全く理解不能です。
というのも、ヘスパンダーとサリンヘスの話です。
発売元のフレゼニウス・カービからこのような情報が出されています。
2012年のNEJMで報告された、多施設RCTの論文その他を受けて、我が国くらいでしか使われていないであろう、低分子HESについての使用制限勧告の情報です。
これを真に受けるならば、重症敗血症患者の手術中に、麻酔科医はヘスパンダーおよびサリンヘスを使用してはいけないということになります。
ということは、つまり、severe sepsisの大腸穿孔のような手術の麻酔をする際には、晶質液を入れてみて、輸液反応性が見られなかったらノルアドレナリン、アドレナリン、バソプレシンで昇圧して、それでも循環が保てないようならば、アルブミンや新鮮凍結血漿や赤血球や血小板を入れろ、ということになります。血液製剤を使用すると死亡率が上昇するという報告も、海外では多数されていますが、どうすればいいんですか?晶質液だけで頑張ればいいんでしょうか?それも1回も自分で使ったことのない薬剤での研究結果を受けて。
なぜ、中分子のHESでの報告を真に受けて、低分子HESの使用制限が、しかも発売元から全くの無抵抗のような状態でなされるのか、私には全く理解出来ません。
いま話題になっている、ノバルティスファーマのディオバンについての論文がおかしいからといって、同じ作用機序の他のARBの使用制限がなされていますか?
EBMとおっしゃるのならば、重症敗血症患者において、低分子HESを使用することで腎代替療法率や死亡率が上昇するという大規模前向き研究が、これまでに1つでも行われたんでしょうか?それも日本人を対象として。
中分子HESでの結果が悪かったからといって、別の薬剤であるヘスパンダーおよびサリンヘスまで悪玉にするなんて意味がわかりません。
***
でもきっと今後、重症敗血症患者の麻酔でヘスパンダーやサリンヘスを使ったりしたら、その麻酔科医は、外科の先生や集中治療専門医の先生から怒られてしまうのでしょうね。
「麻酔科が術中にヘスパンダー使ったから、この患者さん透析することになってしまった/お亡くなりになってしまったんですかね…」と。
一時期もてはやされていた周術期のベータブロッカーのことを思い出してください。
日本で麻酔をして、お金をもらっているプロの麻酔科医は、少し怒ったほうがいいと思います。このような、木を見て森を見ずな情報、私は全く受け入れることができません。
因みに申し上げますが、私は、フレゼニウス・カービとの利益相反は一切ありません。
私には想像できないほど頭のいい人たちがいろんな判断や決定を下している筈なのですが、このようなことしかできないんでしょうか。
久しぶりに気分が悪くなりました。
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2013年7月31日水曜日
2013年7月27日土曜日
(雑) narrativeの最中に自分がいるうちは、その意味に気づけない
朝、目覚めてからおよそ60分以内に、その日一日分の幸せを感じることが出来るような日。そんな日は、その日その後覚醒した状態で過ごすだろう十数時間のクオリティについて、過剰に思いを巡らせて消耗する必要もないでしょう。心の赴くままに目の前のことに懸命に取り組めばいい筈です。
運良く日の出を拝むことができました。この時期にしてはひんやりとした大気の中で、蝉や鳥が鳴いていました。
***
「いい選択をしたなぁ」と決断をした直後に胸をほっと撫で下ろすような場合、それはそれでいい選択なのかもしれませんが、最上の選択ではないと思います。いい選択をしたなぁ、って選択した後すぐに思える事自体、自分の想像力の範囲内でしか選択しなかったのだ、そしてその結果も自分の想像力の範囲内にしかなかった、ということです。少なくともその選択をしたことによっては、何も成長できていない気がします。蕎麦を食べるか饂飩を食べるか、珈琲を飲むか紅茶を飲むか、という程度の話ならばどちらを選択してもいいのでしょうが。
何かを決める際に、決めることに影響を及ぼす因子、全てについて可能な限り情報を収集する…そしてそれに基づいて決定する。そうすることで、その決断がイマイチなものだったとしても「あれだけの情報に基づいての結果だから仕方ないか」と自分を納得させるのは比較的簡単かもしれません。過去の自分を振り返ってもそう思いますが、それを学んだことで大人の階段を昇ったと錯覚してはいけない筈です。もっと大人に憧れる必要があります。
