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2011年10月16日日曜日

(麻) 麻酔科専門医認定試験・口頭と実技試験 ~ A homage to Prof. S

麻酔科専門医認定試験を受けた方であれば、「俺はどんな問題でも完璧に答えられるぜ」という一部の奇天烈な麻酔科医を除いて、み~んながお世話になったであろうwebサイトに最大限の敬意を払い、私の受験記を掲げてみたいと思います。
間違ったことを言っている箇所もありますが、可能なかぎり再現してみました。最早、記憶の彼方ではありますが。

***
12時40分に集まって以後私語厳禁。13時過ぎに誘導されてエレベーターで8階の会場へ。薄暗く長い廊下の左右に椅子が点々と置かれ、試験のお手伝いをしてくださる女性たちが各部屋の前に座っている。なんだかなぜだかいつかどこかでみた映画のワンシーンみたいだ、とぷちぷち感動して、なんだか「マトリックス」が見たくなってきたなぁ。と思っているうちに自分の椅子に誘導され着席する。

前情報通り、5分間の問題文読みとメモ記載。しかし、書くことがない。
「書ける」ことがない。
5分って意外に長い…。

部屋に通されると右に男性、左に女性の先生が座っている。

1問目
70歳の女性が転倒して大腿骨頚部骨折。20年来のリウマチ(RA)。大腿骨頭置換術予定になった。

A先生(以下A):問題文は読んだ?はい、じゃぁRAの方の麻酔上の問題点を挙げて下さい。
―(あ、もう始まってんのか)は、はい。ぺらぺら。(あれ、でもあんまり言うことが思い出せないや)
A:ステロイドの長期内服で注意することはなんですか。
―は、はい。(とステロイドの合併症を説明)

その後、環軸椎亜脱臼でどういう症状が出るのか、どうして出るのか、など質問。

A:はい、先生はどんな麻酔をしますか。
―私なら、抗凝固薬内服中などの禁忌がなければ、脊髄くも膜下麻酔を行います。
A:何をどれくらい使いますか
―等比重のプピバカイン(あぶね、マーカインって言いそうになった。一般名で答えなきゃ)を・・・2.4-2.8ml程度だと思います。Th10を目標に。(あ、穿刺部位も言ったほうがよかったかな…ん?もっといっぱい入れるのが好きな先生なのだろうか?そんな量でTh10まで行くか!って思ってんのかな?…表情からは全然わからない…)
A:どっち向きに?
―え、えぇと痛いので患側が天井側になるように…
A:じゃあこの方が抗凝固薬を飲んでいてね、先生がおっしゃるように脊麻ができないとします。挿管全麻でやるとして気道確保の方法を教えて下さい。
―私なら、経鼻ファイバー挿管で行います。(口が開けばAWSだけどなぁ…と思いつつ)
経鼻ファイバー挿管のやり方を教えてください。
―最初に鼻の中を麻酔します。4%リドカインとアドレナリンを混ぜて…
A:どのくらいの割合で混ぜるの
えーとリドカイン9mlにアドレナリンを1mlで10000倍にして…
A;えぇ、そんなに濃いの??それだと何倍になるの?

このあたりから離人感でいっぱいになる。あ、あれ、そんなにいれないぞ俺。
以下、何問か聴かれたけどこの時の離人感ですっかり失念する。

A:手術が終わってリカバリにいたらね、急に「胸が苦しい」って胸部苦悶感を訴え始めました。鑑別診断を挙げて下さい
―鑑別診断は
・肺塞栓
・気胸
・喘息発作
・ACS、急性冠症候群
・稀ですけど大動脈解離
あとは…麻酔中の出血過多や輸液量が少ないことによるhypovolemiaで血圧低下が原因かも知れません…あとは…
 A:(言い淀んでいたら遮られて)はい、ではどう対応するか教えてください
―まずモニターを装着して酸素を投与開始します。救急カートを持ってきてもらいます。NIBPとSpO2と心電図、あれば12誘導ECGでバイタル確認します。取り敢えずのバイタルが保たれていればポータブルのエコー装置で肋間や剣状突起下から心臓の動きを観察します。右心系の負荷があるか、左室壁運動の極端な低下があればおそらく分かると思います。同時に採血でD-dimer、これは手術の影響もあるので高くなっていて役に立たないかも知れませんが、とトロポニンT値を測定します。その後に循環器内科のDrに連絡して診察をお願いすると思います。
A:じゃぁ以上です。(B先生に対して)じゃぁ先生の番ですね。

