麻酔科専門医認定筆記試験を今日受験された先生方、本当にお疲れ様でした。大変難しい試験だったとお聞きしました。
今さらですし、受験生なら皆さんご存知のページでしょうが、後で自分がお世話になるかもしれないので貼っておきます。
研修医チャンネルの麻酔科専門医試験対策ページです。先日はじめて知りました。
***
学会発表から1週間以上経ってしまったので、これ以上記憶が風化する前に、今回学術的な面(こちらは発表に際して100篇弱の原著論文、レヴュー論文にお世話になりました)以外で、発表に際してお世話になった本を羅列しておきます。すみませんが著者の敬称は省略させて頂きます。実務経験数年と浅いながらも、自分よりもその道に詳しい先生方が大勢いらっしゃるであろう場所において、何かしらの講演をする必要がある先生のお役に立てれば…と思い記載する次第です。
1.すごい説得力/太田龍樹/知的生き方文庫
2.発表の技法/諏訪邦夫/講談社ブルーバックス
3.論理的にプレゼンする技/平林純/サイエンス・アイ新書
4.理系のための口頭発表術/ロバート・R・H・アンホルト/講談社ブルーバックス
5.「ひとり会議」の教科書/山崎拓巳/サンクチュアリ出版
6.プロ講師になる方法/安宅仁、石田一廣/PHP研究所
7.人は誰でも講師になれる/中谷彰宏/日本経済新聞出版社
8.学生・研究者のための使える!PowerPointスライドデザイン/宮野公樹/化学同人
これらのうち、最も役に立ったのは4です。その次が8です。後は人それぞれ好みが分かれそうですが、2は一読の価値はあると確信します。私が麻酔科医だからかもしれませんが…。
***
夏休みを終えるにあたり、学んだことを羅列しておきたいと思います。
・自分よりも素晴らしい才能をもっている人がたくさんいる。そしてその上絶対真似できないような努力を継続している人がたくさんいる(当たり前ですね)
・どんな人も想像力や気遣いは有限である
・素晴らしいものは確かに素晴らしいが、凡そ金額相応であり、私にはそれが心地よくないようだ
・水の中で体を動かすことは楽しいかもしれない
・もしかしたら自分の膝が快方に向かうかもしれない
・「モモ」は素晴らしい本だった
・「君は、こんなワクワクする世界を見ずに死ねるか!?」は興味深い本だった。多分大学生くらいが読むのが一番効能を期待できるだろうけれど、30過ぎの私でも発奮させられる内容だった
・ルソーの著作をもっと読んでみよう
・自分の居場所を客観的に認識して、自分が楽しめて、そして社会の役に立てる仕事を死ぬまでできることはきっとしあわせなことだろう
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2012年9月30日日曜日
2012年8月11日土曜日
(麻) anesthetic management for pneumonectomy - 肺全摘術の麻酔管理メモ
肺全摘術の麻酔についてです。
意外と情報が得られなかったので、次に担当するときに右往左往しないよう、そして今回の管理よりも向上できるよう、ここにメモ書きを残しておきます。
引用文献はCurrent Opinion in Anaesthesiology 2009, 22:31-37の「Update on anesthetic management for pneumonectomy」です。今の状況にあわない箇所もあるかもしれません。もし記載に大きな間違いがあったり、こうした方がもっと良いです、というのがあれば是非と教えて下さい。よろしくお願いいたします。
***
・30日以内死亡率5−13%(術後ALIは4%)
@術前検査:大きく分けて以下の3つが大事
1. lung mechanical function: FEV1 (ppo>40%)
2. cardiopulmonary reserve: VO2 max (>15ml/kg/min)、階段2階以上、6分間歩行SpO2<4%
3. pulmonary parenchymal function: DLCO (ppo>40%)、PaO2>60, PaCO2<45
*ppoFEV1%が…
注:この値は術前FEV1% × (1-%functional lung tissue removed/100) から求める
・>40%なら患者の諸々の状態良ければ手術室抜管、
・30-40%なら抜管考慮(運動耐容能、DLCO、V/Q scan、併存合併症などを考慮して)
・<30%ならゆっくり時間かけて抜管
@手術:後側方切開が標準。血管処置後に主気管支を切離。分泌物が貯留しないようになるべく中枢で切離する。air leak test後閉胸。ドレーンの陰圧を通常の葉切除術と同様に設定して行うと、縦隔が偏移して循環虚脱が起きる可能性がある。
@麻酔
・禁忌なければ硬膜外併用。
・輸血を考慮し大口径末梢ライン。もしくはCVC。
・動脈圧ライン
・肺全摘術後は右心室の後負荷が上昇(PAP↑、PVR↑)し、右室機能低下を起こすので注意
・分離肺換気:二腔換気用チューブ(DLT)でもブロッカーでも可能。左肺全摘なら右用DLTを使う。もしくは左用DLTないし左主気管支に気管支ブロッカーを入れて気管支切離直前に適切な位置に引くことでも管理可能。術前に相談しておく。
・輸液管理:24時間以内に3L以上の輸液投与で急性肺傷害の独立危険因子(Anesth Analg 2003; 97:1558-1565)。腎機能維持を考慮しつつ制限的輸液戦略がよいようである。
・そのため、血行動態維持、酸素供給維持のために昇圧薬併用を考慮
1. 輸液バランス20ml/kgを超えない
2. 初めの24時間で3Lを超える晶質液投与をしない
3. いわゆるthird space lossの補充は術中に行わない
4. 尿量0.5ml/kg/hは必要ない
5. 術後に組織血液灌流をを上げたいならば、輸液を負荷するよりも侵襲的モニター(注:PACとか?)を参考しつつ、昇圧薬を使用するのが好ましい。
・片肺換気中の呼吸器設定
一回換気量5-6ml/kg, PEEP5cmH2O, 最高気道内圧<35cmH2O, プラトー圧<25cmH2O
*稀だが閉胸後(直後、<24h)の心ヘルニアに注意。死亡率>50%。心膜が開いていると起こる可能性あり…CVP上昇、頻脈、低血圧、で気づく。発症したら緊急手術が必要。鑑別診断は血胸、肺塞栓、不適切な胸腔ドレーンによる縦隔偏位
意外と情報が得られなかったので、次に担当するときに右往左往しないよう、そして今回の管理よりも向上できるよう、ここにメモ書きを残しておきます。
引用文献はCurrent Opinion in Anaesthesiology 2009, 22:31-37の「Update on anesthetic management for pneumonectomy」です。今の状況にあわない箇所もあるかもしれません。もし記載に大きな間違いがあったり、こうした方がもっと良いです、というのがあれば是非と教えて下さい。よろしくお願いいたします。
***
・30日以内死亡率5−13%(術後ALIは4%)
@術前検査:大きく分けて以下の3つが大事
1. lung mechanical function: FEV1 (ppo>40%)
2. cardiopulmonary reserve: VO2 max (>15ml/kg/min)、階段2階以上、6分間歩行SpO2<4%
3. pulmonary parenchymal function: DLCO (ppo>40%)、PaO2>60, PaCO2<45
*ppoFEV1%が…
注:この値は術前FEV1% × (1-%functional lung tissue removed/100) から求める
・>40%なら患者の諸々の状態良ければ手術室抜管、
・30-40%なら抜管考慮(運動耐容能、DLCO、V/Q scan、併存合併症などを考慮して)
・<30%ならゆっくり時間かけて抜管
@手術:後側方切開が標準。血管処置後に主気管支を切離。分泌物が貯留しないようになるべく中枢で切離する。air leak test後閉胸。ドレーンの陰圧を通常の葉切除術と同様に設定して行うと、縦隔が偏移して循環虚脱が起きる可能性がある。
@麻酔
・禁忌なければ硬膜外併用。
・輸血を考慮し大口径末梢ライン。もしくはCVC。
・動脈圧ライン
・肺全摘術後は右心室の後負荷が上昇(PAP↑、PVR↑)し、右室機能低下を起こすので注意
・分離肺換気:二腔換気用チューブ(DLT)でもブロッカーでも可能。左肺全摘なら右用DLTを使う。もしくは左用DLTないし左主気管支に気管支ブロッカーを入れて気管支切離直前に適切な位置に引くことでも管理可能。術前に相談しておく。
・輸液管理:24時間以内に3L以上の輸液投与で急性肺傷害の独立危険因子(Anesth Analg 2003; 97:1558-1565)。腎機能維持を考慮しつつ制限的輸液戦略がよいようである。
・そのため、血行動態維持、酸素供給維持のために昇圧薬併用を考慮
1. 輸液バランス20ml/kgを超えない
2. 初めの24時間で3Lを超える晶質液投与をしない
3. いわゆるthird space lossの補充は術中に行わない
4. 尿量0.5ml/kg/hは必要ない
5. 術後に組織血液灌流をを上げたいならば、輸液を負荷するよりも侵襲的モニター(注:PACとか?)を参考しつつ、昇圧薬を使用するのが好ましい。
・片肺換気中の呼吸器設定
一回換気量5-6ml/kg, PEEP5cmH2O, 最高気道内圧<35cmH2O, プラトー圧<25cmH2O
*稀だが閉胸後(直後、<24h)の心ヘルニアに注意。死亡率>50%。心膜が開いていると起こる可能性あり…CVP上昇、頻脈、低血圧、で気づく。発症したら緊急手術が必要。鑑別診断は血胸、肺塞栓、不適切な胸腔ドレーンによる縦隔偏位
2012年6月30日土曜日
(本) 医療系iPad/ iPhoneアプリ本、読んでみました
偶然手にとって面白そうだったので購入。
当直の合間にパラパラ見てますが、眺めてるだけでも面白いです。海外だと血圧や血糖値が測れるアプリもあるんですね。初めて知りました。こちらの本のタイトルには「iPad」としか書かれてませんが、iPhone用のアプリも多数紹介されています。紹介アプリごとにiPad/ iPhoneどちらで手に入るかの表記もあります。ですのでiPhoneだけのユーザーさんにも役に立ちそうな1冊です。ヘヴィユーザーの方々には既知の情報も多いのかもしれませんが、ヘヴィユーザーではなくiPad使用歴(所持歴)2ヶ月な私には有用な1冊でした。
本当はこっちをお目当てに本屋さんに行ったのですが、発売日前日だったためか入荷されてませんでした。またの機会ということで。
***
医療系アプリ。今のところ、私のiPhoneに入れて実際に使ってるのはこれ位です。というか殆ど「AnestAssist」しか使ってません。あとは、小児の麻酔を担当する機会が少ないので「Pedi Safe」を時々見て、チューブのサイズとか薬液量を確認するくらいでしょうか。
もし他にも「これあると超便利ですよ~」というのがあったら是非とも教えてください。
因みに画面右上の「Anesthesia101」というアプリは「Laryngospasm」とか「Myasthenia Gravis」など、麻酔科医が出くわすだろう項目がずら~っと並んでて、症例提示→Q&A形式になっているというものです。ちょっとした隙間時間、移動時間での麻酔科専門医試験の口頭試問対策の一助くらいにはなるかもしれません(勿論これだけでは合格できないと思います)。英語なのでそれが難点とも利点とも言えそうです。私は電車で読んでたら酔っちゃいましたけど。
2011年10月18日火曜日
(麻) 周術期ACLSの簡単なまとめ
TEEとか末梢神経ブロックとか勿論大事なのですが、生死に関わるピンチのときに何も出来ないと麻酔科医のアイデンティティが大きく損なわれる気がします(TEEは勿論life threatening situationにもパワーを発揮しますが)。ピンチの際には下のまとめなんて見ている余裕は当然無く、頭より先に体を動かさねばなりません。鑑別診断リストなんて覚えようとしていたら覚えられませんが、瞬時に色々思いつかないと患者さんを永遠に失いかねません。
ちゃんと勉強しないとな…。
***
Anesthesiology. 2003 Aug;99(2):259-69.によると・・・
・非心臓手術で周術期に心停止を起こした症例を検討。
・1990から2000年の11年間、Mayoクリニックにて。
・518,294麻酔中223人が心停止。(4.3 per 10,000)
・対全麻では (7.8 per 10,000 during 1990-1992; 3.2 per 10,000 during 1998-2000)
・対局麻では(1.5 per 10,000)
・MAC(monitored anesthesia care)では (0.7 per 10,000)
・心停止後生存率は46.6%, 生存退院は34.5%.
