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2011年5月30日月曜日

(麻) 麻酔科専門医試験の過去問公開

たまたまDaturaを覗いたら

学会ホームページ
→会員の皆様「Datura」(会員専用のページ)
→認定申請について(ページ左側のバナー)
→専門医申請
→「麻酔科専門医試験過去問題について」

今日付けで2007年-2010年の4年分の実技試験、口頭試験が閲覧可能になっている。2010年分が未入手だったため、ありがたい。
・・・が口頭試験は、やはり難しい気がする。
見たかったような見たくなかったような。

5月23日来の風邪。治る気配が全くない。

2011年5月29日日曜日

(音) Gleeで歌われた名曲たち

アメリカのテレビドラマシリーズ。
Gleeの1シーズン(22)1ヶ月と少々かかって完了。

歌のレベルが非常に高い。
全曲カバー。その選曲がよい。

カバー曲の真の価値は「それを聴くと、オリジナルの曲が聴きたくなる」です。これは間違いない。カバーしたアーティスト(このドラマの場合には製作スタッフ)が、原曲を歌うアーティストに最大限の敬意をはらって、選んでいるのだから。その意味で、このドラマは金字塔を打ち立てている。

原曲のよさを再認識できる曲(AerosmithDream onも歌ってくれるの!?)や、こんなによかったっけこの曲(LADY GAGABad RomanceとかQueenAnother one bites to dustとか)、とかいろいろあって人によっていろんな楽しみ方ができそう。
 
全編 日本語吹替え/英語字幕 で見たが、違和感はあまり感じなかった。
Quinnの吹替えの水樹奈々には是非歌も吹替えてみて欲しかったけど。

よかった曲上位5曲 / オリジナルアーティスト
1. Hello (第14話) /  Lionel Ritchie
2. Bust your windows (第3話) / Jazmine Sullivan 
3. Poker Face (第21話) / LADY GAGA (こちらは原曲と異なるバージョンでバラード調になっている)
4. It’s My Life + Confessions Part II (第6話) / Bon Jovi  + Usher
5. I dreamed a dream (第19話) / Les Miserablesより

Rachelが第10話でElton Johnの「Sorry seems to be the hardest word」を歌っていれば、Best5に入っていたなぁ。是非歌って欲しかった。

2011年5月28日土曜日

(麻) 赤ちゃんじゃないよ

Expansion of the Surgical Apgar Score across All Surgical Subspecialties as a Means to Predict Postoperative Mortality. Anesthesiology 2011; 114:1305–12
より

The Surgical Apgar Scoreについて。この論文では電子チャート等の情報から12万人超えの患者記録を拾い出し、手術部位別に解析した点数と術後死亡率(day7, day30, day90)との相関が見られることを示している。勿論、統計学的パワーが不足していて手術部位によっては有意差が認められないものもあるが、綺麗な相関関係のグラフが描かれている。

ちなみにThe Surgical Apgar Scoreは以下のたった3項目で0点から10点で表す。
0点が最も低い(予後が悪いとされる)。

概算出血量(Estimated blood loss)(ml)
 0点: >1000、1点:601–1000、2点:101–600、3点:1≦100、4点:-
最低平均動脈圧(Lowest mean arterial pressure)(mmHg)
 0点: <40、1点:40–54、2点:55–70、3点:≧70、4点:-
最低心拍数(rate/min)
  0点: ≧85、1点:76–85、2点:66–75、3点:56–65、4点:≦55
The Surgical Apgar Score is calculated at the end of the operation from the estimated blood loss, lowest mean arterial pressure, and lowest heart rate entered in the anesthesia record during the operation. The score is the sum of the points from each category.


初出の論文はこれ
Gawande AA, Kwaan MR, Regenbogen SE, Lipsitz SA, Zinner MJ: An Apgar score for surgery. J Am Coll Surg 2007; 204:201– 8


多分色々突っ込みどころはあるし、更なる研究は必要なのだろうが、何より簡単だというところがこのScoring systemのよいところだろう。手術終了時に計算可能だし。個々の症例に還元するのは難しかろうが、「どの程度intensiveなcareが術後に必要か」の1つの目安にはなるかも。

2011年5月26日木曜日

(音) Amorphis ― The Beginning of Times (2011年, Finland)

すいません。完全に裏切られました。
これは非常によいアルバムです。

フィンランドのメロディックデスメタルバンドの10作目のスタジオアルバム。
フィンランドの民族的な音楽を取り入れたヘヴィメタル、と評される彼らの音楽。これまでも作品のレベルの高さに何度も傑作と呼び声が高い作品を作っている。が、これまでのものは「いいんだけど、もうちょっとなにかがほしいなぁ、ごにょごにょ」と思っていた。
本作が初めて私にとっても傑作!と言える作品になっているのは、おそらく分かりやすい歌メロになっていて、聴きこみをあまり要さない曲が多いためかもしれない。この分だと、これまでの作品ももっと聴きこまねば・・・。

1. Battle For Light
2. Mermaid → killer tune
3. My Enemy
4. You I Need
5. Song Of The Sage
6. Three Words
7. Reformation
8. Soothsayer
9. On A Stranded Shore
10. Escape
11. Crack In A Stone
12. Beginning Of Time
13. Heart's Song

2011年5月25日水曜日

(本) 今こそアーレントを読み直す ― 仲正昌樹

そもそもアーレントという哲学者の名前を知ったのは、佐藤優氏の著作からだったと思う。霧深い摩耶山の夜をともにした一冊。

一つの方向へのひねりしか教えてくれないようなのは、大して面白い思想家ではない。(p23)

と著者は述べているが、アーレントという人の思考はひねくれていて、そのひねくれ方が面白いらしい。私はまだ、アーレントの著作を読んでいないし、読まないかもしれないし、読んでも理解できないかもしれないが、本書には震災後の混沌とした状況(を元にして投げかけるメディアの情報)と可能な限り対当に対峙するために役立つ知恵が散りばめられていた。著者が卑近な例を多用してくれたお陰で、私のような、哲学に縁のない人間でも読み通すことができた。自分の考え、というものは良くも悪くもこれまでの自分の生活史に束縛されるものだが、そういった「自分の考え」というものが、この世にいる人間の数だけあるということを想像するくらいの想像力はあってもよいだろう。そのような視点を忘れて世の中をみると、とんでもない間違いをしかねない。

