかどうかを時々意識的に見ないと、根が怠け者の私はすぐにだれてしまうのです。
教えるために準備をするのは大変ですが、かけた労力と得られる見返りは凡そ1:1であることを忘れてはいけません。どんな仕事も雑用だと思った時点で試合終了なのです。
スライドを作るのも大事ですが、昼間の業務が終了して疲れているであろう若手看護師さんたちを相手に、暗室で30分間、眠気を誘わずに聴かせられるような話し方で話せていたかどうかは不明です。どんなにためになることを喋っていたとしても、聴いてもらえなければ全く無意味ですから。
缶コーヒーとペットボトルのお茶をどうもありがとうございました。

2010年10月25日月曜日

(音) Dimmu BorgirのAbrahadabra (2010年)

バンド名は「ディム・ボガー」と読みます。
ノルウェーのシンフォニック・ブラックメタルバンドの9作目です。白塗りメイクも纏っているコスチュームもやっている音楽も、今が21世紀だということがどうでもよいくらい、完全に我が道を行っています。
クリーンヴォーカルパートを担っていたICS VortexとキーボードのMustisは、このバンドのかなり重要な位置を占めていた筈です。ですが彼らは本作発表前に脱退してしまいました。バンドは相当な痛手を負ったはずですが、本作を聴く限りそんなことはまるで関係ないようで、完成度は非常に高い。アルバムのどの音節を切り取って聴いてもDimmu Borgir節が炸裂している、ファンには堪らない作品に仕上がっています。オーケストラを多用しているためか、これまでの彼らの作品では最もポップで聴きやすい作品です。中でも天から悪魔の軍団が舞い落ちてきたかのような禍々しい「Gateways」は彼ららしさが詰まった殊色の名曲です。
YouTubeで294万ヒット(2010年10月現在)を記録している「Progenies Of The Great Apocalypse」のプロモーション映像が未だに頭から離れませんが、「Gateways」の映像も結構楽しめました。

2010年10月22日金曜日

(雑) 臨床麻酔学会のための予演会

予演会というのは、「学会発表の前に行う自施設内での予行演習」です。本番同様の時間で、本番を想定して喋ります。本番を想定して質問してくれるありがた~い先輩・同僚・後輩医師がいます。

そして何回やっても緊張します。

自分なりに数カ月かけていろいろな論文を読み、考え、それを1枚のポスターに集約させる作業を行ってきました。ですが、症例報告の場合、「その症例を経験し、過去の論文にあたり、その結果どういうメッセージを発信するのか」が非常に重要です。それが全てといってもいいでしょう。私が苦悩したその部分にずばりと切りこんで質問を投げかけて下さった先生には本当に感謝です。と同時にその「要約力」に感服しました。おかげさまでもうちょっとだけブラッシュアップできそうです。

2010年10月21日木曜日

(本) 残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法 ― 橘玲

限界を恐れず、「続けること、諦めないこと」が限界を突破し、新しい世界を築く力になる。「自分が変われば世界が変わる」、「事実はない。認知があるだけだ。不幸な出来事に遭遇しても、認知を変えればいい」等々は多くの自己啓発書に書かれていることです。私自身もそれらの書を多く読み、影響されて生きてきましたが、「やってもできない」という、別の視点からこの現代社会を描いているのが本書です。

***
・能力主義がグローバルスタンダードになったのは、それが市場原理主義の効率一辺倒な思想だからではない。
会社はヒエラルキー構造の組織で、社員は給料の額で差をつけられるのだから、なんらかの評価は不可欠だ。その基準が能力でないならば、人種や国籍、性別、宗教や思想信条、容姿や家柄・出自で評価するようになるだけだ。すなわち、能力主義は差別のない平等な社会を築くための基本イラフラなのだ。(p67)
・仕事と趣味を両立させられるのは、きわめた高い能力を持ったひとだけだ。「やってもできない」のなら、それがなんであれ、好きなことで生きていくしかない。そうでなければ、マックジョブで日々の糧を得る退屈な人生が待っているだけだ。(81)
・高度化した資本主義社会では、論理・数学的知能や言語的知能など特殊な能力が発達したひとだけが成功できる。こうした知能は遺伝的で、意識的に"開発"することはできない。すなわち、やってもできない。(250)

