Case Scenario: Cesarean Section Complicated by Rheumatic Mitral Stenosis (Anesthesiology 2011; 114: 949–57)から。
心合併症をもつ妊婦は先進国では0.2-3%程度。
@症例
推定収縮期肺動脈圧54mmHg, NHYA 4の帝王切開を36週に予定
・心臓外科医と人工心肺をスタンバイ
・酸逆流予防に30分前にsodium bicitrateを内服
・児心音を執刀まで持続モニタリング
・麻酔導入前にA-lineと肺動脈カテーテルを留置。
→血圧125/65/76, HR 105, CVP 14, PAP 90/50/62, SvO2 34%
・麻酔導入:レミフェンタニル0.2γ、エトミデートとサクシニルコリンで挿管、
・維持:レミフェンタニル0.05-0.1γ、0.5MAC以下のイソフルラン、100%酸素、ベクロニウム
・麻酔深度はBISで40-60に。換気はnormocarbia
・TEEでモニタ:僧帽弁圧較差16mmHg、弁口面積1.4cm2、
・Apgarは4/9
・分娩後はオキシトシン40単位/2hr
・手術室で抜管。術後はcardiac care unit。産後4時間のSvO2は54%、5日後退院。
・産後4ヶ月で僧帽弁手術
discussion
@妊娠に伴う循環器変化(%)
・血液量+35、血漿量+45、HR+20, stroke volume+30, CO+40,SVR-15, SBP-5
・収縮力は様々、CVPとPCWPは変化しない
@麻酔管理目標
☆pulmonary edemaとarrhythmiaが最も合併症に関係する
・左室拡張時間を十分とるべく、頻脈を避ける。phenylephrineやnorepinephrineは良いだろう。epinephrineは頻脈になる。区域麻酔による血管拡張も反射性頻脈を起こす可能性がある。
・β1刺激薬が子宮への作用を考えると好ましい。
・正常/高めの前負荷・後負荷、心収縮力の維持。血管抵抗を下げるのはよくない。
・一般的にシングルショットの脊麻は勧められない。(Curr Opin Anaesthesiol 2005; 18:507-12)
・適切なモニタリング下(A-lineやPAC等)で、用量を調節した区域麻酔ならば有益かも。
・経膣分娩では腰部硬麻がよい
・AFにはジゴキシンが使用できるだろう
・僧帽弁狭窄症合併妊婦の帝王切開に対する麻酔法に関するevidence-based ガイドラインは存在しない。個々の症例に応じて対応すべき。
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JB-POT受験以来見ることのなかったWilkin's scoring (MSの重症度スコア)が掲載されている。実際にこんな重症な患者さんには滅多に出会わない。こんなものをまとめても、緊急で来られたら役に立たないかもしれないが、患者さんの情報から「重症だ!」と騒ぐことは可能である。そうすれば誰かの手は借りられるかも。