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2011年5月3日火曜日

(麻) 知らないことがクライシス

3連休初日。
大学に向かう朝の電車が空いていて、とても快適である。
結構社会は暦どおりに動いているものなのだ、ということを実感する。


***
Anesthesia & Analgesia 2009; 108:1463-4
のEcho Roundsより。
実験の合間にちょうどエコーの勉強会を医局でしていたので、レジデントの先生の発表を聴く(月曜日の話)。

取り上げられている症例は心内カルチノイド腫瘍の切除と三尖弁置換術なのだが、PFOを合併し右左シャントがある。カルチノイド腫瘍→右心系病変 の思考回路は国試レベルで散々刷り込まれているが。以下メモ。

・カルチノイド腫瘍にPFOが合併しやすいと言うことはないようだ。少なくともpubmedでは引っかからない。
・有病率は1-2/10万人
・麻酔上の問題点として気管痙攣や、稀に心筋内腫瘍(本症の中でも4%程度。症状があるのはその内の20%)、carcinoid crisisがあるらしい。

さらっと書いたが、carcinoid crisisとは

However, tumor manipulation may, by massive release of mediators, trigger an acute, potentially lethal carcinoid crisis. (下の<1>より) 

というようにセロトニン、ヒスタミン、ブラジキニンのようなメディエーターが手術侵襲・腫瘍操作により大量に放出される恐ろしい病態のことらしい。
鎮痛はがっちり、ヒスタミン遊離するような薬は使わないほうがよさそう、ソマトスタチンアナログは歴史的には推奨されてきたがエビデンスには乏しいようだ、カルチノイド腫瘍患者にはPACを無闇に入れてはいけない(無症状だが心内腫瘍が隠れているかもしれないから)、などが収穫か。
ざっと見しかしていないが、英語で得られる麻酔領域の最近の論文はないようである。


<1>Somatostatin Does Not Prevent Serotonin Release and Flushing during Chemoembolization of Carcinoid Liver Metastases. Anesthesiology 2003; 98:1007–11
<2>Carotid Crisis during Anesthesia: Successful Treatment with a Somatostatin Analogue. Anesthesiology 1987; 66:89-91
<3>Remifentanil and anaesthesia for carcinoid syndrome. Br J Anaesth 2004; 92:893-5.
<4)カルチノイド症候群の麻酔経験. 麻酔 1993; 42:1047-52.

このような腹腔内腫瘍で、開腹術が必要な患者さんがきたら、
・心不全の有無チェック。エコーの依頼はcase by case。術中TEEもcase by case
・麻酔導入~術中はremifentanilのみで鎮痛。挿管時もがっちり鎮痛して気管痙攣に備える。腫瘍への操作が終了する術終盤から術後にかけて硬膜外を使用(ただし血圧が下がらない程度に)。モルヒネやペチジンは使用しない
・ソマトスタチンアナログの使用は・・・相談。

かなぁ。

追記(20110614)
レヴューが掲載されている。
Carcinoid syndrome and perioperative anesthetic considerations. Journal of Clinical Anesthesia (2011) 23, 329–341

要約
Carcinoid tumors are uncommon, slow-growing neoplasms. These tumors are capable of secreting numerous bioactive substances, which results in significant potential challenges in the management of patients afflicted with carcinoid syndrome. Over the past two decades, both surgical and medical therapeutic options have broadened, resulting in improved outcomes. The pathophysiology, clinical signs and symptoms, diagnosis, treatment options, and perioperative management, including anesthetic considerations, of carcinoid syndrome are presented.

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