・24人(0.5 per 10,000) は麻酔に直接原因のある心停止。
(つまり麻酔が原因は24/223人で心停止中10%弱)
・多変量解析では出血による心停止患者は生存退院率が有意に低い(P = 0.001).
・時間外(nonstandard working hours)心停止患者では生存率が低かった(P = 0.006)。
これは蘇生にかかわれる人出が足りないためであろう。
・心停止前に長期に低血圧が続く患者も生存率が低かった(P < 0.001).
・多くの心停止が麻酔関連原因ではなかった。麻酔関連心停止患者の多くは生存退院していた。
***
・心室性頻脈>150 bpmによる重篤な症状等があれば直ちに除細動する
@周術期にACLSを要す麻酔薬関連原因
・静脈麻酔薬過量投与
・吸入麻酔過量投与
・区域麻酔による高位交感神経ブロック
・局所麻酔薬による全身的毒性
・悪性高熱症
・薬剤投与エラー
@呼吸による原因
・低酸素血症
・急性気管支痙攣
・autoPEEP
@心血管系による原因
・迷走神経反射
・循環血液減少、出血性ショック
・緊張性気胸
・アナフィラキシー
・輸血に対する副作用
・高カリウム血症等の急激な電解質異常
・重度の肺高血圧
・腹腔内圧上昇
・ペースメーカー不全
・QT延長症候群
・急性冠症候群
・肺塞栓
・ガス塞栓
・眼球心臓反射
・電気けいれん療法
@オペ室での蘇生ポイント
・全麻下であれば患者の意識有無を呼びかけ確認する必要がない
・適切な人間にCPR開始を指示すること
・麻酔と手術を中止すること
・助けを呼ぶこと、除細動器をもってきてもらうこと
・挿管されてなければBMVを行い、その後挿管すること
・不用意にCPRを中止しない。脈拍触知よりもカプノグラフィの方が循環再開の鋭敏な指標となる
・換気は8-10回/分。100%酸素。
・全ての静脈ラインは全開にする
@以下は区域麻酔について
・区域麻酔中の心停止は1.8 per 10,000 patients (neuraxial)
・頻度は脊麻>硬麻 (2.9 vs. 0.9 per 10,000 ; P = 0.041) (Anesth Analg 2005;100:855-865).
@区域麻酔中の心停止治療
(注意:勿論下記だけでは全ての状況はカバーできない。局麻の過量投与や頻脈、ガス塞栓、産婦ではそれぞれの状況に応じて治療する必要あり)
・中止できる麻酔や鎮静薬は中止
・100%酸素で換気、挿管。
・症候性徐脈や脈なし10秒以上ではCPR開始。
・徐脈は1mgのアトロピンで治療
・1mg以上のアドレナリン静注で治療(0.1mg/kgまで)
・40単位のバゾプレッシン併用を考慮
@周術期PEA・心静止の鑑別診断(8H & 8T)
Hypoxia Trauma/hypovolemia (低酸素、外傷/循環血液減少)
Hypovolemia Tension Pneumothorax (循環血液減少、緊張性気胸)
Hyper-vagal Thrombosis of Coronary (迷走神経過緊張、冠動脈血栓)
Hydrogen Ion Tamponade (アシドーシス、タンポナーデ)
Hyperkalemia Thrombus in Pulmonary Artery (高カリウム血症、肺塞栓)
Malignant Hyperthermia Long QT syndrome (悪性高熱症、QT延長症候群)
Hypothermia Toxins (anaphylaxis) (低体温、薬物-アナフィラキシーなど)
Hypoglycemia Pulmonary HTN (低血糖、肺高血圧)
***
勿論、上記の記載は全てを網羅していません。臨床の問題に決まった答えは1つとしてなく、あくまでcase by caseです。
自分がこれまで治療に関わった、オペ室で心停止を起こした患者さんたちのことを、朧気に、しかしはっきりとシカゴで思い出します。
参考文献
Adapting ACLS to the Perioperative Period (Anesthesiology 2011 refresher course lecture summary)
ちゃんと勉強しないとな…。
***
Anesthesiology. 2003 Aug;99(2):259-69.によると・・・
・非心臓手術で周術期に心停止を起こした症例を検討。
・1990から2000年の11年間、Mayoクリニックにて。
・518,294麻酔中223人が心停止。(4.3 per 10,000)
・対全麻では (7.8 per 10,000 during 1990-1992; 3.2 per 10,000 during 1998-2000)
・対局麻では(1.5 per 10,000)
・MAC(monitored anesthesia care)では (0.7 per 10,000)
・心停止後生存率は46.6%, 生存退院は34.5%.
・24人(0.5 per 10,000) は麻酔に直接原因のある心停止。
(つまり麻酔が原因は24/223人で心停止中10%弱)
・多変量解析では出血による心停止患者は生存退院率が有意に低い(P = 0.001).
・時間外(nonstandard working hours)心停止患者では生存率が低かった(P = 0.006)。
これは蘇生にかかわれる人出が足りないためであろう。
・心停止前に長期に低血圧が続く患者も生存率が低かった(P < 0.001).
・多くの心停止が麻酔関連原因ではなかった。麻酔関連心停止患者の多くは生存退院していた。
***
・心室性頻脈>150 bpmによる重篤な症状等があれば直ちに除細動する
@周術期にACLSを要す麻酔薬関連原因
・静脈麻酔薬過量投与
・吸入麻酔過量投与
・区域麻酔による高位交感神経ブロック
・局所麻酔薬による全身的毒性
・悪性高熱症
・薬剤投与エラー
@呼吸による原因
・低酸素血症
・急性気管支痙攣
・autoPEEP
@心血管系による原因
・迷走神経反射
・循環血液減少、出血性ショック
・緊張性気胸
・アナフィラキシー
・輸血に対する副作用
・高カリウム血症等の急激な電解質異常
・重度の肺高血圧
・腹腔内圧上昇
・ペースメーカー不全
・QT延長症候群
・急性冠症候群
・肺塞栓
・ガス塞栓
・眼球心臓反射
・電気けいれん療法
@オペ室での蘇生ポイント
・全麻下であれば患者の意識有無を呼びかけ確認する必要がない
・適切な人間にCPR開始を指示すること
・麻酔と手術を中止すること
・助けを呼ぶこと、除細動器をもってきてもらうこと
・挿管されてなければBMVを行い、その後挿管すること
・不用意にCPRを中止しない。脈拍触知よりもカプノグラフィの方が循環再開の鋭敏な指標となる
・換気は8-10回/分。100%酸素。
・全ての静脈ラインは全開にする
@以下は区域麻酔について
・区域麻酔中の心停止は1.8 per 10,000 patients (neuraxial)
・頻度は脊麻>硬麻 (2.9 vs. 0.9 per 10,000 ; P = 0.041) (Anesth Analg 2005;100:855-865).
@区域麻酔中の心停止治療
(注意:勿論下記だけでは全ての状況はカバーできない。局麻の過量投与や頻脈、ガス塞栓、産婦ではそれぞれの状況に応じて治療する必要あり)
・中止できる麻酔や鎮静薬は中止
・100%酸素で換気、挿管。
・症候性徐脈や脈なし10秒以上ではCPR開始。
・徐脈は1mgのアトロピンで治療
・1mg以上のアドレナリン静注で治療(0.1mg/kgまで)
・40単位のバゾプレッシン併用を考慮
@周術期PEA・心静止の鑑別診断(8H & 8T)
Hypoxia Trauma/hypovolemia (低酸素、外傷/循環血液減少)
Hypovolemia Tension Pneumothorax (循環血液減少、緊張性気胸)
Hyper-vagal Thrombosis of Coronary (迷走神経過緊張、冠動脈血栓)
Hydrogen Ion Tamponade (アシドーシス、タンポナーデ)
Hyperkalemia Thrombus in Pulmonary Artery (高カリウム血症、肺塞栓)
Malignant Hyperthermia Long QT syndrome (悪性高熱症、QT延長症候群)
Hypothermia Toxins (anaphylaxis) (低体温、薬物-アナフィラキシーなど)
Hypoglycemia Pulmonary HTN (低血糖、肺高血圧)
***
勿論、上記の記載は全てを網羅していません。臨床の問題に決まった答えは1つとしてなく、あくまでcase by caseです。
自分がこれまで治療に関わった、オペ室で心停止を起こした患者さんたちのことを、朧気に、しかしはっきりとシカゴで思い出します。
参考文献
Adapting ACLS to the Perioperative Period (Anesthesiology 2011 refresher course lecture summary)
2011年10月16日日曜日
(麻) 麻酔科専門医認定試験・口頭と実技試験 ~ A homage to Prof. S
麻酔科専門医認定試験を受けた方であれば、「俺はどんな問題でも完璧に答えられるぜ」という一部の奇天烈な麻酔科医を除いて、み~んながお世話になったであろうwebサイトに最大限の敬意を払い、私の受験記を掲げてみたいと思います。
間違ったことを言っている箇所もありますが、可能なかぎり再現してみました。最早、記憶の彼方ではありますが。
***
12時40分に集まって以後私語厳禁。13時過ぎに誘導されてエレベーターで8階の会場へ。薄暗く長い廊下の左右に椅子が点々と置かれ、試験のお手伝いをしてくださる女性たちが各部屋の前に座っている。なんだかなぜだかいつかどこかでみた映画のワンシーンみたいだ、とぷちぷち感動して、なんだか「マトリックス」が見たくなってきたなぁ。と思っているうちに自分の椅子に誘導され着席する。
前情報通り、5分間の問題文読みとメモ記載。しかし、書くことがない。
「書ける」ことがない。
5分って意外に長い…。
部屋に通されると右に男性、左に女性の先生が座っている。
1問目
70歳の女性が転倒して大腿骨頚部骨折。20年来のリウマチ(RA)。大腿骨頭置換術予定になった。
A先生(以下A):問題文は読んだ?はい、じゃぁRAの方の麻酔上の問題点を挙げて下さい。
―(あ、もう始まってんのか)は、はい。ぺらぺら。(あれ、でもあんまり言うことが思い出せないや)
A:ステロイドの長期内服で注意することはなんですか。
―は、はい。(とステロイドの合併症を説明)
その後、環軸椎亜脱臼でどういう症状が出るのか、どうして出るのか、など質問。
A:はい、先生はどんな麻酔をしますか。
―私なら、抗凝固薬内服中などの禁忌がなければ、脊髄くも膜下麻酔を行います。
A:何をどれくらい使いますか
―等比重のプピバカイン(あぶね、マーカインって言いそうになった。一般名で答えなきゃ)を・・・2.4-2.8ml程度だと思います。Th10を目標に。(あ、穿刺部位も言ったほうがよかったかな…ん?もっといっぱい入れるのが好きな先生なのだろうか?そんな量でTh10まで行くか!って思ってんのかな?…表情からは全然わからない…)
A:どっち向きに?
