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2011年3月20日日曜日

(麻) 麻酔と法律関連メモ

「臨床麻酔」臨時増刊号(2011年3月)を興味深く拝読する。
全13項のトピックのうち、2項目が安全・危機管理に関するものであり、世の中の(麻酔科医の?雑誌の編集委員の先生方の?)関心が高いことが伺える。

以下は 13 麻酔事故と安全 ―刑事訴訟を避けるために― (著:加藤愼 弁護士) (p437-444) から引用
・刑事責任を追求する場合の対象は、問題となる医療行為を行った医療行為者自身、すなわち個人である。
・雇い主だけではなく医療従事者相互にも利害関係の対立を生じる可能性がある。
手術自体はチーム医療であっても刑事責任に関してはチームの利害が常に共通しているとは限らないのである。
・民事訴訟に関する限り、患者が勝訴判決を得て終わるものは1割強。
・刑事訴訟手続きでは、訴訟を提起する検察側の勝訴率(=有罪判決率)は99%を超えている。起訴便宜主義という原則のため。
そもそも刑事訴訟になること自体が既に敗北といえる
・医師個人として考えるべきことは 1.刑事事件化しないこと 2. 刑事事件化しても起訴されないこと
・術中に生じた不測の事態については、その原因を医療機関として情報を集約し、関与した医師がそれぞれの立場できちんと検討すること。院内での検討結果として評価困難なら院外の意見や検討を求める
・麻酔科医として麻酔科領域に属する医療行為に問題がないかどうか、もしなければその点をきちんと明確にする。問題があれば、麻酔科医の直接医療行為に起因するものか、物的設備や人的配置・体制に起因するのかは大きな違いがある。
・上記に基づいて、第1次的には当該事故対応を医療機関として行うことを確認する。ただし、具体的な責任原因が麻酔科医にあるという評価になり得る場合で、かつ刑事手続になる可能性が高い場合には、医療機関との意思疎通や信頼関係を考慮しつつ、麻酔科医個人として弁護士などの専門家への相談を検討する。
・医療における「失敗」概念と、法律の世界における「ミス」の概念には本質的な違いがある
・麻酔科医は多くの場合勤務医に過ぎないこともあり、また刑事事件での利害状況も考慮すると、こうした麻酔科医に対するバックアップは医療機関には期待できない

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「外科医の立場から望む効率的手術室運営における麻酔科医の役割」(日本臨床麻酔学会誌, Vol. 29 (2009) No. 4 pp.418-426)によると

・術中の出血に責任をもって管理できる麻酔科医、予期せぬ事態に迅速かつ的確に対応できる麻酔科医
・緻密な思考から大胆に決断し、論理的・学問的な説得力を身につけ、協調性を重んじながら行動で示してリードすることである。

が外科医が求める麻酔科医像のようだ

正確な麻酔記録を残すことは当然として、術前にすべき検査の依頼、術中モニタリングの選択、術後帰室先、鎮静するのか抜管するのか。全て自分が最後の砦として、誰に遠慮することもなく、強い心をもって主張しなくてはならない、のかなぁ。まぁそうなんだろうなぁ。