呼吸生理は王道かつ基本でしょうが
「ウエスト呼吸生理学入門:正常肺編」(MEDSi, 2009年)
が薄くてわかりやすくて練習問題も掲載されていて必要十分な気がします。過去問だけ解いても全然理解出来ない。高校生頃までは計算問題大好きだった筈なんだけどな。
***生理学的な知識***
@臓器血流量(ml/100g/min)
・腎(420)>>心(84)>肝(57.7)>脳(53.6)
@臓器の酸素消費量(ml/100g/min)
・心(9.7)>腎(6.0)>脳(3.3)>肝(2.0)
@心拍出量に対する割合(%)
・肝(27.9)>腎(23.3)>脳(13.9)>心(4.7)
@冠循環の生理
・安静時:50-100ml/100g心筋/min (*因みに心臓は300g程度)
・心筋酸素消費量:6-10ml/100g心筋/min -心筋酸素供給の70%に相当。
→冠静脈洞における酸素飽和度は30%、酸素分圧20mmHg。
・収縮期の冠血流は主に心室外壁に分布。内膜側の血流は外膜側の1/4以下。
・左冠動脈血流の70-85%は拡張期に供給。拡張期早期にピークになる
・右冠動脈の血流量は収縮期に増加し、血圧のピークに相応してピークになる。
・心室充満に対する心房収縮の影響は30%。重度のASでは左室拡張終期圧が上昇しているため心房収縮の依存度が通常より高くなっている。 46B33
@肝循環 48A72, 47A66 (*肝臓は1-1.5kg程度)
・門脈(PV)にはα受容体しかない。肝動脈(HA)にはα、βともにある
・酸素供給は肝動脈・門脈で50%ずつ。肝血流量はHA30%, PV70%。
・肝静脈の酸素飽和度は60-70%。
・イソフルランで肝血流↑、ハロタンは↓
・肝血流に最も影響するのは上腹部の手術操作(60%の肝血流低下?) 。
・バゾプレシン、エピネフリン、アンギオテンシンIIは門脈収縮
・グルカゴン、エピネフリンは肝動脈拡張(エピネフリン投与初期は収縮)
・麻酔中は肝血流の自動調節能なし
@脳循環 (*脳は1300g程度。体重の2%)
・成人の酸素消費量は3.5±0.3ml/100g/min
・PaO2 60mmHg以下で急速に脳血流量↑
・CO2応答性は20-80mmHgでS字状の変化を示す。*1 Torr変化で1-2ml/100g/min変化
20mmHgでの脳血流量は20ml/100g/min
100mmHgでの脳血流量は100ml/100g/min。高CO2血症では脳血流自己調節能のプラトーが狭くなる。
*安静時の成人正常の脳血流量は50±5ml/100g/minで心拍出量の15%
・PaCO2 40→80Torrの上昇で脳血流量は2倍になる。 49A44
・酸素代謝率は灰白質(80ml/100g/min)で白質(20ml/100g/min)の4倍高い。( )内は安静正常値
・脳酸素代謝率:27-37℃では体温1℃↓で7%↓。脳温18℃で正常の10%未満になる。(体温20℃で平坦脳波になる。)
・軽度低体温療法(32-34°)では20-30%の脳代謝率↓
・チオペンタール投与で…鎮静濃度では脳酸素代謝率は30%↓、平坦脳波出現レベルでは50%↓。それ以上は低下しない
・デクスメデトミジンは脳血流量↓
@呼吸関連
・生理学的死腔:解剖学的死腔と肺胞死腔
・坐位→仰臥位でFRC↓、肺胞死腔↓となり、生理学的死腔は減少する
・1kPa=7.5mmHg, 1mmHg=0.1333kPa
