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2013年11月5日火曜日

(旅) 秋の小トリップ其の五の3 (香川県の小豆島と高松市)

Welcome to the Hotel California
Such a lovely place (Such a lovely place)
Such a lovely face
Plenty of room at the Hotel California
Any time of year (Any time of year)
You can find it here

というEaglesの「Hotel California」の歌詞が、宿泊している最中ではなく、チェックアウトして暫く経ってから、止めどなく私の頭の中でリフレインするような、そんな小豆島でのホテルでの一夜の後、前夜25時ころまで降っていた筈の雨が全く降っておらず、それどころか、一夜、雨風凌ぎのためにお借りした部屋の窓から、朝、目が覚めた時に、燦々と太陽の光が降り注いでいることを発見したので、太陽に少しでも近いところに行ってみよう…と思って、朝の9時過ぎに寒霞渓(かんかけい)に向かいました。

「かんかけい」という場所があること自体、今回、小豆島に上陸する直前くらいに知ったのですが、日本三大渓谷の1つ、ということもあり、観光客よろしく行って参りました。


山頂には車でも簡単に行けたのですが、ロープウェイからしか見られない景色もあろう…と思ってロープウェイで山頂に向かいました。


ここでも紅葉していたではありませんか。




逆光だったので、自分の目で見た景色を、私の撮影技術ではまだあまり再現できないのですが、そんなこともあったなぁ、という未来の自分への期待の意味も込めて、ここに置いておきます。


木漏れ日が…。


そして、足元に目をやると、もみじの絨毯です。


これはロープウェイから撮影した1枚。

***
下の2枚は確か、1度山頂からロープウェイで下山した後に、再度、レンタカーで寒霞渓の上に登る最中に立ち寄った、四望頂展望台から見えた景色です。この時もまだ逆光でした。






上の1枚は、寒霞渓の山頂にあるロープウェイ駅のあたりを撮影したものです。確かに奇勝です。


小豆島ですから、オリーブにも沢山出会いました。


これはヤノベケンジ氏の作品です。坂手港のフェリー乗り場の近くに展示されていたので見ることが出来ました。

***
小豆島へ来るときのフェリーでは雨が降っていたので、空の下に出ることができませんでしたが、復路のフェリーでは、信じられないくらいに快晴でした。


逆光で、風も強くて、それでも高松港へ向かっている、そのフェリーの最上階で、今の自分が忘れてもいいようにと、カメラで写真を適当に撮っている時に、ヘッドフォンから久しぶりにこの曲が流れてきました。iPod classicには、本当にたくさんの曲が入るので、今入れている10000曲ちょっとの全曲をシャッフル再生にしていると、なかなか帰ってきてくれない曲があるのでした。

スウェーデンのバンド、Pain of Salvationの「1979」という曲です。リンク切れになってしまうかもしれませんが貼っておきます。因みにこの曲はアルバム「Road Salt Two」に収録されています。




この曲のイントロで奏でられているピアノの音ほどには、この時の自分はメランコリックな気分ではなかったのですが、この曲の良さを改めてフェリーの上で感じることが出来ました。今後、「1979」を聴くたびに、小豆島や、フェリーで感じた風を、思い出してしまいそうです。


ひとり旅なんだから、もう少しくらいゆっくりしてもよかったような気がしますが、貧乏性なので、自分が知らないことや体験していないことを1つでも多く吸収しないと気がすまないようです。

今日の朝、大学のカンファランスで勉強したNEJMの論文もそうです。NEJMの10月31日号にある大御所 JL Vincent氏による「Circulatory Shock」のreview articleも、これから読んで勉強しようと思います。

***
沢山の人に支えられて、そして支えられていることを改めてしっかりと噛みしめる僥倖に恵まれて、人生3回目の四国旅行を終えることが出来ました。みなさんに感謝しつつ、この旅の記録は、取り敢えず終了。後はまだ書けていないこれまでの旅行記の続きを書いたりしていきますので、お暇がある方はお付き合いください。
これからもよろしくお願い致します。

2012年6月13日水曜日

(本) 理系のための口頭発表術(講談社ブルーバックス、2008年)~これ1冊でプレゼンテーション能力が格段に上がるでしょ


いつ買ったのか忘れてしまいましたが、先日100冊超の本を売りに出そうと本棚を整理してた時に、偶然本棚の奥から発掘されました。ブルーバックスかぁ、つまんなかったのかなぁ、内容なんか全然記憶にないぞ…とパラパラめくってみると…著者のアンホルト氏でしょうか。ちょっと怪しげな愛嬌のあるおじ様の写真が載っていたりします。
んで少しばかり読み始めると…ふんふんなるほど!いやぁ~そうだよなぁ~本当に仰るとおり!その通り!!と感嘆符の嵐で大興奮。これはいただき!あれもいただき!!と思って本の角を折りながら、赤ペン入れながら読み進め、気がついたら右の写真のように折り目だらけになりました。
OHPの話なんか歴史を感じさせる記載もありますが、日々の抄読会、学会のポスター発表、口演、その他、人に何かのレクチャーをする機会のある方々(そして苦手意識のある方)皆さんにおすすめです。プレゼンテーション能力って大事な能力なんですが、まとまって教えてもらえる機会ってそんなにないです。教えてもらえる人は幸せな人です。偉大なる先輩ドクターたちに教えを請う前にこれを読んで咀嚼しておくと大分上達のスピードが違う気がします。
いやぁ、いい本を発掘しました。取り敢えず、来週の抄読会がんばろ。

2012年6月11日月曜日

(麻) 今日の抄読会 - エマルジョン化セボフルランを経静脈投与ラット、と 集中治療医学会リフレッシャーコースセミナー

3月号、とちょっと前の記事ですが、面白いなぁ。

フリー記事じゃないですが、
Exceptionally Stable Fluorous Emulsions for the Intravenous Delivery of Volatile General Anesthetics. Anesthesiology: March 2012 - Volume 116 - Issue 3 - p 580–585
エディトリアルはフリーです。
Getting Oil and Water to Mix. Anesthesiology: March 2012 - Volume 116 - Issue 3 - p 504–506

・20% (volume/volume) emulsion of sevoflurane with perfluorooctyl bromide, a stabilizing agent, and combinations of linear fluorinated diblock copolymer and a novel dibranched fluorinated diblock copolymer used as a surfactant
という状態で1年以上安定した状態で保てるらしい。
・ラットに静注すると18秒で前肢の立ち直り反射が消失する(≒麻酔が効く?)