2問目
手術不能の進行期膵臓癌の治療のために疼痛コントロール目的に入院となった。

B先生(以下B):がんの痛みの分類を教えて下さい。
―(ちーん、はい終了。痛みの分類?そんなのありましたかな?取り敢えず知っているものを並べてみよ)
…体性痛、内臓痛、侵害受容性疼痛、神経因性疼痛……があります。………後はわかりません…
B:この癌の痛みの原因を教えて下さい。
―(え?何で痛いかって?神経を刺激してるからじゃないか。)えーと、腹腔神経叢に癌が浸潤しているのと…局所の圧迫なんかによる痛みが…考えられます。…脊椎浸潤等による骨の痛みもあるのかもしれません…(あぁ沈黙が痛い。痛い。もう帰りたい)
B:この方の痛みの治療をNSAIDsのロキソプロフェンで行うことになりました。NSAIDsの作用機序を答えてください。
―(作用機序!?あぁ、そんな基本的なことを聴かないで下さい)あ、・・・・・あの、こ、こ、COXじゃなかったシクロオキシゲナーゼを阻害してプロスタグランジンの産生を抑制して…炎症を抑えたり………します。

このあたりで、B先生の隣に座っていたA先生が自分の名札をいじくりはじめる。…あぁ採点する価値もないってこと?あぁ、もうだ、だめ?だ?

B:はい、ではチンツウノゴゲンソクヲオシエテクダサイ
―(え?あぁ名札に気を取られてよく聞き取れなかったぞ、ぁあでも聞き返すと減点されるかもしれない)は、はい。決まった時間で、鎮痛薬ラダーにそって、患者さんごとに、その上で患者さんごとにきめ細かい対応を、(…あれ、4つしかない…)、あれ4つしかありませんね。
(B苦笑):あと1つは何ですか?
―あと、1つは(あれ、おかしいな…ブログに書いたぞ…何で思い出せないんだろう……)、……すいません、わかりません。
B:ではそのWHOのチンツウノ3段階ラダーを教えてください。
―はい、(これは答えられた)
B:はい、ではこの方にモルヒネを始めたとします。初期に起こりうる副作用3つを上げて対策を教えてください
―吐き気が出ます。メトクロプラミド等で対応します。2つ目は便秘でこちらには酸化マグネシウムやセンナ等で対応します。3つ目は・・・(あぁ、またワカンナイや…もう本当に帰りたい……)・・・ねむけでしょうか・・・・・・?
B(やや笑いながら):じゃあそれにはどう対応しますか?
―え、え、えとメチルフェニデートを投与すると思いますが……(お願いですから相槌なり何なりうっていただけませんか?)…教科書にはそう書いていますが、実際にそうやっているのを見たことはありません(あぁ、これ絶対余計なこと言った)
B:緩和ケアはやったことおありですか?
―(これまでのグダグダ具合から、聴かなくてもお分かりでしょうに!)は、はい。3年ほど前にペインの研修は少しやりましたが…(だって末期がんの方でモルヒネで眠気が…っていうシチュエーションに遭遇したことはありませんのよ)
B:では接遇問題です。サトウタロウさん(だったっけ?)のお兄さんが、患者さんが入院になった経緯と治療方針について聴きたいということで部屋で待っています。では部屋に入るところから始めてください。
―(え、もう始めんの?患者さんの名前なんだっけ?もう忘れちゃったよ。)

