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2011年6月30日木曜日

(音) Music in the first half of 2011

この半年で初聴きした曲での選出。1位以外は特に順不同。
アーティスト / 曲名 (アルバム, 発表年, 国)の順。

Metalらしい曲
1. Circus Maximus / Abyss (Isolate, 2007, Norway)
2. Within Temptation / A Demon’s Fate (The Unforgiving, 2011, Holland)
3. Within Temptation / Iron (The Unforgiving, 2011, Holland)
4. Derdian / BURN (New Era Part.3: The Apocalypse, 2010, Italy)
5. Dragon Guardian / 暗黒舞踏会 (Drangonvarius, 2010, Japan)
6. Amorphis / Mermaid (The Beginning of Times, 2011, Finland)
7. Imaginery Flying Machine / Gake no ue no ponyo (Princess Ghibri, 2011, Japan et al)
8. Megadeth / Washington is next (United Abominations, 2007, USA)
9. Amaranthe / Call out My Name(Amaranthe, 2011, Sweden)
10. Rhapsody of Fire / I belong to the Stars (From Chaos to Eternity, 2011, Italy)

1はイントロがDream Theaterの「Beyond This Life」(Metropolis Part2: Scenes from a Memory収録)マンマなのであるが、さわやかで伸びのある声のvocalによって非metalな方々にも大いにアピールしうる曲。コンパクトでドラマティック。何故か非常に元気が出る。「尊敬しているであろう先人のおいしいところを上手く取り込んで、自分らしさを押し出した絶妙アレンジ曲」ということで1位です。

slowな曲では…
1. Silent Stream of Godless Elegy / Pramen, co vi (Navaz, 2011, Czech)
2. Sirenia / The Enigma of Life (The Enigma of Life, 2011, Norway)
3. Bibleblack / The Black Swan Epilogue (The Black Swan Epilogue, 2009, Sweden) → 4:35-5:30の慟哭ギターが…。

何度も聴いてるけどリバイバルだったのが…
1. Orphaned Land / The Warrior (The Never Ending way of OrwarriOR, 2010, Israel) → 4分以降のギターが…。
2. In Flames / Free Fall (Reroute to Remain, 2002, Sweden) → この曲がIn Flamesの最高傑作だと思う。

2011年6月28日火曜日

(本) Books in the first half of 2011

文字を体と心のフィルターに淡々と通す日々。コンパクトな本が多いのは、読書をするのが主に電車の中で、持ち運びに便利だから。移動中に本や論文が読めるのは、自動車で移動しなくてもよいという、東京暮らしの利点の1つだと思う。

1. 最終講義 / 内田樹 / 2011年, 技術評論社

・頭がよく生まれついた人は、外国語の習得がとんと苦にならないという人は、その稀有な才能を使って、それがどんなふうに「みんなの役に立つか」を優先的に考えるべきだと僕は思います。僕が若い研究者たちの発表を聴いて、心の底の方が冷え冷えとする感じがしたのは、彼らが学術的な活動を通じて、公共的な利益をどう積み増しするかという関心がそこにほとんど感じられなかったからです(p45-6)
・医療と教育というのは、21世紀の「右肩下がりの日本」が、新たに産業を興すというかたちではなく、もともと日本人が具えているノウハウを最大限に発揮できるセクターなんです。でも、まさにこの医療と教育は、80-90年代において「医療崩壊」「教育崩壊」というかたちでメディアと政治家と産業界から集中砲火を浴びて、回復不能な傷を負った。・・・・(中略)日本のエスタブリッシュメントに哲学がなかった、ということがその理由であると言うにとどめておきます。(146)  

何のために勉強するのか?研究するのか?もやもやとして言葉にならなかった思いを、内田先生が言葉にしてくれている。第2章「日本の人文科学に明日はあるか」は人文科学だけでなく、全ての研究者・学ぶ人が一度は立ち止まって聴くに値する講演内容だと思う。文章に感銘を受けたのは、「回復不能な傷を負った」とされる医療と教育に、今の自分がたまたま居合わせているためだからかもしれない。一方は提供者として、一方は受ける者として。そんなことを感じた大学院3ヶ月目の終わり。

2. 決定版 ケンタロウ絶品!おかず / ケンタロウ / 主婦の友社
我が家の肉じゃがはこの本以降、これになった。簡単すぎで、美味すぎ。

3. 向上心 / サミュエル・スマイルズ著、竹内均訳 / 知的いきかた文庫
 結局は自分の人生は自分でしっかり決めないといけないんだよ、ということ。自分の不遇を誰かのせいにしてもいいけど、自分の心と体で生きていかなければいけないことを自覚するならば、それ相応の生き方を考えていかなきゃいけない。

4. 科学者という仕事―独創性はどのように生まれるか / 酒井邦嘉 / 中公新書

5. 看護研究で迷わないための超入門講座 / 西條剛央 / 医学書院

6. 哲学思考トレーニング / 伊勢田哲治 / ちくま新書
 批判的にものを考えるとはどういうことか、を分かりやすく教えてくれる本。メディアの情報を鵜呑みにしてしまったり(そんな人はいないか…)、Nの多い論文を鵜呑みにしてしまったり(そんな人もいないか・・・)、その他、人の話をたやすく信じてしまわないように。

7. 理性の限界 / 高橋昌一郎 / 講談社現代新書
 こんなに知らない言葉が乱舞する世界があるということで、自分のもつ知識が極めて限定的なことを再確認した1冊。難しいことが語られている筈なのであるが、読み物としても一気に読めるところが凄い。

8. つまらない人生入門<鬱屈大全> / 春日武彦、吉野朔実 / アスペクト
 なんでこれほどまでにいろんなことの描写が細やかなんだろう。

9. 心は孤独な数学者 / 藤原正彦 / 新潮文庫
 驚嘆するしかない。

10. 続・麻酔科臨床の書 / 内藤嘉之、吉田和則、井出雅洋 / MEDSi
 LiSAでの連載時から本当にお世話になったシリーズが書籍化。心臓外科麻酔始めた頃、こんな本があったらよかったなぁ、という一冊。勿論、今の私でも知らないことが多くて本当に勉強になる。感謝。

11. もっとよくわかる!免疫学 / 河本宏 / 羊土社

12. 絵ときシグナル伝達入門 第2版 / 服部成介 / 羊土社
「全く」訳の分からなかった世界が、訳の分からない世界くらいにはなった。恐らく今後もお世話になるんだろうなぁという一冊。

13. 麻酔科専門医認定筆記試験問題解説集 2005-2010年度(6冊) / 克誠堂出版
期間限定モノではありますが、怠惰な私は、こんな機会でもないと呼吸生理の勉強をしないと思う。