例:PaCO2 40mmHg = 5.32kPa
・pH = 6.10 + log[HCO3- ]/0.03Pco2
@ヘモグロビン酸素解離曲線(頻出)
・P50 :酸素飽和度50%を示す酸素分圧
・正常値 大人:26.7mmHg > 胎児型HbF 20mmHg *胎児HbはSpO2に殆ど影響しない
・妊娠末期では右方移動26.7→30.4mmHg
・因みにPvO2 40mmHg → 酸素飽和度75%は覚える
・因みにHb分子(α2β2)の分子量は64500、ヘムを4つ含む。
右方偏位 (P50↑)
要因 : アシドーシス(水素イオン↑)、高体温、高炭酸ガス血症、2.3‐DPGの上昇(例:慢性低酸素症、貧血、高地環境)、多くの吸麻
作用 : 組織で酸素を放出し易く、動脈血酸素分圧が高くないとHbと結合し難い。
左方偏位 (P50↓)
要因 : アルカローシス、低体温、低炭酸ガス血症、2.3‐DPGの低下
作用 : 組織で酸素を放出し難いが、動脈血酸素分圧が低くてもHbの酸素化が可能。
注:DPG…ジホスホグリセリン酸。2.3-DPGは嫌気性解糖の中間代謝産物。
*オピオイドは解離曲線の位置に影響を与えない
@動脈血酸素含量 (頻出)
CaO2(ml/dl)=Hb×1.36×SaO2+0.003×PaO2(正常値 20=14.5×1.36×1.0+0.003×100)
混合静脈血酸素含量
CvO2(ml/dl)=Hb×1.36×SaO2+0.003×PvO2(正常値 15=14.5×1.36×0.75+0.003×40)
心拍出量
CO(l/min)=VO2/(CaO2-CvO2)
→変形すると…
酸素消費量VO2 = (CaO2-CvO2)xCO 通常は約200-250ml
全身に送り出された血液中にある酸素、から、還って来た黒い血液中の酸素、を引いて、1分あたりの循環血液量、を掛ければ、確かに酸素消費量になる・・・。
@肺胞気-動脈血酸素分圧較差 (頻出)
A-aDO2=PAO2-PaO2
ここでPAO2=(760-PH2O)×FiO2-PACO2×{FiO2+(1-FiO2)/R)
簡易式
PAO2=FiO2(PB-PH2O)-PACO2/R
FiO2=酸素濃度、PB=大気圧760mmHg、PH2O=水蒸気圧47mmHg、R=呼吸商0.8
@二酸化炭素産生量VCO2の計算問題 48C38
(VCO2)(ml/min)= VA×FACO2
VCO2 = 二酸化炭素産生量、VA = 肺胞換気量 (L/min)、FACO2= 肺胞気CO2分圧
VCO2=(VA×PACO2)/0.863
PACO2≒PaCO2
VA=(500×10)/1000 (単位をml→Lに変換するため1000で割る。ここで死腔は無視)
・・・と500ml×10回/minならば
VA=5(l/min)、PACO2 =35mmHgとして
VCO2=(5×35)/0.863 = 202.8(ml/min) が二酸化炭素産生量となる。
@呼吸商(R)の計算問題 48C39
(R)=VCO2/酸素消費量(VO2)
VO2は吸気・呼気間の酸素濃度較差に分時換気量をかけて求められるので、吸気酸素30%、呼気24%とするとVO2=(0.3-0.24)×500×10=300 (46C40にもあり)
上記と組み合わせて
R=202.8/300 = 0.68
@笑気の容積の問題
・笑気の肺胞濃度が60%のとき、閉鎖腔の容積は何倍になるか?