―え、えぇと痛いので患側が天井側になるように…
A:じゃあこの方が抗凝固薬を飲んでいてね、先生がおっしゃるように脊麻ができないとします。挿管全麻でやるとして気道確保の方法を教えて下さい。
―私なら、経鼻ファイバー挿管で行います。(口が開けばAWSだけどなぁ…と思いつつ)
経鼻ファイバー挿管のやり方を教えてください。
―最初に鼻の中を麻酔します。4%リドカインとアドレナリンを混ぜて…
A:どのくらいの割合で混ぜるの
えーとリドカイン9mlにアドレナリンを1mlで10000倍にして…
A;えぇ、そんなに濃いの??それだと何倍になるの?
このあたりから離人感でいっぱいになる。あ、あれ、そんなにいれないぞ俺。
以下、何問か聴かれたけどこの時の離人感ですっかり失念する。
A:手術が終わってリカバリにいたらね、急に「胸が苦しい」って胸部苦悶感を訴え始めました。鑑別診断を挙げて下さい
―鑑別診断は
・肺塞栓
・気胸
・喘息発作
・ACS、急性冠症候群
・稀ですけど大動脈解離
あとは…麻酔中の出血過多や輸液量が少ないことによるhypovolemiaで血圧低下が原因かも知れません…あとは…
A:(言い淀んでいたら遮られて)はい、ではどう対応するか教えてください
―まずモニターを装着して酸素を投与開始します。救急カートを持ってきてもらいます。NIBPとSpO2と心電図、あれば12誘導ECGでバイタル確認します。取り敢えずのバイタルが保たれていればポータブルのエコー装置で肋間や剣状突起下から心臓の動きを観察します。右心系の負荷があるか、左室壁運動の極端な低下があればおそらく分かると思います。同時に採血でD-dimer、これは手術の影響もあるので高くなっていて役に立たないかも知れませんが、とトロポニンT値を測定します。その後に循環器内科のDrに連絡して診察をお願いすると思います。
A:じゃぁ以上です。(B先生に対して)じゃぁ先生の番ですね。
2問目
手術不能の進行期膵臓癌の治療のために疼痛コントロール目的に入院となった。
B先生(以下B):がんの痛みの分類を教えて下さい。
―(ちーん、はい終了。痛みの分類?そんなのありましたかな?取り敢えず知っているものを並べてみよ)
…体性痛、内臓痛、侵害受容性疼痛、神経因性疼痛……があります。………後はわかりません…
B:この癌の痛みの原因を教えて下さい。
―(え?何で痛いかって?神経を刺激してるからじゃないか。)えーと、腹腔神経叢に癌が浸潤しているのと…局所の圧迫なんかによる痛みが…考えられます。…脊椎浸潤等による骨の痛みもあるのかもしれません…(あぁ沈黙が痛い。痛い。もう帰りたい)
B:この方の痛みの治療をNSAIDsのロキソプロフェンで行うことになりました。NSAIDsの作用機序を答えてください。
―(作用機序!?あぁ、そんな基本的なことを聴かないで下さい)あ、・・・・・あの、こ、こ、COXじゃなかったシクロオキシゲナーゼを阻害してプロスタグランジンの産生を抑制して…炎症を抑えたり………します。
このあたりで、B先生の隣に座っていたA先生が自分の名札をいじくりはじめる。…あぁ採点する価値もないってこと?あぁ、もうだ、だめ?だ?
B:はい、ではチンツウノゴゲンソクヲオシエテクダサイ
―(え?あぁ名札に気を取られてよく聞き取れなかったぞ、ぁあでも聞き返すと減点されるかもしれない)は、はい。決まった時間で、鎮痛薬ラダーにそって、患者さんごとに、その上で患者さんごとにきめ細かい対応を、(…あれ、4つしかない…)、あれ4つしかありませんね。
(B苦笑):あと1つは何ですか?
―あと、1つは(あれ、おかしいな…ブログに書いたぞ…何で思い出せないんだろう……)、……すいません、わかりません。
B:ではそのWHOのチンツウノ3段階ラダーを教えてください。
―はい、(これは答えられた)
B:はい、ではこの方にモルヒネを始めたとします。初期に起こりうる副作用3つを上げて対策を教えてください
―吐き気が出ます。メトクロプラミド等で対応します。2つ目は便秘でこちらには酸化マグネシウムやセンナ等で対応します。3つ目は・・・(あぁ、またワカンナイや…もう本当に帰りたい……)・・・ねむけでしょうか・・・・・・?
B(やや笑いながら):じゃあそれにはどう対応しますか?
―え、え、えとメチルフェニデートを投与すると思いますが……(お願いですから相槌なり何なりうっていただけませんか?)…教科書にはそう書いていますが、実際にそうやっているのを見たことはありません(あぁ、これ絶対余計なこと言った)
B:緩和ケアはやったことおありですか?
―(これまでのグダグダ具合から、聴かなくてもお分かりでしょうに!)は、はい。3年ほど前にペインの研修は少しやりましたが…(だって末期がんの方でモルヒネで眠気が…っていうシチュエーションに遭遇したことはありませんのよ)
B:では接遇問題です。サトウタロウさん(だったっけ?)のお兄さんが、患者さんが入院になった経緯と治療方針について聴きたいということで部屋で待っています。では部屋に入るところから始めてください。
―(え、もう始めんの?患者さんの名前なんだっけ?もう忘れちゃったよ。)
…と思うと同時に、「これまでの質問に1つも自信を持って答えられなかった人間からどんな説明をこの方々はお聞きになりたいというのか???」と「???」がいっぱい出てきて、自分が何だか出来の悪いコメディの中に迷い込んだみたいで、腹の中で思いっきり笑ってしまったのですが、もう眼の前にサトウナントカさんのお兄様がいるわけで、今笑ってしまったら「絶対落ちる」と思いつつ椅子から立ち上がり、何とか平静を装って自己紹介とお辞儀)、
―「失礼ですが患者さんとの関係は…?」
A:兄です
―では失礼して座らせて頂きます。「こ、今回の…今回の入院は…ごにょごにょごにょ、たどたどたど、、、」と説明。自分の椅子と、神様のように感じられる試験官先生方との机+椅子まで微妙に遠く、この空虚な2m超の空間が病状説明にとても不似合いで、もうなんというか完全にしどろもどろで…。それでも最後の最後には「何か質問ございますか」と付け加える。
A:あのぅ、麻薬なんてやったら、寿命が縮まるって聴いたことあるんですけど?
―(…はぁ、もう。帰りたい。帰りたい。かえろ~かな~かえるのよそぉかな~、あぁさぶちゃん)
いえ、そんなことはございません(ございませんってなんだよ)、ぺらぺら……。
(こりゃ完全に駄目だ…あぁでも、これは前情報通りの感情だ…こんな感情も再現されるなんて、なんて滑稽なんだろう)
A:はい、では以上です。お疲れ様でした。
―(もうやけくそだ。最後ぐらい元気に出ていこっと)どうもありがとうございました!!!
あーあ、あの部屋は試験官の先生以外に魔物(それも凄く邪悪な魔物じゃなくてちょっと小賢しい感じの)が住んでたな。まぁ終わったんだからもういいや。何故かScorpionsの「In Trance」のギターソロが頭の中でリフレインしつつ部屋を出て、1人反省会をする余裕も勿論ないままに実技試験の部屋へ入るよう誘導される。あいうぇいかっぴんざもーにん…あぁクラウスマイネ…私が生まれる前に出たアルバムとそのタイトルトラック。あぁ、今はどうでもいいことなのに。
…。
実技試験の部屋に入ると、試験官の先生のうち1人は、講演や雑誌でお名前を存じ上げている先生だったので(といっても、勿論、先方は私なんぞをご存じない)、なぜかちょっと気が楽になる。
C先生(以下C):口頭試験はできましたか?はい。じゃーまずそこに座って下さい。
まず最初の設問ですが…、
ショウカタイガンノシュジュツヲザイデオコナウノデスガコノマスイカンリノケツアツカンリノチュウイテンヲフタツオシエテクダサイ。
は?
なんですって?
これはさっきの部屋の悪夢の続きか???
しかし、いきなり聞き返して退場させられたりして…いきなり減点されたりして…。
あぁ、ちょっとまって下さい。日本語変換しますので…。
松果体癌の手術を座位で 行うのですが、この麻酔管理の血圧管理の注意点を2つ教えてください…
??
…あ、問題の意味がわかった!
でも、何答えりゃいいんだ??
―座位ですので、動脈圧ラインの基準を心臓の高さにします。それと脳の灌流圧がモニタの値より座位の分、低くなることが予想されますので、血圧低下に十分注意して管理いたします。(うーん、これしか思いつかないや…)
C:はい、では動脈圧ラインで管理するということですね。そうこうしている手術が始まって、しばらくしたら、突然ETCO2とSpO2が下がりました!(お、きたな静脈空気塞栓!!!!!)何しますか?
―血圧心電図バイタルを確認し、純酸素にしつつ術者に空気塞栓の可能性を告げて手を一度ストップしてもらいます。術野が乾いていたら生食等満たしてもらいます。そしてヘッドダウンにして、肺動脈に空気がこれ以上行かないように…3点品固定されてるでしょうから難しいかも知れませんが、可能ならば左側臥位にする、もしくは、ベッドをローテーションします。エアを見るために挿入できればTEEを入れ(脳外科手術の途中で入れたことなんて一度もねーぜ)、後は空気を吸引するために内頸・・・・いや術野と重なって覆布があって難しいでしょうから…大腿静脈からCVCを挿入してエア抜きを試みます。また循環破綻していたらカテコールアミンの投与経路とします。
C:はい、じゃぁこの中から(と、TEEの画像が6枚示されたA4の紙を出される)、空気塞栓を診断するためのviewを2つ選んで下さい!!