***
EMCrit Blogに掲載されています。
輸液反応性を予測するための指標として、CVPを一刻も早く退場させるべきである、というニュアンスのメタ解析を紹介しています。Paul E. Marik氏がCrit Care Medに投稿した論文です。
少し前なら、私も心からこの意見に賛同していたと思います。
ですが、今、心からは賛同できないように感じるのは、私の麻酔科医としてのnarrativeに、これを確信するだけの経験がないからです。私の麻酔科医としてのnarrativeをもっともっと積み上げていって、その時点で自分の経験としてこれを確信できる日が、万が一来るのならば。
その日が来るまで、否、その日が来なかったとしても、私は麻酔をし続けようと思います。
***
EMCrit Blogに掲載されています。
輸液反応性を予測するための指標として、CVPを一刻も早く退場させるべきである、というニュアンスのメタ解析を紹介しています。Paul E. Marik氏がCrit Care Medに投稿した論文です。
少し前なら、私も心からこの意見に賛同していたと思います。
ですが、今、心からは賛同できないように感じるのは、私の麻酔科医としてのnarrativeに、これを確信するだけの経験がないからです。私の麻酔科医としてのnarrativeをもっともっと積み上げていって、その時点で自分の経験としてこれを確信できる日が、万が一来るのならば。
その日が来るまで、否、その日が来なかったとしても、私は麻酔をし続けようと思います。
2013年2月21日木曜日
(麻) 輸液反応性と動的指標に関する最近の知見
というタイトルの論文が今月号の「臨床麻酔」という雑誌(臨床麻酔 2013;37:201-6)に掲載されました。昨年の麻酔科学会関東甲信越・東京支部第52回学術集会のお昼時に講演させていただいた内容をもう一度見直して文章化したものです。
昨今オペ室で頻用されている(だろう?)SVV(stroke volume variation)やPPV(pulse pressure variation)について、文献的根拠がある内容についてまとめましたので、もしよければ御覧ください。皆様の(そして勿論患者さんの)お役に立てれば幸いです。
記載に間違いがあれば教えていただけると、こちらとしても勉強になりますので、どうぞよろしくお願い致します。
ついでに・・・
・ブログの背景もシンプルなものにしました
・投稿記事の下にリアクションボタンをつけてみました(PC版のみですし、目立たないですけど^^;)。気が向いたらクリックしてみてください。それによってブログに書く内容を、もう少し皆さんの役に立てるものにできるかもしれませんので~。
昨今オペ室で頻用されている(だろう?)SVV(stroke volume variation)やPPV(pulse pressure variation)について、文献的根拠がある内容についてまとめましたので、もしよければ御覧ください。皆様の(そして勿論患者さんの)お役に立てれば幸いです。
記載に間違いがあれば教えていただけると、こちらとしても勉強になりますので、どうぞよろしくお願い致します。
ついでに・・・
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2013年1月12日土曜日
(麻) Surviving Sepsis Guidelineの2012年アップデート
2012年のSCCM meetingで提唱されたもののようです。
「PulmCCM.org」というサイトの新着記事をemailで送ってもらうようにしていたため、知りました。昨年大晦日の紅白歌合戦の後に読んだ気がします。Facebookでも「PulmCCM central」というページがあります。Facebookはほんとうに便利だなぁ。
ということでそのサイトの
Surviving Sepsis Guidelines Updated: Preview from SCCM Meeting
をあとですぐ見直せるように日本語にしました。勿論、ただの推奨なので、どのように自分の臨床に取り込むかは各人の置かれる状況に依存すると思います。
以下の文章の(注)は私が追加したものです。
Surviving Sepsis: New Fluid Resuscitation Recommendations
・重症敗血症の初期治療(輸液)に生理食塩液などの晶質液を使用(1A)。投与量は1リットルかそれ以上。治療開始後4-6時間で最低30ml/kgの晶質液を投与すること(70kgの成人なら2.1L)
