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2013年8月27日火曜日

(麻) 麻酔科医が患者さんに行う術前の説明で何が一番大切なのか

最近、ふと、それを再考するきっかけが思いがけず私に訪れたので書いてみたいと思います。

以前、以下の記載をMT Proのサイトで読みました。

手術前に麻酔科医が患者に対して行う説明には多くの情報が含まれている。米バンダービルト大学の精神科医Elisabeth H. Sandberg氏らは,手術情報の提供の仕方で患者の記憶にどのような差が生じるのか,健康な大学生を対象とした研究を実施。その結果をAnesthesiology(2012; 117: 772-779)に報告した。参加者にビデオによる医師の一方的な説明を視聴してもらい,重要と思われた点を自由回答形式で答えてもらったところ,健康な大学生であっても,医師が提供した情報の20%程度しか再生できないとの結果も示されている。(同サイトより引用)

この記載を盲信するつもりはまるでありませんが、麻酔科医としての僕が患者さんに説明してる時に、

あまり僕の意図伝わってないかもなぁ、大変な手術なのに「大丈夫です、全てお任せします」と満面の笑みで言われてもなぁ

と思うことは時々あります。

其の度に、「いや、全てお任せします、じゃなくて本当に大変なんですよ」と追加のお話をさせていただきたくなるのですが、大変な病気を体の内側に抱えていながら、(私に気を使ってくださっているのか否かは不明ではあるけれど)笑顔でいることができるような方に、僕がこれ以上何を言うことがあるんだろう…とも思います。

手術と麻酔が、その施行者たちが想定するうちで最上の出来のものだった場合でも、手術が終わった後、または患者さんの目が覚めた後に、

「無事に終わりましたよ、よかったですね」

と言えない場合があります。勿論これは、手術が終わった直後なのでこれからどうなるかまだなんとも言えない、という話ではなく、術後回診で患者さんにお会いした時には尚更それを口にできない、という場合のことを指しています。
手術は必要だった、そしてそれは完遂された。だからといって、患者さんの不安が消えるわけではない手術のことです。

自分の身内の緊急手術の際に、ドクターから手術や麻酔の危険性を聞く機会が以前ありましたが、そのときのことをふと思い出して考えるのは、

「患者さんに安心感を与えること、否、それは烏滸(おこ)がましいので、少なくとも患者さんの心を前向きにサポートすること(言葉が無力だと感じられる場合には態度で)」

が、大切なんだと思います。
当たり前のことのような気もしますが、そういう当たり前のことを、後輩に対して、きちんと言葉にして教えている人、どれくらいいるんでしょう。沢山いればいいのですが。

後でトラブらないように、歯牙損傷も脳梗塞も心筋梗塞も悪性高熱症もアナフィラキシーショックも術後急性腎不全も失明も嗄声も末梢神経障害も言わなきゃ…と、麻酔について説明する麻酔科医側の立場としては思わないこともありませんが、そういう防戦一方的な態度って、患者さんによってはしっかりと伝わってしまいますよね。

何が大切なことなのか、それを考えることを忘れないようにしていきたいものです。

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