・誰の世界観が一番ましで、信用できるかが問題ではない。そういう発想自体がズレている。肝心なのは、各人が自分なりの世界観を持ってしまうのは不可避であることを自覚したうえで、それが「現実」に対する唯一の説明ではないことを認めることである。(p57)
・「○○がこれ以上勢力を増すと、間違いなくいつか来た道を辿ることになる」と断定的に語る人も、危ない物語的世界観にはまっているのではないかと疑うべきだろう。(58-9)
・アイヒマン問題に限らず、一般的に言えることだが、ある重大な犯罪あるいは不祥事に関して、「あなたも同じことをやるかもしれない」と言われると、多くの人は、「そんなこと言われたら、実行した人間の責任追及をできなくなるではないか!責任を曖昧にしたいのか!」と思って、感情的に反発する。そのように反発するのは、「前代未聞の悪いこと」をする人間には何らかの人格的欠陥があり、普通とは違う異常な判断・振る舞いをすると想定しているからである。(66-7)
・「不幸な人々」に共感することを、人間としての正しいあり方として押し付ける排他的な価値観に繋がりやすい。場合によっては、苦しんでいる人たちに共感しない者たちを、最初から人非人として排除しようとする傾向を生み出す。(130)
・ある具体的な問題の当事者は、当事者としての経験ゆえに、その問題に関して一般の人より多くのことを知っている可能性が高いが、自分の置かれている状況を客観的に把握している訳ではない。(210)

2011年5月24日火曜日

(本) 向上心 ― サミュエル・スマイルズ(竹内均訳)

誠に恥ずかしながら、今回の麻酔科学会総会での私は全く集中力を欠いていた。リフレッシャーコースを1つも申し込まなかった上に、興味ある演題やシンポジウムに参加しても、ありがたい講演の内容はほぼ全てが右から左に流れていった。演者の皆様、ごめんなさい。
そんな「学会に参加したと言うのもおこがましい」私をびしっとしめてくれる1冊。

・働きすぎて命を落とした人も確かにいる。しかし、気ままに自分本位の怠惰な生活を送ったために死んだ人のほうがはるかに多い。(p81)

本書は下手な自己啓発セミナーに行くより(そういうセミナーには行ったことないけど)、よっぽど安く、しかも反復可能で、身に染みる内容が満載。スマイルズの著書に「自助論」もあるが、そちらも非常にお勧めできる内容である。勤勉な医師の皆様には必要ないと思われるが、私のように「やる気バロメータ」が上がったり下がったりする人間には、このような「偉い人の言葉」が必要なのであった。

***
投稿ラベルに「麻酔専門医試験」を追加。移動中に見て思い出しやすいように、過去の投稿のいくつかにラベリングしてみた。

2011年5月22日日曜日

(麻) TRALI(輸血関連急性肺傷害, transfusion-related acute lung injury)

・1951年Barnardらにより,輸血関連の非心原性肺浮腫として報告される。
・1983年Popovskyらによって現在のTRALIと命名された.
・死亡率は6-10%
・輸血関連死亡の上位を占める(多くの死亡例はFFPで報告されている)
・診断は下記を全て満たすもの(除外診断的要素が強い)

TRALI の臨床的診断基準
TRALI の定義(European Haemovigilance Network:EHN)(下記文献1)
・急性呼吸障害
・両側肺浸潤像(胸部X 線検査)
・輸血後6 時間以内の発症
・輸血による循環過負荷は否定
TRALI Consensus Conference Committee in Toronto(2004)による追加事項 (下記文献2)
・低酸素症(PaO2 / FiO2<300またはSat O2<90%または他の臨床症状)
・新たな急性肺障害(acute lung injury, ALI)であり,誤嚥,複雑外傷,肺炎,心肺バイパス,熱傷,毒ガス吸引,肺打撲,急性膵炎,薬物過剰投与,溺水,ショック状態,敗血症など,ALI の他の危険因子が存在しないこと
・ALI の危険因子が存在する場合,TRALI(疑い,possible TRALI)と診断すべきである

(1)European Haemovigilance Network(EHN):Definition of adverse transfusion events.(Available from http://www.ehn-org.net)
(2)Kleinmann S, Caulfield T, Chan P, et al.:Towards an understanding of transfusion-related acute lung injury:Statement of a consensus panel. Transfusion 44:1774-1789, 2004


・多くは1-2時間で発症
・多くの症例(約81%)でX線による肺水腫像も96時間以内に消失する
・特に新鮮凍結血漿と血小板製剤輸血時に多い


頻度
・免疫学的機序TRALI:輸血5,000単位に対して1症例,輸血625症例に対して1症例程度)
・非免疫学的機序TRALI:血球含有製剤(赤血球濃厚液や血小板製剤など)で1症例/1,120 輸血,血小板製剤は1症例/453輸血,赤血球製剤1症例/4,410輸血


鑑別診断
1.輸血関連循環過負荷(transfusionassociated circulatory overload:TACO)
2.心原性浮腫
3.輸血によるアレルギー性反応・アナフィラキシーショック
4.細菌汚染製剤の輸血(1-2時間以内に発症。)
・循環過負荷による肺水腫とTRALI を鑑別する場合,TRALI症例ではCVPおよびPCWPが正常
・.細菌汚染製剤の輸血では,発熱,血圧低下などを初症状とすることが多く,特に室温(22℃)保存する血小板製剤を輸血する際に注意が必要

治療:早期に確定診断し,迅速に対処。呼吸困難の程度に応じた呼吸管理.必要に応じて挿管,人工呼吸を考慮.BNPは通常上昇しない(BNP↑ならTACOかも)
Popovskyらが報告した36症例では,全例呼吸管理を必要とし,26症例(72%)は人工呼吸管理を必要とした.利尿薬やステロイドの有効性は疑問視されている.微小循環内皮細胞傷害が病態の根幹であるため,循環負荷によって改善する

出典:Anesthesia 21 Century Vol.10 No.2-31 2008
出題:47C31-32

***
輸血はこれまでひじょ~に多く使ったが、「こりゃTRALIだ!」っていう場面に遭遇したことないなぁ。輸血5000単位に1例あるなら、1つくらい見ていてもよさそうなものだけど。

2011年5月20日金曜日

(麻) 私的初神戸

麻酔科学会の総会で初めての発表だった。
私の発表を気にかけてくださった全ての人に感謝します。どうもありがとうございました。
私の発表は、内容的には特に目新しい題材を扱ったものではなかったけれど、それでも自分で院内の倫理委員会に書類を提出して、患者さんたちに書面で臨床研究の同意をいただいて、慣れない統計を学びながら手探りで進めたものだったので、私的には大変勉強になった。
やっぱり研究と言うものは「issue」が大事なんだ。走り始める前が大事なんだ。
そのことが腑に落ちて分かった