…と思うと同時に、「これまでの質問に1つも自信を持って答えられなかった人間からどんな説明をこの方々はお聞きになりたいというのか???」と「???」がいっぱい出てきて、自分が何だか出来の悪いコメディの中に迷い込んだみたいで、腹の中で思いっきり笑ってしまったのですが、もう眼の前にサトウナントカさんのお兄様がいるわけで、今笑ってしまったら「絶対落ちる」と思いつつ椅子から立ち上がり、何とか平静を装って自己紹介とお辞儀)、

―「失礼ですが患者さんとの関係は…?」
A:兄です
―では失礼して座らせて頂きます。「こ、今回の…今回の入院は…ごにょごにょごにょ、たどたどたど、、、」と説明。自分の椅子と、神様のように感じられる試験官先生方との机+椅子まで微妙に遠く、この空虚な2m超の空間が病状説明にとても不似合いで、もうなんというか完全にしどろもどろで…。それでも最後の最後には「何か質問ございますか」と付け加える。
A:あのぅ、麻薬なんてやったら、寿命が縮まるって聴いたことあるんですけど?
―(…はぁ、もう。帰りたい。帰りたい。かえろ~かな~かえるのよそぉかな~、あぁさぶちゃん)
いえ、そんなことはございません(ございませんってなんだよ)、ぺらぺら……。
(こりゃ完全に駄目だ…あぁでも、これは前情報通りの感情だ…こんな感情も再現されるなんて、なんて滑稽なんだろう)
A:はい、では以上です。お疲れ様でした。
―(もうやけくそだ。最後ぐらい元気に出ていこっと)どうもありがとうございました!!!

あーあ、あの部屋は試験官の先生以外に魔物(それも凄く邪悪な魔物じゃなくてちょっと小賢しい感じの)が住んでたな。まぁ終わったんだからもういいや。何故かScorpionsの「In Trance」のギターソロが頭の中でリフレインしつつ部屋を出て、1人反省会をする余裕も勿論ないままに実技試験の部屋へ入るよう誘導される。あいうぇいかっぴんざもーにん…あぁクラウスマイネ…私が生まれる前に出たアルバムとそのタイトルトラック。あぁ、今はどうでもいいことなのに。

…。
実技試験の部屋に入ると、試験官の先生のうち1人は、講演や雑誌でお名前を存じ上げている先生だったので(といっても、勿論、先方は私なんぞをご存じない)、なぜかちょっと気が楽になる。

C先生(以下C):口頭試験はできましたか?はい。じゃーまずそこに座って下さい。
まず最初の設問ですが…、

ショウカタイガンノシュジュツヲザイデオコナウノデスガコノマスイカンリノケツアツカンリノチュウイテンヲフタツオシエテクダサイ。

は?
なんですって?

これはさっきの部屋の悪夢の続きか???
しかし、いきなり聞き返して退場させられたりして…いきなり減点されたりして…。
あぁ、ちょっとまって下さい。日本語変換しますので…。

松果体癌の手術を座位で 行うのですが、この麻酔管理の血圧管理の注意点を2つ教えてください…
??
…あ、問題の意味がわかった!

でも、何答えりゃいいんだ??

―座位ですので、動脈圧ラインの基準を心臓の高さにします。それと脳の灌流圧がモニタの値より座位の分、低くなることが予想されますので、血圧低下に十分注意して管理いたします。(うーん、これしか思いつかないや…)

C:はい、では動脈圧ラインで管理するということですね。そうこうしている手術が始まって、しばらくしたら、突然ETCO2とSpO2が下がりました!(お、きたな静脈空気塞栓!!!!!)何しますか?
―血圧心電図バイタルを確認し、純酸素にしつつ術者に空気塞栓の可能性を告げて手を一度ストップしてもらいます。術野が乾いていたら生食等満たしてもらいます。そしてヘッドダウンにして、肺動脈に空気がこれ以上行かないように…3点品固定されてるでしょうから難しいかも知れませんが、可能ならば左側臥位にする、もしくは、ベッドをローテーションします。エアを見るために挿入できればTEEを入れ(脳外科手術の途中で入れたことなんて一度もねーぜ)、後は空気を吸引するために内頸・・・・いや術野と重なって覆布があって難しいでしょうから…大腿静脈からCVCを挿入してエア抜きを試みます。また循環破綻していたらカテコールアミンの投与経路とします。
C:はい、じゃぁこの中から(と、TEEの画像が6枚示されたA4の紙を出される)、空気塞栓を診断するためのviewを2つ選んで下さい!!
―はい、えーと、fと(普通のbicaval view)……あとaです(four chamber view)。(その他は左室60°、90°、135°経胃左室短軸像だった気がする)

