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2013年4月12日金曜日

(音) ももいろクローバーZの5th Dimension (2013年) − ポップアルバムを作る人にもまだ良心のある人たちがいた…と、妄想かもしれないけど信じられそうな渾身の1作です

久しぶりに、記録を残したいと思える音楽に出会えたので書くことにします。

4月9日。久しぶりにJ-Popのアルバムを、発売日に、店頭で、定価で買いました。レジに到達したのは閉店3分前でした。
この条件で邦楽のアルバムを購入したのは、恐らく高校生の頃に買ったX Japanの「DAHLIA」(1996年)以来でしょう。いや、ちがうかも。でも、医者になってからそんなことをした記憶が全くないです。

取り敢えず今回店頭で買ったのは初回限定盤Aです。「初恋」、「なごり雪」、「秋桜」、「あの素晴しい愛をもう一度」などのフォークソングのカヴァーを中心に収録したライブCDが長尺で付いてきます。初回限定盤BはAmazonで割引されていたので予約していました。そちらは4月10日に届きました。Amazonは1つの商品に注文が集中すると、予約していてもなかなか手元に届かないことがあると聞いたことがあったのですが、本作については杞憂でした。

大学院生なせいかわかりませんが、4月9〜12日の4日間でアルバムを20回くらい全編通して聴くことができました。本作は沢山売れてるようですし、それがAmazonのレヴュー数に反映されているようです。色んな意見に触れることが出来ていいですね。
僕は彼女たちの音楽を初めて聞いたのが2012年4月29日なので、今日で348日です。ライブには行ったことはなく、これまで聞いた作品は以下の順番。

・1stアルバム「バトルアンドロマンス」
・メジャー7htシングル「猛烈宇宙交響曲・第七楽章「無限の愛」」
・メジャー9thシングル「サラバ、愛しき悲しみたちよ」
・マーティ・フリードマンによるデスメタルカヴァーアルバム「鉄色クローンX」
・DVD作品「ももクロ夏のバカ騒ぎ SUMMER DIVE 2012 西武ドーム大会」
・メジャー6thシングル「労働讃歌」
・メジャー8thシングル「Z女戦争」
・桃黒亭一門名義のシングル「ニッポン笑顔百景」

という背景で触れた本作品、ということで印象を書きます。

本作は、本当に太っ腹なアルバムだと思います。
シンフォニックなクワイアあり(#1)、ヒップホップあり(#4と5)、プログレあり(あちこち目まぐるしく転調します)、ポップあり(ももいろクローバーZお得意なスタイルとしては#2,#10,#11です。#10はいいですよね)、ギターソロ入りなメロディックスピードメタルあり(#3)、哀愁バラードあり(#8,#13)、アイドルファンにはたまらない(?)楽曲中のメンバーそれぞれによる語りあり(#8)、何でもありです。あ、でも、ロックはないかも。

彼女たちの音楽に手放しで盲従する人たちには本作は何の抵抗もなく受け入れられるでしょうが、ほぼ全曲キャッチーすぎる、太平洋戦争終戦以来この数十年の我が国の音楽史上に燦然と輝くであろう至宝のポップアルバム「バトルアンドロマンス」を今作にも期待してしまうライトなファンの何割かは本作で脱落するんじゃないかな、と思ってしまいました。ですが、今の彼女たちの人気を考えると、新機軸に挑戦する余裕が、コマーシャルな視点からも許されたんだと思います。
その意味で「記録を塗り替えましょう」「一瞬一瞬フルパワー!」な歌詞そのものを地で行った訳です。

一方、こうも思います。
本作に収録されているシングル既発4曲にプラスして、既発シングルのカップリングとして発表されている「Bionic Cherry」や「DNA狂詩曲」、「PUSH」、「みてみて☆こっちっち」、または「ニッポン笑顔百景」や「もリフだョ! 全員集合」なんかを適当な曲順で並べるだけでも、誰もが一聴して悶絶できる高評価アルバムが作れたはずだ、と。それによって「既発曲の寄せ集めアルバム」という批判は免れませんが、シングル作品もフォローするファンというのはアルバムを聴くだろう潜在的総人数に比べたら少ないはずですし、本作を「ももクロらしいキャッチーなヒット曲全部入り。ごめーん、ベストアルバムみたいになっちゃいました」にすることは、商業的には十分”あり”な筈です。レコード会社としては彼女たちの作品を滅茶苦茶売りまくり、他のアーティストの赤字分を回収しないとやっていけない事情があるんじゃないかと邪推してしまいますし。