2011年5月19日木曜日

(映) ブラック・スワン / Black Swan (2010年, USA) ☆☆☆☆

公開初日で1億円を突破したらしい。
それを聞いて驚いた。

この映画は観る人を選ぶ作品だと思うのだが。
Natalie Portmanが主演じゃなかったら間違いなくこれほど観客を動員していないだろう。
集客力のある女優とは素晴らしいものだ。
彼女は4歳の頃からダンスをしていたらしいが、この作品に向けて1年近くバレエのトレーニングをし、9kgも減量したという。彼女の演技は確かに感動する。white swanを踊るには完璧なバレエダンサーであるが、black swanを踊るには純粋で臆病な(劇中のトマス曰く-男が寝たいと思えるような演技ができない)ニナの脆弱な心身を見事に演じている。

私はたまたま「白鳥の湖」が聴きたくなったから、この映画を見たのだが、暗い。とにかく気味悪い。気持ち悪い(これは私的には褒め言葉である。恐らく表現者たちが表現したい世界を見事に描いている)。
暗いが、美しい。派手じゃなく、冷たく暗い美しさ。
バレリーナのニナは、母親やリリー、ベスらに投影される自分の醜悪な部分と戦う。
黒い白鳥を演ずるために。
ニナの葛藤を映し出すかのような冷たく暗い映像。
静かに進む物語の最後に得られるカタルシス。

今すぐもう1回みたい!という作品ではないが、見てよかったという作品。
誰にでもお勧めできる作品ではないが。

2011年5月18日水曜日

(雑) 麻酔科専門医認定試験って本当に簡単なのか?

という問いを立ててみたものの、そういえば誰も簡単とは言っていないことに、言いながら気付く。
だが、「難しいよ~落ちるよ~」とあんまり脅された記憶も、そういえば、ない。

「第49回麻酔科専門医認定筆記試験問題解説集」が発売された。
これが発売される頃には過去問5年分くらい終わっているだろうと昨秋は思っていたが、当然のことながら終わっていない。ただ、過去問を何年か分解いてみると、凡そ問われる知識は似たようなものだということに気がついてきた。これこそがまさに過去問を解く理由なのだろう。それと同時にこの問題集は、実験の合間や、ちょっとぼぉっとして何しようか考えているような「隙間時間」を潰すのに、非常に役に立つアイテムであることが分かった。選択式問題なので「よ~し、これから机に向かって勉強するぞ~」と気合を入れる必要は全くないのである。

昨年、第49回試験の合格率。
筆記試験:83%、実技試験:96%、口頭試験:85%(麻酔科専門医受験ブログより引用)
ということなので、実技試験は箸にも棒にもかからないという事はないだろう。
だが、口頭試験が筆記試験並みの合格率なのでこちらもきちんと過去問をみて、自分なりの解答を作成しておく必要があるだろう。多分。
そして、そういうことをサボると、試験官役を1日中されるであろう先生方にも申し訳がないというものである。一昨年、医学生の心肺蘇生のOSCEの試験監督をした私の経験からすると、できる学生さんの採点の方が簡単なのである。できない学生さん(例:心肺蘇生中に「誰かAEDをもってきてください!」といえなければ、それ以降の点数が全くあげられない)に直面すると、どうやって点数を差し上げればよいか非常に悩むのである。試験官が分かりにくいようなストーリーに則った回答・行動が、試験官の体力を無駄に消耗するであろうことに、ちょっとは思いを馳せつつ勉強しようと思う。

msanuki.netによると
***
40代以降の先生には
難しいものから順に
JB-POT>麻酔科専門医試験>医師国家試験
でしょうか。
20代-30代前半では
JB-POT=麻酔科専門医試験>医師国家試験
かもしれません
***

私的には医師国家試験より本気で勉強したJB-POT。それ並に勉強しないといけないとすると、到底受かる気がしないのだが。あぁ吐き気がしてくる。
脳神経外科専門医試験の合格率は60%程度というし、それに比べたら楽なモンである?のか?

いずれにせよ試験まではあと130日余りある。落ちても死ぬわけではないが、いろいろな人に迷惑がかかってしまうことは確かなので、世の「資格試験というもの」の慣例に従って、他人と同じ対策をしようと思う。

2011年5月17日火曜日

(音) Arch Enemy ― KHAOS LEGIONS (2011年, Sweden)

8作目のオリジナルスタジオアルバム。
私の中では過去最高傑作だった「Rise of the Tyrant」から4年経った。
日本のファンに育てられた(とギタリストのMichael Amottが言っていた)初期3作から、Angela Gossowにヴォーカルチェンジして、よりモダンな作風と変化していった4,5,6作目。5,6作目で方向性に若干の迷いを感じたが、戻るべきところへ戻ってきてくれた(と勝手に思っている)7作目。
「The Last Enemy」「Rise of the Tyrant」「The Day You Died」「Vultures」らの名曲を擁すあのアルバムは、正に神がかりな程に、ギターがメランコリックな旋律をひたすら奏で続けていた。

あの作品を作ってくれたのだから、もう自分たちのやりたいようにやってください、そう思っていた。
リアルタイムで追いかけはじめた3作目「Burning Bridges」から数えて12年来のファンの1人としては、前作「Rise of the Tyrant」でもうおなかいっぱいに満足してしまっていたのである。

そうして迎えたこの新譜。
前作や4作目「Wages of Sin」が好きな人なら買って問題ないだろう。「金返せ!!」とはならない程度のクオリティはしっかりと保たれている(日本版ボーナストラックに「Snow Bound(Acoustic)」も収録されているし)。基本的にこれでもかというギターリフの嵐に叙情的なソロをちりばめ、Angelaが咆哮しまくっているという、前作までのスタイルと変化はない。その意味では何ら心配することなく本作に向き合える。
しかし。
どんなに流麗で官能的なツインギターがあっても、のめり込めない。Angelaのヴォーカルが気になって仕方ない。彼女のヴォーカルがとても単調で、野暮ったく感じてしまう。これまでもあちこちでそういう批判はあった。ただ私はこれまでの4-7作目ではあまり気にならなかった。本作のツインギター、ベース、ドラムスの演奏があまりにも安定しているからそのように感じるのだろうか。彼女の存在なしにバンドがここまで売れることはなかっただろうし、彼女のライブでのパフォーマンスが素晴らしいのは承知だが、ことスタジオアルバムでは、それらは全く加味することが出来ない。この表現力の乏しさがネックになって、更なる高みにバンドが到達できないのではないだろうか(とバンドメンバーが思って、Angelaを解雇しなきゃいいけど)。まぁいいか。本作も、凡百のバンドが到底追随できない程の完成度の高さではあるのだから。どこかで聞いたことのあるギターリフがあちこちで聞かれるが、恐らく確信犯だろう。神が降臨した7作目から、神はいなくなったが人の力でもこれだけのものが作れるんだ、というような気合を感じた渾身の8作目。

