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2011年5月1日日曜日

(麻) 抄読会(ジャーナルクラブ)メモ、と新生活1ヶ月経ちて


しばらく自分で担当しないので、ポイントをまとめておくことにしよう。

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論文の全てを10-13分程度で発表するのは不可能である。

でも「まとめろ」といわれても、その具体的方策が示されないと時間と気力だけが削がれていく。日々忙しくやることもいっぱいある。抄読会だけに労力を使うことはできない。

「どれくらい抄読会に向けて頑張ったか」はあまり関係なく、「聴衆の特徴を理解し、どのレベルが求められているのかについて想像力を働かせること」が重要。聴衆はそれらについて厳しく演者を査定する。(そして演者の耳に評価が届くことはあまりない。大人だからね。面と向かって「ここはこうすればよかった」と言ってくれる人はそれほどいません)

@心構え
・発表内容が膨大だと、それだけで準備不足と思われる。
・「この部分はよくわからなかったんですけど・・・」と発表中に言わない。後でつっこまれないようにとの防御線としての発言かもしれないが、聴衆は「この場にいる人の中でこの論文について最も時間と労力を費やしてきた発表者ですらよくわからないものを、たった10分くらいしかない中で、なぜわざわざ、それに言及し我々を混乱させるのか」という不信感をいだく。もし論文を読むに当たって重要な統計学的手法があり、それの解説なしには聴衆が理解不能だろうと思うようなものに、運悪くあたってしまったとしても、一生懸命調べて発表すれば(そしてある程度コンパクトに説明できていれば)、わざわざ「よくわからなかった」ことを吐露する必要はない。むしろ聴衆に対して失礼である。「わからなかったことを発表する場ではない」ということを理解する。
・聴衆の中には発表者より膨大な知識をもつ先生方も当然ながら多い。だが、「今話している内容は自分が一番詳しい」という気概をもって、そして「なんとしてでも理解してもらうんだ」と考えるべき。

@実際の準備の流れtips
*何よりも大事なことは、「何も考えずに頭から読み始めない」ことである。
0.抄読会の予定が発表されたら可及的速やかに論文を手に入れ、どの位のボリュームなのか把握する。そしてぱらぱらと眺める。臨床的なものだったら準備にあまり時間かからないかな、とか基礎的内容だったり、統計を多用していて準備に時間がかかりそうだ、といった点から、どの位準備に必要なのかを予想する。
1.論文タイトルを読み、何についての論文かつかむ
2.abstractを読む。不明な単語や不明な用語の意味を調べる。そしてabstractの意味をまず掴む
3.本文の図表をみて、何について書かれたものかをおおよそ見当をつける。ぱっとみて、何についてかかれているのかわからなければ、まずはその論文を読むのに必要な知識を、日本語で集める。この場合、Google scholarや雑誌(特集や総説などを探す)、教科書(Miller、麻酔、臨床麻酔、LiSA、その他)、医中誌が役に立つ。英語を訳すときに自己流の変な日本語をつけることを回避するためにも、日本語で知識を得ておくことは重要
4.背景知識をそれなりにもったら、初めて本文を読む
5.introductionから順にスライドを作るのもよいが、「図や表をまず貼りつけて、その説明から取りかかる」ことも推奨。これは「わざわざ著者が図表を示してまで読者にわかってもらいたいこと」というメッセージ、すなわち論文の肝であることが多いため。図表が多いと聴衆が興味を維持しやすいというのもある。
6.①「はじめに」②「material and methods」③「result」④「discussion」でじっくり聞きたいのは②と③、知ってるとためになる④の一部。だからそこに発表時間の大部分が注がれるようにスライドも作成。ということは①はせいぜい1枚か2枚でまとめる(それも大きい文字で)。