上記editorialにも書いてありますが、揮発性麻酔薬みたいなものを静脈投与しようという試みは1世紀以上も昔から行われていたんですね。しかもヒトで、と書いてあります。うーん、すごいなぁ。このまま臨床応用する意味があるのか、はよくわかりませんが、同じ方法論で何かに使えないのかな。

***
そういえば今更なのですが、8月12日にこれが開催されるようです。会場はうちの大学です。詳細はここです。

第9回日本集中治療医学会主催リフレッシャーセミナー開催のご案内

まだ受け付けているようです。面白そうなトピックがあったので申し込んでみました。東京近郊で集中治療医学会に入っている方でよろしければ…といっても私はたんなるイチ受講者ですが、過去に参加した何回かが結構面白かったので好きなセミナーです。

7月21-22日の東京麻酔専門医会のリフレッシャーコースは既にいっぱいらしいですね。

2012年3月29日木曜日

(雑) 全部が全部、戯言って言えば戯言ですよね

自分のことを完全に棚にあげたうえの妄言です。

医師生活丸7年になりますが、これまでいろんな先生たちの発表を聞いてきました。日々の症例のプレゼンテーション、麻酔科研修医としての総括、論文の抄読、ほか。医師としてはまだひよっ子の私ですが、それでも色んな発表を聞くと、演者がその発表にどれ位専心したのかが怖いくらいに分かってしまいます。どのくらいそれに対して興味が有るのか、興味がなくてもどのくらい調べてきたのか、どのくらい「いい日本語がなかったんですけど」と発表の中で告白するまでに葛藤があったのか、こんな内容自分的にはどうでもいいけどあんな質問飛んできそうだよな、と頭の中で沸き上がってきた時に「調べとこ」を選択したか「もう眠いからねよ、わかりませんって言えばいいや」を選択したか、いや、そもそもそんなことすら頭に浮かばなかったか。妄想かもしれませんが、手に取るように分かってしまいます。

発表はその多くが無難な出来なのですが、研修医の発表でも思わず聞き惚れて「弟子入りさせて下さい」と思わず平身低頭しまうような達者なものもあるし、逆もまた然り。そして中には、思わずその場から立ち去りたくなるような内容のものもあります。

それらの発表を思い出して、具体的に”自分にとって”何が酷かったのかを考えて、自分がその轍を踏まないようにしたいと思います。

・スライドに書かれている内容そのもの
―文字が小さい。これは何よりも害悪だと思う。それだけでもうついていけない。すいません、勘弁してください、まだ朝で眠いんだよ。
―これは笑いを取ろうと思って書いているんだろうか?、というような文章。―十数分のプレゼンテーションで笑わせるのは凄く難しいうえにリスクが高いでしょう。もっともそんな文字をスライドに載せたのはちょっとした冗談のつもりで、聴衆を笑わせる意図はこれっぽっちもないかもしれませんが。だとしたら尚更「こいつこんなこと書いてなめてんじゃないのか」と思う聴衆がいるかもしれないことについての想像力を少しはふくらませたほうが良かったんじゃないだろうか、と私は心配になって胸がざわざわしてしまいます。演者が非常に真面目で賢く、発表内容の「真面目な部分」への信頼性がきちんと担保されているとき、もしくは普段からいろんな人に愛されていて、ちょっと不謹慎な内容でも「まったく、しょーがねーなぁ」と、聴衆に笑いながら許容される先天的とも言える人柄の良さの持ち主か俳優のような演技力の持ち主、のどれかであれば笑ってもらえると思いますが。。私は其のどちらでもないわ、と自覚する私のような人間であれば、まずプレゼンテーションの内容が「その時間帯、空間、聴衆全てにおいてアクセプトされうるのか」についてこそ真剣に考えるべきなんじゃないだろうか。過度にプライベートなこととか、こんな大変な症例にあたったんですよ、と聴衆に甘えるような内容を晒すのはご法度ではないけれど、聴衆にいい印象を与えることは少ないと自覚したほうが良い。
以前参加した何かの学会。80分程度の教育講演の合間に、演者やその友人以外にはどうでもいいと受け取られるようなプライベート写真を混ぜてくる演者がいたのを思い出す。会場は静まり返っており、私自身も居心地の悪さを感じてその場から逃げ出したくなった。これは新手の嫌がらせだろうか?とその後今に至るまで真剣に思い悩まされている。

・質疑応答での対応
―相手が質問して言葉を発している最中に、それにかぶせて答え始めるような場に居合わせてしまった時。これも逃げ出したくなる。具合が悪くなってくる。恐らく質問者も不快になるだろう。ちゃっと質問をきいてんのかよ、と。そして演者が自己防衛をしているような印象を、私は受けてしまう。

・語尾がふにゃふにゃな、しっかりしない話し方
―スライドに書いてある言葉を、機械的に順を追って話す方が千倍マシ、というプレゼン。スライドの内容を網羅してない上に、どこもかしかも中途半端なつまみ食い。にも関わらずスライドにない内容のごにょごにょとした言葉を随所に挟んでくる。「えぇ~」とか「あの~」とかならまだしも、何故か言い訳がましいセリフを随所に挟まれるともう絶望的に具合が悪くなり、貧乏揺すりが止まらなくなる。結果的に喋り手の頭の中が混沌とした状態だってことしか伝わらない。私のアタマにケイアスを送らないで下さい。相手にわかってもらおうとする努力を著しく欠いた自慰的プレゼンテーション。

・以前のスライドの焼きなおし
1年も前のスライドを再掲するのには勇気がいる。少なくとも、そのスライドに1年前に関わった聴衆が今この場に何人かいることが予め十分予想されるときには、相応の覚悟が必要である。1年前と比較して、自分がどう成長したのか。この1年間にいろんな患者さんの麻酔を担当したはずである。いろんな論文を読んだはずである。いろんな同期や先輩、後輩の麻酔経験を見聞きしたはずである。学会会場でいろんな発表に触れたはずである。いろんな医療過誤ニュースに触れたはずである。いろんな映画や音楽、本に触れたはずである。いろんなところに旅行したはずである。そういったものに触れてなくても全然構わないけど、何がどう成長したのか、それを少しはスライドに反映させるのが、研修を受けた側のマナーなんじゃないかと思う。