14. Pocket Anesthesia / Richard D. Urman / LWW
 当直にはこの本と「麻酔と救急のために」をお守り代わりに。second halfも手術室が平和でありますよう。

2011年6月27日月曜日

(雑) 終"診"刑

通院すること10回。 307日の刑期を無事に終えて、今日で終診となった。
当初は27本中10本だった齲歯(うし)が、9本目の治療中に「あ~、ここにも2箇所ありますね~」といわれ、計12本。手遅れになる前に全て治療が出来たのは、本当に幸運であった。

「次の予約はどうしますか」と歯科衛生士さん。「もう今日で終わり」とドクター。
なんだかちょっぴり切なくなる。これからは自分でもしっかりケアせねば。
でもブラッシングをしっかりしているつもりでこうなったのだから、これまでと同様の習慣ではまた悲惨な目にあうこと必定。

今後の虫歯予防について、Google検索しても玉石混交でよく分からない。そのため

「ここが知りたい 歯科治療 ベストアンサー vol.1 (クインテッセンス出版)」

を読んで勉強することにした。
・・・なるほど。
読むと、私は間違いなく「虫歯ハイリスク患者」である。(p61)

対策は
・食後5分以内の歯磨き
・歯磨きごとにフッ化物を使用、食間と就眠前にもフッ化物洗口を実行
・砂糖を含む間食はゼロにするとともに、全体の砂糖摂取量を減らす
・砂糖不使用の代替甘味料で、唾液の量を増やす
・年に3,4回歯科を受診する
だそうだ。(p64-5)

地道な習慣で、何十万円もするインプラント治療、や義歯生活から少しでも遠ざかることができるのであればやってみようかな・・・。

2011年6月25日土曜日

(音) Amaranthe ― Amaranthe (2011年, Sweden)

「ジャケットの真ん中にいる女性がヴォーカルをとるバンド」のデビューアルバムかと思ったら、3人もヴォーカルがいた。事前情報なさ過ぎ。

Elize: 女性クリーンヴォーカル
Jake: 男性クリーンヴォーカル
Andy: screams担当

ということらしい。

こんなポップなメタルは反則である。

「Embody the Invisible」や「Pinball Map」の頃のIn Flamesのようだったり「Figure Number Five」の頃のSoilworkのようだったり、場合によってはIron Maidenのようだったりするけれど、彼ら先行バンドとの決定的な違いは、「一聴しただけで歌メロが耳に残る、ポップな扇情力」の次元が違うというところ。手を出そうかどうか迷う人には、必殺悶絶ポップチューンの#8「Call out My Name」をyoutubeでも何ででも聴いてほしい(但しlive版じゃない方。私はシングル曲の#2「Hunger」よりも断然こちらが好み)。この曲を聴いて、全く琴線に触れるものがなければ、このアルバムを全編聴く必要はないだろう。歌メロが最大の武器なだけに、次作以降でこのクオリティを維持できるのかという贅沢な心配をしてしまう。畏れ入りました。

1. Leave Everything Behind
2. Hunger
3. 1.000.000 Lightyears
4. Automatic
5. My Transition
6. Amaranthine
7. Rain
8. Call out my Name
9. Enter the Maze
10. Director's Cut
11. Act of Desperation
12. Serendipity
13. Breaking Point
14. Splinter in my Soul

2011年6月24日金曜日

(雑) 煙草再来

麻酔科専門医試験の受験票は8月下旬頃送られてくるのか。なるほど。

***
Pediatric surgery and parental smoking behavior. Anesthesiology 2011; 115:12–7.
に対するEditorial viewを読む。

An original study in this issue of Anesthesiology shows that only 6.6% of smoking parents maintained abstinence during the period when their child underwent surgery.
とあるように「我が子の手術という一大事」でも親の禁煙行動には殆ど繋がらない様である。このeditorial viewでは以下延々と喫煙の悪が述べられ、またそれを全力で阻止すべきという文言が続いている。そして矛先はアルコール乱用や過度の肥満にもちょっとばかし向かう。
「少しでも安全に、安楽に、合併症なく、周術期の患者さんに過ごしていただくこと」を至上の目的とする麻酔科医の集団としては当然の意見であろう。

「タバコ?あー心配いりませんよ。手術当日まで吸ってていいですよ」と術前外来で私がにっこりと微笑んで患者さんに応対しようものなら、ASAのみならずJSAからも、そして勤務先の病院からも追い出されるかもしれない(ASAについては会費を払わないでいたら、いつの間にか退会扱いにされたので、そのままになっているが)。

タバコが様々な癌の、独立した危険因子であることは、広く世間一般に知れ渡っている筈である。それが取りも直さず「死期を早める」ということも同様に知れ渡っている筈である(癌が死に至る病ではない、と考えている成人は殆どいない筈である)。

術前に「禁煙できなかったこと」が原因で術後に上手く痰が出せず、肺炎等の呼吸器合併症を起こし、死亡率が高まるであろうことも、想像力をちょっと働かせれば、医学的知識が乏しい方々でも、予想がつくことであろうと考えられる。喫煙により、血管が詰まりやすくなって心筋梗塞の合併率が上がることはもしかしたら想像が難しいかもしれないが。

それにも関わらず止められないのである。
わかっちゃいるけどやめられない、のである。

特にheavy smokerに多い肺癌や食道癌の手術では、麻酔科医は片方の肺で手術中の呼吸状態を良好なものに維持しなくちゃいけない。その「換気にあずかっている片方の肺」の気管支内に、吸引すれども吸引すれども貯留する粘稠な粘稠な痰。「SpO2が保てないんで両肺換気にさせてください」と術者の手を一時的にストップさせる行為が楽しいという麻酔科医は少数派だろう。「俺の分離肺換気が下手なせいじゃなくて、この患者さんが禁煙してないのがわりぃんだよぉ」とタバコに憎しみを覚える麻酔科医が多かろうことも想像に難くない。

でも、患者さんは止められないのである。

幸いにして私は、タバコによる依存が心身にできる遥か前に禁煙し、そのままタバコにお世話にならずに今日まで生きてきている。なので、「手術が必要であるにも拘らず禁煙できない喫煙者」の気持ちに寄り添うことは非常に難しい。

だから、乏しい想像力を駆使して、自分が患者になった場合を妄想してみる。

「ヘヴィメタルを術前に8週間は止めないと、術後譫妄になるリスクが非常に高まると言われています。それで自己抜管して呼吸困難になって死んでしまったり、生命の維持に必要な薬が流れている点滴をひっこ抜いてしまったりすると最悪の場合心停止するかもしれません」と麻酔科医に説明されたら。

または
「読書を術前に8週間は止めないと、全身麻酔後にGerstmann症候群を起こす可能性が高いといわれています。今日から本は一切読まないで下さい。」と麻酔科医に説明されたら。

恐らくどちらも達成不可能である。

だとすると、自分の目の前にいる患者さんが「胃癌の術前でタバコ40本/日を40年」でも「喘息があるけどタバコ20本/日を30年」でも、「禁煙できなければ手術は中止です」と間髪いれずに進言するのは憚られてしまう。

