バスが再出発した後、何度も寝ようと試みましたが、腰が痛くて上手く寝付けません。どこでも眠れるのが自分の数少ない特技だと思っていましたが、甘かったようです。まだまだ知らない世界があります。
そうこう言いながらも、いつの間にか意識を失っていて、気が付いたときには6時頃でしたから、それなりに眠ったようです。バスの中で眠れるように、当直明けに走っておいたのが効いたのかもしれません。
「春日山から飛火野辺り」というさだまさし「まほろば」の歌詞を初めて聴いてから既に8年は経ったでしょうか。その歌詞の世界をこの目で見たいと思い、遂に念願叶って奈良までやってきました。
今回はあちこちに行きません。奈良市、しかも奈良駅の東側限定です。よくよく考えたら中学の修学旅行は「奈良京都2泊3日」という無謀なものでした。「奈良公園、大仏、次は清水寺、三十三間堂、はい、自由時間は~~時までね、では解散!」みたいなことをやられては、何も記憶に残りません。少なくとも私の修学旅行の思い出は「鹿がいっぱいいたこと」と「大仏でけ~」だけです。他は全く記憶にないです。
8時過ぎにJR奈良駅を出発です。今日の旅のコンセプトは「自分の足で歩く」。(吉田さらさ著-奈良 寺あそび、仏像ばなし の「奈良に行ったらとにかく歩こう」(p13)に影響されてのことです)
JR奈良駅から春日大社の「一の鳥居」まで1.5kmです。その先の「二の鳥居」まで更に1.2km。その後は春日大社内の神社をぐるぐる回ります。
春日大社(若宮~夫婦大國社~宗像神社~紀伊神社~大宮~一言主神社~水谷神社)
そしていよいよメインイベントである春日山原始林内に足を踏み入れます。
水谷神社から春日山原始林の遊歩道(山道)をひたすら登ります。
途中で杖をついた高齢男性に抜かされます。尋常でない速さです。
およそ2.5km登ると若草山山頂に到達。私の足では40分かかりました。空気がひんやりしていてダウンジャケットで丁度良いくらい涼しい。山頂からは奈良市が一望できます。
山頂まで行って大人しく下山すればよかったのでしょうが、マップを見ると奥に「春日山周遊道路」なるものがあります。ということで更にずんずん進むことに。
若草山から鶯の滝まで40分。殆ど歩行者に出会わなくなります。
そこから春日山石窟仏~首切地蔵(柳生十兵衛の弟子、荒木又右衛門が試し切りをしたという伝説の地蔵)まで更に30分。
そして「滝坂の道」をどんどん下ります(道はありますが、石畳になっていたりぬかるんでいたりして、お世辞にも歩きやすいとはいえない状態です)
「夕日観音」前を通過
上を見上げてよくよく観察すると・・・
観音様が彫られております。
飛鳥中前に出てようやく下山です。
下山した後は志賀直哉旧居前、ささやきの小径、二の鳥居、興福寺と歩を進めます。
平地、神社の境内、山道、石畳の道、ぬかるんだ道、道なき道。気が付くと5時間位歩きっぱなしになっていました。アスファルトとは何と歩きやすいものか。日常生活では得られない感動を得ることができました。
そういえば興福寺(藤原氏の氏寺)の国宝館はリニューアルされていました。あまり広くはありませんが、その中に多くの、非常に多くの国宝や重要文化財が収められています。館の中央に鎮座する巨大な千手観音菩薩立像(520.5cm, 鎌倉時代)はやはり圧巻。八部衆像の一体である「阿修羅像」(153.4cm, 734年に西金堂が建立されたときに造られた)は、本ではよく見ますが、目の前にある本物は「無垢の困惑ともいうべき神秘的な表情」(司馬遼太郎著-街道をゆく24-奈良散歩 p262)と言われるように、何とも儚く憂いを感じさせるものでした。
上記(計16.0km)を一気に歩き倒してから、近鉄奈良駅近くの東向商店街内にある讃岐うどん屋さん「釜粋(かまいき)」で昼食。やや柔らかい麺でしたがおいしくいただけました。
それにしても歩くだけでこんなに楽しめるとは。来て1日も経っていませんが、奈良が大好きになりました。
2日目に続く。