赤字は即効性があるだろう疾走曲、もしくは疾走する部分がある曲。

1. KHAOS OVERTURE (INSTRUMENTAL)
2. YESTERDAY IS DEAD AND GONE
3. BLOODSTAINED CROSS → killer tune 
4. UNDER BLACK FLAGS WE MARCH
5. NO GODS, NO MASTERS
6. CITY OF THE DEAD
7. THROUGH THE EYES OF A RAVEN
8. CRUELTY WITHOUT BEAUTY
9. WE ARE A GODLESS ENTITY (INSTRUMENTAL)
10. CULT OF CHAOS
11. THORNS IN MY FLESH
12. TURN TO DUST (INSTRUMENTAL)
13. VENGEANCE IS MINE
14. SECRETS → killer tune
15. THE ZOO 日本盤ボーナス
16. SNOW BOUND (ACOUSTIC) 日本盤ボーナス

イントロ部分で映画「ブラックホーク・ダウン」をなぜか思い出してしまった#6「CITY OF THE GOD」から#9「WE ARE A GODLESS ENTITY」までの流れが、今のところはお気に入り。Scorpionsのカバー#15「THE ZOO」は並。

2011年5月14日土曜日

(本) バリの賢者からの教え 思い込みから抜け出す8つの方法 ― ローラン・グネル著、河村真紀子訳

・グループや集団、分野に分けて考えるとき、我々はひとりひとりの特徴や能力、その人が世にもたらすものを考慮に入れません。そして、すぐさま単純化したり一般化したりしてしまいます。たとえば労働者、役人、科学者、農民、芸術家、移民、資本家、主婦というように話します。思い込みに都合のよいカテゴリーの理論を作ってしまうのです。これらの理論は大部分が間違いであるだけでなく、理論が作ったカテゴリーに当てはまる人間になるようにと人々を煽ります。(p. 178)

・賭けとも言えるような計画に身を投じるとき、たとえば仕事を変えたいと思うときには、必ず気持ちの浮き沈みがあります。その仕事に憧れ、やりたいと思い、けれど突然、疑念を持ち、熱意がなくなり、実現できると思えなくなり、変化や未知の世界を恐れるようになる。そういうときにひとりきりだと、計画を断念したり放棄したりする確率が高くなります。しかし、もし周囲にあなたを信頼し、あなたの計画が成功すると信じてくれて、その計画が成功するだろうと会うたびに感じさせてくれる人がひとりでもいたら、疑念はなくなり、魔法にかかったように恐怖心が消えるでしょう。(中略)助けてもらったり、助言をもらったりする必要はありません。何より重要なのは、その人があなたを信頼してくれているということです。(p.182-3)
・「もしあなただったら、あなたの仕事のことで助言を求めにきた人を助けてあげませんか?」「それなら、何を怖がっているのですか?」(p.138)

さらっと読め、ちょっと元気をもらえる本でした。

2011年5月13日金曜日

(雑) 閉鎖神経ブロックとか

今日は麻酔デー。
脊麻、脊麻、閉鎖神経ブロック、閉鎖神経ブロック、全麻、全麻、硬膜外。

特に閉鎖神経ブロック(ONB)は久しぶりだったため超緊張。だが終わってみると手技開始から終了までに要した時間は覚えている限りでは過去最速だった。
次回行う際には
麻酔 2007;56:1174-1178.
で紹介されている恥骨結節側方アプローチでやってみようと思う。更に早くできるようだから楽しみ。
しかし1番緊張するのは、朝1番最初の末梢静脈路。1年目研修医の先生がついていたので、無碍にも出来ず、寧ろ自分より上手いかも、なんて期待もあったりして、彼女にやってもらった。

自分の腕がまだまだ未熟なので、いろんな手技を通じて、所謂「普通の症例」でもまだまだ上手くなることが実感できるのが最近の楽しみ。毎日麻酔をしていない危機感がそうさせるのかもしれない。

2011年5月12日木曜日

(走) Training (其の百八-百十一)

4/17 4.0km 30min (8km/h, 傾斜0-8)
4/24 5.0km 34min (8.5-10km/h, 傾斜0)
5/1 5.0km 34min (8.5-11.0km/h, 傾斜0-3-9-3)
5/8 5.0km 29min (10-12km/h, 傾斜0) 
total distance: 779.2km (Jan 21.1km, Feb 37.0km, March 58.1km, Apr 9.0km, May 10.0km)
total time: 4906min = 81h46m

2011年5月10日火曜日

(雑) これまた、ただの批判


来週の学会に備えた予演会が昨日終了。
自分が想定していた質問と、違った論点からの疑問が出てきて非常にためになった。
発表時間7分の制限時間に対して8分20秒くらいかかってしまった。本番までブラッシュアップする必要あり。

***
放射線にしても食中毒にしても、様々な人たちが批判を繰り返している。政府が悪い、電力会社が悪い、焼肉屋が悪い、と。
そうなのかもしれない。

しかし、被害の当事者、もしくは当事者に近い人でなければ、加害者(とメディアによって想定されている存在)に、安易な批判ばかり繰り返すべきではない気がする。

それは「このドラマはつまらない、この映画はつまらない、このピッチャーはだめだ」と一緒で、単なるテレビやコンピュータ、新聞の向こう側にある、様々な娯楽を批判するのと変わらない。
自分の影響の範囲外で起こっている事柄に対して、大して調べもせずに、メディアに同調して批判ばかりするのは危険である。そのような批判を公然と繰り返す人々は、自分の家族が当事者となった電力会社に勤めていたり、焼肉屋でアルバイトをしていたり。そういう可能性を考えたりはしないのだろうか。もし、そういう状態だったとしてもなお、批判します!という人ならば、私にはもうどうしようもないけれど、そうでなければ暇つぶしの娯楽の出来栄えの悪さに悪口を言っているのと、殆ど変わりない(しかも、一見正論のようにきこえるところが始末に悪い)