本当に気の毒な話である。

ヘヴィメタルや読書は「現時点では周術期合併症に影響を与えることが証明されていない趣味」なのに(そして恐らく今後も証明されないだろう、証明する人もいないだろう)、かたやタバコは「周術期合併症にドカンと影響を与えてしまい、その患者さんに関わった医療関係者が誰ひとりとしてハッピーになれない趣味」なのである。
タバコを愛してやまない、そして吸うことを止められない方々に、心の底から同情してしまう。

「喫煙が手術や麻酔後に悪影響を与える」という「科学的な根拠」がたくさん出揃ってしまっている現状を考えるに、一介の麻酔科医である私にはそれを覆す論理的反論は不可能である。だから、「喫煙で術後に肺炎になる危険性が高まります、それによって死亡率も上昇するという報告もあります・・・・・・むにゃむにゃ」と、目の前の患者さんの顔色を伺いつつ麻酔科医として申し上げるべきことは勿論申し上げようとは思うけど、カルテを拝見して「この患者さんは進行癌なんだなぁ・・・・・・」だったりすると、その方がどんなにheavy smokerだったとしても「禁煙してください」とは相当な逡巡無しには申し上げられないのである。
だから、「タバコを吸うことが人生の一部分となっていて、タバコを止めないと死ぬ確率が上がります、と言われても容易にはタバコから離れられない方々」のことを思ったとき、たとえ麻酔科医としては禁煙を断固指導しなければならないとしても、私個人の心には大いなる葛藤が生じてしまうのである。
それは「禁煙を指導するのは麻酔科医として当然のつとめだ」という、現時点では科学的には何の反証もできない「正義のお言葉」」に対して素直に服するのが嫌なのだ、という偏狭な精神から発することではなく「目の前の患者さんが手術中に痰が出てきて出てきて大変だよ、術中の麻酔管理や手術終了時の抜管の判断に困るのは、この患者さんの麻酔をする私なのに」という、もしかすると患者さんのためを思って発せられた言葉が、いつの間にか麻酔科医である自分の心の平穏のための言葉にすり替わっているだけかもしれないという、半ば妄想的な発想から来るのかもしれない。

2011年6月23日木曜日

(麻) サクシニルコリンとスタチン

サクシニルコリン(SCC)もスタチンも合併症に筋肉痛がある。その2つを結び付けた臨床研究で面白い。

Consequences of Succinylcholine Administration to Patients Using Statins. Anesthesiology: July 2011 - Volume 115 - Issue 1 - pp 28-35
http://journals.lww.com/anesthesiology/Fulltext/2011/07000/Consequences_of_Succinylcholine_Administration_to.13.aspx

以下の4剤いずれかを少なくとも3ヶ月以上飲んでいるか(38人)、そうでないか(32人)、で予定手術挿管時SCC投与(1.5mg/kg)後の血中ミオグロビン濃度を比較。
 simvastatin (リポバスなど)
 lovastatin (メバコールなど)
 atorvastatin (リピトールなど)
 pravastatin (メバロチンなど)
SCC投与5分後、20分後はスタチン群で有意に血中ミオグロビン濃度が上昇。24時間後は変化なし。CKやカリウム、筋肉痛は両群間で有意差がなかった。

Editorial viewでA Duke University study showed that American patients were
willing to pay $33 out of pocket to avoid succinylcholine myalgia.と書いてあるのが興味深い。editorialではまた、SCCが有効だろうポイントにも言及しており
・解除出来ない喉頭痙攣(主に小児)で静注路がないときに筋注で使用
・rapid sequence intubation
・CVCI時に自発呼吸が出てくるかも
と書かれている。
だが下の2つはrocuronium→sugammadexが使える日本の状態では問題にならないだろう(米国ではまだsugammadexが使用不可能)。

修正電気痙攣療法(mECT)くらいにしかSCCを使用しないからなぁ・・・。視点が面白ければ、単一施設の臨床研究でもAnesthesiologyにacceptされるんだなーの好例。

(麻) completely non invasive ?

Can J Anesth (Noninvasive cardiac output monitoring during general anesthesia for Cesarean delivery in a patient with severe aortic stenosis)
http://www.springerlink.com/content/t5316013037k6601/fulltext.pdf
先天性二尖弁によるAS(0.75cm2)合併の妊婦さんの全身麻酔帝王切開周術期の1例報告。stroke volume variation (SVV)出てくるしFloTrac使った症例か・・・と思って読んでたら・・・。

全く勉強不足で知らなかったのだがこんなモニターがある。
http://www.cheetah-medical.com/ourproducts
Cheetah Medical Incから販売されている。全く無侵襲にcardiac output等を測定できるようだ。追従性も高いようである。本当だとしたら、凄いことかも。

2011年6月22日水曜日

(音) Symphony X - Iconoclast (2011年, USA)

随分と長いこと待ってました、の2枚組83分。2007年の「Paradise Lost」以来8作目のスタジオアルバム。iTunes Storeではなぜか4000円もする。CD+歌詞対訳などが付いてる店頭盤の方が安いってどうなっているんだろ。

まだ10回弱しか全編通して聴いていないが、早くも「Paradise Lost」よりも好きになる。

ゴリゴリッとしてそれでいてネオ・クラシカルなギター旋律を嫌味なく鏤(ちりば)めつつ、ヴォーカルは相変わらずの暑苦しさ。かと思えば#7「When All is Lost」のようなBalladを完璧に歌い上げる。これまでのSymphony Xの系統をしっかりと受け継いだ作品である。
大学受験時に死ぬほど聴いた「Out of the Ashes」や「Candlelight Fantasia」、その後に続いた「Smoke and Mirrors」などの、バンド黎明期の傑作楽曲群が霞んでしまうかのような勘違い(?)を起こさせたのは、この2枚組がとても緻密に緻密にしっかりとしっかりと丁寧に創り込まれた為なんだと思う。

とは言うものの、はじめの何回かは聴きながら不覚にも何度か意識消失してしまった(恐らく昨日のあまりの暑さと、読んでいた論文が意味不明だったせいもあるだろうけれど)。しかしこれは私とSymphony Xの関係においてよくあることで、何故か最低でも何度か聴かないと楽曲のよさが分からないのである。今のところはfastかつcatchyな#4~#5の流れやballadの#7がお気に入りではあるが・・・。バンドを長年フォローしていると「あーあ、昔の曲はよかったのになー」と思うことが少なからずあるけれど、本作はそんな虚脱感とは無縁。未だに私の金字塔となっている3作目「The Divine Wings Of Tragedy」に迫る(超えた?)1枚、ならぬ2枚でした。

ディスク:1
1. Iconoclast
2. The End of Innocence
3. Dehumanized
4. Bastards of the Machine
5. Heretic
6. Children of a Faceless God
7. When All is Lost
ディスク:2
8. Electric Messiah
9. Prometheus (I Am Alive)
10. Light Up the Night
11. The Lords of Chaos
12. Reign in Madness

