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2010年7月17日土曜日

東京麻酔専門医会リフレッシャーコース(day 1)

朝から太陽が照りつけていた。会場に着くころには汗だくに。本リフレッシャーコースに参加するのは今年で3回目。百数十人いただろうか。この3回の中で1番参加者が多かったように感じた。3000円で2日間の講習。受動的態度でも知識のアップデートが出来る。自分からはなかなか勉強する気になれないようなあまり興味がない領域の知識も入るので非常に有意義な1日であった。改めて自分の不勉強を思い知らされる。

◎小児麻酔関係
レミフェンタニル(以下RF)について
・子供でもcontext sensitive half timeは3-6分
・小児での使用注意点
 ・投与時の死腔をできるだけ少なくする。体になるべく近いところから
 ☆逆流防止弁をつける
・皮切時に必要なRFの投与量は成人の2倍(Anesthe 2002; 97: 1142)
・アトロピンの前投与が心拍数の過剰な減少を予防する、ようだ。追加投与は多くの場合必要ない
・分布容量・クリアランスとも成人より大きく、十分な量を投与することが可能
・麻酔導入時にRF使用するときは、予め十分量の鎮静薬を。筋硬直予防に
・RFは容易に胎盤通過。速やかに再分布するため、代謝されるため新生児に臨床上の影響はなさそうである
・caudal additives in Children (BJA 2003)
  ・術後鎮痛の延長に仙骨硬膜外に麻薬追加。Morphine30μg/kg 効果10時間。呼吸抑制は30-40μg/kg以下では稀。フェンタニルは効果延長不確実なので使用しない

◎慢性疼痛に対するオピオイド
☆患者の選定が極めて重要。心因性の慢性疼痛症例には禁忌
・依存「脳の疾患であり、きっかけは自発的だが、一度依存に陥ると、薬物のコントロールは完全に破綻する。」 
・米国では・・・マリファナ、pain relieverが依存の主因
・レオンのゲーリー・オールドマン、ダークナイトのヒース・レジャー
・ドイツでは・・・慢性疼痛およびオピオイドの適切な知識や経験を持った医師がオピオイドを処方していれば、乱用・依存患者は稀。 Pain Pract 2006; 6: 254-64によると依存発症率は0.2%
・to cure sometimes, to relieve often, to comfort always
☆米国老年医学会JAGS 2009; 57: 1331-1346では鎮痛薬の第一選択がアセトアミノフェンで、NSAIDsに関しては最大限の注意を払って厳選された人のみ使用されるべきと勧告。
☆オピオイド常用者の麻酔注意: 導入時の誤嚥に要注意(消化管運動が抑制。術前絶飲食時間は長めがよいかもしれない)、RF使うなら多いほうがよさそう

◎局所麻酔の神経毒性
・心毒性:ブピバカイン>レボ=ロピバカイン>リドカイン
・神経毒性:リドカイン>テトラカイン>>ブピバカイン>レボブピバカイン>ロピバカイン
・アナフィラキシーはアミド型局麻では100万に1人と極めて稀
・エステル型は代謝物のパラアミノ安息香酸が化粧品添加物のメチルパラベンに似ているためアナフィラキシー起こしやすい
・痙攣発症時には・・・
 ・prf0.5-1.5mg/kg, MDZ 0.05-0.1mg/kg, ペンタール 1-2mg/kg
 ・ACLS
 ・イントラリピッド 1.5ml/kg (およそ100mlをdrip) → 0.25mg/kg/min 必要に応じて追加。最大8ml/kg
・1898世界初のコカインくも膜下麻酔(Bier) 
・1900日本初の脊麻(北川乙治郎、東良平)
・NaV1.5(心筋のナトリウムチャネル)はテトロドトキシンに抵抗性。ふぐ毒にはとりあえずmouth to mouthを
・脊髄くも膜下に局麻を過量投与すると神経毒性がおこる。
・root entry zoneのoligodendrocyteによるミエリン鞘が最も脆弱
・Naチャネル遮断は神経毒性には関与が少ない
☆神経障害を避けるためには以下を考慮
  ☆血管収縮薬は添加しない
  ☆投与量は最小限にする。リドカインは60mg以下。ブピバカイン、テトラカインは1A以下にする。(テトラカインは24mg投与で馬尾症候群の報告がある)
  ☆薬液注入前後で、髄液逆流が確実であるのに麻酔域の広がりが予想に反して仙髄、下部腰髄に限局している場合には脊麻のやり直しを避けるのが無難
  ☆砕石位は要注意。砕石位→root entry zoneの牽引→傷害増悪→TNS(transient neurologic symptoms)
・馬尾症候群の率:5/40640(Auroy Y, et al. 1997) 3/35439(Auroy Y, et al. 2002)3人ともtransient

◎迅速導入(スペリングはcrushではなくcrash)
☆挿管困難、換気困難が予想される場合にはそもそも禁忌といえる
・輪状軟骨圧迫はSellick法は頚部伸展位でやるのが、本来の方法。
・患者に意識がある内は約1kgで、入眠後は3kgで圧迫。圧は計量計などで測定して練習してみよう
・サクシニルコリン(SCC)は100mg投与で無呼吸平均4.5分。自発呼吸が戻るから、という理由で迅速導入に使用するのは合理的ではない。自発呼吸が戻るより低酸素になる方が早い
・SCCは血清コリンエステラーゼ値が低いと無呼吸が遷延する