麻酔科医が遭遇する最悪のイベントの1つは、予定手術を受けた患者さんの術後死亡である。その死に麻酔科医として関わったんじゃなかったのか。あれは一体何だったんだ。この麻酔科医は、患者さんの死から何を学んだのだろう。何も学んでいないんじゃないだろうか、と思わず天を仰ぎたくなる感情に、私の心が朝から支配されてしまうことが何よりも耐え難い。
私はまだ、不幸な転機を辿った患者さんに対して、敬意が全く払われていないような発表に対しては、0.00001%も共感できないし、全く甘い評価ができないです。それすら、自分の想像力の限界を示しているのでしょうが。

口下手、口が達者。日々の発表ではあんまり関係ないと思います。要はどれくらい準備したか、それだけでしょう。下手だと思うなら要点を文字に起こしてそれを読めばいいんじゃないだろうか。聴いていて気持ちが良いプレゼンっていうのは、どれくらい愛をもって準備したか。内容に対しても聴衆に対しても。それが大きいと思います。

***
私は911について、全くといっていい程なにも分かっていませんが、Iced Earthの「When the Eagle Cries」に涙腺を刺激されます。音楽の良いところは、その製作者の思惑と全く違うところにおいても共感なり何なりができるところだと思います。音楽を通してならチュニジアの人でもネパールの人でも、世界中誰とでも共感できそうです。全くの勘違いかもしれませんが。そう思うとこの世界もまんざら捨てたものでもないのかも知れません。

***
最近の読めてない本。

・クラシック迷宮図書館 音楽書月評1998-2003
・シュリーマン旅行記 清国・日本
・空気の発見
・地獄の季節
・いやな気分よ、さようなら
・南方熊楠随筆集
・方丈記
・故郷/阿Q正伝
・非常識な読書のすすめ
・百姓たちの幕末維新
・禅マインド ビギナーズ・マインド
・ダンゴムシに心はあるのか
・須賀敦子全集第1巻

そのうち読める日が来るでしょう。

2012年2月16日木曜日

(麻) 久しぶりに抄読会準備

8割がた終了。後は喋りの予行練習何回かと突っ込まれそうなところの知識武装かな。半月後に自分の当番が回ってくるのですが、日本語でよいので少し気が楽…。

抄読会の参考に読んだ本

地味な装丁だったので今まで本棚に置いてあるばかりだったけど、なんとまぁ、良書でした。この分野って自分にはとっつきにくいのですが、その機序から臨床実践まで多くのevidenceとともにわかりやすく書かれております。今さらながらおすすめ…っていうかよく読んでちゃんと勉強しよっと。

2011年11月21日月曜日

(本) 衝動買い

日本人研究者のための絶対できる英語プレゼンテーション(Philip Hawke, Robert F.Whittier) 

・読みたくなる装丁
・読みたくなるレイアウト、色つかい
・英語だけでなく日本語も書いてある
・コストパフォーマンスがよさそう(よい、か否かは読んだ後でないとわからない)
・「いつか読むかもしれない」ではなく「今必要」

という諸点をクリアしている本は数十秒の立ち読みで購入決定です。
この本は、私にとってまさに全てを満たしていたので久しぶりに嬉しい買い物でした。取り上げられている例が基礎研究領域のものなので、臨床のドクタには、引っかかるものがあるかもしれませんが、それを差し引いても有用な本である予感がします。
研究室の抄読会の次回の自分の担当まで少し間があるので、この本を片手に準備してみたいと思います。それを終えたときには、この本のどこが有用か、もう少し語れることを期待しつつ(そして自分の英語力が少しでも上昇していることも期待しつつ)。

2011年10月29日土曜日

(研) 抄読会(made in US)が終わった

太平洋上空で抄読会用の論文読んだり(私だってジム・キャリーが出てるペンギンの映画見たい!)、シカゴのホテルでパワーポイント作成していたのが何故なのか、今となってはよく分かりません。
風邪による嗄声のために今日に延期してもらっていた抄読会当番(in English)が、無事終了。あぁ、よかった。声が出るようになって。こんな事くらいで喜んでる場合じゃないのですが、喜ぶ。
抄読会用の論文を読み始めてから発表できる体裁にするまで、まだ3週間程度はかかることが分かりました。
しかし、引用文献はまるで読めていないし、論文中に出てくる知らないchemokineや受容体やらもGoogleさんや教科書で軽く調べる程度。肝心の発表も、スライドのFigureだけ見ながらスラスラ出来ればよいけれど、読み原稿に目を落としながらというレベル。内容が麻酔で、かつ日本語での発表ならもっと早く上手く出来るんだけどな…。
まぁできていないことを挙げれば切りがない。半年前にはまるで出来ていなかったのだから、進歩しているということにしよう。

2011年7月31日日曜日

(雑) "オヤジの一番長い日" ~私的「24」ならぬ「44」

5時起床で翌々日午前1時まで起きて活動し続けるのは相当にきつい、ということを後で思い出せるように記しておこうと思う。

8時から21時半まで予定の麻酔や自分が担当する予定じゃなかった麻酔や他の先生が難渋していたのでお節介にも「手を変えてみますか」と自分がやっても難渋したが何とかなった脊髄くも膜下麻酔や緊急手術で久しぶりに輸血したりドパミン使ったりした麻酔等々をほぼノンストップで終了。

そして、漸く、この日一番しなければいけなかったことを開始。

おそらくこの6年4カ月の抄読会人生(医師人生)の中で、最も下拵えが必要だった筈の抄読会の準備である。
読む論文は「任意」だったので、自分で狩猟。まずこれに一か月近くかかった。自分が理解できそうで、かつ、抄読会で取り上げるに耐えうる程度の雑誌から選ぶ、というのは意外に難しいということを学ぶ。
だが、やっと自分で選んだにも関わらず、何回読んでも論文の意義が体に染み込んで来ず、もがき苦しみ続け(主に逃避)、漸く「あぁなるほど、こんなことが言いたかったのか」と肌感覚に近い感覚で染み込んで来たのが木曜日。
それが抄読会の2日前。
しかも、私にとって人生初の、英語による発表。
英語に堪能でこの分野の知識が豊富な方であれば、もしかしたら読み原稿なしにパワポを見ながらプレゼン出来るかも知れないが(それは即ち私の師匠なのだけど)、どちらの能力もありんこほどしかもたない私には不可能である。
あーあ、討ち死にか。とその日は一日中、胸部のもやもや感が続いていたため、もしかしたら冠動脈の#15の末梢あたりにちょっとした攣縮があるんじゃなかろうか、とオペ室に置いてある十二誘導ECGに手が伸びそうになる。