聴けば聴くほど全曲が赤く染まっていくような予感。

(本) 本物の医師になれる人、なれない人 - 小林公夫

本書では「本物の医師」の、7つの能力・資質が挙げられており、それ以外にも、現役医師に訊いて回答が得られた「本物の医師の条件」(p.187)が掲載されている。

著者の提示する7つの能力・資質とは以下。
・利益衡量(こうりょう)能力
・情報収集能力
・生命倫理への目配り
・人間性
・人権への配慮
・空間把握能力、推理力
・不確実性に立ち向かう姿勢を持ち続けること

私は、おそらくどれもこれもほんのちょっとずつしか満たしておらず、しょんぼりする。
本書には、現場の医師の端の端のそのまた端くれである私にも「まぁ、確かにそうですよね、そんなことすれば敗訴になりますよね」と思える事例が多く書かれている。これから医師になろうとする人、または医学部に来ようとする人たちが読んだら、少なからず怯(ひる)んでしまうのではないかと思う。場合によっては医師を志すこと自体をやめてしまうんじゃないかと心配してしまう。医学部受験前の13年前の私が、もし本書に触れていたら「こんなのとてもじゃないけどできないし素質もない、やっぱり自分には向いてないだろ。やーめた」と思っていたに違いないのである。だって今でもそう思う。でも、それは私が「本物の医師」ではなく、偽物の医師であるか、或いは「本物の医師」になる中途の道を万が一にも辿っているか、はたまた、あさっての方向に歩を進めているかということだろうけど。

率直に申し上げるならば、本書読了後、医師の大事な資質の中に

何があってもめげない心

がないのが不思議だった。
予想される治療結果が得られずに患者さんが亡くなってしまったり、当直中に集中力を欠いて、インシデントを起こしてしまったり。そういったことを真摯に振り返りつつ、けれども、のめり込みすぎずに「次、がんばろ!」と言えないと(言えなくてウジウジしながらでも行動できないと)、やっていけない気がする。恐らく、著者が言及するまでもないくらい、「本物の医師」になるためには当たり前の素養だろうし、恐らく「普通の医師」になるために必要な素養だろうと思う。

また、

正当化の基準の一つである法は、医師に決して不可能を要求しません。また、手を尽くした医師を断罪することもありません。(p184)

と著者は書いているが、これは
ただし、著者が挙げた能力や資質をもった医師に対しては」
という言葉を付け加えねば成立しないと思った方がよいだろう。
私のような「本物でない」医師から見て、「こりゃ(敗訴になった医師にとって)あんまりな判決だ。」という事例は既に結構出ていると思う(日経メディカルの「医療訴訟の「そこが知りたい」―注目判例に学ぶ医療トラブル回避術」を読むだけでも小心者の私には、医師を続けていくことが恐ろしくて仕方ない)。

だからといって、医師になること自体はとんでもなくハイリスクでも、とんでもなく敷居が高いものでもないと思う。
本書を読んで怯んだ学生さんたちには「大学生」や「研修医」になってからでも開発される能力が多く潜んでいるんだよ、と現場の片隅から励ましてみたい。たかだが20年弱で上記の能力や資質が育まれるような環境で育つ人間なんて、稀だと思う。そして臨床の現場を支えているのは、「本物」かどうかは別として、多くの「普通」の臨床医たちである。医学部受験を乗り越えられるだけの気力と体力があれば、上記の能力・資質はトレーニングによって身につくだろう。多分。
取り敢えず、「こないだの模試の数学、最悪の出来だったぜ」とか「また志望校がE判定だったよ~」を乗り越えた先に、医学部での実験、実習、数多の試験、そしてその後の研修医としての現場において、医師として身に着けるべき能力や資質は、十分身についてくるのではないかと思う。

2011年6月19日日曜日

(走) Training in Rena (其の百十二と百十三)

5/15 9.0km, 60min (8-12km/h, 傾斜0)
6/19 3.0km, 18min (9-12km/h, 傾斜0)
total distance: 791.2km (Jan 21.1km, Feb 37.0km, March 58.1km, Apr 9.0km, May 19.0km, June 3.0km)
total time: 4984min = 83h04m

5月の学会以降で初ランニング。この1年数ヶ月の間で、1ヶ月も走らない期間が空いてしまったのは初めて。こりゃまたイチからやり直しだな。

2011年6月18日土曜日

(雑) experiment after anesthesia

ここ1カ月程の全身麻酔を振り返ってみる。
気管内挿管症例のうち、37.5%がrapid sequence induction(RSI: 迅速導入)ってのは多い気がする。別にRSI強化月間というわけではない。
・急性胆嚢炎
・多発骨折(最終経口摂取から受傷までの時間不明)
・腰椎椎間板ヘルニア(食道癌術後)
などなど・・・以下略。

強化月間ではないと言っても、普段から殆どの緊急手術の全身麻酔の導入はRSIで行っている。バッグマスク換気をするのが面倒くさいわけではなく、「コレくらいならだいじょぶ!」と換気して10cmH2O程度の陽圧でごぼっと誤嚥させたら患者さんは死に至るかもしれないという小心からである。勿論RSIを行う際には「マスクフィットがしっかりしており、万が一の際にバッグマスク換気ができること」を確認する。酸素6L/minでもSpO2 100%にならない症例や髭ボーボーだったりキツい頸椎症があったり、其の他があれば自発呼吸温存下挿管でやるのだけれど、最近、幸か不幸かそのような患者さんの麻酔に当たっていない。

今年3月までの大学当直では、レジデントの先生たちがon callでついてくれていたけれど(そして私はカイザー以外の大体の症例で彼らをお呼びだてしていた)、今働いている病院では誰もバックにいない(常勤の麻酔科の先生はいるので、何かトラブったら勿論連絡は出来るが)。夜中の緊急手術時に薬を吸い間違えたり、濃度を調整し間違えたり、その他のインシデントを起こさないでいられるのが、奇跡としか思えない今日この頃。
***
木曜日、途中でストップしていたwestern blottingを再開。
「30mlの溶媒に対して試料を入れて、5%の溶液を作って」と師匠に言われ、計量すること6g。

・・・これは20%だ。

やはり当直明けは暗算すべきでない。麻酔でやったらアウトである。in vitroの実験で人は死なないが、24時間勤務の後に実験をやるのは危険である。なるべく頭を使わないように大きい電卓、買ってこよっと。

2011年6月17日金曜日

(音) Rhapsody of Fire - From Chaos to Eternity (2011年, Italy)

前作「The Frozen Tears of Angels」のレビューを書いてからまだそれ程経っていない気がするが、ここに聴かれるのは間違いなく新作である。

2010年5月5日の記事を転載する(自分の記事を引用できる位長いことよく書き続けたな・・・しみじみ)。

***
大仰であるが故に飽きられてもおかしくないこの種の音楽を表現し続けている。継続は力なりとは使い古された言葉だが、まさに彼らのためにあるようなもの。驚きを通り越して尊敬に値することである。
***
引用終わり。本作にも全く同じ言葉を贈りたい。な~んにも変わってない。

