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2011年11月13日日曜日

(雑) TPPのつづき

11日夕方、久しぶりに国会の様子(議論とよべないようなものでしたが)をテレビでみた。舛添氏と福島氏の質問の場面だったけど。
腹の中は賛成推進で固まっていても、それを意気揚々主張すると、党を離脱する人が出て、他の法案審議の際に影響を及ぼす。とか何とか色々色々と複雑な、官僚や既得権益層への配慮やなんかがあるために、ああいう、なんとも覇気のない答弁にならざるを得ないのだろうか。

これだけ是か非か二分されている状況では、恐らくどちらが絶対に正解ということはないのだろう。賛成することによって得をする人が何千万人、損をする人が何千万人、というように。単にそのバランスの問題であり、国が壊れるか壊れないか、という単純な二元論ではないだろう。尤も、二元論によって意見を主張する人も、「こういう悪いところは予想されます。ですが総合すると~~の理由で交渉に参加すべきです。いや、でも……もあるんですけどね」と、ごにょごにょいうわけにいかないからキャッチフレーズ的に「乗り遅れれば国が沈没するぞ」みたいなことを言うことになってしまう。
トータルでは今後10年で2-3兆円程度のプラス収入が見込まれる程度、というから(その目算も、情報の出どころによって様々だけど)、得をする人は、きっと多く得をして、損をする人がすごく損をするだろう。もしくは多くの人がうっすらほんのりと得をして、それよりは少ない数の人達が損をするのか。そのバランスはよくわからないけれど、これまでも多くの政策決定において、涙を飲んだ人はいた筈だし、損をする人たちの補償をどうするのか、は今に始まった問題ではない。昔どこかで見たような光景が、今回も繰り返されているようだ。

新しい関税の体系、人の流れにおいて、「適切な努力」をした人間のみがその場に踏みとどまることを許され、「不適切な努力」や「努力をしない」人間、「現状維持が精一杯で努力できない」人間が凋落の一途を辿る。
TPP反対派の意見は、国内の農業(米、小麦、牛乳、砂糖など)がダメになる、というもの。賛成派はグローバルに展開する自動車産業やその他の製造業の競争力のハンデとなる関税を撤廃しないと、海外の企業と戦うことすらできない、というもの。
しかしすでにお金を持てる人、と持たざる人の差は十分広がっている。持たざる人たちの幸福も考えるならば、スーパーで安い商品を選択できることは生きていくために必要ではなかろうか。現在ですら、お金を持てる人たちは、高くても安全性の高い(だろう)野菜や果物を手にしている。お金を持たざる人たちは、安い食品添加物まみれのファストフードを手にしている。これはまぁホンの一面でかつ偏見的な視野だけど。

国民健康保険の財源は加入者(国民)の保険税と市・県・国の補助金や負担金等で賄われている。産業が衰退し、少子高齢化が進行し、国が出せるお金や国民が払う保険税が減れば、国民健康保険制度は早晩崩壊する。TPP参加によって、万が一、医療の世界に自由競争が導入され、国民皆保険制度が崩壊する、という反対派の根拠があるけれど、40年後には65歳以上が国民の4割を占める国になる。そのため、TPPに参加しようがしまいが国民皆保険制度は、私の老後にはなくなっているだろう。今回TPPに加わるか加わらないか、は、そのタイミングが早いか遅いか、の違いではないだろうか。
農業に関しても国の庇護のもと、金銭的・制度的補助下に置かれている状態だろう。
総じて考えると産業でのプラスが農業や医療の赤字分を多少なりとも補填している(国としては借金まみれで全く補填してないけど)ような、現在のこの国の状態をみるならば、TPPに参加しないことで産業界もへたってしまい、更にこの国は「金銭的にも」衰退していくことになる。

賛成派:もうとうの昔にきつ~い国際競争にさらされている業界
反対派:農業・医療など国に守られている業界

という大変大雑把な図式をみて、10~数十年のスパンで物事を考えれば、今TPPに反対している人たちも、貧乏くじを引くハメになる気がする。自由貿易が経済発展に必要、というのはこれまでの経済理論から事実のようだ。だから、TPP参加以外の選択肢はない。あるだろうけど、それはやはり、不参加の場合よりも不幸になる人が、将来的に多くなる気がする(我々の子どもや孫の世代には)。

ということで現時点では、私は今回の首相の決断(決断させられているだけだろうけど)に一応同意せざるを得ないという結論に到達したけれども、自分がいる業界が「国の制度に守られている医療」なので、TPP参加によって短期的には割を食うだろう覚悟をもって生きていかなければならないのかなぁ、という危機感であることには変わりない。取り敢えず日本で医師として働けなくなる日が来たとしても困らないように英語だけは勉強し続けよう、怪我や病気をして病院の世話にならないように体調管理を気をつけよう。外国の農薬まみれの野菜が入ってきても困らないように、自分で食べられるくらいの野菜を育てることを計画しよう。そうして自分や家族を、取り敢えず国や社会のせいにしなくてもよいような状態にしてから、自分が社会に対してできることをしよう。そんなところだろうか。

参考文献:Japan Mail Media 他