***
本書で取り上げられる様々な引用が、著者の知識の引き出しの多さを物語っていますが、私はそれらの引用元が「信用に足るものなのか」についての判断ができませんでした。
仕事の能力の差によって報酬を区別するのが1番平等だ、という考え方は理解できるし納得できます。ですが仕事の能力を開発する礎を作ることが可能か否か(幼少時にきちんとした教育が受けられるか否か)、が金銭的裕福さによる階層化が更に更に進むであろうこれからの世界を生きる私は、この考え方に素直に賛同できず複雑な気分です。

2010年10月17日日曜日

(本) たった1分で人生が変わる 片づけの習慣 ― 小松易

日本初の「かたづけ士」の著作。結構なベストセラー本のようです。
片付けられない人への愛あるモチベーション付けに始まり、具体的な行動目標にまで触れています。
私は本書から「目から鱗」というほどの新鮮な感動を得ることはありませんでした。ですが、ものが溢れかえる傾向にある私の身の回り(主に本と書類)を、少しばかりすっきりさせようというモチベーションを上げてくれたきっかけになったには違いない本です。他に影響されやすい私は早速、書棚に鎮座している本を100冊ばかり売り払うことにしました。
時々大掛かりに掃除をやるよりも、毎日ちょこちょこ整頓する(15分程度で)、そもそも整理する以前に「整理しないように、ダイレクトメールなどが本格的に家の中に侵入する前に選別する」というのが、大事ということです。
著者の「1年使っていないものは捨てる」という意見は大いに賛同できますが、この仕事をやっていると意外に「以前遭遇した、稀で困難な麻酔管理症例」で調べたときの資料が2,3年越しで役に立ったりするのです。だから「どの資料を捨てるか」というのはいつでも頭を悩ませる問題なのです。ScanSnapを使って片っ端から書類をPDF化するのも手なのでしょうが・・・。

(麻) 麻酔科医とSLE (Systemic Lupus Erythematosus: A Review for Anesthesiologists)

今回はAnesthesia and Analgesia 2010;111:665–76 からです。関節リウマチは要チェックですが、SLEって意外とマークが甘かった・・・のは私だけ?

<まとめ>
麻酔科医が考えること
・活動性は患者毎に異なる (抗ds-DNAや補体値の推移で病勢を予測する)
⇒画一的な対応は×。急がない予定手術患者は、SLEが落ち着くのを待ってから手術をする。
・主治医にコンサルト~臓器障害の程度、薬剤使用歴の正確な把握を
・産科手術や心臓手術患者はハイリスクのため、慎重に対応する必要がある。
・免疫抑制剤継続の有無、ステロイドカバーの有無についてはきちんと評価すべき。
・抗リン脂質抗体陽性患者では、特に整形外科手術や血管外科手術で血栓症のリスクが高いため、予防が重要である。

周術期管理は患者の病態に応じて行う
・silent ischemiaに注意-5誘導心電図、観血的血圧測定はモニター装着適応の閾値を下げて行う。
・Difficult airwayに注意-声帯麻痺、予期せぬ声門下狭窄症例や喉頭浮腫。特にSLEの活動性が高い患者では注意。環軸椎亜脱臼患者ももしかするといるかもしれない。
・腎機能は低下しているかもしれない-Cr値が上昇していなくても腎保護を意識した麻酔管理を行う。
・区域麻酔の施行は十分注意-周術期の抗凝固療法計画をしっかりと把握。血栓症の有無を確認。
・体位に注意-骨折や末梢神経損傷を予防。
・感染、SSIに注意-免疫抑制剤使用の有無を確認。

<以下各論>
歴史と疫学
・12世紀:Rogeriusが頬部の発疹を”lupus”という語で初めて表現
・1872年:ハンガリーの皮膚科医Moric KaposiがSLEの全身病変を初めて記述

