ブログ「ハーバード大学医学部留学・独立日記」
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の管理人であり、麻酔科医である島岡要先生が2009年に出された本書は研究者向けの指南書という側面からも、「医師の自己啓発書」という点からも優れた著作である。自分自身のキャリア形成の参考になればと思い2009年に購入したが、時折本棚から出しては読んでいる。
・研究者として仕事をすべき10の原則
・中・長期的な時間管理術(p53には有名な「7つの法則」の「to doの4領域分類」も登場します)
・批判され/批判して自分を磨く「フィードバック力」
・変化に対する苦痛・恐怖を克服する
などの文字に興味を惹かれる人であれば、購入して読む価値がある本だと思う。
特によいと感じたのは第2章(その2)の「好きよりも得意にこだわる仕事術」の部分。
SBA(Strengths- based approach)仕事術という表現が出てくるが、「人は強みのある分野に最大の成長の可能性がある」という考え方がその根底にある。何でもそこそこな平均点レベルより誰にも負けない強みがあった方が仕事のパフォーマンスを圧倒的に高い、という理論は確かに合点のいくものである。
自分が好きなことと得意なことは必ずしも一致しない。「好きではなく得意にこだわれ」というのがメッセージである。趣味なら「好き」レベルでとどまっていてもよいが、仕事は相手ありき、成果ありきなのだから、好きだの嫌いだのは二の次である。パフォーマンスと結果が仕事の評価の大部分を占める以上、これは仕方ないことなのである。好き=得意なら最高だが、得意にこだわるうちにコンスタントにいい結果がだせるようになる自分およびその領域を「好き」になる可能性、そして更に誰も容易には到達し得ないレベルにまで上がる可能性は十分あるだろう。
・自分の専門領域の特殊を極めることを通して見えてくる普遍性を見抜く能力が必要
・プロフェッショナルが専門バカに陥らないようにするために大切なことは、専門領域以外の知識を深めることではなく、自分の専門を深める過程で普遍性を見失わないことなのです(ともにp37)
本書のもう1つ優れた点は参考文献に多数の自己啓発書をのせているところ。これらに当たれば更に、思考の幅が広がることと思う。
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弱点を補強し続けるのは推奨されない。職業人として何でもそつなくこなすレベルは必要。だがそれ以上の技術を全ての領域で供給し続けるのは時間の制約から困難である。ここでいう弱点とは麻酔を習いたてのレジデントが「分離肺換気は苦手だから上手くならなくてもいいや」と諦めることでは勿論ない。プロの麻酔科医として、現在の臨床麻酔の水準から大きく下回ったものを提供するのは仕事をして賃金をもらう者としては論外である。イメージとしては70点(60点を「まぁ普通の管理だね」といわれるレベルと仮定した場合の話)をベースとして、1つの知識・技術において「~先生に聞けばいい」と思われる「強み」のある存在になることが近道かもしれない。
1つの仕事集団の中でも得意不得意は人それぞれである。強みの発見の手助けになるか不明ではあるが、本書でも参考文献に挙げられている
「さぁ才能に目覚めよう ― マーカス・バッキンガム」
という本は非常にユニークである。既に勝間和代氏の著書やブログ、その他様々なところで紹介されておりビジネスパーソンでの認知度は高いようである。本のカバー裏にIDが刻印されていて、それをウェブサイト上で入力すると「Strength Finder」が開始される(島岡先生の著書でもp41で紹介されている)。簡単な質問の繰り返しに答え続けると、34ある「自分の強み」のトップ5を教えてもらえる。
但し、使用済みのIDで2回以上のテストはできないので、中古本で買うとテストできない可能性があるので注意。
私が2009年初頭にテストした時の結果は以下の5項目であった。
1.内省
2.学習欲
3.調和性
4.慎重さ
5.達成欲
活発性や社交性が私の強みのトップにくる筈もないが、結果は想像通りだったので結構信頼できるテストだと思う。内省が1位にくる人もあまりいなそうであるが。兎も角、占いを受けるより安くて正確な気がする。
ちなみにこのブログのタイトルは上位2位の自分の強みからとってみました。