私にとって、Rhapsody(今はRhapsody of Fire)のアルバムを聴くのは、なじみの定食屋さんに行くようなもの。「お久しぶりです~」と暖簾をくぐると、「お、来たね!」と何も言わなくてもオヤジさんが「がはは」と笑い、炒飯(半ラーメンつき)を出してくれるのである。その味は高校生だった頃の14年前と変わらない。でも恐らくその炒飯には14年前にはなかった隠し味が入っていたり、入っていた隠し味がなくなっていたり、昔は5分かかっていた調理上の一部工程が4分20秒くらいに短縮されていたり、以前は「着色料がいっぱいで不健康だろ」と、頑として添えられていなかったトッピングの紅生姜が、いつの間に添えられるようになっていたりするのかもしれない。
そしてそれは、「オヤジさんの炒飯の調理」について初心者である私には、俄かに気付き難いことなのである。私はというとオヤジさんの苦労も知らず、久しぶりに食べると「あー旨かった。またしばらく食べなくていいや」と炒飯の存在はしばらく忘れ、また時々食べたくなって食べに行く・・・という生活を繰り返すのである。

訳の分からない炒飯のことを書いたのは、この「何も変わらない遠く伊太利亜の空の下で呼吸をしているであろう男たち」の一大絵巻をまた聴くことが出来た喜びを、最近不眠が続いていた麻酔当直帯に胸いっぱいに感じてしまったためである。当直用PHSが鳴らないかドキドキしながらも、イヤフォンで大音量で聴いてしまってごめんなさい。そして当直で病院から一歩も出られなくても、ウェブにさえ接続できれば新譜が聴ける「i Tunes Store」には大変感謝。

今更これを読んでRhapsody of Fireのアルバムを聴く人は稀だと思うが、今作を聴いてRhapsody of Fireが好きになったら5作目「Power of the Dragonflame」を聴くのがハズレのない真っ当な正道だろう。

ごたごた書いていたら、このアルバムの中身に触れていなかった。今のところのfavoriteは#7「I Belong To the Stars」かな。#9はファンの期待を全く裏切らない長尺(19分38秒!)。全部赤にしたいけど・・・

1. Ad Infinitum
2. From Chaos To Eternity
3. Tempesta Di Fuoco
4. Ghosts Of Forgotten Worlds
5. Anima Perduta
6. Aeons Of Raging Darkness
7. I Belong To The Stars
8. Tornado
9. Heroes Of Waterfall's Kingdom
 I.Lo Spirito Della Foresta
 II.Realm Of Sacred Wateerfalls
 III.Thanor's Awakening
 IV.Northern Skies Enflamed
 V.The Splendour Of Angel's Glory(A Final Revelation)]
10. Flash of the Blade (Bonus)

(麻) TEE操作に役立つロードマップ

もう既に有名なのかもしれないが、「TEEロードマップ」で検索すると見ることができる、このマップは素晴らしいと思う。今、非常勤でお世話になっている病院の麻酔科の先生に先日、「すごいでしょ」と見せていただいたのだが、確かに凄い。これ1枚で経食道心エコーで迷子になったときに、どこに行ったらよいのかすぐ思い出せる。

多分、術中に心臓外科医に「早くT弁見せてよ」と初心者が言われたらビビッてこれを見ている暇はないだろうが、麻酔導入後の心臓スクリーニング時に(初心者レベルの私が言うのもなんだけど)麻酔科研修医を教育するのに効果を発揮しそうである。循環器内科の先生にも有用かも。
初めて経食に触れる頃って「知識の棚」が全くないから、棚を作成するためにはこのようなマップがあるといいんだろうなぁ。

そういえば心臓外科の麻酔はもう3ヶ月もしてないなぁ。「しばらく車の運転してないなぁ」と暫くぶりにする車の運転、と同じレベルで経食が使えるかどうかはよくわからない(とか言ってるとまた緊急で来たりしかねないのでお口にチャックだな)。

2011年6月15日水曜日

(雑) 非予定調和

16学部16学科!

と書かれた、とある私大の広告を目にする。
これは受験生に対してなんらかの広告効果があるのだろうか?
行ける学科は1回の入学に1つの筈である。

試験日が異なれば、いくつもの学科を受験できると言う訳か。
よく分からない心理だけれど「早稲田大学、慶応大学(他の大学でもよいけど)に入りたい」と、その名前の大学に入る事を至上命題として受験に望む受験生諸氏には、重要な事だろう。
学ぶ事も決めずに、名前だけで大学を選ぶなよ、というお叱りはどこからか聞こえてきそうだが、私は逆にそのお叱りに素直に賛同しかねる。

高校卒業生程度、二十年弱の人生から選ばれるであろう、大学受験時の学科の選択肢、というのは、大部分をそれまでの人生経験から影響を受ける。
だから自分の想像の範囲でしか、選択できない。

もし、自分がそのキャンパス内を闊歩したいと欲する大学に、学部が16でも30でもあって、「取り合えず試験日かぶってなくて、受験できるんだから、何を勉強すんのかよくわかんねーけど、受けとこ」と受験し、そのよくわかんねーけど、受かっちまった学部でカリカリカリカリ勉強してたら、なんだかすげー面白くなってきちゃった、というブレークスルーが待ち構えているのかもしれないのである。

楽しくなる前に、「やっぱりつまんねーわ、これ」と脱落する可能性はあるけれど、取り敢えず3ヶ月頑張ってみて、3ヶ月頑張れたら半年、それが出来たら、、、といつの間にか4年なり6年なり終われば儲け物である。

自分がこれまでの人生では考えもつかなかった「美味しい経験」というのは、自分が思いがけず選んじゃった道、や、社会人になってからでも、上司に頼まれた一見「何で俺がやんなきゃなんねーんだよ」というような面倒くさい仕事なんかに転がってるんじゃないかと思う。

ういうのは、物事を短期的な損得勘定(このチョイスは儲かるか儲からないか、辛いか辛くないか)でしか考えられない人には決して味わう事ができない人生の喜びであるということを、忘れそうになったときに思い出せる様、ここに書いておこうと思う。

2011年6月13日月曜日

(研) RとBioconductor

マイクロアレイデータ解析に関連して

統合TVやらこちらのblog(http://cancerbiology.blogspot.com/2008/01/rbioconductor.html)やら師匠らの助言にお世話になりながら、「R」と「bioconductor」をダウンロードする。

何のためかって?私が聞きたい位である。
訳が分からない。さっぱり。本当に。これっぽっちも。Where am I now ??
今日という2度と来ない日が終わった。

(音) Imaginary Flying Machines - Princess Ghibli (プリンセス・ジブリ) (2011年)