・有病率:7.4-159.4人/10万人。最も多いのはイギリスのアフリカ・カリブ系住民、その他の非白人系。
・1:9で女性に多い。15-40歳に好発
男性、高齢発症者は重症化する傾向。予後はよくない。
・一卵性双生児間で24-60%の一致、
・二卵性双生児間では2-5%の一致(遺伝的要素が関係)
・関連因子:喫煙、結晶性シリカ、EBウイルス、ホルモン
・薬剤誘発性ループスの症状は関節痛、漿膜炎が主で、通常、臓器傷害は見られない。

心血管系
・心膜炎(25%に合併)は診断基準にも含まれており、よく知られている。(無症候性を含めると50%以上に合併)
・心膜炎は発症早期やSLEの再燃期によくみられ、胸水を合併することもある。
・心タンポナーデは2%未満と稀である。
・NSAIDSやステロイドによって治癒するが、タンポナーデ解除に心膜穿刺や心膜開窓術が必要となることもある。
・心筋炎(5-10%に合併):発症者の80%で左室収縮力の低下を起こし、進行すると不整脈、左室機能障害、拡張型心筋症、心不全を起こす。
・近年の研究で心血管合併症がSLE患者の後期死亡の主因となっていることがわかった。疫学的には44歳から50歳のSLEの女性は心筋梗塞の危険性が50倍高いため、注意が必要である。
・コホート研究では、高齢女性、長い罹病期間、長期間のステロイド使用、高脂血症合併症例が心血管病変合併の危険因子とされる。

弁疾患(Libman-Sacks endocarditis:疣贅形成による弁異常(10%に合併))
・罹病期間が長い、活動性が高い、抗リン脂質抗体陽性患者などで見られる。
・①僧帽弁②大動脈弁に起こり、主に逆流症を起こすが、進行すると狭窄症を起こす。
・疣贅が飛散して脳梗塞を発症することがある。
・臨床的に明らかな弁疾患はSLEの3-4%。その半分は手術適応となる。生体弁は逆流の再発が起こりやすいため、機械弁による置換がよい。

呼吸器 無症状でも機能は低下
・剖検研究では18%のSLE患者に肺病変が認められた。
・60%のSLE患者では潜在的に呼吸機能低下を認め、特にDLCO(diffusing capacity for carbon monoxide)低下がよく見られた。
・HRCTで肺をみると、20%の患者ではスリガラス陰影、網状影が見られ、肺の間質病変を合併している。
・胸膜病変は有名で、SLE患者の35%は胸膜炎を起こす。通常は軽症である。
・重篤な合併症に肺胞出血がある(1-5%の合併率)。死亡率は50%に達する。診断にはBALが用いられ、人工呼吸器、強力な免疫抑制療法、血漿交換等が必要になる。
・肺高血圧(PH)は0.5-14%で合併するが、症状が非特異的なため、診断が遅れがちになる。

喉頭病変の合併に要注意
・50歳以上のSLEで見られる(0.3-30%)
・所見:軽い炎症、声帯麻痺、声門下狭窄、急性閉塞を来たすような喉頭部の浮腫、喉頭蓋炎、輪状披裂関節炎が挙げられる。
・多くは免疫抑制療法で改善するが、気管挿管や外科的気道確保が必要になることも稀にある。
活動期SLEでは短期間の挿管後でも声門下狭窄を起こしやすいとする意見もある。

腎疾患は予後に直接影響する
・ループス腎炎(60%に合併)はSLEの診断後3年以内に見られることが多い。
・腎合併症があると死亡率は4.3倍となり、独立した予後規定因子である。
・腎合併症患者の5-20%は末期腎不全に至るが、近年は減少傾向にある。
・病気は組織学的に6つに分類されるが、Class4(び慢性ループス腎炎)は腎予後不良で、重症高血圧合併
・血清クレアチニン値が正常な患者でも「生検するとclass4だった」ということがあるため、SLE患者では常に腎保護を念頭におくべきである。

神経合併症
・37-95%の合併。中枢神経、末梢神経、自律神経障害、精神障害を起こす(neuropsychiatric SLE; NPSLE)
・7-20%の患者が痙攣を起こすが、他の併存疾患がないか鑑別が重要。
・抗リン脂質(aPL)抗体陽性患者では脳血管病変合併のオッズ比が2.3-6.7倍と高い。

