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2010年10月21日木曜日

(本) 残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法 ― 橘玲

限界を恐れず、「続けること、諦めないこと」が限界を突破し、新しい世界を築く力になる。「自分が変われば世界が変わる」、「事実はない。認知があるだけだ。不幸な出来事に遭遇しても、認知を変えればいい」等々は多くの自己啓発書に書かれていることです。私自身もそれらの書を多く読み、影響されて生きてきましたが、「やってもできない」という、別の視点からこの現代社会を描いているのが本書です。

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・能力主義がグローバルスタンダードになったのは、それが市場原理主義の効率一辺倒な思想だからではない。
会社はヒエラルキー構造の組織で、社員は給料の額で差をつけられるのだから、なんらかの評価は不可欠だ。その基準が能力でないならば、人種や国籍、性別、宗教や思想信条、容姿や家柄・出自で評価するようになるだけだ。すなわち、能力主義は差別のない平等な社会を築くための基本イラフラなのだ。(p67)
・仕事と趣味を両立させられるのは、きわめた高い能力を持ったひとだけだ。「やってもできない」のなら、それがなんであれ、好きなことで生きていくしかない。そうでなければ、マックジョブで日々の糧を得る退屈な人生が待っているだけだ。(81)
・高度化した資本主義社会では、論理・数学的知能や言語的知能など特殊な能力が発達したひとだけが成功できる。こうした知能は遺伝的で、意識的に"開発"することはできない。すなわち、やってもできない。(250)

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本書で取り上げられる様々な引用が、著者の知識の引き出しの多さを物語っていますが、私はそれらの引用元が「信用に足るものなのか」についての判断ができませんでした。
仕事の能力の差によって報酬を区別するのが1番平等だ、という考え方は理解できるし納得できます。ですが仕事の能力を開発する礎を作ることが可能か否か(幼少時にきちんとした教育が受けられるか否か)、が金銭的裕福さによる階層化が更に更に進むであろうこれからの世界を生きる私は、この考え方に素直に賛同できず複雑な気分です。