C:はい、じゃぁCVC入れよう。研修医に教えるつもりでやってみて下さい。
と右首の模型に対してエコーガイド下で入れる。D先生(以下D)にエコー持っててもらえるなんて!
―まず軽度ヘッドダウンにして首を左に軽く回旋します。(エコーで血管を描出する)ここにある血管に…
C:血管の名前を教えてください
―はい、内頸静脈と総頸動脈です(どっかで読んだな。ここでは「内頸静脈」、と「総頸動脈」ときちんと血管の名称を言えることがポイントだったな…ようやく調子が出てきたぞ)。

その後はCVCを交差法で穿刺して、ガイドワイヤーを挿入して、そのワイヤーが血管内に入っていることをエコーで確認するところまでで終了。

D:はい、では次の設問に行きます。Th4の脊髄損傷の人が仙骨部褥瘡の手術を腹臥位で行う予定になりました。胸腰椎の後方固定術をしています。首も伸展できません。さぁ、経鼻ファイバー挿管を「研修医に教えるつもりで」やってみてください。
―(また経鼻ファイバーか…)まずフェンタニルで鎮静、患者さんの状態をみつつミダゾラムかプロポフォールをごく少量ずつ使用します。舌根沈下しないよう細心の注意を払いながら(って患者さんが起きているのに研修医に説明しながらやらないよ、しかもなんだ、この異様な威圧感の研修医は)。鼻の麻酔はリドカイン+アドレナリンで、消毒はポピドンヨードでします。あと、口に中をリドカインスプレーで消毒、なるべく奥のほうまで…。輪状甲状間膜が触れれば、そこから23G針で局所麻酔薬を気管内に投与します。その後、鼻から細めのチューブを…男性なら内径6.5mm程度でしょうか……をじんわりと進めていきます。無理やり突っ込むと粘膜下に迷入したりしますので…(と言っているそばからチューブが進まなくなる)。

「これはちょっと狭いので左側の鼻から・・・」とやろうとするとDが手を出してきて「この模型、ちょっと抵抗あるんですよね」とゴリゴリすすめる。(げげ!!鼻血がでるよ~~)

D:はい、そのあとはどうするの?
―え、ええと12,3cm進めたらチューブの中にファイバーを通して…声門見えてきたらサイドポートから局麻を再度噴霧します。そして吸気に合わせて声門を通過して気管分岐部まで速やかに入れて…チューブを進めます。この時声門周囲で引っかかって抵抗があることがあるので無理せず…

D:ひっかかったらどうするの
―(あ、やっぱり突っ込まれた。余計なこと言わなきゃよかった)じんわりとねじりながら挿入します。もし開口十分ならば口からエアウェイスコープを入れて、声門を観察してどこで引っかかってるのか見ます。無理な力が声門にかかっていないことを確認しつつ挿入します。気管分岐部の上3-4cm程度のあたりまでチューブを挿入できたらプロポフォール100mg程度を急速静注して眠って頂きます。(そのあとはアンビューで換気確認して終了…と思ったら胸が上がらない)

D:カフ入ってないよ
―(あぁ、そうか)はい、すいません(と、5ml入れる)
D:片肺しか上がってないよ
―え、…あ、そうですね…ではもう一度ファイバーで気管チューブの深さを調節します
D:あぁ、もういいです。次の問題に行きます。
はい、ではそれで体位変換です。腹臥位にするときの注意点を教えて下さい。
―(あぁ、もしかしてこれが過去問にあった「体位変換」ってやつなのかな…注意点って言ったってなぁ…と)眼球障害やライン類の混線誤抜去、気管チューブ誤抜去、頚椎と体のアラインメントを注意すること、純酸素で換気しておくこと、褥瘡にならないように、等々を説明。ここは無難にクリアしたと思われる。

