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2011年10月6日木曜日

(音) 人類最凶鋼鉄盤、CryptopsyのNone so Vile (Canada, 1996年)

3日続けてデスメタルです。別に強化週間でも嫌がらせでもありません。

Elisabetta Sirani作「Herodias With the Head of John the Baptist」の芸術的な生首ジャケットと裏腹な、もしくはそのまんまな強烈テクニカル・デスメタルアルバムです。バンドの2ndアルバム。この作品について今更私みたいなひよっこが何を付け加えることもなく、そして、デスメタルという肩書きも不要なクリプトプシーワールド全開な一作です。

そういえば、よく、「墓場に持っていきたいアルバム」っていうのを聞きますが、私ならその何作あるか分からない作品のうちの1作に本作を挙げます。ほら、アルバムジャケットも生首だしちょうどいいんじゃないでしょうか。

そういえば、よく、「俺の葬式にはこの曲を流してくれ」っていうのも聞きますが、私なら本作の「Phobophile」を流して欲しいです。大音量で。ですが無理でしょうね。ピアノのイントロは皆さん静かに聴いてくれるでしょうけど、0:34~あたりからなんかおかしいな~と思い始めて0:49~で怒髪天でしょうね。もし参列者に高齢のお婆様がいたらVFを起こすかも知れません。自分の葬式でACLSをしてもらいたくありませんし、ましてや死んでまで人様に迷惑を掛けたくありません。やっぱなしなし。それよりも自分が70,80歳まで生きるとして、その時もPhobophileを聴いているのでしょうか。それこそ謎です。髪はとっくに抜け果ててるでしょうから、スキンヘッドでヘッドバンキングするんでしょうか。環軸椎亜脱臼で四肢麻痺になりかねませんね。

そういえば、よく、手術室で音楽が流れていますが、このアルバムを聴きながら弓部置換術とかできる外科の先生っているんでしょうか。ABBAとかCarpentersとかThe BeatlesとかMozartとかなら分かりますが、この転調に転調を繰り返す複雑怪奇ヘドロ系デスメタルを聴きながら手術できる(しかも普段の1.5倍くらいの速さと巧さで)外科医に死ぬまでに一度でいいから会ってみたいです。あぁ、でも執刀医だけ好きでもダメだろうな…執刀医&前立ち&器械出し看護師&外回り看護師が全員このアルバムを気に入る(気に入らないにしても毛嫌いしない)確率なんて限りなくゼロに近い…。そして、もしそうだったとしても、それはそれで嫌だ。「ちょっと!!今の”Graves of the Fathers”の絶叫、聞き逃したからもう1回リピートしてよ!!」みたいな会話が日常的に行われる手術室ではやはり働きたくない気がします。矢張り、これは妄想にとどめておこう。

初めから脱線してしまいましたが、美麗なピアノのイントロから一気に阿鼻叫喚な奈落の底に叩き落される#6は、このアルバムの中で一番のハイライト、かつメタル史上に燦然と輝く名曲です。

本作品では一番長い#8。その最後も聞き流しちゃまずいです。

「go ahead and run! run home and cry to mama!」

というセリフはこれまたホラー映画のゴールデンタワー、「死霊のはらわた3」から取られております。サム・ライミ監督の「死霊のはらわた」好きにはたまらないのでありました。スパイダーマンシリーズだけでサム・ライミを知ったと思ってはいけません。サム・ライミといえば「死霊のはらわた」。

話がずれましたが、私的に名盤と考える理由は、デスメタルというものに殆ど免疫のなかった大学2年生の頃に、この作品に初めて出会い、そしてそのまま一度の拒絶反応もなく、今日まで折々に愛聴しているという事実、そして聴けば聴くほどその偉大さに心から敬服するからです。そしてまた、ヴォーカル、ギター、ベース、ドラムのそれぞれの音がよく分離されていて(そしてどの音も馬鹿でかく五月蝿い)非常に心地よい。ごもごもめにょめにょ、と絡みつくようにくぐもったサウンドというものもこのジャンルではよく見かけますが、本作はその対極で非常に自分好みなプロダクションになっています。まぁ楽器と声が分離されていても、ヴォーカルは「ヴォエェヴォヴォ、ヴォヴォォッォォォヲ、グァー」としか聴こえませんし、歌詞は全くナンセンスです。私は初期にこそ、何度か歌詞を見て、どこを歌っているのか追って見ましたが、一度として成功しなかったので、もうとっくに諦めました。Septicfleshが排水口ヴォイスだとしたら、こちらは下水道ヴォイスです。勿論褒めてます。

1. "Crown of Horns" – 3:57 2:55-のちょいギターソロがグッド
2. "Slit Your Guts" – 4:02 一般受けが最も期待できるポップデスソング。0:53-、3:05-のギターソロがグッド
3. "Graves of the Fathers" – 4:11
4. "Dead and Dripping" – 3:53
5. "Benedictine Convulsions" – 4:00
6. "Phobophile" – 4:38
7. "Lichmistress" – 2:31
8. "Orgiastic Disembowelment" – 4:51

当然全曲素晴らしいのですが、そんな中でも特に素敵なのが上記3曲。8曲あわせても全部で32:04しかありません。ですが、音が濃密過ぎて、聴き終えた時の疲労感、徒労感は恐らくその何倍もあるでしょう。デスメタル初心者は「俺の耳って意外にスゲーじゃん」と大いなる達成感とともに涙を流すでしょう。
このアルバムの音塊を、ただの雑音ではなく極めて高次元で整合性の取れた、美しいアンサンブルだと思える日がくれば、それはデスメタルへの大いなる入り口です。歌詞が聞き取れなくても、そもそも人の発する声なのかどうかが分からなくても伝わる感動、というものがここには確かに存在します。

「あぁ、歌って別に人間の言葉で歌わなくてもよかったんだ」

私が、デスメタルを聴き続ける理由の一つは、この作品の衝撃とレベルの高さを凌駕するものに、いつの日か出会えるかも知れない、という淡い期待感からかも知れません。いつか、徳永英明の「VOCALIST」シリーズで「Phobophile」がカバーされる日が来ることを夢見て、今日は終わります。

心臓が弱い人は要注意。

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