ジブリ。
そうあのジブリ。推定日本人浸透率50%以上のあのジブリである。
千と千尋の神隠しを最後に映画を見ていない私が、ジブリの曲のメモをここに残すわけもなく、このアルバムはジブリのエクストリーム・メタルカヴァー版である。
#1「となりのトトロ」や#4「崖の上のポニョ」の、原曲に最大限の敬意を払いつつ、徹底的にその牧歌的情景を破壊しつくしたスタイル(ただし原曲の歌メロには割合忠実)には感動さえする。これらのヴァージョンが映画館でエンディングロールで流れてきたら、普通の子供たちならまず泣き出すだろう。
みんなが口ずさめる優しくてあったかい原曲を禍々しく暴力的なエクストリームメタルにしただけで、インパクトというものは生み出されるのであるが、何故かそれに加えて、このアルバムでは、演奏も歌唱もしっかりしており、それが更なる感動を呼ぶのである。クリーンボイスの女性ヴォーカルがやや軽いが、デス声との対比ってことでよいのかも。即効性があって病みつきになりかねない中毒性を秘めた名盤。こんな風に料理されてもジブリの曲っていいなぁ、と思える心と耳の許容力の大きい人たちにおすすめ。最近アップされた心臓血管麻酔学会HPの動画問題を解きながら聴くのがgood。ぽーにょぽーにょぽにょ・・・

1. Tonari no TOTORO (My Neighbor Totoro)”となりのトトロ”
2. Kimi wo Nosete (LAPUTA:Castle in the Sky)”天空の城ラピュタ”
3. Teru No Uta (Tales from Earthsea)”ゲド戦記”
4. Gake no Ue no Ponyo (Ponyo on the Cliff)”崖の上のポニョ”
5. MononokeHime (Princess Mononoke)”もののけ姫”
6. Country Road (Whisper of the Heart)”耳をすませば”
7. Itsumo Nandodemo (Spirited Away)”千と千尋の神隠し”
8. Arrietty's Song (Japanese version)(The Borrower Arrietty)”借りぐらしのアリエッティ”
9. Yasashisa Ni Tsutsumaretanara (Kiki's Delivery Service)”魔女の宅急便”
10. Toki niwa Mukashi no hanashio(Porco Rosso)”紅の豚”
11. Sanpo (My Neighbor Totoro)”となりのトトロ”
12. Nausicaa requiem (Nausicaa of the Valley of the Wind)”風の谷のナウシ カ”

2011年6月11日土曜日

(雑) Anesthesia all night Long Pt. 2


麻酔科医は外科医を「外科のセンセ~」と呼ばずに固有名詞で呼ぶことが多い。
ところがあちら様は、手術中に患者さんの頭側に突っ立っている私のことを「麻酔のセンセ~」と呼ぶことが多い。
「ちゃんと固有名詞で呼ばれるような存在感のある仕事をせんかい!」というお叱りもどこからか聞こえてくるような気もするが、麻酔科医が存在感があるとすれば、
・五月蝿く節度がない(例:外科医に「まだ終わんないんすか」と、自分の臨床経験の未熟さを棚にあげて、平気で聞いてしまう)
・大量のポンピングが必要
・挿管や動脈圧ライン確保、硬膜外麻酔等の手技にとんでもなく時間がかかる(mean-2SD程度に)
のどれかである可能性が高い。
それはNo thank youである。

私はごくごく平凡な麻酔科医でありたいので、患者さんの状態が緊急手術という割には落ち着いていれば空気のようにしていたいのである。それでも時々空気は「 尿は出てるんですが、カリウムがちょっとずつ上がってますね」と外科医にそっと伝えたり、外回り看護師さんがいない時には「いくつの手袋ですか」とかそっと術者たちに向かって申し上げ、清潔野に代替の手袋を出して差し上げるのである。
麻酔科医はこのように匿名性があり、代替可能というのが、1つの特徴であるように思う。
つまり、当座、私が目指すところの1つの地点としては、麻酔担当が私であった筈なのに、術者が手術に熱中していて、ひと段落してふっと顔を上げた時に麻酔器の横にたたずんでいるのが、部長や教授、その道20-30年の神業的なフリー麻酔科医の先生になっていて「あれ、いつの間に交代したんすか」となることである。
だから「俺にも名前があるんだから、『麻酔のセンセ~』じゃなくて、名前で呼んでくれ~」と心の叫びを上げる必要もそんな気もなく、空気のような存在で、何事もなかったかのように、徹夜の緊急手術に居合わせ、立ち去りたいものである。

御祓いに行こうかな。

2011年6月9日木曜日

(雑) はやりの・・・・?

先日の本「喜婚男と避婚男」に影響されたわけではないが、プチデビュしてみた。
弁当男子。
とは言っても先週末、春巻きの材料にするために鶏そぼろを大量に作り、それが余ったのでご飯にかけただけの代物である。朝の準備時間1分。超簡単。その他のおかずは買って調達。
なんと今日で4日続いている。これだけで体重が0.8kg減少した(誤差?)。やはり揚げ物を食べないことが減量の近道である。そのうちおかずもちょっとずつ手製で持っていくことにしよう。何かを習慣化するときには小さくこつこつと始めるのがよい(といいつつ来週には弁当男子を止めてるかもしれないが)。

それにしても暑い。
研究室は暑い。
なぜなら、実験材料を冷やすために冷蔵庫・冷凍庫がたくさんあるからである。そして毎日毎日「節電のご協力をお願いいたします」との放送が大学内に流れる。廊下の電気は随分前から点灯していない。トイレのエアータオル(風で手を乾かす機械)の電源も先日遂に落とされた。培養室も電気オフ(細胞を扱うベンチのライトは流石につけるが)。席を立つときにはパソコンはオフ。
地下鉄の窓もそういえば随分以前から開放されている。家に帰っても団扇をあおぎ保冷剤を首に巻く。テレビをつければ「電球はLEDにしろ(とまでは言ってないけど)」とメディア様の情報発信。
そのうちiPhoneやiPodも電気を食うからといって取り締まられるかな。週末はエアコンのフィルタ掃除とベランダに簾をかけねば。向こう何年節電が必要なのだろうか。

本を購入。

超!文献管理ソリューション (讃岐 美智義, 秀潤社)

この2ヶ月程、どんどん論文がたまっていっている。読んだのか読んでないのか。そしてどこに行ったのか、どこに行くのか。ファイリングも限界である。そして、いい加減、USBに文献をちまちまと保存するのも限界だ。本書では様々な文献管理方法が紹介されている。取り敢えず大学ではENDNOTE webが使用可能なので、本を片手に使い始めた。私のように文献でいらいらいらいらしている方には、とってもお勧めの本である。

2011年6月8日水曜日

(研) こんなことってあるんだろうか


写真よくないですが。
C3だけ黄色いのは分かります。
ここだけコンタミしてました。
こんなことってあるんでしょうか。
8連チップで操作してたんですけどね。

(雑) 2位じゃダメだろ

Nature Medicineの6月号で「中国は大学院生にもっとお金を投入せよ」との意見が掲載されている。
http://www.nature.com/nm/journal/v17/n6/full/nm0611-655.html?WT.ec_id=NM-201106

