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2010年12月12日日曜日

(麻) 脳死臓器移植関係メモ

脳死が私に接近した一件で、私が感じた違和感を少しでも解明してみようと、真剣に考えてみました。不自由な私は、人が考え、つづったものを拠り所にしないと、思考の幅を広げることもおぼつかないのです。

「命は誰のものか」(香川知晶著)によると脳死という死は臓器移植ありきの概念だったという歴史を知ることができます。

「犠牲」(柳田邦男著)は息子の脳死に向き合った記録を作品化したものですが、外勤先に行く電車の中で読むには、かなり重い内容でした。医療を提供する側になると、医療を受ける側の思考法を忘れがちになります。だから医療を受ける側から書かれた作品を読むのは、自分の仕事を見つめなおす意味で、非常に大切な経験となりました。

<以下「犠牲」より引用>
・現代人の死は、しばしば個人の営みの範囲で終わることなく、それ自体の中に社会的な意味がこめられている(p21)
・語りたきことなどありと思えども友と並べばただ黙すのみ(123)
・「提供者が医療に参加するのを医師が手伝う」(145)
・死にゆく者の命も、臓器移植を待つ者の命も、等価であるはずなのに、脳死・臓器移植論のなかでは、死にゆく者の命=患者・家族全体を包む精神的ないのちのかけがえのない大切さに対しては、臓器移植を待つ者の命の千分の一の顧慮も払われていないからだ。(148)
・救命できない場合でも、医療者には大事な仕事があるはずです。(199)
・indestructibility(破壊し得ないこと)(208)
・人間の心はわからないところがある。つまり物語らないとわからないところがある、と私は思うのです。(河合隼雄他「河合隼雄その多様な世界」岩波書店)(240)
・「いのちの唯一の目的は成長することにある」(286)
***

以下は専門医試験対策としてのまとめ。実技試験で「じゃあ脳死判定して下さい」なんて言われたりして。

脳死関連
・1997年に臓器の移植に関する法律施行、2010年改定
・1999年に第1例目が施行

* 2010年改訂の変更点
(1) 年齢
改正:12週未満(在胎週数が40週未満であった者にあっては、出産予定日から起算して12週未満)の者。12週未満は脳波における信頼性がない。(生後12週以上では脳死判定ができ、臓器提供が法律上可能になった。)
(2)体温
直腸温32度未満の場合、脳死判定から除外されていた
改正:6歳以上はこれまでどおり。6歳未満の小児では35℃未満の場合、脳死判定の除外条件
(3) 血圧
旧法:血圧90mmHg未満は脳死判定から除外
改正:1歳未満は65mmHg、1歳以上13歳未満は(年齢×2+65)mmHg、13歳以上は90mmHg未満の血圧が脳死判定から除外される条件となった。
(4) 脳死判定間隔
6歳以上は、これまでどおり最初の脳死判定から6時間以降に2回目の判定が行われるが、6歳未満においては24時間以降に2回目の判定を行うことになった。

@概念
・脊髄レベルでの制御機構が機能する
・副腎皮質放出ホルモンや成長ホルモン放出ホルモンが副腎髄質、消化管、膵臓に分布していて視床下部以外の由来もある
@判定医
・脳神経外科、神経内科、救急医、麻酔科、集中治療医で学会専門医または学会認定医の有資格者
・脳死判定に関し豊富な経験を有するもの
・臓器移植に関わらないもの
@必須条件から ・・・1~3が満たされない場合は判定を開始しないこと
1.前提条件を完全に満たす
・器質的脳障害で深昏睡か無呼吸
・原疾患の確実な診断
・回復の可能性が全くないと判断されること
2.確実な除外診断
3.生命徴候の確認
・体温:深部温32度を超えること
・血圧:sBPが90mmHg以上
・心電図:重篤な不整脈がないこと
4.必須事項の確認
 ・深昏睡
 ・瞳孔径4mm以上、瞳孔固定
 ・消失する脳幹反射(①対光反射②角膜反射③眼球頭反射(人形の目反射)④眼球前庭反射(カロリック反射)⑤咽頭反射⑥咳嗽反射⑦毛様脊髄反射)
 ・平坦脳波(聴性脳幹反応の消失は必須ではないが確認が望ましい。少なくとも4導出の同時記録を単極導出および双極導出で行う。つまり電極は8誘導以上。 46A95)
 ・無呼吸テスト