・血行動態が改善し続けるうちは、輸液の追加投与を継続。血行動態とは血圧やΔPP(注:ΔPPはPPVと同じで脈圧変動のこと)やその両方を示す(1C) (注:PPVと同じようにSVVも使用可能でしょう。)
・severe sepsisとseptic shockに対する初期輸液治療の晶質液に、アルブミンを加えるのは軽度の推奨(2B)
・分子量200kDaを超えるヘタスターチやハイドロキシエチルスターチを使用しないことを強く推奨(1B)
これより小さい分子量のヘタスターチ、またゼラチン製剤については言及していない。これらの製剤を評価するための研究は進行中。
(注:ヘスパンダーとサリンヘスは70kDaで、もうじき日本でも使えるようになるスターチは130kDaですので、このガイドラインには当てはまりません)
Surviving Sepsis: New Recommendations for Vasopressors, Inotropes
・昇圧療法の第1選択はノルエピネフリン(商品名Levophed)を強く推奨(1B)。バソプレシン0.03単位/分をノルエピネフリンの代替品として使用するか併用する(2A)
・2つ目の昇圧剤を使う必要があれば、エピネフリンを軽く推奨(2B)
・ドパミンは極めて限られた患者群に対してのみ推奨。不整脈の危険性がとても少ない場合や、低心拍数and/or低心拍出量の患者である(2C)。
・ドブタミンは以下の患者に対して、単独、もしくは昇圧薬と併用して使用することを強く推奨する(1C)。心充満圧が高い、低心拍出量、十分な輸液療法を行なって血圧が上昇した後も低灌流状態が示唆される臨床症状がある、といった患者。
Surviving Sepsis: Corticosteroid Recommendations
輸液と昇圧薬で循環動態が改善する患者に対する副腎皮質ステロイドの経静脈投与を勧めない。昇圧薬に反応しない敗血症性ショック患者に対しては、静脈内ヒドロコルチゾンを200mg/24hの量で軽く推奨(2C)
Surviving Sepsis: Mechanical Ventilation for ARDS
重症敗血症に伴うARDSへは以下を軽く推奨。
・高めのPEEP(2C)
・高PEEPとFiO2でも重度の低酸素血症状態にある患者へのリクルートメント法(2C)
・それでもPaO2/FiO2比100未満が続く患者への腹臥位(2C)
Other New Surviving Sepsis Guidelines
以下を軽く推奨
・中心静脈酸素飽和度をモニターできないときは、EGDTのゴールとして乳酸値を正常化すること(2C)。
・重症敗血症の原因として真菌感染の危険性がある患者では、侵襲性カンジダ症に対する新しいアッセイ法(1,3-beta-D-グルカン、マンナン、抗マンナンELISA抗体試験など)を検査(2B/C)。(注:新しいアッセイ法のリンク先は状況によっては見られないかもしれません)
・経験的な抗菌療法中に感染症が見つけられなければ、抗菌療法中止の指標としてプロカルシトニン値低下を判断材料にすることを考慮(2C)。
最後に以下の記載がありました。
The Surviving Sepsis project was criticized in the mid 2000s when it was revealed that Eli Lilly (makers of since-discontinued Xigris) provided a reported ~90% of the funding, without disclosure by the committee. Others (including the committee itself) felt such criticism was unfounded and unfair. The Surviving Sepsis website does not clearly show their current sources of funding, but they have set up a page to address any concerns about industry involvement. The name “Surviving Sepsis Campaign” is copyrighted by the Society for Critical Care Medicine.