金を「金のなる木になる可能性が高い人」に投入するのが、あるべき国のお金の使い方だと思うが、至極真っ当なことが主張されている。それはともかく、この論文によれば、地球上にいる200ミリオン(2億)人いる2型糖尿病患者のうち、半分くらいが中国にいるらしい(NEJM 362, 1090-1101, 2010)。

これを読んで思い出したが、先日のJournal of Anesthesiaにも中国・韓国・日本の「麻酔に関する論文掲載数」の屈辱的なグラフが掲載されていた(http://www.springerlink.com/content/g66660130m24u802/)が、「まぁ海の向こうには13億人もいるんだし、しょうがないじゃん?」と無抵抗に諦めるのはさらに屈辱的である。奮起せよ、日本人!(というか私・・・)

2011年6月7日火曜日

(研) 杵柄流用

今日は人生で初のことを2つした。

其の壱:マウスの尾静脈に注射。マウスの尻尾には左右に2本の静脈と、頭側に1本の動脈がある。静注するときは左右どちらかから、という訳。
だが、「絶対無理。こんな細い血管に入るわけないじゃん」と思っていた割には、25G針でそれほど難渋することなく静注することができた。失敗すると刺入部局所が腫れてくるからすぐ分かる。逆に上手くいくと暗赤色に見える静脈がすぅ~~っと透明になり、液体が中枢側に流れていくのが分かるため、血管内に入ったか否か、がとてもよく分かった。お子ちゃまの静脈路確保よりは簡単だった。麻酔科医やってたお陰?

私みたいな初心者には以下の本が大変参考になる。

マウス・ラット実験ノート―はじめての取り扱い、飼育法から投与、解剖、分子生物学的手法まで (無敵のバイオテクニカルシリーズ) (羊土社)

其の弐:ウサギに皮下注。
こちらは暴れまくったため、師匠にチェンジ。ウサギ君、すまん。麻酔科医は皮下注はあんまりしないんだ。

2011年6月6日月曜日

(本) 喜婚男と避婚男 - ツノダ姉妹

タイトルが面白いので読んでみた。

著者らの主張によると以下のように概ね定義されるらしい。
・喜婚男:妻への愛を声高に宣言し、オウチでの家事や育児を全くいとわず、仕事よりオウチに価値観を置く男性
・避婚男:結婚「できない」ではなく結婚「しない」男性(1980年代-2000年頃の社会進出してきた女性と同じような理由による、、、つまり・・・料理や家事はできるし、趣味を共有できる仲間もいる。敢えて結婚して、他人を家の中に入れようと思わない男性。これまで割とオタク文化に染まってきたような男性も含まれる)

著者らの分類による女の時代(男女雇用機会均等法ができた1986年。その後、ブランド物を買い漁りに海外旅行に繰り出し、ナイトライフを男性のように楽しむことができるようになった強欲の塊のような時代。結婚?まだいいわ、と多くの女性が言っていた時代)は過ぎ去り、今は男の時代になっているという。「仕事は俺がやらなくても替わりがいる、けど夫、父親は俺以外には代替不可能だ」とばかりにイクメンはオウチ仕事に精を出し、社会情勢もそれを応援する・・・そんな世の中らしい、今は。ふぅん。

所謂、バブルの空気を20代頃にたっぷり吸い込んで生きてきた著者らの筆致にしては、随分と謙虚で抑制のきいた文章のように感じられた。ここ20-30年の「メディアの中で語られそうな世の一般庶民の時代の趨勢」が概説されており、「ふーん、私がこれまで生きてきた時代ってそんな風に語ることもできるんだ」と妙に感心して読ませてもらった。
が。
メディアどっぷりな物の書き方で、果たしてここに描かれているような人生を送っている人、送っていた人、これから送る人、が本当のところ世の中にどれくらいいるのだろう。
著者らが本書の後半で危惧していたのが「イクメン燃え尽き症候群」ともいうべき、オウチ事も仕事も完ぺきにやろうとして灰になってしまう男性の増加。おそらく勝間和代氏のようになろうとして燃え尽きていった女性たちから連想しての発言なのだろうが、女性が「あれもこれも」やろうとするのに対して、男性は「あれかこれか」の傾向が強いような気がする。「イクメン燃え尽き症候群」は杞憂ではなかろうか。
それにオウチ事をきちんとやりたがるような超合理的マインドの持ち主ならば、会社などでの仕事もきちんとこなす「デキる」ビジネスマンである可能性が高い気がするのは私だけだろうか。お気に入りの家電で掃除や料理はしっかり。でも職場では「まぁ、俺の替わりなんていくらでもいるさ、怒られない程度にやっとくか、あぁめんどくさ」という男は、むしろ希少な存在なのでは。
おそらくこの著書は、著者らの仕事である「マーケティングに役立つ名刺代わり」のようなものなのだろうから、読書対象者は、著者らが仕事相手にしているであろう「イクメン相手に物を売って潜在的な消費を掘って掘って掘り起こしたい企業の方々」なのだろう。

全体を通しては、私には「ふぅん、そうなんだ。そんなに喜婚男、イクメンとやらが増えているのか」という感想しか出てきませんでした。料理はほぼ毎日し、週末は風呂掃除や掃除機かけなどの家事もするし、近所のスーパーで値札を見て「今日は小松菜が安い!」と、小松菜と目が会った瞬間に判断できる程度には生活人化されている私だが、だからといって喜婚男かって言われても、なぁ。そんなに単純じゃないでしょ。だいたい家事なんて男でも女でも誰でもするんじゃないのか…(子育てに関しては子供がいないからわからないが)。私は1人でやる趣味は大好きだが、「掃除機はダイソンじゃなくて~~~がいい、それは~~の機能が~~だからさ~」とか他人からしてみたら「どうでもいいじゃん」で一蹴されるようなゴタクを並べ立てる男はno thank youである。

段々話が逸れてきた。

独身女性が本書を読んで結婚相手を探す戦略をたてる(というか最近の男性の一般的傾向を学ぶ?)・・・というような使い方は難しいのではないかと、私には感じられました。が、ここで描かれている男性像は「マクロの視点」からは大きく実態と逸脱していないような気がしますから(私の周囲にはあんまりいないってだけで)興味がある方は読んでみてもよいのではないでしょうか。

私的には結婚観は以下を採用していますが。2010年8月22日にも引用したが、ここに再掲させていただく。

***
一緒に暮らす他者と、あなたは気持ちが通じないこともあるし、ことばが通じないこともあるし、相手のふるまいのひとつひとつが癇に障ることだってある。そして、こう思う。「この人が何を考えているのか、私には分らないし、この人も私が何を考えているのか、分っていない」それでオッケーなのである。結婚というのは「そのこと」を骨身にしみて経験するための儀礼なのである。(中略)自分を理解してくれる人間や共感できる人間と愉しく暮らすことを求めるなら、結婚をする必要はない。結婚はそのようなことのための制度ではない。そうではなくて、理解も共感もできなくても、なお人間は他者と共生できるということを教えるための制度なのである。(内田樹 ― 街場の現代思想 161頁)
***

