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2010年7月24日土曜日

超音波ガイド下神経ブロックワークショップ

重要なメッセージ「意識が安全域をつくる」

・超音波ガイド下でも針先見えていないレジデントが43.7%いる ― Reg Anesthe Pain 2007; 32: 107
☆糖尿病患者では神経刺激のsensitivityが異なるので刺激装置の反応を過信しないよう注意
☆施行以前に神経支配領域の知覚・運動障害の有無を確認。しっかりカルテに残す
・神経損傷の可能性を常に意識
・基本的には抗凝固療法中にはやらない
・超音波画像は「実際の解剖を想像して」みる
・プローべを持つ手は患者や手術台等どこかに固定し、画像がぐらぐら揺れないようにする
・プローべはゆっくり動かす。ゆっくり過ぎるくらい

◎斜角筋間ブロック
・リニア、高い周波数10-15MHz, 深度2-3cm
・鎖骨上(鎖骨中点より少しだけ外側)にあて、上にずらしていく
・針は外側から刺す、刺入は脊椎に垂直方向には行わない―くも膜下穿刺や椎骨動脈穿刺の危険性
・カテ挿入時には針先端から3cm以内にする。硬膜外腔や胸膜内に迷入しないよう。薬液は0.15‐0.2%ロピバカイン4ml/h程度
☆神経障害発生率が他部位に比べて高い(2.83% ― Anesth Analg 2007; 104: 965)。神経外膜内に薬入れるときには注入抵抗が高いので要注意。最初の局麻の量は少量で。画像とparesthesia有無をしっかり確認する
・ブロックは覚醒下、もしくは軽い鎮静下で。全麻ではやらない ― Reg Anesth Pain Med 33:404,2008

◎腋窩アプローチ
☆神経分布は個人差が大きいのでプレスキャンをしっかりと
・患肢は90°外転、術者は頭側に立つ
・深度は3cmくらい
・プローべは大胸筋付着部外側。体軸に平行に
・腋窩動脈(以下A)は画面真ん中におく
・刺激装置は併用
・橈骨神経はAの下側から狙う。橈骨神経を正中・尺骨神経より先にブロックすると、腋窩動脈が画面下方向に沈み込まずやりやすい
・薬液はそれぞれの神経に7ml程度
・筋皮神経は上腕二頭筋と烏口腕筋の間。他の3神経より離れているので、針の角度を立てて狙う

◎大腿神経ブロック
・バリエーションが多い
・薬液は腸骨筋筋膜の下のコンパートメントに入れる
・プローべ位置は大腿動脈が分枝するちょっと中枢側。鼠径溝から1cm下くらい
・カテ入れる際は局麻注入後、交叉法で尾→頭側方向に。10-15cm程度。3 in 1になる。針糸固定せずテープ貼るだけでOK
・神経刺激装置併用時には薬液3ml注入程度で大体動き止まる
・刺激装置で0.5mAで反応あっても違うコンパートメントに入ることあり。超音波で確認
・持続の場合:0.15-0.2%ロピバカイン6ml/h

◎坐骨神経 膝上外側法
・深度4cm程度
・外側広筋と大腿二頭筋の間から刺入
・0.3%ロピバカイン20ml
・神経刺激0.2mAで反応あるのは危険。神経内かも。
・逆に神経刺激しても反応でないこともあり。その際は超音波で確認
・坐骨神経が分りにくければ足首を動かしてもらうと神経動く


これまで合併症に出会ったことがないのはブロックの施行回数が少なかったせいという理由だけかもしれない。神経障害は術後のQOLを著しく低下させるであろう事を想像すると、エコーで見えていれば安全と言うわけではないことを肝に銘じて日々の臨床に応用したいところ。