Circulation 1999; 100:1043-1049 による
risk of major cardiac event(MI、肺水腫、VF、心停止、完全房室ブロック)
以下の項目を点数化して評価
0点-0.4%
1点-0.9%
2点-6.6%
3点以上-11%
1.手術手技(開腹術、開胸術、腸骨動脈以上中枢の血管手術)
2.虚血性心疾患の既往
・MIの既往
・運動負荷試験で陽性
・MIによる胸痛が現在ある
・硝酸薬で治療している
・心電図上、病的なQ波を認める
3.うっ血性心不全の既往がある
・CHFの既往
・肺水腫
・夜間起坐呼吸がある
・両側ラ音、またはS3 gallop
・X線上肺血管影増強
4.脳血管病変の既往
・TIAや脳梗塞・出血の既往
5.術前のインスリン使用
6.術前 血清Cr値>2.0 mg/dL
Journal of Cardiothoracic and Vascular Anesthesia, Vol24, No1(February), 2010: pp 84-90
では血管内腹部大動脈瘤ステント留置手術(endovascular abdominal aortic aneurysm repair; EAAAR)の長期予後因子としてのRCRIの有用性を論じている。
方法:retrospective study。単一施設での225人。1996年から2006年にエントリー。
結果:周術期心血管イベントは6.2%。長期の全死亡率は23%。冠動脈疾患(尤度比8.7, p=0.023)やうっ血性心不全(尤度比4, p=0.042)、RCRIが3点以上(尤度比8.6, p=0.004)の患者では有意に主要心血管イベントが多かった。
OMI、エコー上MIがある、1ブロックしか運動耐容能がない、RCRI3点以上、周術期主要心イベント、の各項目は長期全死亡率と有意に関連があった。
結論:血管内治療でも長期死亡率は依然として高い。the Lee index(上記Circulationの論文の筆者。RCRIのこと)は本術式を受ける患者でも短期・長期予後を予測する尺度として有用かもしれない。
・本論文中のKaplan-Meier曲線から読むにEAAAR患者の5生率は60%(event free群で70%, MACE群で20%程度)。
本試験の該当期間に、著者らの施設は他のステントグラフトの臨床試験にエントリーされた患者がいた。そのために本研究の症例数が少なくなってしまった。また、retrospective studyである・・・という問題点はあるが、それにしてもやはりhigh risk patientはhigh risk patientなのであるということだろう。日頃AAAの麻酔は開腹術だったら当然用心して準備するが、EAAARでも用心深く行わなくてはならない。
EAAARでは苦い思い出がある。術中にモニターを見ている目の前で血圧が一気に20だか30だかまでに低下したのだ。開腹術なら大動脈瘤が破裂してすぐ分かるが、血管内手術では破裂してもすぐ見えないので、注意していないと対応が遅くなる。幸いその患者さんは後遺症なく退院されたようだが、こんなときの対応もきっと短期死亡率に関係してくるのだろう。