多くの自己啓発書に感化され、自分の本来の性質ではないプラス思考に惑わされていたのが、そもそもの過ちかもしれないと最近少しばかり思うことがある。そんな時に出会ったのが本書。
本書の各章のタイトルをみるだけで、「ねあか」で前向きな人はげんなりして読む気すら起こらないかもしれない。
<例>
・あなたはくだらない存在です
・誰もあなたの話をきいていません
・人はわかりあうことができません
・あなたは何をやっても失敗します
逆にこれらを見て、興味が湧いた人は本書で何かしら得るものがあると思う。
<以下今後の自分のために、本書で学んだ事項の抜粋>
・「聞いていない」という前提で行動すれば、聞いてもらえる方法を十分に工夫し、多少は聞いてもらえる話をすることができる。そのために・・・
・あえて、有意義な話をすることをあきらめる
・たくさん詰め込まず、繰り返し話す
・新しい情報は極力減らし、相手に頭の中にある情報をもとに話す(65)
・コミュニケーションを円滑に進めるためには、単に誠実なだけではなく、メッセージを届ける相手の全てを想定しきることが必要(96)
・より絶望すれば、弱音すら言えないことに気づけます(146)
・「サエない自分が、どうすれば人から愛されるようになるか」を本気で考えているのなら、自分の悪口を自分でいうはずがないのです。(146)
・自己嫌悪を丸出しにする人、それ自体が嫌悪すべき対象です。控えめに生きていきたいのであれば、自分を嫌いになることは重要ですが、誰にも知られず、こっそり嫌いになるべき。
・欠点はアピールするのではなく、無言で直す
・欠点を言うときは必ず笑い話にする
・自分を悪く言うことは控え、相手を立てる (149)
・話しすぎると嫌われたりする危険性があるので、言葉は厳選する(179)
・不幸に耐える努力をする粘り強さがあるのなら、幸せになる努力をした方がよいと考えるのがまっとう。「ありがたい」と声帯を震わせておきながら、「ありがたい」と本当の意味で思えるようになるために何をすればいいかを考えるべき。「くよくよするのはいいことだ」(184)
・失敗するのが許されていますが、その場合にさらなる成功をおさめることが求められます。運が悪くて失敗してしまった人のみが救われるだけで、失敗するべくして失敗した人は、さらに転落の人生をたどらないとも限りません。なぜなら、運が悪くて失敗したのではなく、努力していなかったり、判断力がまずかったりして失敗したのなら、その失敗は、ある意味その人の個性であり、その後も個性が発揮されるだろうからです。(188)
・「起きてしまったことはすべて悪いことである」と思えば事態は悪化しません(192)
・失敗事例をリアルに感じれば同じ過ちを繰り返さなくてすみます(192)
・成功・失敗は相対的なものなので、羨んでしまうような友人は選ばない(195)
・悪い印象を与えてしまうと、自己紹介をする権利も奪われてしまうことになる(200)
・自分の内面なんて、他の人から見れば本当にどうでもよいことなのです(208)
・ありのままのあなたの素晴らしさを表現するために「見た目=内面」にすうのではなくて、人はほぼ見た目でしか人の内面を計ることがないという意味において、見た目を内面と一致させることが重要になってくるのです(208)
・することがないから夢を捏造していきていくしかありません(215)
・今日はがんばった! → 仕事のやり方がまずいのかも・・・
がんばった自分を褒めることは大事かもしれませんが、実は無駄な頑張りにすぎなかったかもしれませんし、それが無駄であったことを認めると正気でいられないのかもしれませんので、自分をねぎらってしまいがちですが、がんばらざるを得なかった背景を分析し、本当にがんばる必要があったのかを考えておくべきです。そうしないと死ぬまでがんばる羽目になります(224)
<抜粋終わり>
一貫した本書のメッセージは「常に最低、最悪の事態を想定してことに当たれば、それ以上の地獄は見ない」ということだろうか。周到な準備と他人に気を遣える想像力が重要なことが行間から読みとれる。自己の努力や調整可能な範囲以上において変な期待を他に求めてはいけないということも重要な点だ。それは「人を信頼しない」という孤独な思考法とはまた異なるものだ。
ひねくれてはいるが、本書が発するメッセージは過去の幾多の素晴らしい自己啓発書と変わらぬ前向きなものだと感じられた。