エビデンスの強さの復習を。
1 = strong recommendation;
2 = weak recommendation or suggestion;
A = good evidence from randomized trials;
B = moderate strength evidence from small randomized trial(s) or multiple good observational trials;
C = weak or absent evidence, mostly driven by consensus opinion
***
既にご存じの方も多いとは思いますが、論文はこちらです。「Intensive Care Medicine」にも掲載されてます(2013年2月5日追記)
Surviving Sepsis Campaign: International Guidelines for Management of Severe Sepsis and Septic Shock: 2012. Crit Care Med. 2013 Feb;41(2):580-637. PMID: 23353941
「PulmCCM.org」というサイトの新着記事をemailで送ってもらうようにしていたため、知りました。昨年大晦日の紅白歌合戦の後に読んだ気がします。Facebookでも「PulmCCM central」というページがあります。Facebookはほんとうに便利だなぁ。
ということでそのサイトの
Surviving Sepsis Guidelines Updated: Preview from SCCM Meeting
をあとですぐ見直せるように日本語にしました。勿論、ただの推奨なので、どのように自分の臨床に取り込むかは各人の置かれる状況に依存すると思います。
以下の文章の(注)は私が追加したものです。
Surviving Sepsis: New Fluid Resuscitation Recommendations
・重症敗血症の初期治療(輸液)に生理食塩液などの晶質液を使用(1A)。投与量は1リットルかそれ以上。治療開始後4-6時間で最低30ml/kgの晶質液を投与すること(70kgの成人なら2.1L)
・血行動態が改善し続けるうちは、輸液の追加投与を継続。血行動態とは血圧やΔPP(注:ΔPPはPPVと同じで脈圧変動のこと)やその両方を示す(1C) (注:PPVと同じようにSVVも使用可能でしょう。)
・severe sepsisとseptic shockに対する初期輸液治療の晶質液に、アルブミンを加えるのは軽度の推奨(2B)
・分子量200kDaを超えるヘタスターチやハイドロキシエチルスターチを使用しないことを強く推奨(1B)
これより小さい分子量のヘタスターチ、またゼラチン製剤については言及していない。これらの製剤を評価するための研究は進行中。
(注:ヘスパンダーとサリンヘスは70kDaで、もうじき日本でも使えるようになるスターチは130kDaですので、このガイドラインには当てはまりません)
Surviving Sepsis: New Recommendations for Vasopressors, Inotropes
・昇圧療法の第1選択はノルエピネフリン(商品名Levophed)を強く推奨(1B)。バソプレシン0.03単位/分をノルエピネフリンの代替品として使用するか併用する(2A)
・2つ目の昇圧剤を使う必要があれば、エピネフリンを軽く推奨(2B)
・ドパミンは極めて限られた患者群に対してのみ推奨。不整脈の危険性がとても少ない場合や、低心拍数and/or低心拍出量の患者である(2C)。
・ドブタミンは以下の患者に対して、単独、もしくは昇圧薬と併用して使用することを強く推奨する(1C)。心充満圧が高い、低心拍出量、十分な輸液療法を行なって血圧が上昇した後も低灌流状態が示唆される臨床症状がある、といった患者。
Surviving Sepsis: Corticosteroid Recommendations
輸液と昇圧薬で循環動態が改善する患者に対する副腎皮質ステロイドの経静脈投与を勧めない。昇圧薬に反応しない敗血症性ショック患者に対しては、静脈内ヒドロコルチゾンを200mg/24hの量で軽く推奨(2C)
Surviving Sepsis: Mechanical Ventilation for ARDS
重症敗血症に伴うARDSへは以下を軽く推奨。
・高めのPEEP(2C)
・高PEEPとFiO2でも重度の低酸素血症状態にある患者へのリクルートメント法(2C)
・それでもPaO2/FiO2比100未満が続く患者への腹臥位(2C)
Other New Surviving Sepsis Guidelines
以下を軽く推奨
・中心静脈酸素飽和度をモニターできないときは、EGDTのゴールとして乳酸値を正常化すること(2C)。
・重症敗血症の原因として真菌感染の危険性がある患者では、侵襲性カンジダ症に対する新しいアッセイ法(1,3-beta-D-グルカン、マンナン、抗マンナンELISA抗体試験など)を検査(2B/C)。(注:新しいアッセイ法のリンク先は状況によっては見られないかもしれません)
・経験的な抗菌療法中に感染症が見つけられなければ、抗菌療法中止の指標としてプロカルシトニン値低下を判断材料にすることを考慮(2C)。
最後に以下の記載がありました。
The Surviving Sepsis project was criticized in the mid 2000s when it was revealed that Eli Lilly (makers of since-discontinued Xigris) provided a reported ~90% of the funding, without disclosure by the committee. Others (including the committee itself) felt such criticism was unfounded and unfair. The Surviving Sepsis website does not clearly show their current sources of funding, but they have set up a page to address any concerns about industry involvement. The name “Surviving Sepsis Campaign” is copyrighted by the Society for Critical Care Medicine.
