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2012年3月17日土曜日

(麻) だからSVCが困ったことなんだって ~前縦隔腫瘍とSVC症候群メモ

前縦隔腫瘍(AMM)によるSVC syndrome(上大静脈症候群)の患者さんの麻酔ってかけたことありますか?私はなかったので、今回勉強してみました。ワタクシ、バイト麻酔科医なんですが・・・。

自分が経験したことないような合併症をもった患者さんの担当をするときの作法
・上でも下でも経験したことのある麻酔科医に聞く(できれば麻酔にも立ち会ってもらったり、術中に来てもらえるとなおよい)。
・とにかく騒いでおく。静かに「明日、大丈夫かなぁ…」とか、ひとりよがりな麻酔計画していないで、いろんな人の力を借りる
・教科書や雑誌、論文に可能な限りあたり、自分なりのプランを立てておく。1個だけ(それも症例報告だけ)読むのは危険である。まぁ読まないよりはいいだろうけどさ。
・危険に陥らない(=患者さんを死に至らしめるような目にあわせない、の意)を第一に考える

ほかにもいろいろとあるんでしょうが、私が今思いつくのはこれくらいです。
そして論文を探してみたのですが、いざ探してみると意外にいいものが見つからなかったです。
最近のものとしては下のCJAの論文でしょうか。
Anesthetic management of patients with an anterior mediastinal mass: Continuing Professional Development. Canadian Journal of Anesthesia. Volume 58, Number 9, 853-867, 2011

残念ながらフリーではないのですが、よくまとまった論文でした。大学などにいて読める環境にある人は読んでもよさそうです。

前縦隔腫瘍はとにかく気道管理が大事です。昔の自分のブログの記載を見直すとこんなメモがありますが、こちらの内容は論文にしてくださってます。

ほかには、最近買った本Practical Handbook of Thoracic Anesthesia のp335-353にはよくまとまってます。
・右側を上にした仰臥位。患者さんが仰臥位になってもdyspneaの症状でないか聴いておく
・前縦隔腫瘤による気道圧迫には自発呼吸が大事…特にハイリスク症例(and/ or 小児)では。自発呼吸がなくなると気道がぺちゃんこに潰れて換気できなくなるかも。
・特に起座呼吸がある場合は、全身麻酔ハイリスク。超要注意。
・無症状成人で麻酔関連心肺合併症の危険性が上昇するかは不明
・画像所見、ファイバー所見が安全ならば、無症状AMM成人患者に全身麻酔導入は大丈夫だろう。
等々。
上記CJAの論文と、おんなじような内容の記載でした。教科書にはフローチャートも載っており、それも参考になります。それはそうと、この教科書の当該ページの参考文献を眺めると1970年代とかかなり古いものが多い。それでいて2011年の論文とあまり大差ない内容というのは…。

@SVC症候群で麻酔上注意すること
・気道の浮腫~挿管も抜管も慎重に
・気道圧迫と出血
・静脈路は下肢にとる、手術がSVCに及ぶようなら大出血に対応できるように大口径のものを。CVCを大腿静脈から確保するか、末梢なら18G以上のものを2本とったほうが良い気がする(1本つまっても大丈夫なように)。ということは予定手術ならCVCの同意書も取っておいたほうがよさそうだ。
・仰臥位やトレンデレンブルグ位は病態増悪するかも。重症度をきちんと評価。問診大事。
・麻酔前の気管拡張薬やエピネフリンは有用かも。

SVCを切除するような手術では術式をきちんと術者と確認しておくことも大事です。静脈還流不可能になると脳や頭頚部の浮腫が起こります。人工血管によるバイパスを置くとか色々すると思うのですが、それについて「だいたいこんな感じ」ではなく、外科医に手順をしっかり教わるとよさそうです。脳は予後に直接影響しますからね…。

書き散らかしてしまいましたが、次回に同じような状況になった時に色々と思い出せるように、ここに記しておこうと思います。