―はい、えーと、fと(普通のbicaval view)……あとaです(four chamber view)。(その他は左室60°、90°、135°経胃左室短軸像だった気がする)
C:はい、じゃぁCVC入れよう。研修医に教えるつもりでやってみて下さい。
と右首の模型に対してエコーガイド下で入れる。D先生(以下D)にエコー持っててもらえるなんて!
―まず軽度ヘッドダウンにして首を左に軽く回旋します。(エコーで血管を描出する)ここにある血管に…
C:血管の名前を教えてください
―はい、内頸静脈と総頸動脈です(どっかで読んだな。ここでは「内頸静脈」、と「総頸動脈」ときちんと血管の名称を言えることがポイントだったな…ようやく調子が出てきたぞ)。
その後はCVCを交差法で穿刺して、ガイドワイヤーを挿入して、そのワイヤーが血管内に入っていることをエコーで確認するところまでで終了。
D:はい、では次の設問に行きます。Th4の脊髄損傷の人が仙骨部褥瘡の手術を腹臥位で行う予定になりました。胸腰椎の後方固定術をしています。首も伸展できません。さぁ、経鼻ファイバー挿管を「研修医に教えるつもりで」やってみてください。
―(また経鼻ファイバーか…)まずフェンタニルで鎮静、患者さんの状態をみつつミダゾラムかプロポフォールをごく少量ずつ使用します。舌根沈下しないよう細心の注意を払いながら(って患者さんが起きているのに研修医に説明しながらやらないよ、しかもなんだ、この異様な威圧感の研修医は)。鼻の麻酔はリドカイン+アドレナリンで、消毒はポピドンヨードでします。あと、口に中をリドカインスプレーで消毒、なるべく奥のほうまで…。輪状甲状間膜が触れれば、そこから23G針で局所麻酔薬を気管内に投与します。その後、鼻から細めのチューブを…男性なら内径6.5mm程度でしょうか……をじんわりと進めていきます。無理やり突っ込むと粘膜下に迷入したりしますので…(と言っているそばからチューブが進まなくなる)。
「これはちょっと狭いので左側の鼻から・・・」とやろうとするとDが手を出してきて「この模型、ちょっと抵抗あるんですよね」とゴリゴリすすめる。(げげ!!鼻血がでるよ~~)
D:はい、そのあとはどうするの?
―え、ええと12,3cm進めたらチューブの中にファイバーを通して…声門見えてきたらサイドポートから局麻を再度噴霧します。そして吸気に合わせて声門を通過して気管分岐部まで速やかに入れて…チューブを進めます。この時声門周囲で引っかかって抵抗があることがあるので無理せず…
D:ひっかかったらどうするの
―(あ、やっぱり突っ込まれた。余計なこと言わなきゃよかった)じんわりとねじりながら挿入します。もし開口十分ならば口からエアウェイスコープを入れて、声門を観察してどこで引っかかってるのか見ます。無理な力が声門にかかっていないことを確認しつつ挿入します。気管分岐部の上3-4cm程度のあたりまでチューブを挿入できたらプロポフォール100mg程度を急速静注して眠って頂きます。(そのあとはアンビューで換気確認して終了…と思ったら胸が上がらない)
D:カフ入ってないよ
―(あぁ、そうか)はい、すいません(と、5ml入れる)
D:片肺しか上がってないよ
―え、…あ、そうですね…ではもう一度ファイバーで気管チューブの深さを調節します
D:あぁ、もういいです。次の問題に行きます。
はい、ではそれで体位変換です。腹臥位にするときの注意点を教えて下さい。
―(あぁ、もしかしてこれが過去問にあった「体位変換」ってやつなのかな…注意点って言ったってなぁ…と)眼球障害やライン類の混線誤抜去、気管チューブ誤抜去、頚椎と体のアラインメントを注意すること、純酸素で換気しておくこと、褥瘡にならないように、等々を説明。ここは無難にクリアしたと思われる。
D:はい、そして手術がこのように進行して(と紙にプリントされた麻酔チャートを見せられる)…セボとレミフェンタニル0.05γでずっと落ち着いてますね。ここで血圧がガーンと上がって徐脈になっています。これはなーんでだ?
―脊髄損傷に伴う交感神経の異常反応です。
D:それをなんていうの?
―うーんと、うーん・・・・・・(ヒントください?ダメですよね?)・・・異常なんとか・・・異常・・・うーん、思い出せません。
D:先生のいわんとすることはよくわかるんだけどね、単語があるでしょ。
―……思い出せません。
D:はい、「autonomic hyperreflexia」でした。では次の設問です。
―(「え、まだやるんですか?!」と喉から出かかりましたがぐっとこらえて)はい。
D:麻酔が終わってよっこいしょ、と仰臥位にして麻酔を覚ます段階でこうなりました、と除細動器モニターにピ~~と1本の横線。
C:はい、診断名は?
―エーシストール、心「静」止です。
C:じゃぁ研修医に教えるつもりで対応してください。
―挿管されてるんですよね?(C頷く)まず100%酸素にして8-10回/minの呼吸状態にするよう指示します。そして心マを開始します。人を集めます。救急カートも。
(以下実際に心マしながら)毎分100回かそれ以上で、剣状突起から2横指上を垂直に5cm押します。押したらしっかり戻すことが重要です。…疲れるとマッサージが浅くなるので2分で交代します(あぁ、それはどうでもいいや、…いつまで心マしてればいいんだ、と試験官をチラ見すると黙っている。あぁ指示を出すのね…)。…静脈路があるので、アドレナリンを1mg静注するよう指示します。(ああ、20mlの生食で後押し、って言うの忘れた)で2分は心マを続けます。
D:はい、そしたらこうなりました。
―VFです。直ちに除細動します。
D:じゃぁ研修医が心マ引き継ぎますから除細動器の操作して下さい。
―2相性ですよね?(と確認してから)200Jにセットします。パッドを胸に当てて「充電してください」と指示して皆離れてくださいと言って放電します(実際にやる。熱量は大分低い状態にして)。ちらっと心電図波形確認して、また心マ再開してもらいます。
D:はい、ではこれで終了です。
***
ということで、文字に起こすと非常に長くなりましたが。
実技試験をまとめると以下のようになりました。
・坐位の血圧モニタリングの注意点(口頭で)
・坐位の空気塞栓時の対応(口頭で)
・TEEの適切なview選択問題(紙を見て6画像から2つ選ぶ)
・CVC(実技。右内頸静脈からエコー下で。但しエコーなしでもいいみたいでした)
・awake経鼻ファイバー挿管(実技)
・腹臥位への体位変換時の注意点(口頭で)
・脊髄損傷のautonomic hyperreflexia(口頭で)
・挿管された状態でのACLS(実技。ガイドライン2005か2010にするかは問われなかった)
***
ちなみに実技試験は、下のようなパタンもあったようです(教えてくださった方に感謝します)。
1.硬膜外麻酔
腹腔鏡下肝切除。気腹後に血圧上昇の原因。
実際の手技。
2.内頸静脈からのCVC留置
大動脈弁閉鎖不全兼狭窄症。この疾患になりやすい原因は?
心停止させる手順は?
3.体位変換後の心停止でACLS
基本的なACLS。しかししつこく、研修医と看護師が暇そうにしてるよ〜、とつっこまれました。
***
以下、試験全体について、イチ受験生としての意見を書いてみます。
・口頭試験
何を答えても、試験官のリアクションらしいリアクションはなく、また、誘導らしい誘導も皆無でした。「合格させてあげよう」という意思は全く感じられませんでした。
設問が2つしかないため、自分が苦手なものにあたってしまうと容赦なく落とされる印象をもちました。筆記試験対策は皆さん一生懸命されると思いますが、筆記試験よりも口頭試験の合格率が低い、という事実を受け止めて対策をする必要があると感じました。
・実技試験
「硬膜外麻酔をして下さい」とか「CVCを入れましょう」とか、実技実技、と細切れにされた設問形式の試験を想像していたので、ある程度の臨床ストーリーにのっかった問題形式に少なからず戸惑ったのですが、内容自体は至極普通だったと思います。質問量が多かったような気がしますが、それは逆に色々聞かれれば満点は取れないけれど、合格点には近づく可能性が高くなりそうです。
毎日研修医に説明しながら麻酔をされているドクタであれば、過去問の出題さえ抑えておけば問題ないと思います。
・筆記試験
矢張り過去問をしっかりとマスタしておくことが何よりも重要だったと思います。計算問題も捨てない方がいいでしょう。同じ問題が出たらラッキーと思えるくらいには解いたほうがよい。今年は過去問にある計算問題で、数字だけを変えた問題が複数出題されていました。また、B問題では50問中8問程度が計算して回答を出す出題となっていました。計算問題を全部ドブに捨てれば最高でも42/50問しか得点できません。計算問題以外の設問でしっかり得点できればよいですが、ちょっと捻られた問題ばかりで、受験中にどんどん絶望的な気分になってきます。そうなると、本来取れる筈だった問題ですら誤回答を選択してしまう可能性が出てきます。「過去問を何回解いても同じ問題間違えるよ」と思ってげんなりするかも知れませんが、本番では、その「何回も間違えた問題」が出る可能性が十分あります。だから過去問の答えを覚えておいて、本番では「あぁ、これは何回か間違えたな…。でも数字が変わってるぞ。ということは…」というくらいにするためには、直前の勉強だけでは(私の記憶力では)正解にたどり着けなかったと思います。
聴くところによると、1年前から試験勉強していた方もいたようです。ですが、本当にそれくらいやった方が賢明かもしれません。自分の精神的安定のために、かもしれませんが。試験前に大動脈解離とか臓器移植の麻酔を緊急でかけるようなことも、まま、あるでしょうから、試験直前の追い込みを過度に期待しないほうが賢明です。働きながら勉強しなくてはならない、ということを忘れない方がよいと考えます。
ネット上には麻酔科専門医試験が割と簡単に通る試験であるかのような文章も見られますが、それは優秀な頭脳の持ち主のコメントだと疑った方が良いです。また、合格した専門医の方々の話も聴くでしょうけれど(例:試験前1週間しか勉強しなかったよ)、それも信用しない方が良いです。いかに少ない勉強時間で合格するか、という話は、自慢話としては非常によいのですが、「何を勉強すればいいですか」と人に聞くようなレベルの人(つまり私ですが)には、得るものがありません。
少なくとも私は凡庸な脳しか持ち合わせていないので、かけた時間がそのまま試験の点数に反映されたのではないか…という感触を持っています。医師国家試験以降、一回も受験勉強していない方は、特に気をつけた方がよい試験だと思います。
という、私のような若干悲観的なコメントと、上記の賢い先生方の意見を、それぞれ自分のレベルに合わせて取り込んだ上で、受験するのがよいのではないでしょうか、と思います。
備考ですが、試験を受けるときの服装は、スーツ(ネクタイとジャケットも着用)の人が多かったです。私は心マをする時に邪魔だと思い、友人の助言に従って、スラックス+ワイシャツという、ノーネクタイ、ノージャケットのスタイルで行きました。それで試験官の心象が悪くなったようには思えませんでした。ただ受験前に待機する私語厳禁の軟禁部屋は少し寒いかも知れませんので、人によってはその対応をしたほうが良いと思いました。私は待機者の中では2グループ目に呼ばれたので、待ち時間はそれほどではありませんでしたが、もっと長く待つ場合もあるので、冷え性な方、沈黙に耐えられない方はその対策をした方が良いでしょう。
これで今回の試験について書きたいことは概ね書いたので、暫く(金輪際?)この話題には触れないことにしようと思います。
間違ったことを言っている箇所もありますが、可能なかぎり再現してみました。最早、記憶の彼方ではありますが。
***
12時40分に集まって以後私語厳禁。13時過ぎに誘導されてエレベーターで8階の会場へ。薄暗く長い廊下の左右に椅子が点々と置かれ、試験のお手伝いをしてくださる女性たちが各部屋の前に座っている。なんだかなぜだかいつかどこかでみた映画のワンシーンみたいだ、とぷちぷち感動して、なんだか「マトリックス」が見たくなってきたなぁ。と思っているうちに自分の椅子に誘導され着席する。
前情報通り、5分間の問題文読みとメモ記載。しかし、書くことがない。
「書ける」ことがない。
5分って意外に長い…。
部屋に通されると右に男性、左に女性の先生が座っている。
1問目
70歳の女性が転倒して大腿骨頚部骨折。20年来のリウマチ(RA)。大腿骨頭置換術予定になった。
A先生(以下A):問題文は読んだ?はい、じゃぁRAの方の麻酔上の問題点を挙げて下さい。
―(あ、もう始まってんのか)は、はい。ぺらぺら。(あれ、でもあんまり言うことが思い出せないや)
A:ステロイドの長期内服で注意することはなんですか。
―は、はい。(とステロイドの合併症を説明)
その後、環軸椎亜脱臼でどういう症状が出るのか、どうして出るのか、など質問。
A:はい、先生はどんな麻酔をしますか。
―私なら、抗凝固薬内服中などの禁忌がなければ、脊髄くも膜下麻酔を行います。
A:何をどれくらい使いますか
―等比重のプピバカイン(あぶね、マーカインって言いそうになった。一般名で答えなきゃ)を・・・2.4-2.8ml程度だと思います。Th10を目標に。(あ、穿刺部位も言ったほうがよかったかな…ん?もっといっぱい入れるのが好きな先生なのだろうか?そんな量でTh10まで行くか!って思ってんのかな?…表情からは全然わからない…)
A:どっち向きに?