造血器合併症
・リンパ球減少、貧血(50%)、血小板減少(約10%)がよくみられる。
・腎傷害やCNS病変合併例ではHb8.0g/dl以下の重度の貧血例もある
・血小板減少症例の1/5では免疫抑制療法が効果なく、脾摘が必要となる。

消化器合併症
・消化器系合併症は非常に多く、非SLEのものもあるため、診断に苦慮することが多い。
・口腔潰瘍(7-52%)だけが診断基準に入っているが、通常「無痛性」で、全身の病変の活動性に無関係である。
・食道病変は嚥下困難(1-13%)、胸やけ(11-50%)。上部食道の蠕動異常を認めることもあるが、SLE患者では下部食道括約筋障害の報告はなく、胃食道逆流の危険性は高くない。
・急性腹症はSLE患者の40%に見られる
・SLEに関連するものには漿膜炎、血管炎、小腸の虚血、膵炎、無石性胆嚢炎、タンパク喪失性腸症などがある。
・SLEに関連しない、手術を必要とする病気も合併も多いので注意が必要である。
・自己免疫性肝炎の生涯合併率は2-5%程度。

骨・関節病変
・非びらん性関節炎が有名。
・骨粗しょう症(23%)。骨折(12.5%)
・ステロイド使用と骨粗しょう症には直線的な関係はなく、SLEの活動性と関係があるようである。
環軸椎亜脱臼の報告はいくつかある
  ・頚椎の屈曲位を画像診断して59人を前向きに検討した研究では5人(8.5%)に亜脱臼を認めたという。5人中4人は頚部痛を認め、4人のうち1人は指の麻痺・感覚低下を合併していた。そのような患者は罹患期間が長く、CKDを合併し、副甲状腺機能が亢進していた。

凝固系
・ループスアンチコアグラント(LAC)陽性患者の方が、抗カルジオリピン抗体(aCL)陽性患者より血栓症を起こしやすい。
LACはAPTT値が延長する(試験管内では抗凝固性を示すため)が、むしろ血栓傾向を示すので要注意。
・「抗リン脂質抗体症候群(APS)患者」より「SLE+抗リン脂質抗体陽性者」の方が血栓症を起こしやすい。
・下肢の静脈血栓症を起こす。動脈血栓は稀である。
・静脈血栓塞栓症のある患者に対しては、PT-INR 2-3を目標にワルファリン治療を行う。
・血栓症の既往のない「SLE+aPL抗体陽性者」には低用量アスピリン治療を行う。
・動脈血栓塞栓症の既往患者には、より強固な抗凝固(INR 3-4)が勧められるが、まだ議論の余地がある。
・妊娠中にはヘパリン/低分子ヘパリンを使用する。

薬物治療と副作用
・SLEの治療はNSAIDs、アスピリン、免疫抑制剤(ステロイド、シクロフォスファミド、アザチオプリン、メトトレキセート、ミコフェノール酸モフェチル)等で行う。

◎おもな薬剤の副作用
・高用量シクロフォスファミド:心毒性があり、可逆性の心収縮力低下をもたらす。
・アザチオプリン、メトトレキセート:骨髄抑制、肝傷害
・メトトレキセート:肺傷害の原因にもなる。

麻酔薬との相互作用
・アザチオプリンの代謝拮抗作用
⇒筋弛緩薬の必要量が増える。アトラクリウムは37%、ベクロニウムは20%、パンクロニウムは45%増えたとする研究が1つある。
・シクロフォスファミド:pseudo-ChE阻害作用⇒サクシニルコリン使用後の無呼吸時間が延長する
・NSAIDs+メトトレキセート:急性腎傷害や汎血球減少を起こす可能性あり。
・笑気:骨髄抑制を起こすかもしれない。

結び:Anesthetic and perioperative management remains dependent on clinical acumen and understanding of the medical issues at play in these patients.
「鋭い洞察力(acumen)」をもって周術期管理をすることが重要である。

(走) Training outside (其の七十壱)

