前夜、寝るのが遅かった割には早く起きられたので、早朝に実験を終わらせて羽田へ向かいました。モノレールの窓越しなのでちょっと変な写真ですが、晴れてました。
高知県の室戸岬。
高知県の足摺岬。
旅の最初の目的地が宮崎県西臼杵郡高千穂町だったので、九州に一度も行ったことがない私は、何も考えずに羽田→宮崎空港の便を予約していたのでした。
距離を調べてみると
・熊本空港→高千穂町:67km
・宮崎空港→高千穂町:154km
2倍以上違います。
高千穂にとっての最寄りの空港はお隣熊本県の熊本空港です。間違っても宮崎空港行きに乗らないでください!高千穂へのアクセスが悪く、降りたあとが大変ですよ。
と、ヤフー知恵袋にどなたかが寄稿しているではないですか。しかし、チケットを予約した後だったのでどうしようもありません。こんなこと、旅行の計画中に少しでも調べていればわかっていた筈なのですが、誰がこんな計画立てたんだ。
とはいえ、今更旅程を変える訳にはいかない…いや、もしかしたらこうなったのには何かいいことが起こる理由があるのかも…と無理やり考えて、旅の2、3日前に本棚に並んでいた本から1冊取り出しましてぱらぱらと眺めていたところ…
p22-23に発見しました。宮崎県の絶景。
これを見ることが出来ました。恐らく宮崎県近隣にお住まいの方には有名な観光スポットなのでしょうが、日向岬にあるクルスの海です。クルスというのはポルトガル語で十字、という意味だそうですよ。さらに、上空から見るとこの地形は「叶」の字に見えるらしいです。しかも運がよいことに岬に辿り着いた時点でちょうど日没。旅行の計画を立てすぎなかったことが吉と出ました。
時間があればもっと見ていたかった&写真を撮りたかったのですが、ここから宿まで更に67kmありましたので、名残惜しいながら宿に向かいました。
宿まで殆ど信号がなく、渋滞でもなかったため、ナビでは2時間と表示されてましたが、1時間22分で到着しました。
道中、久しぶりにB'zのアルバム「Loose」をアタマから聴いていたのですが、13曲めの「drive to MY WORLD」の歌詞が妙に身に沁みたのでした。
夕暮れのセブンイレブンから
神社をすぎ深い森まで
気持ちの続く限り oh, さみしくない道も続く
(中略)
ボクだけを待っている
新しい言葉が生まれる MY WORLD
怯えてる心を睨んで
ちっちゃくまとまる世界にバイバイ
このアルバムは本当に名盤です。
道中、車内から1枚撮ってみましたが、ぶれまくってますね。とばしまくっていた訳でも飲酒運転をしていたわけでもありません。
結局、予約していた民宿には19時半ころ到着したのですが、着くなり宿のお母さんに
「もうくうけ?」と言われたので、あ、はい、と答えるしかありません。暗闇の中で知らない土地を1人で車を運転する事自体、大層久しぶりだったので、ぜえぜえ言いながら答えました。
食堂…というか畳の広い部屋に行くと、もう他のお客さんたちは殆ど食事を終えていて、食べ残しとかビールの空き瓶とかが部屋のあちこちに置いてありました。
「あんたはここね、ご飯はその釜に入ってるはず、なければあっちの釜。お茶は茶っぱがこのきゅーすに入ってるからお湯はポットね」
と言われて、言われるままに部屋の片隅に座ってご飯を釜からよそって、お茶を飲みながら夕食が始まりました。
何だか他のお客さん、殆ど食べ終わってるし、早く食べたほうがいいんだろうか…と思いながら、しかしそれをお母さんに聞くのもどうかと思ったので、最近の自分比3倍くらいの速さで沢山あるおかずとご飯をどんどん食べていると
「夜神楽(よかぐら)?温泉行くの?夜神楽は20時から。」
とお母さんが聞いてきます。え、もうビールでも飲んで寝ようと思ってたんですが…、否、これはどっちかに行けってことだよなぁ、観光客なら。しかも、私くらいの世代の男1人でここに来る人ってあんまり居ないのかもしれないし…。
「夜神楽ってなんですか?」
と、考えるよりも先に、ストレート過ぎる質問をしてしまった自分に若干辟易としていたら、お母さんのつまらなそうな顔。あぁ、これは駄目なレスポンスをしてしまったらしい。いや、でも夜神楽って11月末からって本には書いてあった気がするし、そもそも見る気がなかったからよく調べてませんでした…というのも野暮というものだったので
「どうやって行けばいいんですか?」
と、お母さんに尋ねると、地図2枚もってきて、丁寧に教えて下さいました。20時からだからね。
そう言われてももう19時50分。気がついたら普段食べないような量のおかずとご飯(何故か2杯めまで食べてしまいました)をたった12分位で平らげている自分を発見しました。きっと旅の効果でしょう。
教えられたことを盲信して、車で5分ほどの高千穂神社に向かいます。
夜なのに畳の大広間にはひとひとひと。びっしりつまってました。私と同じような観光客の方が9.5割以上なのでしょう。観光客の方々が、夜に畳の部屋の中に整然とびっしり並んでいる光景を目の当たりにしただけでも「夜神楽」を見に来た甲斐がありました。
因みに観光客向けに毎晩行われている神楽は「神楽33番」の中から代表的な手力雄・細女・戸取・御神体の4番を公開しているようです。下の写真は3番目の戸取(ととり)の舞を撮影したものです。神楽33番は、天岩戸をあけて天照大御神に出てきてもらう場面です。
「高千穂の夜神楽」という本を購入したので、後でもう少し読んでみようと思います。
夜神楽は20時から1時間ちょっと…。神楽が終わったところで、翌朝向かう国見ケ丘まで試しに行った後、宿に戻って勇気を出して「あの、ビールをいただくことは出来ますか…?」とお母さんに尋ねましたところ、「あー、さっき飲めなかったもんね」と笑顔で瓶ビールと冷えたグラスを出してくださいました。
他のお客さん皆さん各々の部屋に帰ってのんびりしてるような時間帯に、お母さんの時間を独り占めさせていただいて、とりとめなく話をしました。あー、民宿ってこんな感じだったなー、と、漸くこの時点で旅に来たことを実感しました。ぶっきらぼうな印象だったお母さんが、この時にはすっかり、私の中でも、いい人になっていたのでした。やっぱりここまで来てよかったなぁ…と感極まった感じで、翌日に続きます。
(以上、2013/10/15記)