→笑気負荷分による閉鎖腔容量増分をxとすると、
x/(1+x) = 60(%) / 100 ∴ x=1.5 なので、1+1.5 = 2.5 倍になる
@換気血流比(V/Q) (頻出)
・肺尖部では3.3、肺底部では0.6。平均は0.8(95%は0.3-2.1の間に分布)
・換気血流比=0 は換気がない状態。シャントとなる。(分離肺換気時のnon dependent lung)
・換気血流比=∞ は血流がない状態。死腔となる。肺気腫で増加する。
・分布勾配(肺尖部→肺底部) :血液は0.07→1.29、換気は0.24→0.82
@HPVが抑制されるとシャントが増大する
・HPVを抑制:低CO2血症、揮発性麻酔薬、ニトログリセリン、ニトロプルシド、Ca拮抗薬(ベラパミル、ニフェジピン)、エンドトキシン、イソプロテレノール、グルカゴン、プロスタサイクリン、NO
・HPVをわずかに抑制(臨床的に有意でない):亜酸化窒素
・HPVを抑制しない:チオペンタール、プロポフォール、ケタミン、フェンタニル、ジアゼパム、ドロペリドール、ペンタゾシン
・HPVを増強する:高CO2血症、局所のアシドーシス、NSAIDs、PDEIII阻害薬、アミノフィリン
@HPVに関連した知識
・HPVは主に200μm以下の前毛細管動脈で起こる。これら細動脈が細気管支や肺胞に隣接しており、肺胞低酸素症にすぐ反応できる。
・HPVは肺気腫患者では効果少ない
・低酸素領域が70%以上ではPaO2改善の効果は少ない
・肺血管抵抗は、肺気量がFRC(機能的残気量)を示すときに最小になる
・混合静脈血酸素分圧と肺胞酸素分圧が関与する
・空気下では肺胞気酸素分圧は100mmHgだが、40mmHgに低下すると肺動脈圧は40%程度上昇する。
@肺血流(立位における)の分布(West分類) (頻出) 下線部が肺血流量を規定
zone 1:肺胞内圧>肺動脈圧>肺静脈圧
・血管が虚脱して肺胞死腔を構成
・PAP低下(肺血管拡張薬、hypovolemia)や肺胞内圧上昇(PEEPやCPAP)で拡大。
・立位では殆ど存在しないか、数十ml程度
zone 2:肺動脈圧>肺胞内圧>肺静脈圧
・血流量は肺動脈圧と肺胞内圧の差に依存。zone2内では、下方に向かって肺動脈圧が上昇するが、肺胞内圧は殆ど変化しない。つまり下方ほど血流量が増加。
・waterfall現象:川の流量(血流量)は、上流圧(肺動脈圧)とダム(肺胞内圧)の高低差に依存し、下流の圧(肺静脈圧)に依存しない
zone 3:肺動脈圧>肺静脈圧>肺胞内圧
・血流量は肺動脈圧と肺静脈圧の差に依存。PACを留置するのはこの部位。
zone 4:肺動脈圧>組織圧>肺静脈圧>肺胞内圧
・血流量は肺動脈圧と組織圧の差に依存。
@呼吸関連問題より
・37℃、1気圧において、血漿中の溶解する酸素の量は2.3vol%。
・1~5μmのエアゾル粒子の一部は細気管支~呼吸細気管支まで到達し,沈着する
@flow-volume曲線から得られる指標 47C27-28
・FVC(forced vital capacity):最大吸気位から最大呼気位までの努力肺活量・PEF(peak expiratory flow rate):呼気流量の最大値である最大呼気流量
・MMF(maximum mid-expiratory flow rate):75%肺気量位と25%肺気量位の2点間における平均呼気流量である最大呼気中間流量
・V50、V25:それぞれ50%、25%肺気量位における呼気流量
@スパイロメトリから得られる指標
・VC(肺活量)
・一秒量(FEV1.0)、一秒率(%FEV1)
・最大換気量(MMV)
@肺活量予測式
