このブログを検索

2013年1月12日土曜日

(麻) Surviving Sepsis Guidelineの2012年アップデート

2012年のSCCM meetingで提唱されたもののようです。
PulmCCM.org」というサイトの新着記事をemailで送ってもらうようにしていたため、知りました。昨年大晦日の紅白歌合戦の後に読んだ気がします。Facebookでも「PulmCCM central」というページがあります。Facebookはほんとうに便利だなぁ。


ということでそのサイトの
Surviving Sepsis Guidelines Updated: Preview from SCCM Meeting
をあとですぐ見直せるように日本語にしました。勿論、ただの推奨なので、どのように自分の臨床に取り込むかは各人の置かれる状況に依存すると思います。
以下の文章の(注)は私が追加したものです。

Surviving Sepsis: New Fluid Resuscitation Recommendations
・重症敗血症の初期治療(輸液)に生理食塩液などの晶質液を使用(1A)。投与量は1リットルかそれ以上。治療開始後4-6時間で最低30ml/kgの晶質液を投与すること(70kgの成人なら2.1L)
・血行動態が改善し続けるうちは、輸液の追加投与を継続。血行動態とは血圧やΔPP(注:ΔPPはPPVと同じで脈圧変動のこと)やその両方を示す(1C) (注:PPVと同じようにSVVも使用可能でしょう。)
・severe sepsisとseptic shockに対する初期輸液治療の晶質液に、アルブミンを加えるのは軽度の推奨(2B)
・分子量200kDaを超えるヘタスターチやハイドロキシエチルスターチを使用しないことを強く推奨(1B) 
これより小さい分子量のヘタスターチ、またゼラチン製剤については言及していない。これらの製剤を評価するための研究は進行中。
(注:ヘスパンダーとサリンヘスは70kDaで、もうじき日本でも使えるようになるスターチは130kDaですので、このガイドラインには当てはまりません)

Surviving Sepsis: New Recommendations for Vasopressors, Inotropes
・昇圧療法の第1選択はノルエピネフリン(商品名Levophed)を強く推奨(1B)。バソプレシン0.03単位/分をノルエピネフリンの代替品として使用するか併用する(2A)
・2つ目の昇圧剤を使う必要があれば、エピネフリンを軽く推奨(2B)
・ドパミンは極めて限られた患者群に対してのみ推奨。不整脈の危険性がとても少ない場合や、低心拍数and/or低心拍出量の患者である(2C)。
・ドブタミンは以下の患者に対して、単独、もしくは昇圧薬と併用して使用することを強く推奨する(1C)。心充満圧が高い、低心拍出量、十分な輸液療法を行なって血圧が上昇した後も低灌流状態が示唆される臨床症状がある、といった患者。

Surviving Sepsis: Corticosteroid Recommendations
輸液と昇圧薬で循環動態が改善する患者に対する副腎皮質ステロイドの経静脈投与を勧めない。昇圧薬に反応しない敗血症性ショック患者に対しては、静脈内ヒドロコルチゾンを200mg/24hの量で軽く推奨(2C)

Surviving Sepsis: Mechanical Ventilation for ARDS
重症敗血症に伴うARDSへは以下を軽く推奨。
・高めのPEEP(2C)
・高PEEPとFiO2でも重度の低酸素血症状態にある患者へのリクルートメント法(2C)
・それでもPaO2/FiO2比100未満が続く患者への腹臥位(2C)

Other New Surviving Sepsis Guidelines
以下を軽く推奨
・中心静脈酸素飽和度をモニターできないときは、EGDTのゴールとして乳酸値を正常化すること(2C)。
・重症敗血症の原因として真菌感染の危険性がある患者では、侵襲性カンジダ症に対する新しいアッセイ法(1,3-beta-D-グルカン、マンナン、抗マンナンELISA抗体試験など)を検査(2B/C)。(注:新しいアッセイ法のリンク先は状況によっては見られないかもしれません)
・経験的な抗菌療法中に感染症が見つけられなければ、抗菌療法中止の指標としてプロカルシトニン値低下を判断材料にすることを考慮(2C)。

最後に以下の記載がありました。
The Surviving Sepsis project was criticized in the mid 2000s when it was revealed that Eli Lilly (makers of since-discontinued Xigris) provided a reported ~90% of the funding, without disclosure by the committee. Others (including the committee itself) felt such criticism was unfounded and unfair. The Surviving Sepsis website does not clearly show their current sources of funding, but they have set up a page to address any concerns about industry involvement. The name “Surviving Sepsis Campaign” is copyrighted by the Society for Critical Care Medicine.

エビデンスの強さの復習を。
1 = strong recommendation;
2 = weak recommendation or suggestion;
A = good evidence from randomized trials;
B = moderate strength evidence from small randomized trial(s) or multiple good observational trials;
C = weak or absent evidence, mostly driven by consensus opinion

***
既にご存じの方も多いとは思いますが、論文はこちらです。「Intensive Care Medicine」にも掲載されてます(2013年2月5日追記)
Surviving Sepsis Campaign: International Guidelines for Management of Severe Sepsis and Septic Shock: 2012. Crit Care Med. 2013 Feb;41(2):580-637. PMID: 23353941