新しい料理に挑戦しようと思って、スーパーに行った。「バルサミコ酢」なるものを探しのですが全然見当たりません。恐らく調味料だろう、と調味料コーナーを端から隈なく探すとようやく1本だけ店頭に並んでいるものを発見。しかし結構高くてびっくり。隣に「赤ワインビネガー」も売っていましたが、初心者の私にはどう違うのかよく分かりません。どちらも赤ワインをもとに作った酢のようですが。
と思っていたところ、東京ガスのHPで解説されていました。

バルサミコ酢:ぶどう果汁を煮つめて濃縮し、木の樽に入れて自然に発酵させたものです。水分の蒸発に合わせて樽を小さく、また材質をクルミ、カシ、クリ、サクラなどに替えながら熟成させるという独特の製法により、複雑な香りが生まれます。

ワインビネガー:ぶどう果汁に酵母を加えてアルコール発酵させた後、酢酸菌を添加して発酵させて作った酢です。バルサミコ酢のように自然の発酵力を利用するだけではなく、多くの場合、工業的に酵母や酢酸菌を加えて、熟成期間を短くしたものです。

ということで、バルサミコ酢の方がより手が加わっているようです。
***

ランニング:12.4km、65分04秒 (21-3℃、約11.4km/h)
計551.6km (8月 65.8km, 9月 48.5km, 10月 55.5km)  
総時間3409分=56時間48分

11月5km: ねりま光が丘ロードレース(あと28日)
12月21.095km:いたばしリバーサイドハーフマラソン(あと49日)
2011年3月42.195km:板橋Cityマラソン(あと154日)

2010年10月16日土曜日

(本) 15分あれば喫茶店に入りなさい。 ― 齋藤孝

初版から2週間で第3刷が発行されているところをみると、それだけ喫茶店を勉強スペースに使っている人が多いのか、それとも著者の知名度からか。
本書は徹頭徹尾「喫茶店でどのように勉強するか」について書かれています。どのように勉強するか、だけでなく、どのような喫茶店で、どの席で、どの時間に勉強するか、についても言及しています。著者は30年来(1週間に平均10回以上利用)の喫茶店勉強者らしく、その熱の入りようも半端ではありません。

・日曜日に教会に行く習慣がない多くの日本人にとっては、かわりに喫茶店を「教会化」してしまうのも一案です。(p86)

という一文に著者の喫茶店愛が溢れているように感じました。私もJB-POTの受験勉強には喫茶店を時折利用しましたが、喫茶店の勉強で1冊本が書けるというのは本当に凄いことです。喫茶店の勉強という自分の習慣すらアウトプットに変えてしまうのですから。
著者は
・マクドナルドで仕事をするのはかなり難しいです。(p170)
と書いています。確かにマクドナルドは小学生が数人集まってみんなでNintendo DSをやっていたり、高校生が騒いでいたり、小さい子供をつれたママたちがおしゃべりに興じていたりと、喧騒の場になっていることもままありますが、私が喫茶店勉強をする時に1番利用しているのはマクドナルドです。抄読会のスライドや学会のポスターなんかも作ります(だから能率が悪いのか?)。私のアウトプットの何%かはマクドナルドのポテトやコーヒーでできているでしょう。大音量のヘヴィメタルサウンドで耳を塞いで外音をシャットダウンすれば、私にとってはどの喫茶店でも同じです。むしろ騒がしいマクドナルド内に同化しているようで心地よいです。

・(電車内で)iPodでつねに耳元をシャカシャカさせている人は、「喫茶店化」しているのではなく、むしろ「自宅化」しているのです。(157)

著者のような一流の名の通った人でも、いやそのような人だからこそ、寸分の間を惜しんで、これだけのインプットとアウトプットをしているのか、と妙に感心した一冊でした。

2010年10月15日金曜日

(走) Training outside (其の六十九-七十)、通勤路ラン3回目

10月11日
ランニング:4.5km、36分(坂道全力走を8本含む)

10月15日
ランニング:13.5km、83分42秒(19時過ぎ~、20-21℃、曇り、無風、平均9.6km/hr)
赤信号という赤信号を全て無視せずに完全に停止。
信号待ちの間はその場で足踏みすることもなく、深呼吸を数回繰り返す。
後半に行くに従って、心肺に負担がかかっているのがわかりました。