―え、えぇと痛いので患側が天井側になるように…
A:じゃあこの方が抗凝固薬を飲んでいてね、先生がおっしゃるように脊麻ができないとします。挿管全麻でやるとして気道確保の方法を教えて下さい。
―私なら、経鼻ファイバー挿管で行います。(口が開けばAWSだけどなぁ…と思いつつ)
経鼻ファイバー挿管のやり方を教えてください。
―最初に鼻の中を麻酔します。4%リドカインとアドレナリンを混ぜて…
A:どのくらいの割合で混ぜるの
えーとリドカイン9mlにアドレナリンを1mlで10000倍にして…
A;えぇ、そんなに濃いの??それだと何倍になるの?
このあたりから離人感でいっぱいになる。あ、あれ、そんなにいれないぞ俺。
以下、何問か聴かれたけどこの時の離人感ですっかり失念する。
A:手術が終わってリカバリにいたらね、急に「胸が苦しい」って胸部苦悶感を訴え始めました。鑑別診断を挙げて下さい
―鑑別診断は
・肺塞栓
・気胸
・喘息発作
・ACS、急性冠症候群
・稀ですけど大動脈解離
あとは…麻酔中の出血過多や輸液量が少ないことによるhypovolemiaで血圧低下が原因かも知れません…あとは…
A:(言い淀んでいたら遮られて)はい、ではどう対応するか教えてください
―まずモニターを装着して酸素を投与開始します。救急カートを持ってきてもらいます。NIBPとSpO2と心電図、あれば12誘導ECGでバイタル確認します。取り敢えずのバイタルが保たれていればポータブルのエコー装置で肋間や剣状突起下から心臓の動きを観察します。右心系の負荷があるか、左室壁運動の極端な低下があればおそらく分かると思います。同時に採血でD-dimer、これは手術の影響もあるので高くなっていて役に立たないかも知れませんが、とトロポニンT値を測定します。その後に循環器内科のDrに連絡して診察をお願いすると思います。
A:じゃぁ以上です。(B先生に対して)じゃぁ先生の番ですね。
2問目
手術不能の進行期膵臓癌の治療のために疼痛コントロール目的に入院となった。
B先生(以下B):がんの痛みの分類を教えて下さい。
―(ちーん、はい終了。痛みの分類?そんなのありましたかな?取り敢えず知っているものを並べてみよ)
…体性痛、内臓痛、侵害受容性疼痛、神経因性疼痛……があります。………後はわかりません…
B:この癌の痛みの原因を教えて下さい。
―(え?何で痛いかって?神経を刺激してるからじゃないか。)えーと、腹腔神経叢に癌が浸潤しているのと…局所の圧迫なんかによる痛みが…考えられます。…脊椎浸潤等による骨の痛みもあるのかもしれません…(あぁ沈黙が痛い。痛い。もう帰りたい)
B:この方の痛みの治療をNSAIDsのロキソプロフェンで行うことになりました。NSAIDsの作用機序を答えてください。
―(作用機序!?あぁ、そんな基本的なことを聴かないで下さい)あ、・・・・・あの、こ、こ、COXじゃなかったシクロオキシゲナーゼを阻害してプロスタグランジンの産生を抑制して…炎症を抑えたり………します。
このあたりで、B先生の隣に座っていたA先生が自分の名札をいじくりはじめる。…あぁ採点する価値もないってこと?あぁ、もうだ、だめ?だ?
B:はい、ではチンツウノゴゲンソクヲオシエテクダサイ
―(え?あぁ名札に気を取られてよく聞き取れなかったぞ、ぁあでも聞き返すと減点されるかもしれない)は、はい。決まった時間で、鎮痛薬ラダーにそって、患者さんごとに、その上で患者さんごとにきめ細かい対応を、(…あれ、4つしかない…)、あれ4つしかありませんね。
(B苦笑):あと1つは何ですか?
―あと、1つは(あれ、おかしいな…ブログに書いたぞ…何で思い出せないんだろう……)、……すいません、わかりません。
B:ではそのWHOのチンツウノ3段階ラダーを教えてください。
―はい、(これは答えられた)
B:はい、ではこの方にモルヒネを始めたとします。初期に起こりうる副作用3つを上げて対策を教えてください
―吐き気が出ます。メトクロプラミド等で対応します。2つ目は便秘でこちらには酸化マグネシウムやセンナ等で対応します。3つ目は・・・(あぁ、またワカンナイや…もう本当に帰りたい……)・・・ねむけでしょうか・・・・・・?
B(やや笑いながら):じゃあそれにはどう対応しますか?
―え、え、えとメチルフェニデートを投与すると思いますが……(お願いですから相槌なり何なりうっていただけませんか?)…教科書にはそう書いていますが、実際にそうやっているのを見たことはありません(あぁ、これ絶対余計なこと言った)
B:緩和ケアはやったことおありですか?
―(これまでのグダグダ具合から、聴かなくてもお分かりでしょうに!)は、はい。3年ほど前にペインの研修は少しやりましたが…(だって末期がんの方でモルヒネで眠気が…っていうシチュエーションに遭遇したことはありませんのよ)
B:では接遇問題です。サトウタロウさん(だったっけ?)のお兄さんが、患者さんが入院になった経緯と治療方針について聴きたいということで部屋で待っています。では部屋に入るところから始めてください。
―(え、もう始めんの?患者さんの名前なんだっけ?もう忘れちゃったよ。)
…と思うと同時に、「これまでの質問に1つも自信を持って答えられなかった人間からどんな説明をこの方々はお聞きになりたいというのか???」と「???」がいっぱい出てきて、自分が何だか出来の悪いコメディの中に迷い込んだみたいで、腹の中で思いっきり笑ってしまったのですが、もう眼の前にサトウナントカさんのお兄様がいるわけで、今笑ってしまったら「絶対落ちる」と思いつつ椅子から立ち上がり、何とか平静を装って自己紹介とお辞儀)、
―「失礼ですが患者さんとの関係は…?」
A:兄です
―では失礼して座らせて頂きます。「こ、今回の…今回の入院は…ごにょごにょごにょ、たどたどたど、、、」と説明。自分の椅子と、神様のように感じられる試験官先生方との机+椅子まで微妙に遠く、この空虚な2m超の空間が病状説明にとても不似合いで、もうなんというか完全にしどろもどろで…。それでも最後の最後には「何か質問ございますか」と付け加える。
A:あのぅ、麻薬なんてやったら、寿命が縮まるって聴いたことあるんですけど?
―(…はぁ、もう。帰りたい。帰りたい。かえろ~かな~かえるのよそぉかな~、あぁさぶちゃん)
いえ、そんなことはございません(ございませんってなんだよ)、ぺらぺら……。
(こりゃ完全に駄目だ…あぁでも、これは前情報通りの感情だ…こんな感情も再現されるなんて、なんて滑稽なんだろう)
A:はい、では以上です。お疲れ様でした。
―(もうやけくそだ。最後ぐらい元気に出ていこっと)どうもありがとうございました!!!
あーあ、あの部屋は試験官の先生以外に魔物(それも凄く邪悪な魔物じゃなくてちょっと小賢しい感じの)が住んでたな。まぁ終わったんだからもういいや。何故かScorpionsの「In Trance」のギターソロが頭の中でリフレインしつつ部屋を出て、1人反省会をする余裕も勿論ないままに実技試験の部屋へ入るよう誘導される。あいうぇいかっぴんざもーにん…あぁクラウスマイネ…私が生まれる前に出たアルバムとそのタイトルトラック。あぁ、今はどうでもいいことなのに。
…。
実技試験の部屋に入ると、試験官の先生のうち1人は、講演や雑誌でお名前を存じ上げている先生だったので(といっても、勿論、先方は私なんぞをご存じない)、なぜかちょっと気が楽になる。
C先生(以下C):口頭試験はできましたか?はい。じゃーまずそこに座って下さい。
まず最初の設問ですが…、
ショウカタイガンノシュジュツヲザイデオコナウノデスガコノマスイカンリノケツアツカンリノチュウイテンヲフタツオシエテクダサイ。
は?
なんですって?
これはさっきの部屋の悪夢の続きか???
しかし、いきなり聞き返して退場させられたりして…いきなり減点されたりして…。
あぁ、ちょっとまって下さい。日本語変換しますので…。
松果体癌の手術を座位で 行うのですが、この麻酔管理の血圧管理の注意点を2つ教えてください…
??
…あ、問題の意味がわかった!
