7作目のスタジオアルバムです。きっといっぱい売れて、すぐ値が下がって中古市場に出回るだろう、もしくはレンタルになるまで待とうかな、と思っていたのですが、中古の輸入盤が意外に早く安く購入できたので聴いてみました。
本作はバンドの祖国フィンランドでは発売日に5万枚以上売ってダブルプラチナアルバムを獲得したそうです。日本人的感覚からすると「たった5万枚?!」、って感じですが、フィンランドの人口は540万人、と日本の人口の1/24程度。単純に掛け算すると日本で120万枚売れてることになります。これは2011年に日本で売れたアルバム~嵐の「Beautiful World」やAKB48「ここにいたこと」、EXILEの「願いの塔」~などより売れたことになりますが、…まぁどうでもよい比較です。それにこれらのアーティストを超えてNightwishのアルバムが日本でランキング1位をとるなんて、これまでもこれからも絶対ない。そしてこのアルバムが120万枚も売れたら変だ。そんな世の中が来たら、それは日本人の辺境スピリットが侵食されている結果だろう。恐らくフィンランド人が変なのだろう。
なにせコンセプトアルバムになっていてランニングタイムも74分55秒です。長すぎ。お腹いっぱい。
私はオペラティックなソプラノ歌唱のTarjaのヴォーカルがそれほど好みではなかったため、シンフォニックな音楽の装いには大いに興味を惹かれつつも、それほど熱心にNightwishの作品を追いかけて来ませんでした。そんなわけで歴代のスタジオアルバムの中では「Oceanborn」でも「Once」でもなくAnette Olzonがヴォーカルをとっている前作「Dark Passion Play」(2007年)が最も好みなのです。
本作は2012年に映像化されるらしいです。
そしてそれを反映してか非常にシネマティックな作りになっています。これまでもシンフォニー要素、クアイアいっぱい、オペラかよ、っていう世界観でしたが、いよいよ磨きがかかってもう誰も止められない世界に到達してしまいました。凄いぜNightwish。そして今後、メタルの世界から飛び出せるであろう、普遍的魅力に溢れた数少ないバンドの1つであろうことを、本作を2回ほど聴いただけで確信するに至りました。おそらくそれをメタルファンは望んでいないでしょうが。
という意味においては、メタルが好きで本作を聴く人には多分物足りないでしょう。って偉そうですが、それくらいメタル色が希薄な曲がたくさんあります。#4なんてナイトクラブでカクテルかワインかウイスキーを傾けながら聴くのが全うな聴き方なんじゃなかろうか、と思う曲もありますし、ヴォーカルなし、メタル色なしのinstrumental曲も何曲かある。
それでも、これまでのNightwishファンだった方々へのリップサービスのような曲もあります。#2、#5、#11なんかがそうです。
バグパイプが大活躍な#5はポップで楽しげでキャンプファイヤーを囲んで踊りたくなりますが、歌メロはもうちょっと何か欲しいかなぁ。ストレートなメタルっぽさを留めている#2と#11。#2はシンフォニックなクアイア全開で多くのファンに受け入れられるでしょう。Anetteのヴォーカルも映える。#11のAnetteは若干残念ですが、それを補って余りあるNightwish的メタルサウンドです。
ということで、Nightwishの真性ファンじゃない私ですが、そんな私でも2ndアルバムの「Oceanborn」から曲がりなりにも追いかけて来た甲斐があったなぁ、しみじみ…と素直に感動できる作品でした。是非とも多くの人に触れて欲しい、「メタルなんてゴミだろ?」って思っている方にこそ触れて欲しい作品です。今年最後の(?)名盤です。
1. Taikatalvi
2. Storytime
3. Ghost River
4. Slow, Love, Slow
5. I Want My Tears Back
6. Scaretale
7. Arabesque
8. Turn Loose The Mermaids
9. Rest Calm
10. The Crow, The Owl And The Dove
11. Last Ride Of The Day
12. Song Of Myself
13. Imaginaerum
早く本作の映像がみたいなぁ。