計539.2km (8月 65.8km, 9月 48.5km, 10月 43.1km)  
総時間3344分=55時間43分

11月5km: ねりま光が丘ロードレース(あと30日)
12月21.095km:いたばしリバーサイドハーフマラソン(あと51日)
(2011年2月 42.195km 東京マラソン)
2011年3月42.195km:板橋Cityマラソン(あと156日)

2010年10月13日水曜日

(走) 予想していたことといえ

やっぱり東京マラソンの抽選は外れてしまいました。

2010年10月11日月曜日

(麻) 麻酔科医に役立つiPad/iPhoneアプリなど

先日の心臓血管麻酔学会会場でも見かけましたが・・・最近買ってよかった本。

医師のためのモバイル仕事術―iPad/iPhoneを使い倒す!(著:讃岐美智義/門川俊明)

私はiPhoneユーザーです。iPadユーザーではありませんが、それでも十分役に立つ本です。初歩的な使い方からマニアックな使い方までオールカラーで詳しく記載されています。私は本書を読んでからEvernoteの利用を始めました。また、350円で買えるアプリ「PubMed On Tap」(P.97-100で紹介)も結構使い勝手が良いです。SafariからPubMedのホームページに行くより早いし、気になる論文は自分のメールアドレスに送れます。電車での移動中に検索したいときには非常に使えるアプリでした。

巻末の「医療関係者におすすめのアプリカタログ」だけでも一見の価値ありで、非常に得した気分になった本でした。
でもアプリって1つ1つが安価だからついつい買ってしまうんだよなぁ。

そういえばあの紫本も日本語で改訂版が出てました。
周術期経食道心エコー実践法 第2版
来年JB-POTを受験する人たちは買ってもよいかもしれません。

2010年10月10日日曜日

(麻) CPBハンズオンなど ~ 心臓血管麻酔学会

麻酔科医の善良かつ頼れる隣人である体外循環技術認定士の先生方から体外循環の基本的な手ほどきを受けた。

@CPBメモ
人工心肺を購入するときには、安全装置が標準装備されていないらしい。つまり安全装置を装着するか否かは購入者に任せられており、設置しなくても人工心肺を使用することができるということだ(真偽は確かめていない情報)。私は今日、ちょっと触らせてもらっただけだが、これほど使用が難しい装置に対してそれはちょっと・・・と個人的には思う。

日本体外循環技術医学会で下のような勧告を行っている。
人工心肺における安全装置設置基準
その勧告に対するQ&A

こちらは厚生労働省。114ページもあるけど、後で読むかもしれないからはっておく。
人工心肺装置の標準的接続方法およびそれに応じた安全教育等に関するガイドライン

・CPB開始時には送血回路の遮断鉗子を外して、患者の動脈圧の拍動を確認する。(直接送血回路を指で触って行っている、という基本的なことすら知らなかった自分の無知を思い知った)
・貯血槽(リザーバー)が空になると空気が送られる。突然脱血不良(脱血管の先あたりや極端な循環血液量減少時)になったときに注意。(そのために貯血槽レベルセンサーという安全機構が取り付けられている)

・大量に体に空気が送り込まれたら・・・・
1.CPBを停止し、送血カニューレを抜去
2.Trendelenburg体位を取り、患者の大動脈が最も高くなるようにする
3.CPBを補液して満たし、再循環回路を利用して手早く送血回路の空気抜きをする
4.CPBの再循環回路を開け、冷却しながら脱血回路から順行送血の1/5程度で逆行性送血を開始する。このときCVPが25mmHgを超えないようにする
・脱血管挿入時にはIVCと肝静脈が見えるviewをTEEで描出しておくと安全(脱血管が肝静脈に入り込むのを予防できる)

@PCPS関連メモ
・フローが上がらないといって回転数を上げるだけだと強い陰圧でキャビテーションによって気泡が発生し、空気が送り込まれる。陰圧は-60~-80mmHgくらい。
・FAから送血するので左室の後負荷は増大する。
・PCPSの閉鎖回路では循環血液量の維持が重要。輸液・輸血は回路からできない。
・大動脈の近位よりでる血管(冠動脈、弓部三分枝)には心臓から拍出された血液が送られる。自分の心機能や呼吸機能には十分注意(酸素化の悪い血液が脳に送られてしまうかも)。
・PCPS中はSvO2、rSO2、lactate等のチェックを考慮。