エビデンスの強さの復習を。
1 = strong recommendation;
2 = weak recommendation or suggestion;
A = good evidence from randomized trials;
B = moderate strength evidence from small randomized trial(s) or multiple good observational trials;
C = weak or absent evidence, mostly driven by consensus opinion
***
既にご存じの方も多いとは思いますが、論文はこちらです。「Intensive Care Medicine」にも掲載されてます(2013年2月5日追記)
Surviving Sepsis Campaign: International Guidelines for Management of Severe Sepsis and Septic Shock: 2012. Crit Care Med. 2013 Feb;41(2):580-637. PMID: 23353941
2012年12月13日木曜日
(麻) 麻酔導入前の脈圧が大きい患者ではSVVの信頼性が低下する
ちょっと前に読んだ論文のメモです。実験の合間の1人抄読会です。放置していたので加筆して残しておきます。
韓国のDr. Kimらの報告。
Effect of pulse pressure on the predictability of stroke volume variation for fluid responsiveness in patients with coronary disease
J Crit Care. 2012 Oct 30. pii: S0883-9441(12)00321-8. doi:10.1016/j.jcrc.2012.09.011. [Epub ahead of print] PMID: 23122680
冠動脈手術を受ける患者さんたち(心収縮能自体は良好)を、麻酔導入前のpulse pressure(PP: 脈圧)の大小によって2群に分類。そして麻酔導入後に、輸液反応性を検証したときに、脈圧の大小がSVVの信頼性を変化させるか、を検証しています。
本論文では 脈圧≧60mmHgをwide PPと定義しています。輸液負荷はvoluven(中分子の人工膠質液) 500mlを15-20分で施行し、SVVはFloTrac/Vigileoで測定。「輸液反応性あり」の定義はPACで得られたΔSVI≧12%の上昇としています。
結果としてwide PPの患者で輸液反応性有りは、SVVのAUC=0.609 (normal PP では0.808)と低い値を示しています。
PP(脈圧)の上昇と関連する状態にはどんなものがあるかというと・・・高齢、LVEF高値、女性、MIの既往、DM、高血圧、Ca拮抗薬の使用などがあるようです(本論文のdiscussionより)。
本論文ではwide PP群でhigh EF、女性の比率、DM、Ca拮抗薬内服患者が有意に多く、それが結果に影響している可能性はありますが、それらの交絡因子を除いて解析しても同様の結果となった・・・と著者らは書いています。
また、研究の限界として
・輸液負荷前にノルエピネフリン投与されていた患者がいた
・FloTrac以外のデバイスで得られる(例えばPiCCOplus)SVVには拡大適応できない
・動脈エラスタンスをより良く把握するためにはPPVも測定すべきだった
を挙げています。
結果の解釈が難しい論文です。
術前にwide PPな患者さんたちは一般的に動脈壁コンプライアンスが低いですし、そのような患者さんたちのほうが麻酔中の血圧のup downが激しく、麻酔管理上、重症であることが多いです。そういった患者さんたちのSVVの信頼性が低いかもしれない・・・とすると輸液投与量の判断が難しくなりますね。
本論文では麻酔導入前のPPを測定してますが、麻酔覚醒後ってどうなんでしょう。
もしかすると、所謂high risk patientといわれる方々では、麻酔中にSVVなどの動的パラメータを低く保って管理しても(これ以上輸液してもSVやCOは上昇しないだろうという状態を目標とした輸液管理)、それが麻酔覚醒後の状態に対してもよいことなのか-つまり術中の輸液最適化が麻酔覚醒後の輸液最適化と本当に相関があるのか、という疑問が生じます。そのへんがよくわかっていないということが、もしかすると昨今のモニターによるGDTによって術後の予後が良い、いやこれまでの管理と変わらない、という分岐点になっているのかもしれません。
