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2011年12月13日火曜日

(本) 博士の本棚 - 小川洋子 (新潮文庫、2010年)

人生で読んだ小説の数が多く見積もっても数百冊であろう私にも好きな作家さんがいます。

小川洋子さんはそのうちの1人です。と言ったら小川洋子さんに迷惑がかからないだろうか…否、多分かからないだろうと、思って書きますが。

最近読んだ「博士の本棚」にとても嬉しい文章を見つけました。

当時、新刊の単行本を買うのは、何よりの贅沢だった。一割引きで購入できる大学の生協以外、普通の書店で買物をしたことがなかった。古本や文庫や図書館で借りるのではなく、まっさらな新刊を自分だけのものにしたい気持が、純粋な本物の欲求であるかどうか、お財布と相談しながら、吟味に吟味を重ねた上での買物だった。(p267)

あぁこんな偉大な小説家の先生の書く言葉に共感できるなんて(私のことを書いているのか、と本気で錯覚しました)。おそらくこの共感は私の勘違いだと思いますが、勘違いだとしても、幸せな気分にしてくださった小川洋子さんには、心の底から感謝したいと思います。そしてこれからも素晴らしい、否、素晴らしくなくても良いので、楽しく小説を書き続けてもらいたいなぁ、と分不相応にも思うのでした。あぁ他人の書いた文章で幸せになれるなんて、本当に幸せなことだ。