全て自分で撒いた種である。

22:00- powerpoint作成、同時に読み原稿作成開始
24:00 絶え間ない眠気に耐えきれず買っておいた「眠眠打破」を飲む
25:38(01:38 AM) 一段落して背伸び
26:44 (02:44 AM) 読み原稿第1版完成
27:11 (03:11 AM) 空腹に耐えかね、ポテトを食べる
30:40 (06:40 AM)腹痛のためトイレにこもる
以後8時半まで断続的に、読み原稿を反復。5-6回程度は通して音読できただろうか。凡そ20分弱でプレゼンテーションできることを確認。読み方の分からない単語を電子辞書で確認(発音してくれるなんて本当にありがたい)し、すらすら喋れない段落を重点的にやっつける。

それでまぁ…10時からの発表…。(と実験と飲み)
なんとかなったのだが、もう二度とこんなことをするのは止めよう、と深く反省した一日だった。

2011年5月1日日曜日

(麻) 抄読会(ジャーナルクラブ)メモ、と新生活1ヶ月経ちて


しばらく自分で担当しないので、ポイントをまとめておくことにしよう。

***
論文の全てを10-13分程度で発表するのは不可能である。

でも「まとめろ」といわれても、その具体的方策が示されないと時間と気力だけが削がれていく。日々忙しくやることもいっぱいある。抄読会だけに労力を使うことはできない。

「どれくらい抄読会に向けて頑張ったか」はあまり関係なく、「聴衆の特徴を理解し、どのレベルが求められているのかについて想像力を働かせること」が重要。聴衆はそれらについて厳しく演者を査定する。(そして演者の耳に評価が届くことはあまりない。大人だからね。面と向かって「ここはこうすればよかった」と言ってくれる人はそれほどいません)

@心構え
・発表内容が膨大だと、それだけで準備不足と思われる。
・「この部分はよくわからなかったんですけど・・・」と発表中に言わない。後でつっこまれないようにとの防御線としての発言かもしれないが、聴衆は「この場にいる人の中でこの論文について最も時間と労力を費やしてきた発表者ですらよくわからないものを、たった10分くらいしかない中で、なぜわざわざ、それに言及し我々を混乱させるのか」という不信感をいだく。もし論文を読むに当たって重要な統計学的手法があり、それの解説なしには聴衆が理解不能だろうと思うようなものに、運悪くあたってしまったとしても、一生懸命調べて発表すれば(そしてある程度コンパクトに説明できていれば)、わざわざ「よくわからなかった」ことを吐露する必要はない。むしろ聴衆に対して失礼である。「わからなかったことを発表する場ではない」ということを理解する。
・聴衆の中には発表者より膨大な知識をもつ先生方も当然ながら多い。だが、「今話している内容は自分が一番詳しい」という気概をもって、そして「なんとしてでも理解してもらうんだ」と考えるべき。

@実際の準備の流れtips
*何よりも大事なことは、「何も考えずに頭から読み始めない」ことである。
0.抄読会の予定が発表されたら可及的速やかに論文を手に入れ、どの位のボリュームなのか把握する。そしてぱらぱらと眺める。臨床的なものだったら準備にあまり時間かからないかな、とか基礎的内容だったり、統計を多用していて準備に時間がかかりそうだ、といった点から、どの位準備に必要なのかを予想する。
1.論文タイトルを読み、何についての論文かつかむ
2.abstractを読む。不明な単語や不明な用語の意味を調べる。そしてabstractの意味をまず掴む
3.本文の図表をみて、何について書かれたものかをおおよそ見当をつける。ぱっとみて、何についてかかれているのかわからなければ、まずはその論文を読むのに必要な知識を、日本語で集める。この場合、Google scholarや雑誌(特集や総説などを探す)、教科書(Miller、麻酔、臨床麻酔、LiSA、その他)、医中誌が役に立つ。英語を訳すときに自己流の変な日本語をつけることを回避するためにも、日本語で知識を得ておくことは重要
4.背景知識をそれなりにもったら、初めて本文を読む
5.introductionから順にスライドを作るのもよいが、「図や表をまず貼りつけて、その説明から取りかかる」ことも推奨。これは「わざわざ著者が図表を示してまで読者にわかってもらいたいこと」というメッセージ、すなわち論文の肝であることが多いため。図表が多いと聴衆が興味を維持しやすいというのもある。
6.①「はじめに」②「material and methods」③「result」④「discussion」でじっくり聞きたいのは②と③、知ってるとためになる④の一部。だからそこに発表時間の大部分が注がれるようにスライドも作成。ということは①はせいぜい1枚か2枚でまとめる(それも大きい文字で)。

@スライドの作り方tips
・聴衆にストレスを与えないように気を配る
・パワーポイントならフォントは24-28程度。22以下は小さいので、表やグラフの説明には利用することも許容されるが、本文では使わない方がよい。小さいフォントで「はじめに」のスライドが出てきた瞬間に聴く気がなくなる人もいることを想像する。自分が聴衆だったら、朝の眠たい時間に目をこらさなきゃ読めないようなスライドを集中して読めるだろうか。小さい声の発表を聞き取ろうと努力するだろうか。
・1枚1分のルールがある。それに準ずると抄読会は10枚くらいになってしまうが、それだとあまりにも少ない。パッと見て理解できるスライドもあるだろうから、どんなに多くてもせいぜい20枚程度にまとめられるようにした方がよい。
・論文の内容全部を発表する必要は全くない。
・図表は発表の中でカットしない。原則すべて提示する。著者は、図や表にしなくてもいいものをわざわざ投稿しない。それくらい重要。
・図や表は読めるように貼る。PDFファイルでダウンロードした論文の図表をパワーポイントに張り付けることが多いが、文字がつぶれて読めないことは絶対に避ける。コピー元の表を「なるべく拡大してパソコンのディスプレイに表示した状態でSnipping Tool等を使ってコピーをする」等の方法を考慮。発表時に聴衆が読めないものを提示するのは意味がないどころか、ストレスを与える効果しかない。「小さくて見えにくいかもしれませんが・・・」と発表中に言うのは「最大限読める様に努力して提示してから」言うべきである。大きい表なら、読めるようなサイズにして分割して貼り付けてもよい。

