5作目「Karma」以来のバンドのファンです。本作は一聴しただけでは全くピンとくるものがありませんでした。#14の「Once upon a time」こそ、これまでのスタイルを踏襲した疾走曲ですが、「Ghost Opera」や「When the Lights are Down」のような強力な疾走曲ではありません。他はミドルテンポ~スローテンポの曲が並びます。そのためでしょう、即効性がないのは。
それでも何度も聴いていると漸く味がじわっと出てくるような、アダルト向けメタル作品に仕上がっているのが分かります。アルバムの良さが分かるまでに聴き込みを要すのは、リスナーに苦行を強いるようで不親切な造りとも言えます。その意味において本作は新規ファンを開拓するだけの力はないかもしれませんが、彼らの熱心なファンにはアピールするだけのものはあると思います。バンドは既に音だけで唯一無二の艶かしい芳醇な世界を描くことに成功していますが、バンドが更に円熟の域に達するための過渡期の一作になることでしょう。秋の夜長に酒を飲みながら聴くにはいいアルバムです。