Baldwinの式男性:VC(ml) = (27.63 - 0.112 ×age) × Height (cm) 女性:VC(ml) = (21.78 - 0.101 ×age) × Height (cm)
こんな式は覚えられないので…せいぜい(27-0.1×年齢)×身長でいいんじゃないでしょうか。
Ex:75歳男性160cmならば3Lくらい、75歳女性150cmならば2100mlくらい。
@機能的残気量(FRC: functional residual capacity)
・定義「安静換気の呼気時に、肺内に存在する気量」簡単なスパイロメータで測定できない。
・麻酔中は15-20%↓。コンプライアンス低下による
・低下する病態:肥満、仰臥位、Trendelenburg位、腎摘位、砕石位(横隔膜頭側移動)、麻酔導入、筋弛緩薬、高濃度酸素(吸収性無気肺のため)
・上昇する病態:側臥位(ただし下側肺は低下、上側が上昇して全体としては増加)、腹臥位、高齢者(高齢者はクロージングボリュームCV>FRC *因みにCVとは…肺の下の部分の気道が閉鎖しはじめるときの肺の残気量。とくに肺気腫の早期診断に利用される。 この容積がFRCを上回ると通常の吸気でも末梢気道が閉塞する。若年成人のCVは肺活量VCの10%、65歳では40%。クロージングキャパシティCC=CV+残気量RV)
@動的肺コンプライアンス(Cdyn) 基準値は40-80ml/cmH2O
・Cdyn = VT / (Ppk - PEEP) *Ppk:最高気道内圧。
・Cdynは気道抵抗の影響を受ける。
*気管支喘息、気道分泌物増大で低下
・静的肺コンプライアンスはPpkの代わりにPplatを代入
*無気肺、肺水腫、気胸、胸郭の外的圧迫、胸水貯留で増大
@肺の代謝
・肺循環で除去される:ノルアドレナリン、セロトニン、ブラジキニン、ATP、ADP、AMP、プロスタグランジン(E1,E2,F2α)、ロイコトリエン
・殆ど影響なし:アドレナリン、ATII、バゾプレッシン、イソプロテレノール、ドパミン、ヒスタミン、PG(A2, I2)
・生体内変化受ける:ATI(→ATIIに)
@酸素療法 47C23-24
・リザーバ付きフェイスマスクの酸素:6Lで60%、7Lで70%、8Lで80%、9-10Lで≧80%
・単なるフェイスマスクの酸素:5-6Lで40%、6-7Lで50%、7-8Lで60%
・鼻カヌラ:1Lごとに4%。6Lで44%
@呼吸関連過去問など
・動脈血と混合静脈血のCO2含有較差は約4vol%
・血漿中の重炭酸イオンは炭酸分子の約14000倍存在
・呼吸性アルカローシス→低カリウム血症→ジギタリス中毒
@酸塩基平衡
・α-stat:37℃で測定し体温補正を行わない方法。生物は低体温下においてpHが上昇し、Paco2
が低下するのは正常な反応であるとする考え方。
・pH-stat:患者体温に補正した後に、全ての温度でpH=7.40を正常とする管理。
・血ガス測定時のHb酸素飽和度の変化は0-42℃では2%未満
・CO2の運搬の70-80%は重炭酸イオンとして、15%はカルバミノの結合で運搬される
・動脈血と混合静脈血のCO2含量較差は4vol%
・Bohr効果:血中CO2含量↑ → HbのO2との親和性は低下、組織で酸素を遊離しやすくなる。
@反射
・Bainbridge反射:心房後壁大静脈、右心房中隔、肺静脈心臓部などで静脈還流量が増加し、機械的に引き延ばされ、伸展受容器が興奮→迷走神経心臓枝の求心性神経を介して反射→心拍数↑ 心拍出量↑
・Bezold-Jarisch反射:心機能を抑制する反射。左室伸展受容器刺激→迷走神経無髄C線維→交感神経抑制と副交感神経刺激(徐脈、血圧低下、冠動脈拡張)。脊麻時の極端な徐脈の原因と考えられている。
