人生は全てが素晴らしい。
それは決して私が恵まれた環境にいるから思うことではない。
人との出会い、会話、他人の考えやその過ごしてきた環境に会話を通して間接的にでも触れること、全てが新鮮で学ぶことがたくさんある。
自分にとって新しい考えに触れるとき、それが「お、これは使える」と思えるか右から左に流れていくかは受信者の問題。受信者のアンテナが立っていないと同じ環境におかれても、有用な情報やブレイクスルーとなる考えを素通りしてしまいかねない。「受信者の準備ができていれば指導者は求めなくても自ずと現れる」という言葉を聞いたことがあるが、それはまさしくその通りである。
今日は勤務している大学病院の学生の研究や考えに触れる機会を幸運にもいただいた。数年しか人生経験が違わないところなのに、いち臨床麻酔科医として学生の進路の相談に答えることは非常に心苦しかった。もしかしたら自分のコメントで学生の進路を変えてしまうのかもしれない(まぁそれくらいの影響力があるのはそれはそれで凄いことだろうが)、とか、麻酔の真髄を教えて一人でも多くの学生さんに麻酔科を選択してもらいたいとかそんなことを思わなくもなかったが、結局自分が持っているもの以上は提供できない。私の場所から見える景色を率直に伝えて、それで麻酔科を選んでくれるならこんなに嬉しいことはない。
進路に迷っている医学生に私ができたアドバイスは「楽しいことを楽しんでやるのがいい」ということだけである。麻酔に興味があると言うだけで麻酔科を選ぶ素質は十分ある。そんな学生さんにはぜひ麻酔科学の明日を担ってもらいたい。