一連の報道は、私に院内感染発生時の帝京大学病院の一件を思い起こさせる。原発と焼肉屋と院内感染に、同列に論ずるべきでない点が多々あるのは理解しているが、「加害者(とメディアが想定する)を、袋叩きにする」という構図において、なんら変わることがない。システムに問題がある際に、当事者をリンチにしても、何も変わらないのは、これまでの様々な事件や事故から、分かっていることである。
同様の被害者を出さないようにするという目的から、事案を検証するのであれば、その結果が出るまでは、余談を交えずに淡々と事実だけを報道するべきである。
とはいえ、そこに「勧善懲悪」の分かりやすい物語がないと、衆人の注目を集めることが出来ないので、何らかの「多くの人が与しやすい物語―正義と悪が分かりやすい対立構造にあり、特定の悪人を正義の味方が倒す」を作って、テレビやコンピュータの前にお膳立てされるのである。

話は変わるが、先月、堀江貴文氏に実刑判決が出されたとき。
街頭インタビューで私と同年代くらいだろう女性が
(実刑判決は)当然だと思います。」
と全く躊躇することなく、答えていたのには唖然とした。

恐らく彼女は「彼がどのような罪を犯したのか」
について問われたら、答えられなかっただろう(もしかしたら被害者に近い関係者という可能性もあるが)
当時メディアが大騒ぎで逮捕の報道をしていたことを思い出し、その空気を根拠に
「実刑判決当然だ」
といっているような気がしてならなかった。
恐らく自信満々に「実刑は当然だ」と言える人は、自分が逆の立場に立ったときにも、数多の罵詈雑言に耐えうる強い心をもっているのだろう。もっともそのような発現を恣意的に取り上げるメディアもどのような見識をもっているのか、私にはよくわからない。

被害に遭われた方々、またその近しい方々には心よりお見舞い申し上げるが、誰かが掴んだ2次情報しか情報のリソースがないような状態で、悪者叩きするのも、メディアを丸呑みにして信じるのも、当事者から遠い立場にいる場合には程ほどにしたほうがよいと私は思う。と、メディアを悪し様に言っている私の発言自体も信じないほうがよい。

「周りが皆悪いと言っているから悪いに違いない」という思考回路から発せられた批判に直面すると、その発言主の脳細胞が死んでいるとしか、私には思えないのである。


2011年5月8日日曜日

(本) 自警録 ― 新渡戸稲造

5月4日-5日を利用して、再開通したばかりの東北新幹線を利用して秋田に行く。
目が覚めたときには、予約しておいた新幹線に乗れないような時間だったので(つまり寝坊した)、秋田に着く時間が1時間半ほど遅くなった。今回の滞在時間は20時間程。

***
5月6日

一人前の仕事、とは?
こんな漠然とした疑問に、答えられる筈もないので、今日は新渡戸稲造先生に御講義いただいた。
***
 しかるにここに大いに考うべき一条は各自が果たして各自の容積いっぱいに水を含めるや否やの問題である。四斗樽大を備えても空なれば四升樽にも劣る。二合徳利でもいっぱいに満つれば一斗入りの空徳利に優さる。人もどれほど「王佐棟梁」(王をたすけ国政をささえる)の才であっても、これを利用もせず懶惰(らんだ)に日を送れば、小技小能なるいわゆる「斗筲(とそう)の人」(器量の小さい人)で正直に努める者に比して、一人前と称しがたく、ただ大なる「行尸走肉(こうしそうにく)」(歩くしかばね)たるに過ぎぬ。してみれば一人前の仕事とは各自がめいめい天賦の才能と力量のあらん限りを尽くすことであろう。果たしてそうとすれば一人前の仕事を計る標準は当事者めいめいに存在するもので、己れ以外に求むべきものでなかろう。すなわち己れの仕事を計るものは己れ自身である。英国の大詩人テニソン(A. Tennyson)の句に、
 Self-reverence, self-knowledge, self-control,――These three alone lead life to sovereign power.
 (自尊、自知、自治の三路は、一生を導いて王者の位に達せしむるなり)
と。太古ギリシアの神託に、
 「己れを知れ」
とありしは自己の性質能力を覚(さと)り、もって自己の使命の何たるを認識することで、世には人を知らざるを患(うれ)うる者がある。人の己れを知らざるを患うる者はさらに多いが、己れを知らざるを患うる者ははなはだ少ない。 (自警録 p.51-2)
***
1ヶ月以上ぶりに脊髄くも膜下麻酔をした。緊急手術で。脊麻は全麻と違って、1回で、ぴたりと、ちょうどよく効かせないといけないから何回やっても、とても緊張する。流石に手順や針のすすむ感覚は体が覚えていた。
緊急手術を依頼してきたのは、かつて麻酔科の初期研修で回ってきていた先生。今は清潔野でメスを握っている。その頃は、彼と一緒に麻酔に入って、彼の指導をしていたわけだけど、今は同じ当直医同士。対等にディスカッションし、清潔野でメスを握って手術をする、彼の姿がとても頼もしく思え、その成長ぶりを目の当たりにして、何だか同じ仕事をやり続けるのっていいなぁ、と感じた。

2011年5月4日水曜日

(麻) CVP ― ほっとくか、ほっとくのか、ほっとけるのか

「麻酔科医ハナ」の第3巻の表紙のTEEってPHILIPSのものだろうか?非常に見覚えがあるデザインだ。

***
「INTENSIVIST vol.3 No.2」はモニターの特集。
既に読んでいる人も多いかもしれないが、非常に濃厚な内容で、相変わらずの読み応えである。

PAC、CVC、NIBP、A-lineなど、オペ室で使うものばかりなので、麻酔専門医試験受験前の知識の整理に非常に役に立つ特集である。執筆された先生方には深く御礼申し上げます。

本特集を読むと、その端々から「CVPのモニタリングとしての意義は低い」ということが改めて感じられる。麻酔科医やIntensivistの間では既に常識となっているだろうから、それはよい。
だが、やたらとCVPを気にしてくる外科医にどう対応していくべきか。
術後ICUに帰ったときにCVPを見て「ちょっと水足りないんじゃないの??」と外科医から突っ込まれたときに、「血圧もよいし、FloTracで測定していたSVVもSVもCOも問題ないし、尿も出てるしあんまり気にすることないと思いますが」と言ったところで、ナットクしたようなしていないような顔を外科医にされることも、あったりなかったりしてきたが。

今後同じ場面に遭遇した時には、本書のコピーを渡して逃げるって作戦ではどうだろう。小童がいくら言っても聞かないのだから、臨床経験豊富な先生方がevidence basedに執筆された文章をもって、私自身の伝える努力を丸投げしようかな。