@発表するときtips
・必ず1人で全体を通して「時間を測定して」予行練習の喋りを行う。声に出すことでスライド作成時や黙読時には気づかなかった誤字、脱字、論理の飛躍、等々に気づく
・自分が聴衆の1人だとして、「なにをいっているのか分からない」項目やスライドは大胆にカットした方がよい場合もある
・オペ室のマスクは必ず外して喋る
・全員に聞こえる音量で話す~内容がどんなにまとまっていても、耳をすまさないと聞こえないのでは、それだけで聞く気がなくなる人も出てくるし、作成に要した努力は水泡に帰す
・なるべくゆっくり話す
・喋り原稿はあってもよいが、可能な限り「スライドを見て話せるようにスライドを作る」ことが重要。
・聴衆はその時になって初めてスライドを見る。スライドを読むだけで精一杯。提示されていない余計なことを説明すると気が散るおそれがある。スライドにないことを喋ろうとして読み原稿のどこに書いてあったかを探して時間を浪費してしまったり…それによって本当に伝えたいことが伝わらなくなる
・発表内容にどれくらい興味や関心を持つ人がいそうか、を想像する。聴衆に、発表内容に関連する研究をしている人や造詣が深い人がいたら、「そういうテーマに当たってしまった」と、入念な準備の下に覚悟を決めてやる必要がある

***
今日で大学院生生活が始まってマル1ヶ月経った。
はっきり言って殆ど進歩がない。マイクロピペットのメモリの読み方と使い方は取り敢えず覚えた。あとは、何をすると癌細胞たちがコンタミの洗礼に遭うかもおぼろげながら分かった。培養ディッシュの癌細胞を継代するときに、どの位PBSとトリプシン処理をすれば培地から細胞が剥がれるかも、今扱っている癌細胞については何となく感覚がつかめてきた。
しかし、週1回のミーティングの際に飛び交う単語や略語や実験手技、試薬などについては未だに殆ど理解できない。手元には自分で検索して読んでみたもの、ボスからのギフトなど、計25の英語の原著・総説論文がある。どの論文も「discussion」で何を言いたいのかはおぼろげにわかるのだが、「method」の部分を読んでも、「~~を調べるために~~の実験をした」というところがまだ、さっぱりつかめない。1つの論文あたり15分くらいでささっと読むもんだ、と入学して2週間くらいでボスから指導(?)を受けたが、未だに15分じゃabstractも読みきれない。
さっぱり分からない上に、大学院の4年間でどこまで行けるのか、というかどこが目的地なのかもまだ分からないが、自分がこれまで働いていた病院の隣の建物で、これほど私に理解できない世界が広がっていたのか、ということが感動に値する事実であった。今はわけが分からなくても、そのうちにきっとちょっとずつわけが分かってきて、自分で何が問題なのか、これを調べたら面白いんじゃないか、と思える日がくるような妄想に近い予感だけはするのが不思議。もがき方が適切ならば、事態は恐らく好転してくる筈である。

Stressed or bored (ストレスを選ぶか、退屈を選ぶか) (ようこそ私の研究室へ ― 黒田達明 p.125)
である。

しかし、夕飯が23時位になってしまうのは、何とかしないといけない。後は走る時間を何とか確保しなくては。学生生活が再開したからといって、体重まで大学生の頃と同じ(今の体重+9kg)になるのは、是が非でも避けたいところ。

2011年1月24日月曜日

(麻) 当直とステロイドカバーの話

当直日誌というものがあります。
患者さんの名前、担当診療科、麻酔時間、麻酔担当医の名前、を担当した数だけ書くというシンプルなノートです。

私の当直は、その当直日誌の1行目に

「なし」

と書くことから始まります。過去3回ほどそれが著効したのか全く緊急手術がなかったのです。
昨日の夜もそうしたのですが、全くの裏目に出ました。逆に当直した甲斐があった、とも言えますが。深夜まで緊張を維持したまま働くことができました。

1件麻酔に入っているときに他科から緊急手術が申し込まれたときには、
「(手術を申し込んできた科の)先生たちの中で麻酔をかけられる医師はいませんか?」
と率直に聴いてみるのはいい方法です。本当の緊急手術であれば「麻酔の質が多少下がってもやらねばならない」のですから。
そのように尋ねて、「・・・麻酔科の先生にやってもらった方が安全なのでギリギリまで待ちます」という回答があれば、こちらもいよいよ本気になります。だってそう言われたら、「安全性を最大限担保しない麻酔をかけることは許されない」という雰囲気になりますから。
夜中の緊急手術の場において、昼間の待機手術と同じ精度の技術を提供できるかどうか(少なくとも自分の自覚する範囲において)は、麻酔を提供することでお金を対価としてもらえるかの1つの判断基準のように思えた一夜でした。

***
今日の抄読会は教科書「Evidence based practice of anesthesiology: Expert consult」から、
ステロイドカバーについての話。
以前他の教科書で記載されていたように
・正常では810mg/day分泌あり
・術中ステロイドカバーを考慮するのは
  ・3週間以上投与されているとき
  ・520mg/day以上投与されているとき(ACTHテストを施行して副腎の反応を見る必要がある)
20mg×3週間で副腎からのステロイド分泌は抑制される
小手術:通常通りの内服継続。カバー要らない
・中手術:ハイドロコルチゾンを術前に50mg以後8hrごと25mgずつ×3
・大手術:ハイドロコルチゾンを術前に100mg、以後8hrごと50mgずつ×3
程度でよいようです。
過去のretrospective studyでは、長期のステロイド内服者でも術後副腎不全を起こす症例は少なく、意外だという印象をもちました。

2011年1月16日日曜日

(雑) 抄読会の英語 と (本) 先生はえらい

今更ですが。
論文の読みやすさというのは、「その分野についての予備知識がどれ位あるか」に随分依存しています。臨床麻酔に即した論文内容だと容易に訳せますが、基礎的な研究(たとえ麻酔科領域でも)実験手法とか、聞きなれない統計手技を多用していたりするともうお手上げに近い。
でもインターネットのおかげで、「分からない情報や単語」がどのようなものなのかを漠然とつかむことができるので、非常にありがたいです。大学図書館を通過しなくてもフリーで読める学術記事も多いし、Google scholarでもかなり情報収集ができます。
ただ、「収集できすぎる」のが問題です。学術記事だとしてもそれがどの程度信頼できるのか、という問題は、やはり情報収集者のリテラシーに掛かっています。
大学のレポートや小中学生が読書感想文に困ってネットにアップされている情報をコピー&ペーストすることが流行しているのは容易に想像できますが、それを繰り返せば、生きていくのに必要な「鋭利な知恵」とでも呼ぶべき人間の神経回路が徐々に萎縮していくでしょう。玉石混交の知識を取捨選択する知恵も大事ですが、「検索するのはこれくらいにして自分の頭で考えたら」という境界線をどこに引くかは非常に重要な問題です。