@スライドの作り方tips
・聴衆にストレスを与えないように気を配る
・パワーポイントならフォントは24-28程度。22以下は小さいので、表やグラフの説明には利用することも許容されるが、本文では使わない方がよい。小さいフォントで「はじめに」のスライドが出てきた瞬間に聴く気がなくなる人もいることを想像する。自分が聴衆だったら、朝の眠たい時間に目をこらさなきゃ読めないようなスライドを集中して読めるだろうか。小さい声の発表を聞き取ろうと努力するだろうか。
・1枚1分のルールがある。それに準ずると抄読会は10枚くらいになってしまうが、それだとあまりにも少ない。パッと見て理解できるスライドもあるだろうから、どんなに多くてもせいぜい20枚程度にまとめられるようにした方がよい。
・論文の内容全部を発表する必要は全くない。
・図表は発表の中でカットしない。原則すべて提示する。著者は、図や表にしなくてもいいものをわざわざ投稿しない。それくらい重要。
・図や表は読めるように貼る。PDFファイルでダウンロードした論文の図表をパワーポイントに張り付けることが多いが、文字がつぶれて読めないことは絶対に避ける。コピー元の表を「なるべく拡大してパソコンのディスプレイに表示した状態でSnipping Tool等を使ってコピーをする」等の方法を考慮。発表時に聴衆が読めないものを提示するのは意味がないどころか、ストレスを与える効果しかない。「小さくて見えにくいかもしれませんが・・・」と発表中に言うのは「最大限読める様に努力して提示してから」言うべきである。大きい表なら、読めるようなサイズにして分割して貼り付けてもよい。

@発表するときtips
・必ず1人で全体を通して「時間を測定して」予行練習の喋りを行う。声に出すことでスライド作成時や黙読時には気づかなかった誤字、脱字、論理の飛躍、等々に気づく
・自分が聴衆の1人だとして、「なにをいっているのか分からない」項目やスライドは大胆にカットした方がよい場合もある
・オペ室のマスクは必ず外して喋る
・全員に聞こえる音量で話す~内容がどんなにまとまっていても、耳をすまさないと聞こえないのでは、それだけで聞く気がなくなる人も出てくるし、作成に要した努力は水泡に帰す
・なるべくゆっくり話す
・喋り原稿はあってもよいが、可能な限り「スライドを見て話せるようにスライドを作る」ことが重要。
・聴衆はその時になって初めてスライドを見る。スライドを読むだけで精一杯。提示されていない余計なことを説明すると気が散るおそれがある。スライドにないことを喋ろうとして読み原稿のどこに書いてあったかを探して時間を浪費してしまったり…それによって本当に伝えたいことが伝わらなくなる
・発表内容にどれくらい興味や関心を持つ人がいそうか、を想像する。聴衆に、発表内容に関連する研究をしている人や造詣が深い人がいたら、「そういうテーマに当たってしまった」と、入念な準備の下に覚悟を決めてやる必要がある

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今日で大学院生生活が始まってマル1ヶ月経った。
はっきり言って殆ど進歩がない。マイクロピペットのメモリの読み方と使い方は取り敢えず覚えた。あとは、何をすると癌細胞たちがコンタミの洗礼に遭うかもおぼろげながら分かった。培養ディッシュの癌細胞を継代するときに、どの位PBSとトリプシン処理をすれば培地から細胞が剥がれるかも、今扱っている癌細胞については何となく感覚がつかめてきた。
しかし、週1回のミーティングの際に飛び交う単語や略語や実験手技、試薬などについては未だに殆ど理解できない。手元には自分で検索して読んでみたもの、ボスからのギフトなど、計25の英語の原著・総説論文がある。どの論文も「discussion」で何を言いたいのかはおぼろげにわかるのだが、「method」の部分を読んでも、「~~を調べるために~~の実験をした」というところがまだ、さっぱりつかめない。1つの論文あたり15分くらいでささっと読むもんだ、と入学して2週間くらいでボスから指導(?)を受けたが、未だに15分じゃabstractも読みきれない。
さっぱり分からない上に、大学院の4年間でどこまで行けるのか、というかどこが目的地なのかもまだ分からないが、自分がこれまで働いていた病院の隣の建物で、これほど私に理解できない世界が広がっていたのか、ということが感動に値する事実であった。今はわけが分からなくても、そのうちにきっとちょっとずつわけが分かってきて、自分で何が問題なのか、これを調べたら面白いんじゃないか、と思える日がくるような妄想に近い予感だけはするのが不思議。もがき方が適切ならば、事態は恐らく好転してくる筈である。

Stressed or bored (ストレスを選ぶか、退屈を選ぶか) (ようこそ私の研究室へ ― 黒田達明 p.125)
である。

しかし、夕飯が23時位になってしまうのは、何とかしないといけない。後は走る時間を何とか確保しなくては。学生生活が再開したからといって、体重まで大学生の頃と同じ(今の体重+9kg)になるのは、是が非でも避けたいところ。