・Hering-Breuer reflex(肺伸展反射):肺膨張→気管支平滑筋の伸展受容器が興奮→迷走神経→延髄背側の吸気中枢の抑制→呼気が起こる
・Aschner反射:眼球心臓反射のこと。眼球圧迫刺激→三叉神経第1枝(求心路)→延髄(反射中枢)→迷走神経にふくまれる副交感神経線維(遠心路)→徐脈、血圧低下。
・頚動脈小体:主にPaO2の低下に反応して呼吸中枢刺激 (頚動脈小体についてはJ Anesth (2002) 16:298–309やN Engl J Med 2005;353:2042-55.やAnesthesiology 2010; 113:1270–9.参照)
@固有名詞がついた~~の法則
・Gay-Lussac:気体の体積が一定の時、温度上昇で圧力上昇
・Fick:分子の拡散速度は濃度勾配に比例
・Graham:分子量が小さいほど、拡散が速い
・Coulomb:2電荷間に働く力は、電荷が大きいほど強くなる
・Henry:液体に溶ける気体の量は分圧に比例
・Boyle:温度一定のとき、圧力と体積は反比例
・Charles:圧力一定のとき、体積は温度に比例
・Hagen-Poiseuille(ハゲン・ポアズイユ)の式:流量は両端の圧較差に比例する
Q=ΔPπr4乗 / 8ηl
Q:流量、ΔP:圧勾配、r:円管の半径、η(エータと読む):粘度、l:管の長さ
つまり・・・圧勾配と半径の4乗に比例、し、粘度と管の長さに反比例
注意:この式は層流の時に成立。乱流になると(Reynolds数が2000を超えると)適応できない
@アドレナリン受容体
・Gタンパク共役型受容体
アドレナリン受容体は現在α1、α2、βの三種類と、更に3つずつのサブタイプに分類
α1(α1A、α1B、α1C):血管収縮、瞳孔散大、立毛、前立腺収縮、子宮収縮
α2(α2A、α2B、α2C):血小板凝集、脂肪分解↓、インスリン分泌↓(膵臓 49A49)のほか様々な神経系作用
・α2刺激薬(デクスメデトミジン)によって局麻の作用時間↑、終末からのノルアドレナリン放出↓→血圧低下(延髄網様体副外側部のα2受容体を介した間接的なもの?) 49A2
*但し投与初期には血管平滑筋のα2刺激で血管収縮→血圧上昇なので注意
β1:心臓に主に存在し、心収縮力増大、脂肪分解活性化
*ドブタミンはβ1刺激が主。イソプロレノールもβ1刺激が主。ノルアドレナリンもβ1>>β2 (勿論α1激)
*エピネフリンは低濃度でβ(1も2も)刺激、高濃度でα刺激が強くなる。
β2:気管支や血管、また心臓のペースメーカ部位にも存在。気管支平滑筋の拡張、血管平滑筋の拡張(筋肉と肝臓)、子宮の平滑筋弛緩(切迫早産予防のリトドリンはβ2刺激薬)、各種平滑筋弛緩や糖代謝の活性化(インスリン分泌↑)、胆管拡張
β3:脂肪組織、消化管、肝臓や骨格筋に存在する他、アドレナリン作動性神経のシナプス後膜にもその存在が予想される。基礎代謝に影響を与えているとも。
@アセチルコリン受容体
・α2個、β、δ、εの4種5つのサブユニットから構成される
・胎児型(神経筋接合部外)ではεサブユニットの代わりにγサブユニットが存在。
・胎児型ACh受容体では、ACh放出は短時間の活性化のみ。脱分極性筋弛緩薬に感受性↑、非脱分極性筋弛緩薬に抵抗性高くなる。
・シナプス前膜のACh受容体は正のフィードバックに関与
・非脱分極性筋弛緩薬は、αサブユニット少なくとも1つをAChと競合して占拠
・ACh分子が2個のαサブユニットを占拠すると形態変化が起こりイオンチャネルが開口
・受容体が脱感作されると神経筋接合部の安全域が減少する