でも、何答えりゃいいんだ??
―座位ですので、動脈圧ラインの基準を心臓の高さにします。それと脳の灌流圧がモニタの値より座位の分、低くなることが予想されますので、血圧低下に十分注意して管理いたします。(うーん、これしか思いつかないや…)
C:はい、では動脈圧ラインで管理するということですね。そうこうしている手術が始まって、しばらくしたら、突然ETCO2とSpO2が下がりました!(お、きたな静脈空気塞栓!!!!!)何しますか?
―血圧心電図バイタルを確認し、純酸素にしつつ術者に空気塞栓の可能性を告げて手を一度ストップしてもらいます。術野が乾いていたら生食等満たしてもらいます。そしてヘッドダウンにして、肺動脈に空気がこれ以上行かないように…3点品固定されてるでしょうから難しいかも知れませんが、可能ならば左側臥位にする、もしくは、ベッドをローテーションします。エアを見るために挿入できればTEEを入れ(脳外科手術の途中で入れたことなんて一度もねーぜ)、後は空気を吸引するために内頸・・・・いや術野と重なって覆布があって難しいでしょうから…大腿静脈からCVCを挿入してエア抜きを試みます。また循環破綻していたらカテコールアミンの投与経路とします。
C:はい、じゃぁこの中から(と、TEEの画像が6枚示されたA4の紙を出される)、空気塞栓を診断するためのviewを2つ選んで下さい!!
―はい、えーと、fと(普通のbicaval view)……あとaです(four chamber view)。(その他は左室60°、90°、135°経胃左室短軸像だった気がする)
C:はい、じゃぁCVC入れよう。研修医に教えるつもりでやってみて下さい。
と右首の模型に対してエコーガイド下で入れる。D先生(以下D)にエコー持っててもらえるなんて!
―まず軽度ヘッドダウンにして首を左に軽く回旋します。(エコーで血管を描出する)ここにある血管に…
C:血管の名前を教えてください
―はい、内頸静脈と総頸動脈です(どっかで読んだな。ここでは「内頸静脈」、と「総頸動脈」ときちんと血管の名称を言えることがポイントだったな…ようやく調子が出てきたぞ)。
その後はCVCを交差法で穿刺して、ガイドワイヤーを挿入して、そのワイヤーが血管内に入っていることをエコーで確認するところまでで終了。
D:はい、では次の設問に行きます。Th4の脊髄損傷の人が仙骨部褥瘡の手術を腹臥位で行う予定になりました。胸腰椎の後方固定術をしています。首も伸展できません。さぁ、経鼻ファイバー挿管を「研修医に教えるつもりで」やってみてください。
―(また経鼻ファイバーか…)まずフェンタニルで鎮静、患者さんの状態をみつつミダゾラムかプロポフォールをごく少量ずつ使用します。舌根沈下しないよう細心の注意を払いながら(って患者さんが起きているのに研修医に説明しながらやらないよ、しかもなんだ、この異様な威圧感の研修医は)。鼻の麻酔はリドカイン+アドレナリンで、消毒はポピドンヨードでします。あと、口に中をリドカインスプレーで消毒、なるべく奥のほうまで…。輪状甲状間膜が触れれば、そこから23G針で局所麻酔薬を気管内に投与します。その後、鼻から細めのチューブを…男性なら内径6.5mm程度でしょうか……をじんわりと進めていきます。無理やり突っ込むと粘膜下に迷入したりしますので…(と言っているそばからチューブが進まなくなる)。
「これはちょっと狭いので左側の鼻から・・・」とやろうとするとDが手を出してきて「この模型、ちょっと抵抗あるんですよね」とゴリゴリすすめる。(げげ!!鼻血がでるよ~~)
D:はい、そのあとはどうするの?
―え、ええと12,3cm進めたらチューブの中にファイバーを通して…声門見えてきたらサイドポートから局麻を再度噴霧します。そして吸気に合わせて声門を通過して気管分岐部まで速やかに入れて…チューブを進めます。この時声門周囲で引っかかって抵抗があることがあるので無理せず…
D:ひっかかったらどうするの
―(あ、やっぱり突っ込まれた。余計なこと言わなきゃよかった)じんわりとねじりながら挿入します。もし開口十分ならば口からエアウェイスコープを入れて、声門を観察してどこで引っかかってるのか見ます。無理な力が声門にかかっていないことを確認しつつ挿入します。気管分岐部の上3-4cm程度のあたりまでチューブを挿入できたらプロポフォール100mg程度を急速静注して眠って頂きます。(そのあとはアンビューで換気確認して終了…と思ったら胸が上がらない)
D:カフ入ってないよ
―(あぁ、そうか)はい、すいません(と、5ml入れる)
D:片肺しか上がってないよ
―え、…あ、そうですね…ではもう一度ファイバーで気管チューブの深さを調節します
D:あぁ、もういいです。次の問題に行きます。
はい、ではそれで体位変換です。腹臥位にするときの注意点を教えて下さい。
―(あぁ、もしかしてこれが過去問にあった「体位変換」ってやつなのかな…注意点って言ったってなぁ…と)眼球障害やライン類の混線誤抜去、気管チューブ誤抜去、頚椎と体のアラインメントを注意すること、純酸素で換気しておくこと、褥瘡にならないように、等々を説明。ここは無難にクリアしたと思われる。
D:はい、そして手術がこのように進行して(と紙にプリントされた麻酔チャートを見せられる)…セボとレミフェンタニル0.05γでずっと落ち着いてますね。ここで血圧がガーンと上がって徐脈になっています。これはなーんでだ?
―脊髄損傷に伴う交感神経の異常反応です。
D:それをなんていうの?
―うーんと、うーん・・・・・・(ヒントください?ダメですよね?)・・・異常なんとか・・・異常・・・うーん、思い出せません。
D:先生のいわんとすることはよくわかるんだけどね、単語があるでしょ。
―……思い出せません。
D:はい、「autonomic hyperreflexia」でした。では次の設問です。
―(「え、まだやるんですか?!」と喉から出かかりましたがぐっとこらえて)はい。
D:麻酔が終わってよっこいしょ、と仰臥位にして麻酔を覚ます段階でこうなりました、と除細動器モニターにピ~~と1本の横線。
C:はい、診断名は?
―エーシストール、心「静」止です。
C:じゃぁ研修医に教えるつもりで対応してください。
―挿管されてるんですよね?(C頷く)まず100%酸素にして8-10回/minの呼吸状態にするよう指示します。そして心マを開始します。人を集めます。救急カートも。
(以下実際に心マしながら)毎分100回かそれ以上で、剣状突起から2横指上を垂直に5cm押します。押したらしっかり戻すことが重要です。…疲れるとマッサージが浅くなるので2分で交代します(あぁ、それはどうでもいいや、…いつまで心マしてればいいんだ、と試験官をチラ見すると黙っている。あぁ指示を出すのね…)。…静脈路があるので、アドレナリンを1mg静注するよう指示します。(ああ、20mlの生食で後押し、って言うの忘れた)で2分は心マを続けます。
D:はい、そしたらこうなりました。
―VFです。直ちに除細動します。
D:じゃぁ研修医が心マ引き継ぎますから除細動器の操作して下さい。
―2相性ですよね?(と確認してから)200Jにセットします。パッドを胸に当てて「充電してください」と指示して皆離れてくださいと言って放電します(実際にやる。熱量は大分低い状態にして)。ちらっと心電図波形確認して、また心マ再開してもらいます。
D:はい、ではこれで終了です。
***
ということで、文字に起こすと非常に長くなりましたが。
実技試験をまとめると以下のようになりました。
・坐位の血圧モニタリングの注意点(口頭で)
・坐位の空気塞栓時の対応(口頭で)
・TEEの適切なview選択問題(紙を見て6画像から2つ選ぶ)
・CVC(実技。右内頸静脈からエコー下で。但しエコーなしでもいいみたいでした)
・awake経鼻ファイバー挿管(実技)
・腹臥位への体位変換時の注意点(口頭で)
・脊髄損傷のautonomic hyperreflexia(口頭で)
・挿管された状態でのACLS(実技。ガイドライン2005か2010にするかは問われなかった)
***
ちなみに実技試験は、下のようなパタンもあったようです(教えてくださった方に感謝します)。
1.硬膜外麻酔
腹腔鏡下肝切除。気腹後に血圧上昇の原因。
実際の手技。
2.内頸静脈からのCVC留置
大動脈弁閉鎖不全兼狭窄症。この疾患になりやすい原因は?
心停止させる手順は?