@TEE関連メモ
・心腔内遺残空気の貯留しやすいところと追い出し方
1.右上肺静脈(ME bicaval viewから130°程度にふると見える):ベッドを右下にして肺を加圧する
2.右側左房:1と同じ
3.左心耳(ME AV SAX viewからプローべを左に向けると見える):術者に手伝ってもらう
4.心尖部:ベッドを左下にする、術者に手伝ってもらう

・冠静脈洞(CS)の正常サイズは1.0cm以下。大きいときはPLSVC。逆行性心筋保護は不可能?
・CSの観察:CSは4CVからちょっとプローべを背屈させるか食道と胃の間辺りにプローべをすすめると見える。ME 2CVではCSの横断面も観察可能

***
PLSVCがあるAR患者さんに対してAVRを行うときの心筋保護は?
直接の解答は私の検索能力では得られなかったが、まぁいいか。
このような症例報告は勉強の糧になりそう。
非交通性上大静脈遺残を伴った急性A型大動脈解離破裂の1例

Cardiac Surgery in the ADULT
 によると
PERSISTENT LEFT SUPERIOR VENA CAVA
A persistent left superior vena cava (PLSVC) is present in 0.3% to 0.5% of the general population and usually drains into the coronary sinus; however, in about 10% of cases it drains into the left atrium. The presence of a PLSVC should be suspected when the (left) innominate vein is small or absent and when a large coronary sinus or the PLSVC itself is seen on baseline TEE.
A PLSVC may complicate retrograde cardioplegia or entry into the right heart. If an adequate-sized innominate vein is present (30% of patients), the PLSVC can simply be occluded during CPB, if the ostium of the coronary sinus is present. If the right SVC is not present (approximately 20% of patients with PLSVC), the left cava cannot be occluded. If the innominate vein is absent (40% of patients) or small (about 33%), occlusion of the PLSVC may cause venous hypertension and possible cerebral injury. In these patients a cannula is passed retrograde into the PLSVC through the coronary sinus ostium and secured. Alternatively, a cuffed endotracheal tube may be used as a cannula.

PLSVCってJB-POTのような試験に出しやすい箇所の1つですよね。
心臓麻酔と体外循環は学ぶことが多く、ちょっと眩暈がした2.5日でした。

2010年10月8日金曜日

(麻) necrotizing dermatitis (壊死性筋膜炎) は悪夢のような病気


その悪夢に最近2度ほど手術室で出会った。患者さんは典型的なseptic shock(敗血症性ショック)の状態で入室してくる。基本的にはSSCG2008を基本として、患者の術前合併症を考慮に入れた麻酔管理をするのだが、「手術室に来る前にやっておいてほしいこと」が全くといっていいほど為されていない場合、私は愕然とするしかないのである。

@知識
・内科的治療ではほぼ100%死亡するので、壊死組織の迅速かつ完全なデブリドマンが必要。
・1日デブリが遅れるにつき死亡率が27%上昇。(Am Surg 1998;64:397-400;discussion 400-1.)
・1回のデブリで不十分なこともしばしばで、デブリを繰り返すことが重要(6時間-2日の間隔で)。
・生存者は入院後平均25時間で外科手術、死亡患者は平均90時間で手術施行。(Ann Surg 1995;221:558-63;discussion 563-5.)
皮膚所見や触診から診断を下すのは困難な場合もある
・原因:溶連菌、Clostridium spp. など

@治療
・グラム陽性レンサ球菌+/-桿菌の場合
 ・PCG 2-4MU q4h + クリンダマイシン600mg q8h
・グラム陽性ブドウ球菌単独の場合:バンコマイシン1g q12h
・嫌気性菌が関与、または複数菌種の場合:
1.ピペラシリン・タゾバクタム 4.5g q6-8h + クリンダマイシン 600-900mg q8h + シプロフロキサシン300mg q12h
2.イミペネム 1g q8h or メロペネム 1g q8h
(参考:INTENSIVIST vol.1 No.2 Sepsis p.328, 340)