***
過去の記事「Brugada症候群と麻酔」に情報を追加しました。(2010年4月25日)
確か麻酔専門医試験の過去問(2009年度だったかな?)にも出題されていました。
問題集では不適切問題になっていましたが。
大学病院での診療に従事する1つのメリットは抄読会等があり、「受動的姿勢でも信頼性の高い情報が収集できること」だと思います。

***
「先生はえらい」(内田樹)を読みました。

・私たちがコミュニケーションを先へ進めることができるのは、そこに「誤解の幅」と「訂正への道」が残されているからです。(p111-2)
・コミュニケーションを駆動しているのは、たしかに「理解し合いたい」という欲望なのです。でも、対話は理解に達すると終わってしまう。だから理解し合いたいけれど、理解に達するのはできるだけ、先延ばしにしたい」という矛盾した欲望を私たちは抱いているのです。(102)
・師が師でありうるのは、師がいかなる機能を果たすものであるかを、師は知っているけれど、自分は知らないと弟子が考えているからです。(171)
・学ぶ者の定義とは、「自分が何ができないのか」、「自分は何を知らないのか」を適切に言うことができないもののことです。(169)
・人間は自分が学ぶことのできることしか学ぶことができない、学ぶことを欲望するものしか学ぶことができないという自明の事実です。(37)
・どうしてプロを目指す人は後を絶たないのか?それは完璧な技術に到達しえない仕方が一人一人違うからです。(30)


本書を読むと、学校の教育現場が崩壊しているのは、「教えてくれるべきものを教師が提供してくれない」と、学生やその親たちが「私たちが授業料を支払っているのに」と支払ったお金に対する対価が十分ないという理由で、まるで消費者感覚で怒り出す、という構図からもきているように思えます(内田氏の他の著作で触れられていましたが)。 そこでは、学ぶ者たちの学びの主体性が失われています。国語でも数学でも英語でも、全て口を開けて待っていれば提供されるべきものと思っている。自分が鼾をかいて机に突っ伏して眠っていようが、「放課後どこで遊ぼうかな」と考えながら上の空で授業を聞いていても。教壇に立っている者が誰であれ、何を得るのかは学生に掛かっているのですね。学ぶことを欲望することしか学べないけれど、自分が何を知らないのか分からない人こそが学ぶ者である・・・というのは難しいことです。何かを渇望して、もやもやとした霧の中に手を突っ込んでふらふらと彷徨い歩くような態度が、学ぶ者に必要な基本的態度なのかもしれません。

となると「この病気の麻酔では何を気をつけたらよいのだろう?」と教科書や論文を検索し情報を得るという作業はこの「学ぶ」という定義から外れるのでしょうか?だってこの作業では「自分が何を欲望しているかわかっている」のですから。
臨床の必要性に迫られて教科書や論文を読む作業は、まさに「自分の医療行為に対してお金をもらうという"仕事"の一部」と言えます。ですから、それを怠れば給料泥棒ということになる・・・のかもしれません。もしそれで患者さんの予後に悪影響を与えればなおさらそうなのでしょう。(少なくとも所謂"識者"にそう批判されることを覚悟せねばなりません)

2010年11月22日月曜日

(麻) べーたぶろっか (麻酔と)

Variations in Pharmacology of ß-Blockers May Contribute to Heterogeneous Results in Trials of Perioperative ß-Blockade. Anesthesiology. 113(3):585-592, September 2010.

bisoprolol (メインテート) やbetaxolol (ケルロング) 、atenolol (テノーミン)に比べるとmetoprolol (セロケン)はβ1選択的な遮断作用が弱いです。
これまで色々なスタディで周術期βブロッカーの有用性について論じられてきましたが、スタディによって使われている薬剤が異なります。これらを解析するとβ1選択的阻害作用が強い薬剤の方が脳卒中等の合併症が低く(?)、予後がよいようです。ということで、臨床においては「βブロッカー」という把握ではなく「何というβブロッカー」を内服しているか、に気をつける必要があるようです。
術前に突然始められたβブロッカーは予後を改善しない(むしろ悪くなる?)というのは、既に抄読会で何度か聴いているので、常識として覚えておいてもよさそうです。

忘れないように記しておくと、propranolol (インデラル)はβ1選択的遮断薬ではありません。

2010年4月25日日曜日

Brugada症候群と麻酔

一般知識
・心電図でtype1-3に分類される。coved型とsaddle back型がある。coved型が危険.他にQTc延長、右脚ブロック波形、V1-3のST上昇
・ST上昇の程度は日内変動あり、副交感神経の緊張で増強。夜間に発作が起こりやすい。
・運動と発作は関係ない。
・男女比は9:1。男が多い。
・発症は40歳くらいに多い。
・18-30%程度の患者でSCN5Aという遺伝子異常がある(SCN5Aは心筋の細胞膜上のNaチャネルのαサブユニットをコードしている。3p21に存在)
・Naチャネルの異常で発症するといわれるが、原因はまだ不明である。

術前評価
◎問診チェック事項
・本人に関して:VTの既往、失神の有無、夜間の呼吸苦の有無、電気生理学的検査でVTやVFの誘発の有無
・家族に関して:45歳以下の突然死の有無、coved typeの心電図異常をもつ家族の有無
→いずれも無く、自然タイプ1でなければ経過観察。但し心事故が発生する可能性は常に念頭に置く

上記があれば・・・
・循環器内科医にコンサルト
・器質疾患除外のためにTTEとHolter ECGを行う

麻酔
・体外式除細動器を準備
・不整脈発生直前にはST上昇が著明になることがあるのでモニター
基本的なコンセプト―迷走神経優位にしない
・除脈や迷走神経反射を避ける
・過換気も避ける
・避けたほうがよい薬剤:1a, 1c群抗不整脈薬、βブロッカー、ネオスチグミン、エドロホニウム、Caチャネルブロッカー、アデノシン三リン酸、アセチルコリン
・ネオスチグミンは真のBrugadaには使用しないほうがよい。(過去の症例報告をみるとBrugada型心電図を呈するもの全てに禁忌ではないようだ)
・Ib(メキシレチンやリドカイン)は大丈夫
・セボフルランは大丈夫
・ブピバカインはリドカインに比べプルキンエ線維と心室筋の脱分極rapid phaseを著明に抑制する。持続投与でcoved型ST上昇を示した1例報告あり。(他の薬が使えるのなら使わないほうがよい?更なる研究が必要か?)