3.体位変換後の心停止でACLS
基本的なACLS。しかししつこく、研修医と看護師が暇そうにしてるよ〜、とつっこまれました。
***
以下、試験全体について、イチ受験生としての意見を書いてみます。
・口頭試験
何を答えても、試験官のリアクションらしいリアクションはなく、また、誘導らしい誘導も皆無でした。「合格させてあげよう」という意思は全く感じられませんでした。
設問が2つしかないため、自分が苦手なものにあたってしまうと容赦なく落とされる印象をもちました。筆記試験対策は皆さん一生懸命されると思いますが、筆記試験よりも口頭試験の合格率が低い、という事実を受け止めて対策をする必要があると感じました。
・実技試験
「硬膜外麻酔をして下さい」とか「CVCを入れましょう」とか、実技実技、と細切れにされた設問形式の試験を想像していたので、ある程度の臨床ストーリーにのっかった問題形式に少なからず戸惑ったのですが、内容自体は至極普通だったと思います。質問量が多かったような気がしますが、それは逆に色々聞かれれば満点は取れないけれど、合格点には近づく可能性が高くなりそうです。
毎日研修医に説明しながら麻酔をされているドクタであれば、過去問の出題さえ抑えておけば問題ないと思います。
・筆記試験
矢張り過去問をしっかりとマスタしておくことが何よりも重要だったと思います。計算問題も捨てない方がいいでしょう。同じ問題が出たらラッキーと思えるくらいには解いたほうがよい。今年は過去問にある計算問題で、数字だけを変えた問題が複数出題されていました。また、B問題では50問中8問程度が計算して回答を出す出題となっていました。計算問題を全部ドブに捨てれば最高でも42/50問しか得点できません。計算問題以外の設問でしっかり得点できればよいですが、ちょっと捻られた問題ばかりで、受験中にどんどん絶望的な気分になってきます。そうなると、本来取れる筈だった問題ですら誤回答を選択してしまう可能性が出てきます。「過去問を何回解いても同じ問題間違えるよ」と思ってげんなりするかも知れませんが、本番では、その「何回も間違えた問題」が出る可能性が十分あります。だから過去問の答えを覚えておいて、本番では「あぁ、これは何回か間違えたな…。でも数字が変わってるぞ。ということは…」というくらいにするためには、直前の勉強だけでは(私の記憶力では)正解にたどり着けなかったと思います。
聴くところによると、1年前から試験勉強していた方もいたようです。ですが、本当にそれくらいやった方が賢明かもしれません。自分の精神的安定のために、かもしれませんが。試験前に大動脈解離とか臓器移植の麻酔を緊急でかけるようなことも、まま、あるでしょうから、試験直前の追い込みを過度に期待しないほうが賢明です。働きながら勉強しなくてはならない、ということを忘れない方がよいと考えます。
ネット上には麻酔科専門医試験が割と簡単に通る試験であるかのような文章も見られますが、それは優秀な頭脳の持ち主のコメントだと疑った方が良いです。また、合格した専門医の方々の話も聴くでしょうけれど(例:試験前1週間しか勉強しなかったよ)、それも信用しない方が良いです。いかに少ない勉強時間で合格するか、という話は、自慢話としては非常によいのですが、「何を勉強すればいいですか」と人に聞くようなレベルの人(つまり私ですが)には、得るものがありません。
少なくとも私は凡庸な脳しか持ち合わせていないので、かけた時間がそのまま試験の点数に反映されたのではないか…という感触を持っています。医師国家試験以降、一回も受験勉強していない方は、特に気をつけた方がよい試験だと思います。
という、私のような若干悲観的なコメントと、上記の賢い先生方の意見を、それぞれ自分のレベルに合わせて取り込んだ上で、受験するのがよいのではないでしょうか、と思います。
備考ですが、試験を受けるときの服装は、スーツ(ネクタイとジャケットも着用)の人が多かったです。私は心マをする時に邪魔だと思い、友人の助言に従って、スラックス+ワイシャツという、ノーネクタイ、ノージャケットのスタイルで行きました。それで試験官の心象が悪くなったようには思えませんでした。ただ受験前に待機する私語厳禁の軟禁部屋は少し寒いかも知れませんので、人によってはその対応をしたほうが良いと思いました。私は待機者の中では2グループ目に呼ばれたので、待ち時間はそれほどではありませんでしたが、もっと長く待つ場合もあるので、冷え性な方、沈黙に耐えられない方はその対策をした方が良いでしょう。
これで今回の試験について書きたいことは概ね書いたので、暫く(金輪際?)この話題には触れないことにしようと思います。
2011年10月3日月曜日
第50回専門医認定試験の結果、速報
筆記 457人 83.8%
口頭 460人 79.8%
実技 436人 90.4%
(数字は公開された受験者数)
第49回に比べて、口頭試験と実技試験の合格率が低下したようです。矢張り私個人の手応え同様、口頭試験が難しかったのですね。
因みに私は旅先からダンボールに荷物を詰めて自宅に送ってしまい、受験票もその中。微妙に覚えにくい番号だったため、速報を見ても合格しているのかよくわかりません、ということに速報を見て気づきました。荷物を受け取り次第、確認しようと思います。
全国の受験生の皆様、お疲れ様でした。
補足:結局、本年新しく麻酔科専門医に認定された人の割合は66.6%だったようです(学会Newsletterによると)。(2012年1月8日追記)
口頭 460人 79.8%
実技 436人 90.4%
(数字は公開された受験者数)
第49回に比べて、口頭試験と実技試験の合格率が低下したようです。矢張り私個人の手応え同様、口頭試験が難しかったのですね。
因みに私は旅先からダンボールに荷物を詰めて自宅に送ってしまい、受験票もその中。微妙に覚えにくい番号だったため、速報を見ても合格しているのかよくわかりません、ということに速報を見て気づきました。荷物を受け取り次第、確認しようと思います。
全国の受験生の皆様、お疲れ様でした。
補足:結局、本年新しく麻酔科専門医に認定された人の割合は66.6%だったようです(学会Newsletterによると)。(2012年1月8日追記)
2011年9月27日火曜日
(麻) 肺動脈カテーテル(PAC) ― 麻酔科専門医試験に関連した知識
今からPAWPの波形書けるようにしておかなきゃ。もう遅い?
***
@PAWPと肺動脈拡張期圧(PADP)の相関が悪くなる病態 (過去問頻出)
1. PAWP > LVEDP
MS、MR、LA myxoma、VSD ( LAP > LVEDP)
肺静脈閉塞性疾患( PAWP > LAP)
高いPEEP( PAWP > LAP)
2. PAWP < LVEDP
LVコンプライアンス低下、HCMなど(LAP < LVEDP)
AR(LAPのa 波 < LVEDP:拡張末期の早期僧帽弁閉鎖)
PR、右脚ブロック、肺血管症減少
3. PAWP < PADP
PH、肺性心、PE、頻脈(頻脈はLVEDP<LAP<PADP)
@PAWPの波と谷
(こちらも過去問頻出。因みにCVP問題もほぼ同様の考え方で解けます。僧帽弁→三尖弁、v波増高→三尖弁閉鎖不全、y谷の僧帽弁開放→三尖弁開放、というふうに。但しCVPのa波はECG上のP波の比較的すぐ後(PとQRSの間)に出現する=PAWPの波より時相が早いことに注意)
a波:心室拡張末期の心房収縮によって作られる陽性の波。洞調律ではこの波が最大。。
c波:収縮期開始時の僧帽弁閉鎖により作られる小さい陽性波
*ECGのR波に続いて見られる
v波:心室収縮期にPVから心房への血液の流入によってできる陽性ノッチ
x谷:a波、c波につづく下行脚。心房の弛緩に一致
y谷:v波につづく圧の低下。僧帽弁の開放にともなって心室への急速流入によってできる
*a波はatrial kickのa、c波はclosureのc、v波はvetrivcle、veinのv、と下記「Intensivist」のp205にあります。
@a波消失
・AF、房室結節リズム、心室ペーシング、心室調律
@巨大a波
・MS、拡張期LVコンプライアンス低下(47A36)、III度AVB、房室解離(タイミングがずれて僧帽弁が閉鎖された状態で心房収縮が起こるため生じる)
@巨大v波
・MR → 収縮後期逆流性雑音
・急性心筋虚血
その他過去問から
・肺動脈カテーテルによる心拍出量測定:古典的にはStewart-Hamilton式に基づく熱希釈法で行う。熱希釈曲線はCOが大きいほど変化が小さくなる(46B)
・希釈法では注入量が少ないと、COは実際値より高くなる。
@PAWP(平均圧6-12mmHg)の測定
・呼吸:胸腔内圧の変化の影響を最も受けにくい呼気終末に測定。
・循環:左室拡張末期圧(LVEDP)を見たいため、その圧を反映する心集気の点(心房収縮後で僧帽弁閉鎖直前(z点:a波とc波の間。ECG上Q波の50msec後、R波あたり))で測定。
・通常はPAWP≒肺動脈拡張期圧なので、PAWPは平均肺動脈圧より低い。
・PEEP付加時:一般的にはPEEPをかけたまま呼吸回路をはずさずにそのまま測定し、呼気終末の時点のa波の平均を採用
・PAWPを測定する理想的なポイントは過去問通りWest zone 3(肺動脈圧 > 肺毛細血管圧 >肺胞圧)
以下の文献やウェブに大変お世話になりました。
・非侵襲的モニターは侵襲的モニターを超えられるか 日臨麻会誌. Vol 31, 58-66, 2011
http://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsca/31/1/058/_pdf/-char/ja/
・Dr.讃井の集中治療のススメ
http://blog.goo.ne.jp/jseptic
・Intensivist 2011 vol.3 No.2 モニター、MEDSi、2011
・ICUブック第3版、MEDSi、2011
***
@PAWPと肺動脈拡張期圧(PADP)の相関が悪くなる病態 (過去問頻出)
1. PAWP > LVEDP
MS、MR、LA myxoma、VSD ( LAP > LVEDP)
肺静脈閉塞性疾患( PAWP > LAP)
高いPEEP( PAWP > LAP)
2. PAWP < LVEDP
LVコンプライアンス低下、HCMなど(LAP < LVEDP)
AR(LAPのa 波 < LVEDP:拡張末期の早期僧帽弁閉鎖)
PR、右脚ブロック、肺血管症減少
3. PAWP < PADP
PH、肺性心、PE、頻脈(頻脈はLVEDP<LAP<PADP)
@PAWPの波と谷
(こちらも過去問頻出。因みにCVP問題もほぼ同様の考え方で解けます。僧帽弁→三尖弁、v波増高→三尖弁閉鎖不全、y谷の僧帽弁開放→三尖弁開放、というふうに。但しCVPのa波はECG上のP波の比較的すぐ後(PとQRSの間)に出現する=PAWPの波より時相が早いことに注意)
a波:心室拡張末期の心房収縮によって作られる陽性の波。洞調律ではこの波が最大。。
c波:収縮期開始時の僧帽弁閉鎖により作られる小さい陽性波
*ECGのR波に続いて見られる
v波:心室収縮期にPVから心房への血液の流入によってできる陽性ノッチ
x谷:a波、c波につづく下行脚。心房の弛緩に一致
y谷:v波につづく圧の低下。僧帽弁の開放にともなって心室への急速流入によってできる
*a波はatrial kickのa、c波はclosureのc、v波はvetrivcle、veinのv、と下記「Intensivist」のp205にあります。
@a波消失
・AF、房室結節リズム、心室ペーシング、心室調律
@巨大a波
・MS、拡張期LVコンプライアンス低下(47A36)、III度AVB、房室解離(タイミングがずれて僧帽弁が閉鎖された状態で心房収縮が起こるため生じる)
@巨大v波
・MR → 収縮後期逆流性雑音
・急性心筋虚血
その他過去問から