@ドパミン受容体
・DA1Rは交感神経末端のシナプス後に存在。DA2Rはシナプス前に存在
・DA1R:腎・腸管・冠血管の血管平滑筋に作用。拡張。尿細管のDA1RはNa利尿に関与
・DA2R:NAやおそらくAChの遊離を抑制。中枢のDA2Rは悪心・嘔吐に関係。ドロペリドールの制吐作用に関係(ドロペリドールはDA1RにもDA2Rにも作用)
@オピオイド受容体(μ、δ、κ)
・呼吸抑制:μ *κに呼吸抑制なし 48A14
・精神刺激:κ
・鎮静:μ、κ
・利尿:κ
・消化管運動低下:μ、κ
・プロラクチン分泌↑;μ
・成長ホルモン分泌↑:μ and/or δ
・アセチルコリン分泌↓:μ
・ドパミン分泌↓:δ
@分布容積 47A2, 47A10他
Vd=X/C (X:体内薬物量…急速静注時は投与直後の薬物血漿濃度、C:血中薬物濃度)
@アンギオテンシンII
・肺で代謝受けない
・陣の輸出細動脈に作用して血管収縮
・下垂体後葉からバゾプレッシンの分泌促す
・アルドステロン分泌促す
・近位尿細管でNaの再吸収増加、塩と水の貯留もたらす。
・交感神経終末からノルエピネフリン遊離促進
***モニタリング関係***
@パルスオキシメータに関連して
一酸化炭素ヘモグロビン存在下では、940nm(赤外光)における吸光度は最低を示し、660nm(赤色光)における吸光度は酸化ヘモグロビンと類似するため、酸素飽和度は過大評価される。
・メトヘモグロビンは800-900nm付近の吸光度が高く、大量に存在するとSpO2 85%に収束。
SaO2>85%で過小評価
SaO2<85%で過大評価
・メチレンブルー:有意に↓↓↓数分
・ICGとインジゴカルミン:一過性低下
・マニキュア:青が一番影響大きい。僅かに低下
@脳波
・2.5MAC以上のイソフルランで脳波は平坦化
・低用量ケタミンでα波の消失
・フェンタニルは50‐70ug/kgで徐波化、δ波振幅増大。てんかん大発作様の神経興奮性反応を伴う場合あり(低濃度フェンタニルでは脳波は殆ど変化しない 49A31)
・バルビタールは:低濃度では・・・僅かに高振幅化、前頭葉β速波化、中等度では・・・前頭葉α紡錘波、高濃度で・・・全般性δ 高振幅→群発抑止→平坦脳波
・プロポフォール:少量で・・・α消失、低振幅前頭葉β↑、中等量で・・・前頭葉δ、waxing/waning α、大量で・・・バルビタールと同じ
・ドロペリドール(意識あり):周波数低下、ときに徐波化
・群発抑止(+)の薬剤:イソフルランとエンフルラン>1.5MAC、セボフルラン>1.2MAC、大量投与のバルビツレートとプロポフォール
・ベンゾジアゼピンで群発抑止は起こらない。
・覚醒時脳波はβ波(>13Hz)主体、閉眼でα波(8-13Hz)が後頭葉優位に。
*因みにθ波:4-7Hz、δ波<4Hz
・脳幹聴性誘発電位でV:外側毛帯、VI,VII:下丘由来。笑気はこの電位に殆ど影響なし
・ケタミン0.25-0.5mg/kgではBIS値は変化しない
・70%までの笑気はBIS値に殆ど影響なし
@神経筋モニタリング
・TOFは脱分極性筋弛緩薬では減衰なし。原則1.0を示す。phase IIブロックでは低下する
・ACh受容体占有率、は低いほど筋弛緩効果が弱い(低いほど正常な筋力に近くなる)
・受容体占有率50% ≒ TOF 0.85となる。以下の状態で占有率50%
・100Hzのテタヌス刺激5秒で減衰なし *50Hzのテタヌス刺激5秒間維持、は占有率70%
・最大吸気力が-40cmH2O
・仰臥位で5秒の頭部挙上
・ベースラインと同程度の握力
・舌圧子を保持できる咬力
