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2011年12月28日水曜日

(音) Silencer の Death, Pierce Me (Sweden, 2001年)

ブラックメタルの中にdepressive suicidal black metal (鬱系自殺系)というジャンルがあるらしいのですが、その中でも最高峰(初心者向け?)に属すると言われているバンドが、ただ1枚残したアルバムです。YouTubeでも全曲アップされていますし、なんとiTunes storeでアルバムを購入することもできます。いったい誰が買うんだろう・・・。
楽器隊は至極まともで、良質なブラックメタル的音楽を奏でています。このアルバムが全曲instrumentalだったら神盤とは言われていなかったでしょう。兎に角、ヴォーカルの存在感が凄い。
嘔吐・咳嗽・絶叫・憤怒等あらゆるネガティブなものを表出したヴォーカルのインパクトが凄すぎて、それを好きになれるか否かで本作の評価は真っ二つに分かれるでしょう。冷静に考えて95%以上の人は否、でしょう。「音楽は楽しく聞くものだ」と恐らく多くの人が思っている筈ですから。そして楽しく聴ける類の音(ヴォーカル)ではないと思います。#5では、ヴォーカルさんがちょっと笑ってますが。

試しに#1の1:46の絶叫を聴いてみていただければ分かりますが、テレビやラジオで流れていたら苦情が殺到すること間違いないし(視聴者以前にスポンサー様方から)、車でのデートのBGMには99.9%以上の確率で使えないでしょうし、胎教にも良くなさそうですし、全身麻酔中でも残ると言われている聴覚によい影響を与えるとは到底思えません。見たことないような怪鳥の鳴き声か悪魔の動物園に迷い込んだような錯覚を覚えます。「ロード・オブ・ザ・リング」に出てくるゴラムのような生物が終始拷問を受けて絶叫しているようなヴォーカルです。
ヴォーカルのNattramn氏は統合失調症でこのアルバム作成後に精神病院に入院加療。だからSilencerのアルバムは一枚しかありません。本作のヴォーカルパフォーマンスに触れたときに、精神科医の皆様がどのような反応をするかというところに、私は非常に興味がありますが、本作のスタイルからは、何か見えてしまってはいけないもの、幻覚に抗っているかのような印象を受けます。
鬱系自殺系、という言葉に反応して「あぁ、ちょっと今気分落ち込んでいるから暗い曲でも聴いてみよう」というノリで聴く類のアルバムではないです。「あぁ、自分では気分が落ち込んでるって思ってたけど、そういう次元で語れない精神状態の人がいるんだ(いたんだ)」って、少しは生々しく感じられるかもしれません。鬱に対するヒーリング効果という観点では、恐らく本作の効用は相当小さいでしょう。

いずれにせよ、Cradle of FilthとかDimmu Borgirとかの売れてる系ブラックメタルが好きってくらい(私)では、ちょっと立ち退きを迫られる程の敷居の高さを感じますが、慣れてくると凄くハマります。慣れるのもどうかと思いますし、何のために慣れるのかよくわかりませんが。昨年末、これを聴いていた私はもうハマってしまった側の人間でしょうか。

1. Death, Pierce Me 10:30
2. Sterile Nails and Thunderbowels 6:16
3. Taklamakan 8:32
4. The Slow Kill In the Cold 11:34
5. I Shall Lead, You Shall Follow 8:47
6. Feeble Are You, Sons of Sion 3:02

6はインストです。
メタルという音楽ジャンルの懐の深さを感じる作品でした。

ヴォーカルのNattramn氏。退院した後には「Diagnose: lebensgefahr」という名義で「Transformalin」というアルバムを発表してますが、こちらは手に入らないのかな。

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