韓国のDr. Kimらの報告。
Effect of pulse pressure on the predictability of stroke volume variation for fluid responsiveness in patients with coronary disease
J Crit Care. 2012 Oct 30. pii: S0883-9441(12)00321-8. doi:10.1016/j.jcrc.2012.09.011. [Epub ahead of print] PMID: 23122680
冠動脈手術を受ける患者さんたち(心収縮能自体は良好)を、麻酔導入前のpulse pressure(PP: 脈圧)の大小によって2群に分類。そして麻酔導入後に、輸液反応性を検証したときに、脈圧の大小がSVVの信頼性を変化させるか、を検証しています。
本論文では 脈圧≧60mmHgをwide PPと定義しています。輸液負荷はvoluven(中分子の人工膠質液) 500mlを15-20分で施行し、SVVはFloTrac/Vigileoで測定。「輸液反応性あり」の定義はPACで得られたΔSVI≧12%の上昇としています。
結果としてwide PPの患者で輸液反応性有りは、SVVのAUC=0.609 (normal PP では0.808)と低い値を示しています。
PP(脈圧)の上昇と関連する状態にはどんなものがあるかというと・・・高齢、LVEF高値、女性、MIの既往、DM、高血圧、Ca拮抗薬の使用などがあるようです(本論文のdiscussionより)。
本論文ではwide PP群でhigh EF、女性の比率、DM、Ca拮抗薬内服患者が有意に多く、それが結果に影響している可能性はありますが、それらの交絡因子を除いて解析しても同様の結果となった・・・と著者らは書いています。
また、研究の限界として
・輸液負荷前にノルエピネフリン投与されていた患者がいた
・FloTrac以外のデバイスで得られる(例えばPiCCOplus)SVVには拡大適応できない
・動脈エラスタンスをより良く把握するためにはPPVも測定すべきだった
を挙げています。
結果の解釈が難しい論文です。
術前にwide PPな患者さんたちは一般的に動脈壁コンプライアンスが低いですし、そのような患者さんたちのほうが麻酔中の血圧のup downが激しく、麻酔管理上、重症であることが多いです。そういった患者さんたちのSVVの信頼性が低いかもしれない・・・とすると輸液投与量の判断が難しくなりますね。
本論文では麻酔導入前のPPを測定してますが、麻酔覚醒後ってどうなんでしょう。
もしかすると、所謂high risk patientといわれる方々では、麻酔中にSVVなどの動的パラメータを低く保って管理しても(これ以上輸液してもSVやCOは上昇しないだろうという状態を目標とした輸液管理)、それが麻酔覚醒後の状態に対してもよいことなのか-つまり術中の輸液最適化が麻酔覚醒後の輸液最適化と本当に相関があるのか、という疑問が生じます。そのへんがよくわかっていないということが、もしかすると昨今のモニターによるGDTによって術後の予後が良い、いやこれまでの管理と変わらない、という分岐点になっているのかもしれません。
2012年11月6日火曜日
(麻) Nexfinでは、ショック患者の心拍出量測定は信頼出来ない、とする論文
Nexfinは、指先に装着したデバイスによって、無侵襲に血圧やstroke volume、cardiac output、systemic vascular resistanceなどを計測することができるモニターということです(BMEYEのホームページ参照)。ちょっと前のAnesthesiologyにも精度検証の論文が掲載されており、Q君が抄読会で担当しておりました。これはfree記事。
Noninvasive continuous arterial blood pressure monitoring with Nexfin®. Anesthesiology. 2012 May;116(5):1092-103. PMID: 22415387
そのNexfinについての論文。またしてもDr. Monnetが報告しています。
The estimation of cardiac output by the Nexfin device is of poor reliability for tracking the effects of a fluid challenge.
