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2011年11月3日木曜日

(音) じっくり聴かせる名盤~Dark Moor のAncestral Romance (España、2010年)

西班牙(スペイン)のシンフォニックメタルバンドのスタジオフルアルバム8作目。
なぜか嫋(たお)やかな山の峰々を背にした、深く碧い湖面を連想させる作品。

素晴らしいアルバムに出会えたとき、私がいつも感じるように、このアルバムも「作り手が作ろうと願ったレベルにまで、作ってみたら本当に到達しちゃったんだよね」という自己満足に溢れた作品に違いありません。音楽を聴くときに、この「作り手が自己満足できているだろう」と、私自身が感じられるか感じられないかは、とても大事なことです。たとえ自分の好みの曲調でなくても、そのアルバムにパッケージされた曲の端々から迸(ほとばし)る何かから、アーティストの心意気を感じてしまうという体験が確かに存在します。そういったアルバムは、初めは「うーん。どうも好きじゃないけど何か惹かれる…?のかよくわからないけど…何かあるんだよなぁ」と繰り返して聴いてうちに取り返しが付かない程溺愛してしまっていた…という経験に繋がることが多いのです。

そして、私がこのDark Moorに求めていた音像は、古くは2nd「The hall of the olden dreams」(2001年)の「Bells of Notre Dame」や3rd「The Gates of Oblivion」(2002年)に収録されている悶絶歌謡スパニッシュスピードメタルだったり、6th「Tarot」(2007年)の「Devil in The Tower」や「The Star」のような様式美的シンフォニックメタルだったりしていた筈なのですが、本作のミドルテンポ中心のアダルトな(言い換えればメタルの衝動的なエッジが取れた優等生的な)作風を自分でも吃驚する程気に入ってしまったのです。

このアルバムはクラシック+ロックのバランスがよく、非メタルリスナーの方々にも十分アピールしうる作品。「俺が俺が」と自分が其処にいるということだけを主張するような自己顕示ギターソロもないし、ポップスの延長で語ることすら許される、けれどもメタルスピリットを忘れていない。そういう文脈から語ることのできる、誠に稀有な存在となっています。10年後も50年後も私のCDラックにおいて、そのラックの中の取り出しやすい最前列で、そしてその片隅にあって折に触れて存在感を示していて欲しいと願う作品です。

1. Gadir
2. Love From The Stone
3. Alaric De Marnac 本作では1番今までの路線を踏襲した曲
4. Mio Cid まぁ速い
5. Just Rock これが好きな人は多そうです。タイトル通り、ロックへの愛に満ちた1曲
6. Tilt At Windmills
7. Canción Del Pirata スペイン語で歌われるヴォーカルが眩しい
8. Ritual Fire Dance 昔のRPGで使われていそうなインスト
9. Ah! Wretched Me まずまず速い。思わせぶりなイントロから想像するよりは地味だが良曲
10. A Music In My Soul いいバラード
11. E Lucevan Le Stelle ボーナストラックだけど、イタリア語で高らかに歌い上げられるこの曲が1番好きだったりする(邦題は『星は光りぬ』:ジャコモ・プッチーニの歌劇『トスカ』(1899年)の中でカヴァラドッシによって歌われるアリア)

聴き始めてから11ヶ月間で数十回通して聴きましたが、聴けば聴くほど胸に染み入るいいアルバムなので、記載することにしました。