*テタヌス刺激:通常50Hzで5秒。正常では筋収縮が維持されるが、非脱分極性筋弛緩薬投与下やスキサメトニウムによるPhase IIブロックでは減衰fadeが認められる。理由:テタヌス刺激を持続していると、それまで神経終末から大量に放出されていたAChの貯蔵が少なくなって枯渇するため。非脱分極性筋弛緩薬によりACh受容体が占拠された状態では、筋収縮の減衰が認められる。48A17
他に重要なのは…(( )内はACh占有率)
・TOF 0.7(60-70%)
・触診上double burst刺激で減衰なし(60-70%)
・触診上TOF減衰なし(70-75%)
・肺活量20ml/kg(70%)
・1回換気量 5ml/kg (80%)
・TOF70%から90% までの自然回復に15分かかる
***解剖など***
@上気道解剖
・上喉頭神経(迷走神経)内側枝:喉頭蓋喉頭面(喉頭蓋咽頭面は舌咽神経)や声門上粘膜の知覚
・上喉頭神経外側枝:声門下粘膜前面の知覚、と、輪状甲状筋(内転)の運動
・下喉頭神経(反回神経):声門下粘膜の知覚、声帯ヒダの知覚、甲状披裂筋等の筋肉
・声門開大:後輪状披裂筋(後筋)
・声門閉鎖:甲状披裂筋、外側輪状披裂筋(側筋)、披裂筋(横筋)
*輪状甲状筋は声帯伸展や緊張作用
・喉頭反射は上喉頭神経→中枢→下喉頭神経→主に甲状披裂筋作用により声門閉鎖
*喉頭痙攣には上喉頭神経が関係している
*上喉頭神経ブロックは舌骨両端の尾側組織より施行。喉頭蓋下面から声門までの麻酔になる 48B28
@泌尿器系の解剖 、疼痛伝導 48A73
・腎:T10-L1
・精巣:T10-L1
・尿管:T10-L2
・膀胱:T11-L2(膀胱頂部)、S2-S4(膀胱頸部)
*閉鎖神経は膀胱下側壁、膀胱頸部、外側前立腺部尿道に隣接して走行
・前立腺:T11-L2, S2-4
・陰茎:S2-4
・陰嚢:S2-4
@頭蓋底の孔
中頭蓋窩
・視神経管:II,眼動脈
・上眼窩裂:V1、III,IV,VI,眼静脈
・正円孔:V2上顎神経
・卵円孔:V3下顎神経、小錐体神経(舌咽神経→鼓室神経の延長)
・棘孔:中硬膜動脈、下顎神経硬膜枝
・破裂孔:上行咽頭動脈硬膜枝、導出動脈
・頚動脈管:内頚動脈
・茎乳突孔:顔面神経、後耳介動脈
後頭蓋窩
・内耳道:VII,VIII(内耳神経)、迷路動静脈
・頚静脈孔:S状静脈洞、下錐体静脈洞、IX、X、XI
・舌下神経管:XII、上行咽頭動脈硬膜枝
@成人の気道解剖 49A69他
・甲状軟骨上縁:C4 下縁:C5
・輪状軟骨:C6
・気管:C6(声門)からT4-5の気管分岐部まで。成人では15cmある。C型の軟骨20個
・声門から輪状軟骨下縁まで2cm。気管は10-13cm。 *満期産新生児の気管長は4cm。 47B26
・右主気管支は2.5cm(角度25°)、左主気管支は5cm(45°)
・気管分岐部前には肺動脈がある。
@腕神経叢ブロック
・母指尺側側副靭帯損傷の修復術の麻酔:
前腕橈側は筋皮神経の枝(前腕外側皮神経)が支配。手関節より末梢側まで支配していることがあるので、同部の手術時には筋皮神経をブロックしたほうが良い。(鎖骨下ブロックで外側神経束である)
・ちなみに正中神経(手のひらの第1指から薬指の橈側まで、と背側は第1指~4指の先端部分)は:外側、内側神経束が合流
・橈骨神経(母指球部と背側の手の皮膚環指半分まで):後神経束
@その他の雑駁な知識
・Le Fort I型骨折は上顎骨骨折
・Le Fort II型は上顎骨+眼窩底+鼻骨骨折 → 気道閉塞や複視
・Le Fort III型は上記+前頭蓋底 → 髄液漏、 気道確保問題に
・舌の支配神経:
温痛触覚の前2/3は三叉神経、後1/3は舌咽神経
味覚の前2/3は顔面神経、後1/3は舌咽神経