(本) 老いの才覚 ― 曽野綾子


本書において「才覚」とは「今まで得たデータを駆使して、最良の結果を出そうとするシステム」(p17)と定義されている。自律して生きることが何よりも大事。と1931年生まれの人生の大先輩が説いてくれる。

***
・どんなに若い人でも、「くれない」と言いだしたときが、その人の老化の始まりです。(p13) 
例:今度行くとき、私も連れていってくれない?~~さんに伝えておいてくれない?
・だれでも救急車にタダで乗れる国は、非常に少ない。国民健康保険や国民年金、生活保護法のある国など、めったにありません。(22)
・今では、だれもが「それをする権利がある」と言う。(24)
・今すぐにでも徹底して、読み書きの訓練をしないと、日本は滅びると思います。(29)
・社会がしてくれるものなら、何でももらっておこうというのは、乞食根性になっている証拠です。(43)
・私たちは基本的に、人を信用してはいけない。生きている限りは、緊張して生きなくてはいけないのです。(53)
・自分がやった仕事に「対価を払います」と言われているということは、社会から阻害されていない証しです。(62)
・得をしたい、という気持ちが起きた時は、すでにお金に関する事件に巻き込まれる素地ができているから用心しなさい。(91)
・若くても、他者への配慮がなくなったら、それが老人なんですよ。電車の中で足を投げ出して座ったり、眠りこけている人は二十歳でも老年です。(130)
・豊かさであれ、安全であれ、すべて世の中が与えてくれるのが当たり前、と百点満点を基準にして望むから、不満ばかりが募って、どんどん不幸になっていくわけです。(164)

***
今日は心臓血管麻酔学会のリフレッシャーコースに出席。今週は何故か疲れすぎていて全く集中できなかった(休憩なしで30分×6コマのレクチャーは積め込みすぎだと思う)。職場の先生方、講師の先生方に申し訳ない気持ち。

2010年10月5日火曜日

(走) Training outside (其の六十八) 通勤路ラン2回目

秋の夜長の当直は長時間手術の麻酔。朝カンファランスが始まるまで続くと予想していたが、日の出前には終わってしまった(早く終わるのはよいことだ)。当直帯に少しでも仮眠できたら走って家に帰ろうと思っていたので、恐る恐る実施。
信号が多い通勤路ランはインターバル走変法とも呼べるようなコースと考えられる。どんな小さな十字路の赤信号でも、引っかかったらピタッと止まって深呼吸。しっかりと心拍数を落とす。青信号になったらまた走り出す…の繰り返しで相当な心肺負荷がかかっているような気がする。記録としては8月20日より遅くなったが、信号待ちが多かったという事にしておこう。当直明けでも走れる健康な体と職場環境に感謝。

ランニング: 13.5km、80分(24℃、通勤路、平均10.1km/hr)
計521.2km (8月 65.8km, 9月 48.5km, 10月 25.1km)  
総時間3224分=53時間44分
筋トレ:なし

11月5km: ねりま光が丘ロードレース(あと40日)
12月21.095km:いたばしリバーサイドハーフマラソン(あと61日)
(2011年2月 42.195km 東京マラソン あと145日)
2011年3月42.195km:板橋Cityマラソン(あと166日)

2010年10月3日日曜日

(走) Training outside (其の六十七)

信号が多い道を走った方が、止まった時に心拍数をしっかり落とせるのでトレーニング効果がありそうである。今日は光が丘、豊島園方面までの往復。夕方は本当に走りやすい季節になった。

ランニング: 11.6km、66分(ほぼ平坦な道路、10.5km/hr)  
 計507.7km(8月 65.8km, 9月 48.5km, 10月 11.6km)  (総時間3144分=52時間24分)
筋トレ:なし

11月5km: ねりま光が丘ロードレース(あと42日)
12月21.095km:いたばしリバーサイドハーフマラソン(あと63日)
(2011年2月 42.195km 東京マラソン あと147日)
2011年3月42.195km:板橋Cityマラソン(あと168日)