Critical Care 2012, 16:R212 PMID: 23107227
重症患者でNexfinが
・cardiac outputを予測できるかどうか
・輸液チャレンジ(生食500ml30分)に対してCOの変化を反映することができるか
の2点を、PiCCOで得られたデータと比較して検証しています。タイトル通り、どちらにおいてもNexfinはネガティブだったと結論しております。
・対象患者45人中、7人はNexfinで測定不能だった。
・残り38人中ノルエピネフリン投与患者は17人(45%)、量は0.4γ [四分位範囲:0.21-0.60]。
・ショックの分類:septic shock 33人、hypovolemic shock 5人
これまで、侵襲的モニターと同様にNexfinは信頼できるだろうと報告されていた論文では、手術室、人工呼吸やカテコールアミン投与終了後の心臓外科患者、CRT患者、エコー検査室、健康な人、が対象とされていました。ですが、今回対象となったショック患者においては、同様な結果を示すことができませんでした。それは恐らく敗血症による末梢組織の低灌流(ノルエピネフリン投与の有無にかかわらず)が影響しているのでしょうと考察しています。
***
最もデータを測りたい患者さんたちを対象とした本研究において、得られた値の信頼性が乏しかった、とはなんとも悲しいですが、そうした重症な患者さんたちでは侵襲的モニターや薬剤投与ラインが必要ですから、それほど悲観することはないんでしょうね。どちらかと言うと「もう侵襲的モニターいらないよ。でもちょっと心配」っていう状態の患者さんたちでの信頼性が高ければいいような気がします。
***
日曜日から鼻汁、咽頭痛、咳嗽が始まりました。
前回風邪が治ってから371日目でした。成人して以降、恐らく最長期間更新です。回復したらまたゼロから記録に挑戦します。
日本麻酔科学会総会用の演題。先週、ひとまず登録しました。締め切りまで3週間と少しありますので、修正を繰り返して完成させてみようかと。
Noninvasive continuous arterial blood pressure monitoring with Nexfin®. Anesthesiology. 2012 May;116(5):1092-103. PMID: 22415387
そのNexfinについての論文。またしてもDr. Monnetが報告しています。
The estimation of cardiac output by the Nexfin device is of poor reliability for tracking the effects of a fluid challenge.
Critical Care 2012, 16:R212 PMID: 23107227
重症患者でNexfinが
・cardiac outputを予測できるかどうか
・輸液チャレンジ(生食500ml30分)に対してCOの変化を反映することができるか
の2点を、PiCCOで得られたデータと比較して検証しています。タイトル通り、どちらにおいてもNexfinはネガティブだったと結論しております。
・対象患者45人中、7人はNexfinで測定不能だった。
・残り38人中ノルエピネフリン投与患者は17人(45%)、量は0.4γ [四分位範囲:0.21-0.60]。
・ショックの分類:septic shock 33人、hypovolemic shock 5人
これまで、侵襲的モニターと同様にNexfinは信頼できるだろうと報告されていた論文では、手術室、人工呼吸やカテコールアミン投与終了後の心臓外科患者、CRT患者、エコー検査室、健康な人、が対象とされていました。ですが、今回対象となったショック患者においては、同様な結果を示すことができませんでした。それは恐らく敗血症による末梢組織の低灌流(ノルエピネフリン投与の有無にかかわらず)が影響しているのでしょうと考察しています。
***
最もデータを測りたい患者さんたちを対象とした本研究において、得られた値の信頼性が乏しかった、とはなんとも悲しいですが、そうした重症な患者さんたちでは侵襲的モニターや薬剤投与ラインが必要ですから、それほど悲観することはないんでしょうね。どちらかと言うと「もう侵襲的モニターいらないよ。でもちょっと心配」っていう状態の患者さんたちでの信頼性が高ければいいような気がします。
***
日曜日から鼻汁、咽頭痛、咳嗽が始まりました。
前回風邪が治ってから371日目でした。成人して以降、恐らく最長期間更新です。回復したらまたゼロから記録に挑戦します。
日本麻酔科学会総会用の演題。先週、ひとまず登録しました。締め切りまで3週間と少しありますので、修正を繰り返して完成させてみようかと。
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