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Anesthesiology 2011;114: 84-90のPrevalence of Malignant Hyperthermia and Relationship with Anesthetics in Japan: Data from the Diagnosis Procedure Combination Database. ではDPCデータから抽出した悪性高熱症(MH)の発症率や麻酔薬との関連を論じています。東京大学の先生たちの報告。18ヶ月、全麻123万件程度を対象。
観察期間中にMHは17人(7.3万人に1人)、家族歴や神経筋疾患などのリスクファクターはなし、死亡例はそのうち1人(5.9%)、14人でセボフルランが使用されていた。男(オッズ比3.49)、29歳未満(同1.91)、セボフルラン(1.53)、ロクロニウム(2.03)などだった(ただしこれらの薬剤が要因か、までは論文中で触れられていない)。サクシニルコリンは因果関係不明。
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日本では1985-2004年までは死亡率が15%程度だったようですから、2006-2008年に調査したこの論文のデータを見ると死亡率は格段に低下しています。
イチ麻酔科医としては、たとえ肺塞栓症より頻度が低くとも、実際に見たこともないMHに対して、本当にテキスト通りの対応ができるかどうかなんて自信があるわけありません。上記17人は一般的なリスクファクターがなかったのですから、MHは予測不可能。毎回「起こるかもしれない」と思って麻酔をかけていくしかないのかも。この論文を読んで以来、全麻導入後にはどんなバイタルよりも体温を気にするようになりました。
@一般的な悪性高熱症の知識(の一部) (2011年5月24日追記)
・15分間で0.5℃以上上昇、最高体温38℃以上
・ダントロレンは1-2mg/kgを10-15分で。一応7mg/kgまで。
・カルシウム拮抗薬はダントロレンとの併用で心停止の報告あり慎重投与
・MHに伴う血行動態変化は心筋酸素消費量を4倍に上昇させる。代謝亢進に伴う全身の酸素消費量は約3倍、血中乳酸値は15-20倍
・初発症状はETCO2の上昇 > 急激な体温上昇 > 原因不明の頻脈
(古典的にはSCC投与後の咬筋硬直)
・遺伝子検査では必ずしも異常は認めない
・病因はリアノジン受容体の機能異常により、Caイオンによるカルシウムイオン放出(CICR)が亢進し、細胞内Caイオンの濃度上昇に伴う骨格筋収縮が生じるため
@一般的な悪性高熱症の知識(の一部) (2011年5月24日追記)
・15分間で0.5℃以上上昇、最高体温38℃以上
・ダントロレンは1-2mg/kgを10-15分で。一応7mg/kgまで。
・カルシウム拮抗薬はダントロレンとの併用で心停止の報告あり慎重投与
・MHに伴う血行動態変化は心筋酸素消費量を4倍に上昇させる。代謝亢進に伴う全身の酸素消費量は約3倍、血中乳酸値は15-20倍
・初発症状はETCO2の上昇 > 急激な体温上昇 > 原因不明の頻脈
(古典的にはSCC投与後の咬筋硬直)
・遺伝子検査では必ずしも異常は認めない
・病因はリアノジン受容体の機能異常により、Caイオンによるカルシウムイオン放出(CICR)が亢進し、細胞内Caイオンの濃度上昇に伴う骨格筋収縮が生じるため