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2011年11月11日金曜日

(本) 夜間飛行 - サン・テグジュペリ (二木麻里訳、光文社古典新訳文庫、2010年)

原題:Vol de nuit, 1931年

大分寒くなってきました。麻酔の仕事をしに通勤するときは、朝日が出る前から電車を乗り継ぎ乗り継ぎ、Opethの「Damnation」を聴きながら90分ほど移動します。

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まだ夜間飛行が命懸けだった頃の話。操縦士たちの飛行状態を地上で監視する社長のリヴィエール。サン・テグジュペリは、本書において多くの哲学的な言葉をリヴィエールに語らせています。堀口大學訳の新潮文庫版を遥か昔に読んだときには、リヴィエールの言動にそれほど共感できませんでしたが、今回の読書では、作中のどの人物よりも彼に惹かれました。

「ものごとというものは」と思った。「ひとが命じ、ひとが従い、それによって創り出される。人間は哀れなものだ。そしてひと自身、ひとによって創られる。悪がひとを通じて現れる以上、ひとを取り除くことになるのだ」(p61)
・勝利。敗北。そうした言葉はおよそ意味をなさない。生きることはそうした観念の足元で、すでに新しい観念をかたちづくりつつある。勝ったためにかえって民の力が弱まることもあれば、負けたために民が目覚めることもある。リヴィエールを襲った敗北は、おそらく来るべき真の勝利に結びついていくための約束なのだ。ものごとが進みつづけることこそが重要なのだった。(132)

今回の読書で、私が感動したのは訳文です。非常に読みやすく、美しく、澱みのない日本語。訳者自身が巻末の解説において
「作品の文体は静謐で、優れた素描のような簡素さと品がある。同時に、どこかしら口ごもってもいる。」(147-8)
と書いていますが、訳者が産み出したこの日本語の文章からも、私は同じ印象を受けました。作品自体の芳香と、訳者が創りだした日本語の香り。ダブルで楽しむことができ、朝からとても幸せな気分になりました。

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