・いまどき料理が不得意なんて、あり得ない。野菜を切って、コンロを使って、調味料をふる。たったこれぐらいの手間を惜しんでいる人に、幸福な人生がやってくるわけがない。「面倒臭い」は、思考停止した人間の、自覚のない敗北宣言だ。(p65)
・失敗や苦労は、若い時は買ってでもしろと言うけれど、僕は違うと思う。苦労を買うより、ミスを防止する思考力を育てる方が、若い人には大事だ。(71)
・自分が持っているパフォーマンスを最大限に活かさないのは、人が生まれた才能に対する冒涜だと考えている。(145)
・皮膚感覚で嫌だということを、受け入れてしまった後の後悔は、何億円稼いだって拭えるものではないだろう。(148)
・もし本気で負のループを断ち切りたいのなら、まず自分の孤独と真剣に向き合うべきだ。・・・(中略)逆境は我慢と、あがくことでしか乗り越えられないことを知っている。(168)
・こう打って、こう指せば必ず詰めるという将棋しか、指そうとしてない。でも人生って絶対、詰め将棋なんかじゃない。(205)
前に進むためには家族も友人も切ってきた、と本書のいたるところで語っていますが、それに拒絶反応を示す人は多いでしょう。著者の名前を見ただけで本書を手に取らない人もそれ以上に多いでしょう。本書で示されているような氏の価値観を私は全く否定しませんし、できませんし、する権利もありません。もっとも、こんな考え方をする人ばかりの世の中で生きていたいとは思いませんが。
仕事に対する情熱と行動力、それにかけてきた時間と成果は私の比ではないということだけは、本書を読んでよく分かる事実でした。(まさにこの点こそが、私が氏の価値観をどうこう論ずることができない理由です。何事も成し遂げていない私は、人のことをおこがましく批判できる存在とはなり得ません。)
共感できるところと共感できないところと玉石混交の本書でしたが、このような考えをもつ人が世の中にいて(そして恐らく絶対的少数といえるほど少なくはないでしょう)、自分の哲学の下に自分の生きたいように生きているという事実がある。それは素晴らしいことで、学ぶことが多々あった一冊でした。