2011年5月3日火曜日

(麻) 知らないことがクライシス

3連休初日。
大学に向かう朝の電車が空いていて、とても快適である。
結構社会は暦どおりに動いているものなのだ、ということを実感する。


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Anesthesia & Analgesia 2009; 108:1463-4
のEcho Roundsより。
実験の合間にちょうどエコーの勉強会を医局でしていたので、レジデントの先生の発表を聴く(月曜日の話)。

取り上げられている症例は心内カルチノイド腫瘍の切除と三尖弁置換術なのだが、PFOを合併し右左シャントがある。カルチノイド腫瘍→右心系病変 の思考回路は国試レベルで散々刷り込まれているが。以下メモ。

・カルチノイド腫瘍にPFOが合併しやすいと言うことはないようだ。少なくともpubmedでは引っかからない。
・有病率は1-2/10万人
・麻酔上の問題点として気管痙攣や、稀に心筋内腫瘍(本症の中でも4%程度。症状があるのはその内の20%)、carcinoid crisisがあるらしい。

さらっと書いたが、carcinoid crisisとは

However, tumor manipulation may, by massive release of mediators, trigger an acute, potentially lethal carcinoid crisis. (下の<1>より) 

というようにセロトニン、ヒスタミン、ブラジキニンのようなメディエーターが手術侵襲・腫瘍操作により大量に放出される恐ろしい病態のことらしい。
鎮痛はがっちり、ヒスタミン遊離するような薬は使わないほうがよさそう、ソマトスタチンアナログは歴史的には推奨されてきたがエビデンスには乏しいようだ、カルチノイド腫瘍患者にはPACを無闇に入れてはいけない(無症状だが心内腫瘍が隠れているかもしれないから)、などが収穫か。
ざっと見しかしていないが、英語で得られる麻酔領域の最近の論文はないようである。


<1>Somatostatin Does Not Prevent Serotonin Release and Flushing during Chemoembolization of Carcinoid Liver Metastases. Anesthesiology 2003; 98:1007–11
<2>Carotid Crisis during Anesthesia: Successful Treatment with a Somatostatin Analogue. Anesthesiology 1987; 66:89-91
<3>Remifentanil and anaesthesia for carcinoid syndrome. Br J Anaesth 2004; 92:893-5.
<4)カルチノイド症候群の麻酔経験. 麻酔 1993; 42:1047-52.

このような腹腔内腫瘍で、開腹術が必要な患者さんがきたら、
・心不全の有無チェック。エコーの依頼はcase by case。術中TEEもcase by case
・麻酔導入~術中はremifentanilのみで鎮痛。挿管時もがっちり鎮痛して気管痙攣に備える。腫瘍への操作が終了する術終盤から術後にかけて硬膜外を使用(ただし血圧が下がらない程度に)。モルヒネやペチジンは使用しない
・ソマトスタチンアナログの使用は・・・相談。

かなぁ。

追記(20110614)
レヴューが掲載されている。
Carcinoid syndrome and perioperative anesthetic considerations. Journal of Clinical Anesthesia (2011) 23, 329–341

要約
Carcinoid tumors are uncommon, slow-growing neoplasms. These tumors are capable of secreting numerous bioactive substances, which results in significant potential challenges in the management of patients afflicted with carcinoid syndrome. Over the past two decades, both surgical and medical therapeutic options have broadened, resulting in improved outcomes. The pathophysiology, clinical signs and symptoms, diagnosis, treatment options, and perioperative management, including anesthetic considerations, of carcinoid syndrome are presented.

(映) ナイン / NINE (2009年) ☆☆☆、どうとでも書ける筈なのだが


家の郵便受けには、よくチラシが入ってくる。
中でも1番多いのが、「粗大ゴミ、片付けます」という内容のものだ。
いつもろくに目を通さずに捨ててしまうのだが、今日、ふと見てみるとこう書いてあった。

正社員だから清潔で明るくサービスも最高です!!

派遣社員の人やアルバイトで生計を立てている人たちの存在を、マンモスの足で踏み潰すかのような文言である。
このような文章を、お金をかけて大量にチラシとして印刷し、不特定多数の人に配る人の神経が、私には簡単に理解できない。何よりも、ここで働く”正社員”を不幸にする言葉である。このような文章が会社の売り上げの何%かを消費して作られる広告に載せられることを、私ならば到底容認できない(何だか昨日と同じようなことを書いている)。
この文章を書いた人と採用した人がどのような思想・信念の持ち主かについては関心はないが、上の文字だけから判断するに、この会社は
「アルバイト社員は不潔で暗くサービスも最悪です」と言外に示している可能性があるということは、小学生でもいいそうなことである。

と、私が書くこの文章も、人知れず誰かを不幸にしているに違いない。

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いきなり話がそれてしまったが、久しぶりの映画ネタ。
DVDのパッケージを目にするたびに、あのサングラス男をずっとニコラスケイジだと思っていた。
実はダニエル・デイ=ルイス(Daniel Day-Lewis)だったのね。いつの間にか54歳。彼を見るのはさっぱり楽しめなかった「There will be blood」以来だが、今回はこれまでの彼の演じてきたキャラクターに比べ、随分と軟派な役で登場である(どうしても「父の祈りを」や「ラストオブモヒカン」の頃の記憶が残ってしまう)。もしこの役をニコラス・ケイジが演じていたら、非常に軽い仕上がりになっていただろう。
あらすじはwikipediaを見ればよいとして、本作は豪華絢爛、妖艶(を狙っているのかもしれないが、何故だかエロティックに感じられない。女性たちの肌の露出は極めて多いのだが)、要所要所を歌で締めていくミュージカル。
浮気性の夫役ダニエル・デイ=ルイスと妻役マリオン・コティヤールが、夫の浮気が原因で劇中に徐々に険悪になっていくのはよいが、「そうなる前のラブラブだった頃の蜜月期」があまり描写されていないため、ダニエルに感情移入がしにくい。「仕事ばっかりしてる」というのも妻の心が離れていく主因のようだが、映画を見る限りではそこまで「仕事にのめりこんでいる」という様子も伺えない。ダニエルが演じる主演の監督の幼少期の頃の映像を白黒で劇中にはさむのはよいのだけれど、それが効果的に使用されているようにも思えない(わざとわかりにくくしているのが目的であれば成功しているのだろうが)。
 と、ストーリーの方に気が向いてしまうのは、何より音楽にのめりこめなかったせいだろう。「Be Italian」以外は、「今の」私の心に入ってくるものがなく、消化不良。かつて大ヒット映画を量産したが、創造の枯渇に陥った映画監督の苦悩、という題材にしては、アカデミー賞クラスの豪華女優陣も、非常に勿体無い使われ方のようで、彼/彼女らのギャラばかりが嵩んでしまったのではないかと同情してしまう。
この映画の元ネタといわれ、一般的に名作と言われている「8 1/2」を見ればまた違った見方でこの映画に向き合えたのかもしれないが、鑑賞後の爽快感もなければ、心に染み入るいい話でもない。映画の主演と同様に、本作品の監督も、想像の枯渇に陥っているのだろうか。(こんな結論、誰でも言いそうだ。私の文字から想像される、「私自身の想像力」も大分枯渇しているのだろう)。

