ギリシャアテネのシンフォニック・デスメタルバンドのスタジオ8作目。活動期間は1990-2003、一度休止して2007年から活動再開。オケパートはチェコのプラハ・フィルハーモニックオーケストラのようです。Septicfleshを聴くのはこのアルバムが初めて。「敗血症のお肉」なんて麻酔科医が一度聴いたら忘れられないバンド名です。
アルバムジャケットからして禍々しく只ならぬ雰囲気ですが、内容も全くそれに引けをとらない強力なものになっています。
Stratovariusの「Destiny」のイントロのような美ソプラノヴォイスから、冷酷無慈悲な重金属サウンドにあっさり道を譲ってしまう#1で一気にSepticfleshの世界に引き込まれます。
オーケストラと共演しているので、近年のDimmu Borgirが好きなメタルファンにも取っつき易いところだと思いますが、といってもDimmu Borgirのようなポップさや色気はなく、オケもヴォーカルもリフも、ただただ冷たい音像になっています。ですが非常に聴きやすい。ミドルテンポ~やや速い曲が多く、それでも飽きのこない、聴かせる内容になっていますので、メロディが良いためだと思います。そして何といっても何といっても排水溝に吸い込まれていきそうな歪んだヴォーカルがたまりません。
全体的な音像としては、今夏、私が大いにハマったFleshgod Apocalypseの「The Agony」をパワーはそのままに、ちょっと禍々しくしてメリハリつけて暗~くしてみました、という感じでしょうか。
宗教曲のように荘厳なコーラスが眩しいドラマティックメタル#2は一番人気がでそう。初心者に優しい(つまりブラックメタルやデスメタルに何度かチャレンジしたけどその度に挫折するような私のような人間に優しいということ)取っつき易い正統派メタル寄りなのは#3, #7あたりでしょうか。オーケストラをフィーチャするバンドの曲は長尺になりがちなのですが、このアルバムは1曲1曲がコンパクトになっていて、アルバム通しても43:35ですので、そこも高評価。また、オーケストラ自体がメインになるわけでもなく、あくまでも曲を構成する一つの部品のように作用しているので、「俺はオーケストラじゃなくてメタルが聴きてぇんだよぉ」と宣(のたま)う方々にも大いにアピールしそうです。
1. "The Vampire from Nazareth" 4:08
2. "A Great Mass of Death" 4:46
3. "Pyramid God" 5:13
4. "Five-Pointed Star" 4:33 本作の中では疾走している方ですね
5. "Oceans of Grey" 5:11 女性ソプラノと排水溝ヴォイスとオケの絡みが絶妙。今のところ一番好き
6. "The Undead Keep Dreaming" 4:29 呪われそう。
7. "Rising" 3:16 一番ふつーのメタルっぽい曲。ギターリフにしても歌にしても。ちょっと浮いてるかも
8. "Apocalypse" 3:55
9. "Mad Architect" 3:36
10. "Therianthropy" 4:28
全編通して時々顔を出すクリーンヴォーカルがX JapanのHIDEみたい…に聞こえるのはおそらく私の耳がおかしいせいでしょう。
1曲1曲が素晴らしく、色分けする意味は乏しいです。これといってスキップしたい曲も見当たらず、アルバムとして高評価したい。もっと日本でも売れてもよさそうです。たった1000円で覗ける魔界ワールドなのに。
また過去の作品に遡って聴かなくてはならない要チェックバンドが増えたのは嬉しいことなり。