皆難しいこと考えすぎなんじゃないか。どこの誰だかわかんないような異性と結婚させられていた時代もあるんだしさ。と不遜にも私は思う。

2011年6月4日土曜日

(雑) Anesthesia all night Long

胆管の手術だと術野なんて見えやしない。BISモニターを貼って、患者さんが覚醒しない範囲で限界までセボフルランを薄くしてみたり。とは言ってもEtSevにして0.7%程度が限界だろうという予想通りに結果になると、すぐ飽きる。

漸く自覚的に快方に向かいつつあった5月23日発症の今回の風邪だが、金曜の麻酔の日当直のために回復の速度が鈍る。むしろ増悪。しかし金曜の麻酔が貴重な収入源となっている今の学生生活では、例え研究室を体調不良で早退しても、この日の当直は不退転の決意で完遂せねばならないのである(そんな大したことじゃないが)。学問が疎かになってるような気もするが、大人になって勉強するってのは、まず金銭的余裕を自分で確保しなくちゃいかんということですな。

それにしても仕事をしていたら夜が明けていた、というのは久しぶり。朝の8時前から麻酔の準備をして、肺外科2件。夕方に2時間くらい隙間時間が出来たが、その後呼ばれて2件の緊急手術。お疲れ様、私。よくやった。
お陰様ですっかりREBECCAの「FRIENDS」が嫌いになりました(深夜に頻回に鳴っていた夜勤看護師さんのPHS着信音)。

深夜だと「嵐」でも何でも喜んで聴けます。

完璧なんてな~い、Do it, do it!

2011年6月3日金曜日

(雑) 2ヶ月たちて

そういえばデスフルランが発売された…が実際に使う日は来るのだろうか。
これまたそういえば、なのだが、アセトアミノフェンが1000mg/回、4000mg/dayまで使用可能になっていた。
http://www.e-paincontrol.com/main/3_flashnavi/pdf/calonal_wholesale.pdf

これまでは上限量が少なかったため、鎮痛量として不十分だった人たちには適切な量を投与できることになったのでよいような気がするが、過量投与による急性肝傷害が起こる心配もある。

***
大学院に入学して2ヶ月経った。
主体性のないままに小中高大学と卒業し、医師になった私。

これまでの計18年間の学校生活においては「これを解いてみましょう」と「答えのある、与えられた問題を解くこと」に重点が置かれ、「何が問題なのか」について、殆ど注意が払われなかった。
注意が払われなかった、というのは勿論私個人において、である。これまでの学校生活において、(少なくとも高校生くらいまでは)教科書に記載されていることを信じて疑わなかったのは、疑うに足るだけの知識や思考力が欠落していたためである。第2次世界大戦や領土問題についての記述が出版社によって違うのは卑近でわかりやすい例えだが、科学分野においても、そこに書かれたものが「誰かが主張した、多くの人に受け入れやすかった物語」である以上、未来において覆される可能性が常に秘められている。

私の人生において、今はじめて、「何が解決されていない問題なのか」を、他人事ではなく自分の問題として、考えるにいたった。

人生という自由度の極めて高いロールプレイングゲーム(RPG)の中で船(本当に移動範囲が広がる飛空艇ではない)を手に入れた時に似ている。それまでの、「自分の足」しか移動手段がなかった状態から、行ける範囲が急に広がり、陸に上がれるところなら何処にでも上陸できる。だが、下手に上陸すると、自分のレベルに対してあり得ないくらい強い殺傷力があるモンスターに遭遇して、一撃で息絶える。そこかしこに「こっちに行ったらいいよ」と言ってくれる助言者がいたり、進む方向を示唆してくれる情報の書かれた紙が転がっていたり、目的を達成するための道具が落っこちていたり。

実際には、RPGの主人公と違って、死ぬことは極めて稀なのだろう。だが、「研究のテーマを自分で考えて好きなふうにやっていい、失敗してもいい」と言われてその通りに行動するのは、これまで「一般的に認められている標準的な方法で、患者さんに害のないような方法で麻酔をやれ」と、遺伝子導入されて子孫に伝わってしまうのではないかという位に刷り込まれた私には、やや困難なことである。

あぁ、いつの間にかこのように自分の思考も硬く縛られていたんだなと、新鮮な驚きでもって自分を見つめ直せたのは嬉しい発見ではあったのだけれど。

私のような人間を食べる捕食者がいないという世界において、私は「食べられないように逃げること」以外に思考を向けて生きていられるので、それはとても幸運なことである。

というような取り止めのない妄言の羅列が私の脳から吐き出されるような状態が、今の私の状態。

2011年6月2日木曜日

(本) 話を聞かない医師 思いが言えない患者 - 磯部光章

どこかで見たことがある名前の著者だと思って本の背表紙のプロフィールを見たら、それもその筈でした。何と失礼な私。
本書は、全ての「思いが通じ合っていないなぁ」と考える医師、患者双方におすすめできる本。

・我が国の文化はコンシューマリズムが定着するほどには成熟していないことである。(p57)

に代表されるように、多くのコミュニケーション不全は、患者側が、「レストランやホテル等のサービス業と同列に医療が提供されるべき」と考えていることや、「正しい診断や検査がなされてしかるべき」とか「何かミスがあったら訴えてやろうかな」と心のどこかでちょぴっとでも思いながら医療を受けていることから始まる。そして、勿論患者側だけの問題ではない。医師側は「自分が医療知識をもたない患者だった頃の自分」をすっかり忘れて、噛み砕いて分かりやすいような言葉を使っているふりをしながら、インフォームドコンセント用紙に検査や治療への同意のサインを患者さんにもらうことを至上の目的としている。目の前の患者が何を求めて、どういう人生の物語の途中で、診察室の自分の目の前に座っているかを忘れてしまっているのだ。

お互いの想像力が極めて限定的であること、医療の進歩のため、相手の立ち位置がもはや想像不可能なところまで広がっている。laborとconsumerに成り下がった医師と患者が読むと、お互いの立ち位置が確認できて有用だろう。

***
上記著作とは全く関係ないが、以下は自分への戒めとして心に刻んでおこう。誰の発言かは分かると思いますので。発言者が発言者だけにジョークとしか思えないけど。

人間、嘘をついてはいけません。私どもはお辞めになって頂きたいと、そのことでの確認事項としての要件を申し上げた。(菅総理は)それで結構だと。その後、執行部がまた嘘をつくようなことを平然と行うようなことであれば、また対応が変わってくる可能性はあります。 (テレ朝news 06/02 17:54より)