D:はい、そして手術がこのように進行して(と紙にプリントされた麻酔チャートを見せられる)…セボとレミフェンタニル0.05γでずっと落ち着いてますね。ここで血圧がガーンと上がって徐脈になっています。これはなーんでだ?
―脊髄損傷に伴う交感神経の異常反応です。
D:それをなんていうの?
―うーんと、うーん・・・・・・(ヒントください?ダメですよね?)・・・異常なんとか・・・異常・・・うーん、思い出せません。
D:先生のいわんとすることはよくわかるんだけどね、単語があるでしょ。
―……思い出せません。
D:はい、「autonomic hyperreflexia」でした。では次の設問です。
―(「え、まだやるんですか?!」と喉から出かかりましたがぐっとこらえて)はい。
D:麻酔が終わってよっこいしょ、と仰臥位にして麻酔を覚ます段階でこうなりました、と除細動器モニターにピ~~と1本の横線。
C:はい、診断名は?
―エーシストール、心「静」止です。
C:じゃぁ研修医に教えるつもりで対応してください。
―挿管されてるんですよね?(C頷く)まず100%酸素にして8-10回/minの呼吸状態にするよう指示します。そして心マを開始します。人を集めます。救急カートも。
(以下実際に心マしながら)毎分100回かそれ以上で、剣状突起から2横指上を垂直に5cm押します。押したらしっかり戻すことが重要です。…疲れるとマッサージが浅くなるので2分で交代します(あぁ、それはどうでもいいや、…いつまで心マしてればいいんだ、と試験官をチラ見すると黙っている。あぁ指示を出すのね…)。…静脈路があるので、アドレナリンを1mg静注するよう指示します。(ああ、20mlの生食で後押し、って言うの忘れた)で2分は心マを続けます。
D:はい、そしたらこうなりました。
―VFです。直ちに除細動します。
D:じゃぁ研修医が心マ引き継ぎますから除細動器の操作して下さい。
―2相性ですよね?(と確認してから)200Jにセットします。パッドを胸に当てて「充電してください」と指示して皆離れてくださいと言って放電します(実際にやる。熱量は大分低い状態にして)。ちらっと心電図波形確認して、また心マ再開してもらいます。
D:はい、ではこれで終了です。

***
ということで、文字に起こすと非常に長くなりましたが。

実技試験をまとめると以下のようになりました。
・坐位の血圧モニタリングの注意点(口頭で)
・坐位の空気塞栓時の対応(口頭で)
・TEEの適切なview選択問題(紙を見て6画像から2つ選ぶ)
・CVC(実技。右内頸静脈からエコー下で。但しエコーなしでもいいみたいでした)
・awake経鼻ファイバー挿管(実技)
・腹臥位への体位変換時の注意点(口頭で)
・脊髄損傷のautonomic hyperreflexia(口頭で)
・挿管された状態でのACLS(実技。ガイドライン2005か2010にするかは問われなかった)

***
ちなみに実技試験は、下のようなパタンもあったようです(教えてくださった方に感謝します)。

1.硬膜外麻酔
腹腔鏡下肝切除。気腹後に血圧上昇の原因。
実際の手技。

2.内頸静脈からのCVC留置
大動脈弁閉鎖不全兼狭窄症。この疾患になりやすい原因は?
心停止させる手順は?