2011年5月2日月曜日

(雑) 麻酔専門医認定試験の申請書提出、と、見飽きた構図

提出期限は5月1日から6月30日。
書類に不備があった時に、対応が後手後手になるのは嫌なので、月曜日の朝一番に郵便局に駆け込んでみた。
書類はまぁよいとして宿泊である。

「宿泊するなら会場のホテルがbest」と先輩DrのK先生に前もって教えてもらっていたのだが、既に
試験会場である神戸ポートピアホテルの、10月1日の予約は取れなくなっている(当たり前と言えば当たり前か)。いや、正確には空いているようだが、ダブルかツインの20000円以上/1泊 の部屋しかない(5/2 14:00現在)。リッチな方はどうぞ。
早起きな麻酔科医の方々なら三宮駅周辺のホテルでも十分なのだろうけど、当日風邪を引いていたりすると、そういうところで集中力をそがれる可能性もある。
一番避けたいのは、来年以降も同じ試験を受けることである。

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「政権交代の悪夢 - 阿比留瑠比」を読む。

著者の、先日の総理との記者会見での勇敢な(というか当然の)質問に敬意を表して購入に至った。

その質問とは、こうであった。
「最大の障害となっているのは首相の存在であり、後手に回った震災対応でも、首相の存在自体が国民の不安材料になっていると思う。一体、何のためにその地位にしがみついていらっしゃるのかお考えを聞かせてほしい」

本書では、ここまでの民主党の流れが一気におさらいできる。
改めて、現政権が、確たる政治理念のない人々の集まりと言うことがよく分かる。
今回のような国難にあっても、他人事なのだろう。恐らく。それこそ主観的には頑張っているんだろうが。

しかし。
現政権と、その構成員が駄目だ駄目だ、という意見は具(つぶさ)に聞こえてくるが、「こんなところを頑張っているんですよ、陰では」と、声高に民主党の功罪の「功」の部分を語ってくれるような方はいらっしゃらないのだろうか。政権担当者の本人たちですら、国会討議では言い訳に終始している。
あれだけのユートピア政策を語っていながら、(国民の目に見える形としての)成果が、事業仕分けだけではお粗末過ぎるであろう(それすら、科学技術や種々の研究に対する予算も削ろうとしているのだから全く褒められたものではないが)。

それよりも、テレビを見ていて不思議なのが、「あれほどの虚偽発言を撒き散らして退陣した元首相がテレビに映っていること」そのものだ。それもなんだか、今後の民主党の動向に、重要な役割を果たしているかのような取り上げられ方である。
よっぽどメディアは寛大なのか、メディア自体がloopyなのか。
彼が発言するのは全く勝手だろう。それはよい。しかし、彼が首相だった頃に、あれほど叩いた人間たちが、彼の言動を、未だに報道し続けるとはどういう了見なのだろう。
彼の発言の真意が全く読めないことは普天間の体たらくを追っていれば、骨身に沁みて分かっているはずなのだが。
党員資格停止中の議員もあれこれ騒いでいるが・・・彼にしても優れたリーダーシップを発揮できるとは思えない。これまでの言動を見ていると、政権を獲得した際のマニフェスト達成に必死になりかねない。

まさか現政権が、前政権に劣る体たらくだから、現政権を批判する構図をメディアが撮ることで、前政権者たちの復権を狙おうとしているのだろうか。誰が?
この方々を報道するためにスポンサーが金を払わなきゃならない程、この国の政治家には人材がいないのだろうか。がっくし。私がスポンサーなら、びた一文も払いたくないが。

2011年5月1日日曜日

(麻) 抄読会(ジャーナルクラブ)メモ、と新生活1ヶ月経ちて


しばらく自分で担当しないので、ポイントをまとめておくことにしよう。

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論文の全てを10-13分程度で発表するのは不可能である。

でも「まとめろ」といわれても、その具体的方策が示されないと時間と気力だけが削がれていく。日々忙しくやることもいっぱいある。抄読会だけに労力を使うことはできない。

「どれくらい抄読会に向けて頑張ったか」はあまり関係なく、「聴衆の特徴を理解し、どのレベルが求められているのかについて想像力を働かせること」が重要。聴衆はそれらについて厳しく演者を査定する。(そして演者の耳に評価が届くことはあまりない。大人だからね。面と向かって「ここはこうすればよかった」と言ってくれる人はそれほどいません)

@心構え
・発表内容が膨大だと、それだけで準備不足と思われる。
・「この部分はよくわからなかったんですけど・・・」と発表中に言わない。後でつっこまれないようにとの防御線としての発言かもしれないが、聴衆は「この場にいる人の中でこの論文について最も時間と労力を費やしてきた発表者ですらよくわからないものを、たった10分くらいしかない中で、なぜわざわざ、それに言及し我々を混乱させるのか」という不信感をいだく。もし論文を読むに当たって重要な統計学的手法があり、それの解説なしには聴衆が理解不能だろうと思うようなものに、運悪くあたってしまったとしても、一生懸命調べて発表すれば(そしてある程度コンパクトに説明できていれば)、わざわざ「よくわからなかった」ことを吐露する必要はない。むしろ聴衆に対して失礼である。「わからなかったことを発表する場ではない」ということを理解する。
・聴衆の中には発表者より膨大な知識をもつ先生方も当然ながら多い。だが、「今話している内容は自分が一番詳しい」という気概をもって、そして「なんとしてでも理解してもらうんだ」と考えるべき。