ですがそうしなかった。

#1のイントロを聴いたとき、違うアルバムを聴いているのかと思いました。シンフォニックメタルのイントロのようです。
メタルを主食とする僕は#1で「Carmina Burana」と「O Fortuna」が立て続けに流れる荘厳なイントロに触れると、Pretty Maidsのファーストアルバム「Red Hot and Heavy」(1984年)とデスメタルバンドVital Remainsの「Dechristianize」(2003年)の#1「Let the killing begin」のイントロを否が応でも思い出します。

参考までにこんな感じです。Pretty MaidsもVital RemainsもYoutubeで見つけました。凄い。リンク切れになったらご容赦を。



 
アルバムのアタマでこういう風に来られると、メタル耳な私はごりごりのギターサウンドとハイトーンボイスやデスヴォイス/グロウルをどうしても期待してしまいますけど、流石にももクロのメンバーにそこまで求めてはいけませんよね。ですがこの#1は8:19。8分19秒です。これだけの長尺を持ってこられるアイドルグループが今の日本で他にいるでしょうか。否、アイドルグループでなくても、です。アルバムでも恐らくあんまり許されないでしょうけれど、こういう作品はアルバムでしか聴きえません。DreamTheaterやRiversideみたいなプログレッシブメタルバンドや、X JAPANならありでしょうけれど。因みに僕のiPod touchに入れている6168曲の中において、#1はこの辺にランキングします。

もしかしたらよく見えないと思いますので、説明いたしますと、Neo STARGATEの周りにはOpethの「Folklore」やQueenの「The Prophet's song」、ラクリマ・クリスティーの「ねむり薬」、ウラディミール・ホロヴィッツのベートーヴェン「ピアノソナタ第23番」とかYo -Yo Maのシューマン「チェロコンチェルト」なんかがあります。
曲の長さは曲の良さと全く関係ないんですけどね…。たぶん普段ポップソングばっかり聴いていると「1曲で8分とかあり得ない!」と思う方もいらっしゃるかと思って書いてみました。

私をはじめとしたライトなファンには#2、#3、#7、#10-13あたりがクリーンヒットだと思います。特に#10,#11はももクロらしさ全開。シングル曲のキャッチーさもアルバムの中での配置が絶妙なために際立っています。

僕は全曲心ゆくまで堪能させて頂きました。ヒップホップ自体、全然聴いたことなかったですが#4,5がアルバムの中で絶妙な位置にあるので楽しめました。

とはいえ、僕の1番のお気に入りはやっぱり#7です。こんなに哀愁ポップなのに6分57秒もある。しかも歌詞にエリントンやデリンジャーが出てくる。その上シングルとして発表されている。なんて懐の深いヒロインたちなんでしょう。


本作はおそらく今年1番のJ-Popアルバムです。僕は今年に入ってこの4ヶ月弱で洋邦いろいろ60-70作以上のアルバムを聴きましたが、その中では1位です。
勿論、曲によっては彼女たちの歌唱力不足を感じる場面が無きにしもあらずですが、これだけ売れてるグループの作品なら、何年後〜10年後には歌のうまいヴォーカリストたちによって(もしくは成長した彼女たち自身によって)カヴァーアルバムが発表されるでしょう。その日を楽しみにして今は彼女たちの全力に触れられる幸せを感じたいかと。

3作目のアルバムも期待していますので、どうぞよろしくお願いいたします。

以下曲目とランニングタイム。太字は特にお気に入りです。

1. Neo STARGATE 8:19
2. 仮想ディストピア 4:09
3. 猛烈宇宙交響曲・第七楽章「無限の愛」 5:12
4. 5 The POWER 4:19
5. 労働讃歌 4:38
6. ゲッダーン! 3:34
7. Z女戦争 6:57
8. 月と銀紙飛行船 5:16
9. BIRTH Ø BIRTH 5:03
10. 上球物語 -Carpe diem- 4:04
11. 宙飛ぶ! お座敷列車 4:29
12. サラバ、愛しき悲しみたちよ 5:24
13. 灰とダイヤモンド 6:52