3.体位変換後の心停止でACLS
基本的なACLS。しかししつこく、研修医と看護師が暇そうにしてるよ〜、とつっこまれました。

***

以下、試験全体について、イチ受験生としての意見を書いてみます。

・口頭試験
何を答えても、試験官のリアクションらしいリアクションはなく、また、誘導らしい誘導も皆無でした。「合格させてあげよう」という意思は全く感じられませんでした。
設問が2つしかないため、自分が苦手なものにあたってしまうと容赦なく落とされる印象をもちました。筆記試験対策は皆さん一生懸命されると思いますが、筆記試験よりも口頭試験の合格率が低い、という事実を受け止めて対策をする必要があると感じました。

・実技試験
「硬膜外麻酔をして下さい」とか「CVCを入れましょう」とか、実技実技、と細切れにされた設問形式の試験を想像していたので、ある程度の臨床ストーリーにのっかった問題形式に少なからず戸惑ったのですが、内容自体は至極普通だったと思います。質問量が多かったような気がしますが、それは逆に色々聞かれれば満点は取れないけれど、合格点には近づく可能性が高くなりそうです。
毎日研修医に説明しながら麻酔をされているドクタであれば、過去問の出題さえ抑えておけば問題ないと思います。

・筆記試験
矢張り過去問をしっかりとマスタしておくことが何よりも重要だったと思います。計算問題も捨てない方がいいでしょう。同じ問題が出たらラッキーと思えるくらいには解いたほうがよい。今年は過去問にある計算問題で、数字だけを変えた問題が複数出題されていました。また、B問題では50問中8問程度が計算して回答を出す出題となっていました。計算問題を全部ドブに捨てれば最高でも42/50問しか得点できません。計算問題以外の設問でしっかり得点できればよいですが、ちょっと捻られた問題ばかりで、受験中にどんどん絶望的な気分になってきます。そうなると、本来取れる筈だった問題ですら誤回答を選択してしまう可能性が出てきます。「過去問を何回解いても同じ問題間違えるよ」と思ってげんなりするかも知れませんが、本番では、その「何回も間違えた問題」が出る可能性が十分あります。だから過去問の答えを覚えておいて、本番では「あぁ、これは何回か間違えたな…。でも数字が変わってるぞ。ということは…」というくらいにするためには、直前の勉強だけでは(私の記憶力では)正解にたどり着けなかったと思います。

聴くところによると、1年前から試験勉強していた方もいたようです。ですが、本当にそれくらいやった方が賢明かもしれません。自分の精神的安定のために、かもしれませんが。試験前に大動脈解離とか臓器移植の麻酔を緊急でかけるようなことも、まま、あるでしょうから、試験直前の追い込みを過度に期待しないほうが賢明です。働きながら勉強しなくてはならない、ということを忘れない方がよいと考えます。
ネット上には麻酔科専門医試験が割と簡単に通る試験であるかのような文章も見られますが、それは優秀な頭脳の持ち主のコメントだと疑った方が良いです。また、合格した専門医の方々の話も聴くでしょうけれど(例:試験前1週間しか勉強しなかったよ)、それも信用しない方が良いです。いかに少ない勉強時間で合格するか、という話は、自慢話としては非常によいのですが、「何を勉強すればいいですか」と人に聞くようなレベルの人(つまり私ですが)には、得るものがありません。
少なくとも私は凡庸な脳しか持ち合わせていないので、かけた時間がそのまま試験の点数に反映されたのではないか…という感触を持っています。医師国家試験以降、一回も受験勉強していない方は、特に気をつけた方がよい試験だと思います。

という、私のような若干悲観的なコメントと、上記の賢い先生方の意見を、それぞれ自分のレベルに合わせて取り込んだ上で、受験するのがよいのではないでしょうか、と思います。

備考ですが、試験を受けるときの服装は、スーツ(ネクタイとジャケットも着用)の人が多かったです。私は心マをする時に邪魔だと思い、友人の助言に従って、スラックス+ワイシャツという、ノーネクタイ、ノージャケットのスタイルで行きました。それで試験官の心象が悪くなったようには思えませんでした。ただ受験前に待機する私語厳禁の軟禁部屋は少し寒いかも知れませんので、人によってはその対応をしたほうが良いと思いました。私は待機者の中では2グループ目に呼ばれたので、待ち時間はそれほどではありませんでしたが、もっと長く待つ場合もあるので、冷え性な方、沈黙に耐えられない方はその対策をした方が良いでしょう。

これで今回の試験について書きたいことは概ね書いたので、暫く(金輪際?)この話題には触れないことにしようと思います。