・過去の臨床研究(63人のBrugada症候群患者をfollowした研究)では
 ・βブロッカーやアミオダロン投与群ではsudden deathを防げなかった
 ・ICD挿入群には死亡例がなかった。
という点から、適応症例にICDを挿入するのがbetterではないかとされる。

参考文献
・Brugada症候群様心電図を呈する患者の術前評価と麻酔管理. 麻酔 2007; 56:1398-1403.
・Brugada Syndrome and Anesthetic Mangement. J Cardiothorac Vasc Anesth 2006 Jun;20(3):407-13.
・Brugada syndrome. UpToDate(2010年1月14日の抄読会Y先生の発表)
専門医から学ぶ不整脈の臨床 Brugada 症候群の最近の考え方(麻酔薬との関連を含めて). 日本臨床麻酔学会誌 31(5), 771-778, 2011-09-15 (2012年6月15日追記)                     

2010年4月24日土曜日

(麻) 全身麻酔抜管後の嗄声に関する知識

術後嗄声の知識を整理しておこうと思い記す
・術後発生頻度は10-55%程度。報告によって差がある
・呼吸困難感の有無を確認。ある場合はSpO2モニタ。神経麻痺を念頭に置き速やかに対応。FOBで声帯の動きを観察。専門医への診察依頼
・まずは術操作に関連があるか確認。術操作の場合は難治性
・術後の反回神経麻痺は圧迫を受けやすい左側が多い
・体位による圧迫が原因のこともある
・反回神経は切れてない場合、圧迫麻痺では数カ月後自然治癒する可能性が高い、はやい場合なら1ヶ月以内に治癒することもある
・披裂軟骨脱臼は、治療開始が遅れるにつれ、輪状披裂関節に強直化が発生し整復困難となるため、治療開始時期が発声状態の予後を左右。発症10週まででは発声状態が改善する(麻酔科診療プラクティス17 麻酔科トラブルシューティング 文光堂. p300, 2005より)

***
UpToDate 「Endotracheal tube management and complications」によると
・声帯麻痺は数日から数ヶ月で回復する。一般的には声門下喉頭で気管チューブカフと甲状軟骨部部位において反回神経の前枝が圧迫されることで生じる。大きいサイズの気管チューブや多すぎるカフを避ける、気管チューブを動かさない、等で予防できるかもしれない。(Risk factors associated with prolonged intubation and laryngeal injury.Otolaryngol Head Neck Surg 1994 Oct;111(4):453-9.)
・カフ圧はエアリークを防ぐため18mmHg以上、粘膜壊死を避けるため25mmHg以下にすべきである。

***
阪大の先生方が報告した3093件の前向き研究「Prolonged hoarseness and arytenoid cartilage dislocation after tracheal intubation. Br J Anaesth. 2009 Sep;103(3):452-5」によると
方法
・対象はASA-PS1-2の手術室で抜管した患者18-77歳計3097名。
・チューブサイズは男8.0、女7.5mmで統一し、聴診でリークがなくなるまでカフを膨らませる
・嗄声の評価判定基準:術当日、1,3,7日後に患者と面接。患者の訴えがなくなり、評価した麻酔科レジデントが完全に回復したと判定した時点で回復と判定
・7日を超えて嗄声が続く場合は耳鼻咽喉科専門医により声帯を観察してもらう
結果
・0,1,3,7日後の嗄声率は49, 29, 11, 0.8%
・7日後の嗄声者25人のうちfollowできた18人の内訳
・3人は披裂軟骨脱臼(arytenoid cartilage dislocation)(発症率0.097%)で、全員外科治療で回復(68,144,177日後に回復)
・4人は声帯麻痺。3人は長期観察(35-121日)後に回復、1人は3年後も回復しなかった
・7人は病的変化なく2週間以内に回復した
・2人は手術による反回神経麻痺のため回復せず
・2人は声帯浮腫あり、26,97日後にそれぞれ回復
重回帰分析では嗄声期間延長に関与したものは
・有意:年齢と挿管期間
・有意ではない:性別、体重、Cormack grade、使用全身麻酔薬(笑気、セボフルラン、イソフルラン、プロポフォール)
考察
・過去の報告では女性の方が術後咽頭痛、嗄声が多いとされていた。今回それに当てはまらなかったのは女性で細いチューブを使ったためかもしれない
・披裂軟骨脱臼は過去のretrospective studyでは13698人中4人(0.029%)だった。正確な発生頻度の把握にはより大規模な前向き研究が必要だろう

***
そういえば先日の抄読会でラリンジアルマスクのカフ圧に関する論文が取り上げられていた。
Use of Manometry for Laryngeal Mask Airway Reduces Postoperative Pharyngolaryngeal Adverse Events: A Prospective, Randomized Trial. Anesthesiology. March 2010 - Volume 112 - Issue 3 - pp 652-657

・LMA classicによる合併症調査
・200人での前向き無作為二重盲検
・麻酔はPRFとfentanyl導入。desflurane維持、自発呼吸下。笑気は使用しない。
・・咽頭痛、嚥下困難、発声困難は13.4% VS 45.6%でカフ圧を40-44mmHgに調節した群で有意に低かった。調節しない群でのカフ圧はは114mmHg程度と高かった。
・満足度のVASは両群で有意差無し
・著者らはカフ圧計の使用を推奨している

***
「これでわかった!図解ラリンジアルマスク. 克誠堂出版 2009.」によると
・ LMAでカフを入れすぎないように注意。サイズ3,4,5は15ml注入を基本とし、必要なら5ml追加。それぞれのLMAに記載されている20ml,30ml,40mlは最大量であり、適切な注入量ではない。
・LMAのまれな合併症として長期の神経麻痺や声帯麻痺が報告されている

