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2011年7月14日木曜日

(麻) 麻酔科専門医認定試験~口頭試問2010-症例1-2 脳動脈瘤破裂、くも膜下出血

問題文はDaturaから見られます。
口答試験当日に何も喋れなかったら恐ろしいので、時々見直して身体化させようと思う。

1)術前評価
1.術前問題点
・意識レベル低下E4V4M4
・高血圧とOMIの既往
・OMIにPCIの既往
・抗血小板薬を内服中
・48年の喫煙歴、禁煙していない
・full stomach

2.得ておきたい情報
・体格
・アレルギーの有無
・最終経口摂取から発症までの時間
・髭、動揺歯、頸椎症等の挿管困難を予想させる所見の有無
・日常生活の運動耐用能、心エコー(タコつぼになっていないか、なっていれば左室流出路狭窄の有無、心拍出率、有意な弁膜症、AFあれば左房内血栓、EF低く壁運動異常強ければ左室内血栓も、心内シャントの有無)
・普段の血圧
・血液ガス、レントゲンと合わせて神経原性肺水腫の否定
・挿入されている静脈路等
・病院に搬送されてから投与された全薬剤

3.冠動脈ステントの種類と待機手術時の待機期間
・BMS留置症例では、非心臓手術実施まで少なくとも6週間の待機期間(理想的には90日)
・薬剤溶出性ステントDESでは1年間

2)術中
1.緊急の脳圧低下処置
・高浸透圧利尿薬の投与(マンニトール0.5-2.0g/kg)
・脳室ドレナージ
・過換気PaCO2 30mmHg程度
・静脈麻酔薬投与
・軽いhead up体位
(ニカルジピン、ジルチアゼム、ニトログリセリンやニトロプルシドの微量点滴静注は降圧目的で使用されるが、頭蓋内圧を上昇させる危険性を考慮)


2. カプノグラム、経食道心エコー、心電図変化、血圧低下

3)術後管理
『脳卒中治療ガイドライン2009』(http://www.jsts.gr.jp/jss08.html)では,
1. 早期手術の際、脳槽ドレナージを留置して脳槽内血腫の早期除去を考慮する(グレードB)。
2. 全身的薬物療法として、ファスジルやオザグレルナトリウムの投与を考慮する(グレードB)。
3. 合併する脳循環障害に対してはtriple H療法を考慮する(グレードC1)。代わりに循環血液量を正常に保ち、心機能を増強させるhyperdynamic療法も考慮しても良い(グレードC1)。
4. 血管内治療として、パパベリンの選択的動注療法や経皮的血管形成術(PTA)などを考慮する(グレードC1)。

4)周術期危機管理-術中の低酸素症の理由は?
・パルスオキシメータがきちんと装着されているか確認、末梢の冷感が強くないか確認、血圧が保たれているか確認
・呼吸器の回路が外れていないか、閉塞していないか確認
・聴診して片肺挿管の有無を確認、痰の貯留による無気肺がないか確認、喘息発作がないか確認、気胸の可能性や肺水腫の可能性を考慮
・静脈空気塞栓の可能性がないか確認

前にも出したけど、静脈空気塞栓のreviewは↓
http://journals.lww.com/anesthesiology/Abstract/2007/01000/Diagnosis_and_Treatment_of_Vascular_Air_Embolism.26.aspx

気が向いたら、よりよい回答となるよう、これを叩き台にして改定もしたいけどおそらく無理でしょう。triple H療法って学生の時に「大事だよ~」と強調されて教わった気がするけど、単なる記憶違いだったのかな。これを書いていたら、DES挿入後2‐3週間で脳出血を起こした患者さんの血腫除去術の麻酔を担当したことを思い出した。術中・術後に何もなくてよかったんだけど。