@実際の準備の流れtips
*何よりも大事なことは、「何も考えずに頭から読み始めない」ことである。
0.抄読会の予定が発表されたら可及的速やかに論文を手に入れ、どの位のボリュームなのか把握する。そしてぱらぱらと眺める。臨床的なものだったら準備にあまり時間かからないかな、とか基礎的内容だったり、統計を多用していて準備に時間がかかりそうだ、といった点から、どの位準備に必要なのかを予想する。
1.論文タイトルを読み、何についての論文かつかむ
2.abstractを読む。不明な単語や不明な用語の意味を調べる。そしてabstractの意味をまず掴む
3.本文の図表をみて、何について書かれたものかをおおよそ見当をつける。ぱっとみて、何についてかかれているのかわからなければ、まずはその論文を読むのに必要な知識を、日本語で集める。この場合、Google scholarや雑誌(特集や総説などを探す)、教科書(Miller、麻酔、臨床麻酔、LiSA、その他)、医中誌が役に立つ。英語を訳すときに自己流の変な日本語をつけることを回避するためにも、日本語で知識を得ておくことは重要
4.背景知識をそれなりにもったら、初めて本文を読む
5.introductionから順にスライドを作るのもよいが、「図や表をまず貼りつけて、その説明から取りかかる」ことも推奨。これは「わざわざ著者が図表を示してまで読者にわかってもらいたいこと」というメッセージ、すなわち論文の肝であることが多いため。図表が多いと聴衆が興味を維持しやすいというのもある。
6.①「はじめに」②「material and methods」③「result」④「discussion」でじっくり聞きたいのは②と③、知ってるとためになる④の一部。だからそこに発表時間の大部分が注がれるようにスライドも作成。ということは①はせいぜい1枚か2枚でまとめる(それも大きい文字で)。

@スライドの作り方tips
・聴衆にストレスを与えないように気を配る
・パワーポイントならフォントは24-28程度。22以下は小さいので、表やグラフの説明には利用することも許容されるが、本文では使わない方がよい。小さいフォントで「はじめに」のスライドが出てきた瞬間に聴く気がなくなる人もいることを想像する。自分が聴衆だったら、朝の眠たい時間に目をこらさなきゃ読めないようなスライドを集中して読めるだろうか。小さい声の発表を聞き取ろうと努力するだろうか。
・1枚1分のルールがある。それに準ずると抄読会は10枚くらいになってしまうが、それだとあまりにも少ない。パッと見て理解できるスライドもあるだろうから、どんなに多くてもせいぜい20枚程度にまとめられるようにした方がよい。
・論文の内容全部を発表する必要は全くない。
・図表は発表の中でカットしない。原則すべて提示する。著者は、図や表にしなくてもいいものをわざわざ投稿しない。それくらい重要。
・図や表は読めるように貼る。PDFファイルでダウンロードした論文の図表をパワーポイントに張り付けることが多いが、文字がつぶれて読めないことは絶対に避ける。コピー元の表を「なるべく拡大してパソコンのディスプレイに表示した状態でSnipping Tool等を使ってコピーをする」等の方法を考慮。発表時に聴衆が読めないものを提示するのは意味がないどころか、ストレスを与える効果しかない。「小さくて見えにくいかもしれませんが・・・」と発表中に言うのは「最大限読める様に努力して提示してから」言うべきである。大きい表なら、読めるようなサイズにして分割して貼り付けてもよい。

@発表するときtips
・必ず1人で全体を通して「時間を測定して」予行練習の喋りを行う。声に出すことでスライド作成時や黙読時には気づかなかった誤字、脱字、論理の飛躍、等々に気づく
・自分が聴衆の1人だとして、「なにをいっているのか分からない」項目やスライドは大胆にカットした方がよい場合もある
・オペ室のマスクは必ず外して喋る
・全員に聞こえる音量で話す~内容がどんなにまとまっていても、耳をすまさないと聞こえないのでは、それだけで聞く気がなくなる人も出てくるし、作成に要した努力は水泡に帰す
・なるべくゆっくり話す
・喋り原稿はあってもよいが、可能な限り「スライドを見て話せるようにスライドを作る」ことが重要。
・聴衆はその時になって初めてスライドを見る。スライドを読むだけで精一杯。提示されていない余計なことを説明すると気が散るおそれがある。スライドにないことを喋ろうとして読み原稿のどこに書いてあったかを探して時間を浪費してしまったり…それによって本当に伝えたいことが伝わらなくなる
・発表内容にどれくらい興味や関心を持つ人がいそうか、を想像する。聴衆に、発表内容に関連する研究をしている人や造詣が深い人がいたら、「そういうテーマに当たってしまった」と、入念な準備の下に覚悟を決めてやる必要がある

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今日で大学院生生活が始まってマル1ヶ月経った。
はっきり言って殆ど進歩がない。マイクロピペットのメモリの読み方と使い方は取り敢えず覚えた。あとは、何をすると癌細胞たちがコンタミの洗礼に遭うかもおぼろげながら分かった。培養ディッシュの癌細胞を継代するときに、どの位PBSとトリプシン処理をすれば培地から細胞が剥がれるかも、今扱っている癌細胞については何となく感覚がつかめてきた。
しかし、週1回のミーティングの際に飛び交う単語や略語や実験手技、試薬などについては未だに殆ど理解できない。手元には自分で検索して読んでみたもの、ボスからのギフトなど、計25の英語の原著・総説論文がある。どの論文も「discussion」で何を言いたいのかはおぼろげにわかるのだが、「method」の部分を読んでも、「~~を調べるために~~の実験をした」というところがまだ、さっぱりつかめない。1つの論文あたり15分くらいでささっと読むもんだ、と入学して2週間くらいでボスから指導(?)を受けたが、未だに15分じゃabstractも読みきれない。
さっぱり分からない上に、大学院の4年間でどこまで行けるのか、というかどこが目的地なのかもまだ分からないが、自分がこれまで働いていた病院の隣の建物で、これほど私に理解できない世界が広がっていたのか、ということが感動に値する事実であった。今はわけが分からなくても、そのうちにきっとちょっとずつわけが分かってきて、自分で何が問題なのか、これを調べたら面白いんじゃないか、と思える日がくるような妄想に近い予感だけはするのが不思議。もがき方が適切ならば、事態は恐らく好転してくる筈である。

Stressed or bored (ストレスを選ぶか、退屈を選ぶか) (ようこそ私の研究室へ ― 黒田達明 p.125)
である。

しかし、夕飯が23時位になってしまうのは、何とかしないといけない。後は走る時間を何とか確保しなくては。学生生活が再開したからといって、体重まで大学生の頃と同じ(今の体重+9kg)になるのは、是が非でも避けたいところ。