@無呼吸テスト:下部脳幹機能としての自発呼吸の有無を確認する検査。CSFpHの低下で刺激される
・PaCO2 20mmHgの変化でCSF pHが正常(7.32-36)から7.18以下になり、呼吸中枢に対して強力な刺激となる。
・PaCO2 80mmHgまで直線的に上昇、以後増加程度は減少。150mmHgがピーク。95mmHgを超えると中枢抑制作用が出現。
・目標PaCO2レベルは60mmHg。80mmHgまでの上昇にとどめるのが望ましい。(アシドーシスで循環に影響を与えるため)
・体温が高い方がPaCO2は上昇しやすい(38-9℃で6mmHg/min以上)

@ドナー管理の注意点と呼吸・循環モニターの目安
・脱水を避ける
・尿崩症(6割程度の患者に合併) :血中の抗利尿ホルモンのレベルの低下 →高Na血症と低K血症が起こるので4ml/kg/hを超えるようならADH 1-2U/hで投与検討
・神経原性肺水腫:酸素化低下
・sBP100mmHg(MAP≧70mmHg)
・尿量:100ml/h (1-1.5ml/kg/h)
・Hb濃度:10g/dl
・CVP 5-10mmHg
・ScvO2 ≧ 60%
・CI ≧ 2.4L/min/m2
・SVR 800-1200dynes・s/cm5
・呼吸器:VT 8ml/kg, PEEP 5-15cmH2O, PIP ≦ 30cmH2O
・SpO2 > 95%,  酸素分圧(PO2):100mmHg程度
*その他の脳死に関連する知識

・ステロイド(メチルプレドニゾロン1g程度)で移植臓器の抗炎症、酸素化改善、肺血管外水分量減少などが期待できる。ただし、インスリン分泌低下による高血糖と相まって血糖コントロールが不良になるので、血糖値を適正に管理する必要あり

@昇圧薬 ・ノルアドレナリン(NE)、アドレナリン、ピトレシン:慎重投与。
 NE≧0.05γは予後増悪の可能性あり。
・ドパミン、ドブタミン:15γ未満がよい。可能な限り少なく。
・PDEIII投与は臓器提供の適否に影響しない
・感染がある場合は当該臓器の提供は禁忌

@手順
・カニューレを挿入。ヘパリン2-3万単位を投与
・非脱分極性筋弛緩薬を投与
・摘出順:心臓→肺→肝臓→膵臓/脾臓→腎臓→小腸→リンパ節→腸骨動静脈→腕頭動脈→内頚動静脈
・肺摘出時は 吸入酸素40%以下(可能なら)、摘出までは換気を継続する
・低血圧時には昇圧薬より輸液を優先。膠質液を投与する → 外科とコミュニケーションが重要
・選択すべき昇圧薬は一般にドパミン
・脳死患者の徐脈はアトロピンに反応しない(Miller日本語p1738)ため、イソプロテレノールを準備。フェニレフリンによる徐脈も起こらない。
・鎮痛は必要ない。が、血行動態安定のために吸麻や麻薬が使われることもあり
・筋弛緩薬は使用する(脊髄を介する反射経路が維持されている場合がある)

***

脳死を判定する立場としては、目の前の患者さんは三人称で語るべきなのでしょうが、二人称としての脳死患者さんに接することができれば、私は自分自身が満足できそうです。

・法的脳死判定マニュアル
http://www.jotnw.or.jp/jotnw/law_manual/law5.html

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