***
まとめると重要なことは以下の2点だろう。
・術前の患者さんへの説明と発生時のfollow up。
・漫然と気道管理を行わない

英単語
elucidate: 解明する、説明する

2010年3月28日日曜日

膠質液に関するあれこれ

「白金台」という私用ではまず降りることがない駅に降り立ったのが8時。地下鉄のホームから地上に出て周りを見て早くも後悔。まわりに喫茶店が一件もないのである。どこまで見渡してもない。ない、ない。10分ほど目当てのホテルを中心にうろついてみたが、ない。私はどこかに講習会に行く際には30-60分早めに着いて、のんびりと時間を使うのを習慣にしているのだが、風邪がまだ完治していなかったからなのか計画が非常に甘かった。仕方ないので早めに会場のホテルに行く。そこでまた後悔。closedの会だからなのか学会などでよく見かける重鎮先生が大勢いるのだ。私のような小童同然の者が参加していい会なのか・・・。

まぁそんな心配、緊張、後悔の念は講演が始まると忘れ去ることができ、そしてHESに関していかにこの島国が世界から取り残されているかを実感するに余りある会であった。

偶然以前に抄読会で担当して読んだ
Anesthesiology 2009;111:187-202 Hydroxyethyl starches: Different Products - Different Effects
の著者Westphal先生の講演に始まり、内外の著名な先生方の講演を聞くことができ、とても実りある一日だった。

<後で思い出すための以下メモ書き>
HESの性質を規定する4つの因子。特に置換度が重要。
例) 6% HES130/0.4/9 という製剤があったとすると
1.6%・・・溶液の濃度(concentration)
2.130・・・分子量(MW:molecular weight, 単位はkDa)
大きい程、毛細血管から漏出しにくく、循環血液量を長時間維持できる。
3.0.4・・・置換度(MS:molar substitution)
ヒドロキシエチル基に置換しているグルコピラノース環の割合。
高いほど分解が遅い。
4.9・・・C2/C6比
グルコピラノース環の6つの炭素のうち、2位にヒドロキシエチル基がついているものと6位についているものの割合。高いほどα-アミラーゼによる分解が遅く、粘度が高い。高い程血管内にとどまりやすい

・ Let’s stop talking about “wet” and ”dry”. ― 患者個々人にあった輸液のゴールを設定すべき。
・VISEP study(Brunkhorst FM, et al. : Intensive insulin therapy and pentastarch resuscitation in severe sepsis. New Eng J Med 2008; 358:125–39)は10%HES 200/0.5 VS 晶質液 。HES群で死亡率上昇しているという結果だったが、その患者の38%が20ml/kg/dayを超えたHESを投与されていたという問題点があった。というように論文で”どのようなHESをどのように使用しているか”をきちんと理解したうえで臨床に還元したほうがよい。この論文を根拠として、現在日本で使われている6% HES 70/0.55/4を重症敗血症には使えない/使わないという理由にはならない(高分子HESをダイヤル式電話に、中分子低置換度HESを携帯電話に例えていたスライドが印象的であった。)
・Hespanderが第8因子、vWF, vWFAgに与える影響は少ない
・1mOsm/kgH2O = 19.3mmHg
・晶質浸透圧 5600mmHg:細胞膜、脳血管関門
・膠質浸透圧 25mmHg :内皮細胞間隙
・毛細血管灌流は膠質液で上昇
・膠質浸透圧は膠質液で上昇
・ 複数の演者が取り上げていたのが、以前抄読会でO先生が発表していたAnesthesilogy 2009; 110:496-504の「動物実験に生食とHESを輸液した場合に大腸の酸素化がHES群でよくなった」という論文だった。
・輸液の指標としてはstatic parameters(静的指標:HR. MAP, CVP, PCWP)よりdynamic parameters(動的指標:心拍出量など)を利用したほうがよいのでは。別の言い方でpressure orientedではなくflow orientedで。またはモニターの血圧からフローを類推するような管理を。
・コロイドでpreloadしておくとCOが上昇
・アルブミン
・頭部外傷患者には生食治療群よりアルブミン治療群で予後増悪(NEJM)  
注:アルブミンも5%と20%以上のものとがあるから、目の前の患者への実践には論文を読んで判断したほうがよかろう。
・半減期は20-24日程度
・手術後は血管外に出て行くのが正常の反応。そして低アルブミン血症が起こる。そこに外からアルブミン製剤を入れると浮腫を起こしやすくなる。
・20%以上の高張アルブミンを過剰に入れると腎障害が発生
・論文はread between the line. よく読むこと。
・メタアナリシスは注意深く見る。特に結果に大きな影響を与えるている論文がどのようなdesignでやっているか。患者は、輸液は、その量は???

・用量の問題
・日本は恐らく米国で多く使われている大分子製剤へのFDA勧告が20ml/kgだったから、それに習って今の量に設定されているようだが、置換度0.5の第2世代HESならば世界的には2000ml程度の利用が普通。
・ラクテック注の添付文書にも(用量に関しては)同じようなこと書いてある。ならばなぜHESだけ1000mlきっかりしか入れない?
・厚労省は2005年に20ml/kgを超えた量も投与も状況によっては考慮、と変更している。
・麻酔科学会でも2000-3000mlの投与を許容
(確かに麻酔科学会の「指針・ガイドライン」→「輸液・電解質液」のHESの項目を見るとそのように記載してある)

その他
・加温した輸液ボトルを患者の手などに当てたままにして低温熱傷をつくらないように注意。米国では訴訟の対象になっている。
・出血時には大量HESも許容される?大出血時の大量HES療法は術後AKI(Acute Kidney Injury)のリスク因子にはならない。術前腎機能障害だけがリスク?

全体を通しては、Volume therapyに関する7つの神話として講演したBoldt先生のセクションで「Do not treat myths, treat patients using new data.」と言っていたのが印象的であった。

出血時にはHESを入れてもどうせでていくのだから、代謝が早い6% HES 70/0.55/4なら組織蓄積もそれほど気にすることなく輸液できる感じはある。私は常識と慣習と周りの目に縛られたまま、真に患者のためにならない実践を繰り返しているのかもしれない。現在第三世代HES(Voluven; 6% HES 130/0.4/9)が治験中だとのこと。ヨーロッパのように術中に50ml/kg使用できるようになれば、術中のアルブミン使用量や輸血使用量は確実に減少するだろう。それに伴って医療費も減少するだろう。だが実践に当たっては、HESによる凝固異常や腎機能障害を必要以上に危惧する外科医や術後管理に携わる集中治療医のHESの理解が不可欠であろう。

***
・CVPは輸液反応性の指標にはならない (Does central venous pressure predict fluid responsiveness? : A systematic review of the literature and the table of seven mares. Chest 2008; 134: 172-8)