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2011年9月26日月曜日

(麻) 麻酔科専門医認定試験口頭試験-2006年症例5- 3歳女児の気管支異物

症例
・3 歳女児。100 cm、15 kg。
・節分の豆まきのあと、突然の咳発作に陥り、救急外来を受診。
・気管支異物の疑いで気管支鏡が申し込まれた。
・2時間前に夕食を摂った。

質問
1)術前評価と管理
1. この患児の術前状態における問題点を列挙して下さい。
・full stomach
・豆(かどうかは必ずしもわからないが)による気道閉塞による低酸素の可能性。慢性咳嗽、肺気腫、無気肺、肺炎の原因に。
・嵌頓異物がチェックバルブとなり陽圧換気により肺の過膨張をきたす可能性もある。

2)麻酔法および術中管理
1. フルストマック対策としてどのような処置をしますか?
・夕食後6時間待てるか主治医と相談
・ファモチジン1mg/kg等の前投与
・入室前に静脈路を確保し、rapid sequence induction
・もしくは異物が移動して換気不可能になる可能性もあるため、緩徐導入で麻酔深度が十分になった段階で輪状軟骨圧迫、補助換気が可能なことを確かめてから筋弛緩薬を投与する方が安全な可能性あり

2. 喉頭鏡の種類・サイズ、チューブのサイズはどのようなものを選びますか?
・喉頭鏡:Macintosh 2かMiller 2
・チューブ:4.5か5.0 カフなし

3. 術中の麻酔法はどのようにしますか?
・純酸素、セボフルラン2.5%程度。人工呼吸管理。適宜フェンタニル1ug/kgを静注する。
・手技は硬性気管支鏡もしくは軟性気管支鏡からの鉗子による摘出。断続的に呼吸を止める必要があるので、吸入麻酔薬の濃度低下による術中覚醒と、低酸素血症に注意する。換気中断時に低酸素にならないように純酸素で換気する方がよいと考える。
・豆が気管チューブを通らなければ、ファイバー観察下に気管チューブごと抜去して再挿管することもある。上気道の浮腫が強くなければ、であろうが。
・摘出後に生食で気管内洗浄を十分に。
・異物摘出後は喉頭気道浮腫予防にデキサメサゾン0.2mg/kg投与

3)周術期危機管理
1. 術中低酸素血症の鑑別診断と治療について述べて下さい。
・手術操作による換気中断や低換気
・豆による気管閉塞・無気肺
・喘息発作
・アナフィラキシー

4)術後管理
1. 抜管直後から、吸気時にヒューヒュー音が聴取された。鑑別診断は何か。その治療は何か。
・上気道狭窄によるなので、
・咽頭・喉頭浮腫、喉頭蓋腫脹、喉頭痙攣、
・舌根沈下、扁桃肥大によるもの
などが考えられる。
いずれの場合も100%酸素をマスクで投与、自発呼吸があるようならば、愛護的に、上気道が開通するように顔の向きを修正し下顎挙上を行う。喉頭痙攣を疑うならばマスクを完全にフィットさせLaryngospasm notchを圧迫するように強く下顎挙上、持続PEEPで解除させるのを待つ。低酸素・徐脈になる前にアトロピンとSCCを手元に準備してもらい、再挿管を考慮する。いずれにせよ術操作に伴う気道浮腫増悪の可能性があるため、術直後抜管の判断は慎重に行ったほうがよい。夜間の緊急手術であれば、日中まで鎮静・人工呼吸管理とすることも考慮する。術後の肺炎の発生にも注意が必要である。

@参考にした文献など。大変勉強になりました。
・臨床小児麻酔ハンドブック改訂第2版.2008年.診断と治療社 p182-3
・日臨麻会誌 Vol. 29: 65-68, (2009) .
・気道異物35症例の周術期管理麻酔. 56巻9号 Page1065-1070(2007.09)
・近畿大学医学雑誌30巻1号 Page7-10(2005.06)
気道異物症例の周術期管理. 日臨麻会誌 Vol. 31: 946-951, (2011) .(2012年3月10日追加)