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2010年3月24日水曜日

自由をつくる 自在に生きる ― 森博嗣

週末の3連休毎日ランニングに興じた罰があたったのだろうか。一昨日、昨日に引き継いで咽頭痛が増悪している。おまけに鼻汁と咳が本格的に追加されてきた。そんな状態でも簡単に休めるほどは当科も人がいないので、マスクを二重にして麻酔管理を行う。麻酔中にも出るわ出るわ鼻水が。時々オペ室外に出て、本来は手拭用である硬い紙で鼻をかむこと数十回。すっかりトナカイのような赤っ鼻になってしまった。
 こんな集中力のない日に限って泌尿器科の長時間手術やら急性硬膜下血腫の緊急手術やらの麻酔を担当する。普段でも気を遣うのにこんなときは更に消耗する。が、逆にうまく管理できたときの感動もひとしお。と言うこと自体ちょっと病的な気もする。まぁ体が病気なのだから仕方ない。いつの間にかウィルスに侵攻されていたこの肉体。免疫が低下しているのか、生活が不摂生なのか、よくわからないが、今日も無事故で安全に麻酔を行えたことには素直に感謝したい。
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新書は次から次に販売されているので、ちょっと前に店頭に並んだものだと、小さめな規模の本屋の店頭では手に入りにくい。最近の新書は雑誌のような感覚で売り出されているのだろうか。
友人に紹介されて手に取った本書「 自由をつくる自在に生きる」は「スカイクロラ」の森博嗣氏の著作。本書を読了した後にこのような“代表的な著作を挙げてその作家のことを分ったような、分らせたような気になる”こと自体が本書で述べられている「支配された考え方」のような気がする。
本書ではああしろ、こうしろ、あれはどうか、これはどうか、という割には独り言のような、強制力がないような、それ自体に自由さがある文章のように感じられた。押し付けがましくない自由さが心地よい。

・空気を読むことで、流れに逆らわないことも必要だが、空気を読むことで、余計な流れに巻き込まれることだってある。(84頁)
・自分の周囲に、自分がどう考えているか、という情報を伝えることもまた、この「素直」な行動の一つだといえる。無理をしないでバランスをとりながら、できるかぎり素直に発信すること。それをするには「素直に考えること」がまず必要だ。(125頁)
・どんな場合であっても、人間は自分が思ってもいない方向へはけっして進めない。・・・その人が見た夢よりも素晴らしい現実は絶対に訪れないのである。・・・実現したかったら、少なくとも・・・成功する状態を予測することが必要である。知らないうちに自由になることなんてありえないのだ(140頁)
・頭を自由に働かせることが、どれほど大切で、どれほど人を豊かにするか、考えてほしい。そして、その結果、いかに社会に貢献できるか、それも想像してほしい。(159頁)

著者は本書が自己啓発本であることを是としていないが、読む人によっては啓発される内容が多いと思う。
本書のあとがきに著者の思いがすべて集約されているように感じた。

・自由を目指して生きる理由は、それがとんでもなく楽しいからである。(189頁)