・肺動脈カテーテルによる心拍出量測定:古典的にはStewart-Hamilton式に基づく熱希釈法で行う。熱希釈曲線はCOが大きいほど変化が小さくなる(46B)
・希釈法では注入量が少ないと、COは実際値より高くなる。
@PAWP(平均圧6-12mmHg)の測定
・呼吸:胸腔内圧の変化の影響を最も受けにくい呼気終末に測定。
・循環:左室拡張末期圧(LVEDP)を見たいため、その圧を反映する心集気の点(心房収縮後で僧帽弁閉鎖直前(z点:a波とc波の間。ECG上Q波の50msec後、R波あたり))で測定。
・通常はPAWP≒肺動脈拡張期圧なので、PAWPは平均肺動脈圧より低い。
・PEEP付加時:一般的にはPEEPをかけたまま呼吸回路をはずさずにそのまま測定し、呼気終末の時点のa波の平均を採用
・PAWPを測定する理想的なポイントは過去問通りWest zone 3(肺動脈圧 > 肺毛細血管圧 >肺胞圧)
以下の文献やウェブに大変お世話になりました。
・非侵襲的モニターは侵襲的モニターを超えられるか 日臨麻会誌. Vol 31, 58-66, 2011
http://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsca/31/1/058/_pdf/-char/ja/
・Dr.讃井の集中治療のススメ
http://blog.goo.ne.jp/jseptic
・Intensivist 2011 vol.3 No.2 モニター、MEDSi、2011
・ICUブック第3版、MEDSi、2011
(麻) 麻酔科専門医試験口頭試験2010年症例1-1 帯状疱疹後神経痛
初めて患者さんにSGBをさせていただいたときの緊張といったら、今でも忘れられない。
@症例
・65 歳男性。165cm、 70kg。
・糖尿病の既往
・6 か月前に右肺がんの手術を受け、化学療法中
・2 か月前に右項部(髪の毛の生え際)から右鎖骨領域にかけて痛みを伴う赤い集簇性の水疱が出現
・現在は、ぴりぴりした痛みがあり、シャツの襟が当たったときにぴりっとした強い痛みが走る。入浴で痛みが和らぐ。
質問
1) 全身状態の評価について
1.この患者の問題点を挙げる。
・BMI25.7で1度肥満
・DMの既往と化学療法中のために易感染性であろう
・肺がん術後で呼吸機能低下
・化学療法の薬剤によっては貧血と血小板数低下、末梢神経障害等の可能性もある
(帯状疱疹にまれに合併する髄膜炎、脳炎、肝・腎の巣状壊死、IPなども念頭に)
2.現在の痛みの原因は何か。
・水痘・帯状疱疹ウイルスによるもの。亜急性期(発症から1ヶ月~6ヶ月)
*日本ペインクリニック学会誌, Vol. 17 (2010) No. Supplement pp.S55-S134によれば発症から6ヶ月で「帯状疱疹後神経痛」である(時期については暫定的で、まだ明確な定義なし)。6ヶ月以降の疼痛残存率は60歳以上で10%程度。免疫不全では45%程度まで上昇。
*因みに帯状疱疹の再発は全患者の1%程度と比較的稀。
3.この痛みのタイプ、皮膚分節における部位、痛みの特徴を挙げる。
・帯状疱疹神経痛
・皮膚分節:三叉神経第3枝~C4程度。
・ 皮膚がぴりぴりした感じや鈍痛で始まる。かゆみを伴う事もある。痛みは増強する。通常は発症2週間後に最高になる。皮膚の知覚異常を合併する。徐々に服がこすれただけでもピリピリ痛むようになる。
2) 星状神経節ブロックについて
1.この患者に星状神経節ブロックを施行する。星状神経節はどこにあるか。
・第7頸椎横突起基部前面。穿刺は第6(輪状軟骨の下縁)あるいは第7頸椎横突起を基部に行う 。C7の下部1/3は肺尖部と重なる。
2.星状神経節ブロックの実施前の注意点と具体的なブロック方法について述べる。
@実施前の注意点:
・緊急の対処が必要となる合併症の発生があり、酸素吸入、人工吸入、血管確保などが必要であることから、救急医薬品を常備して救急蘇生を行える準備をする
・出血傾向のないことを採血や問診で確認
・呼吸困難が出現したらただちに連絡するように事前に説明
・ICを行い、書面で同意を得る
@手技
準備:5ml注射器、25G針(25mm)、局所麻酔薬(1%メピバカインorリドカイン5ml)
体位:枕をはずし仰臥位。顎を前方に突き出し、頸部は少し後屈。軽く開口させ、頸部筋肉の緊張をとる
@手順
・清潔手袋で穿刺部位の消毒
・示指と中指で、輪状軟骨の高さで、胸鎖乳突筋をゆっくり外側に圧排、頸動脈拍動を触知。動脈誤穿刺を避けるために、頸動脈の位置を確認して穿刺。
・わずかに頭尾側、左右に指先を動かし第6頸椎横突起前結節を探り、指先で前結節をおさえ、その内側の横突起基部をめがけ刺入。
・頸部の軟部組織をしっかり分ければ、皮膚から横突起まで15mm以内で到達。血液逆流がないことを確認し薬液をゆっくり注入。
・抜針後は、刺入部に滅菌ガーゼを当て、患者にブロック側と反対側の指で、刺入部を圧迫させる。
・抜針時に針先や注射器に血液が認められた場合には、術者自身が5分以上圧迫。
・ブロック後20-30分以上、ベット上安静、経過観察。意識や呼吸状態のチェック。
3.星状神経節ブロック後の症状を列挙。
A.頸部交感神経幹 B.上胸部交感神経幹 双方が遮断される。
Aがブロックされたことの判定:眼瞼下垂、縮瞳、眼球陥凹のHorner徴候、眼球の充血、鼻閉感、顔面の紅潮、温感、発汗減少
Bがブロックされたことの判定:手掌の発汗停止、上肢の温度上昇
4.星状神経節ブロック後に予想される合併症を列挙。
・反回神経麻痺(針先が内側すぎると生じる。1-2時間で回復。その間、飲食を控えるよう指導)
・腕神経叢麻痺(針先が深すぎると腕神経叢ブロックに。針先が神経に触れると、paresthesia。C7から刺入すると起こりやすい。1-2時間で回復)
・硬膜外腔やくも膜下腔への誤注入(針先が内側深すぎると生じる。薬液が神経に沿って中枢に流れると、硬膜外ブロック、まれにくも膜下ブロックが生じる。両側の上肢感覚、運動障害)
・血管穿刺、出血(動脈内注入で意識消失、全身痙攣、呼吸停止。頸動脈の圧排、薬液注入前吸引テストを絶対行う。注入もゆっくり。注入中の患者の変化も見逃さない。巨大血腫形成による気道閉鎖は、ゆっくり進行し数時間かけて症状が出ることも)
・感染(咽頭後部膿瘍、椎体炎、椎間板炎などで脊髄圧迫症状や呼吸困難が起こる)
3) 接遇問題
ブロック後に気胸が判明したので、入院加療することになった。この患者に付き添ってきた家族が、今回の入院の原因と治療方針の説明を希望している。家族がすでに部屋で待っていて、その部屋に入っていくところから開始。
・自己紹介し、患者さんに状態を伺う。落ち着いているようであれば、家族に、患者さんとの関係を「失礼ですが…」と尋ねて確認する
・患者さんがどのような状態で当科を受診し、どのような治療を必要とし、どのような治療を行ったかについて、家族がどの程度知っていたかを把握する
・把握が十分でないようならば、家族の理解度を伺いながら、それについてまず十分な説明を行う
・その上で、なぜ気胸が起こったか、そして非常に稀な合併症であることを説明。気胸の増悪がないか胸部Xp等を行いながら経過観察していくことと、もし増悪するような場合には胸腔ドレーンという管を入れる可能性もあること、そしてそれでも回復が見込めないようならば手術が必要な可能性(これについては家族がどの程度の温度でいるのかを説明している感触を確かめながら適切な強調具合で説明するのがよろしいと考えます)について説明する。
***
以下の論文とサイトに大変お世話になりました。ありがとうございました。
“帯状疱疹後神経痛の多面的治療はここまで進んでいる”. 日臨麻会誌 Vol. 28: 19-30, (2008)
http://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsca/28/1/19/_pdf/-char/ja/
・Pain Rerief → ペインに関することが非常によくまとめられていて、とても勉強になります。
http://www.shiga-med.ac.jp/~koyama/analgesia/analg-bl-sympa.html#sgb
@症例
・65 歳男性。165cm、 70kg。
・糖尿病の既往
・6 か月前に右肺がんの手術を受け、化学療法中
・2 か月前に右項部(髪の毛の生え際)から右鎖骨領域にかけて痛みを伴う赤い集簇性の水疱が出現
・現在は、ぴりぴりした痛みがあり、シャツの襟が当たったときにぴりっとした強い痛みが走る。入浴で痛みが和らぐ。
質問
1) 全身状態の評価について
1.この患者の問題点を挙げる。
・BMI25.7で1度肥満
・DMの既往と化学療法中のために易感染性であろう
・肺がん術後で呼吸機能低下
・化学療法の薬剤によっては貧血と血小板数低下、末梢神経障害等の可能性もある
(帯状疱疹にまれに合併する髄膜炎、脳炎、肝・腎の巣状壊死、IPなども念頭に)
2.現在の痛みの原因は何か。
・水痘・帯状疱疹ウイルスによるもの。亜急性期(発症から1ヶ月~6ヶ月)
*日本ペインクリニック学会誌, Vol. 17 (2010) No. Supplement pp.S55-S134によれば発症から6ヶ月で「帯状疱疹後神経痛」である(時期については暫定的で、まだ明確な定義なし)。6ヶ月以降の疼痛残存率は60歳以上で10%程度。免疫不全では45%程度まで上昇。
*因みに帯状疱疹の再発は全患者の1%程度と比較的稀。
3.この痛みのタイプ、皮膚分節における部位、痛みの特徴を挙げる。
・帯状疱疹神経痛
・皮膚分節:三叉神経第3枝~C4程度。
・ 皮膚がぴりぴりした感じや鈍痛で始まる。かゆみを伴う事もある。痛みは増強する。通常は発症2週間後に最高になる。皮膚の知覚異常を合併する。徐々に服がこすれただけでもピリピリ痛むようになる。
2) 星状神経節ブロックについて
1.この患者に星状神経節ブロックを施行する。星状神経節はどこにあるか。
・第7頸椎横突起基部前面。穿刺は第6(輪状軟骨の下縁)あるいは第7頸椎横突起を基部に行う 。C7の下部1/3は肺尖部と重なる。
2.星状神経節ブロックの実施前の注意点と具体的なブロック方法について述べる。
@実施前の注意点:
・緊急の対処が必要となる合併症の発生があり、酸素吸入、人工吸入、血管確保などが必要であることから、救急医薬品を常備して救急蘇生を行える準備をする
・出血傾向のないことを採血や問診で確認
・呼吸困難が出現したらただちに連絡するように事前に説明
・ICを行い、書面で同意を得る
@手技
準備:5ml注射器、25G針(25mm)、局所麻酔薬(1%メピバカインorリドカイン5ml)
体位:枕をはずし仰臥位。顎を前方に突き出し、頸部は少し後屈。軽く開口させ、頸部筋肉の緊張をとる
@手順
・清潔手袋で穿刺部位の消毒
・示指と中指で、輪状軟骨の高さで、胸鎖乳突筋をゆっくり外側に圧排、頸動脈拍動を触知。動脈誤穿刺を避けるために、頸動脈の位置を確認して穿刺。
・わずかに頭尾側、左右に指先を動かし第6頸椎横突起前結節を探り、指先で前結節をおさえ、その内側の横突起基部をめがけ刺入。
・頸部の軟部組織をしっかり分ければ、皮膚から横突起まで15mm以内で到達。血液逆流がないことを確認し薬液をゆっくり注入。
・抜針後は、刺入部に滅菌ガーゼを当て、患者にブロック側と反対側の指で、刺入部を圧迫させる。
・抜針時に針先や注射器に血液が認められた場合には、術者自身が5分以上圧迫。
・ブロック後20-30分以上、ベット上安静、経過観察。意識や呼吸状態のチェック。
3.星状神経節ブロック後の症状を列挙。
A.頸部交感神経幹 B.上胸部交感神経幹 双方が遮断される。
Aがブロックされたことの判定:眼瞼下垂、縮瞳、眼球陥凹のHorner徴候、眼球の充血、鼻閉感、顔面の紅潮、温感、発汗減少
Bがブロックされたことの判定:手掌の発汗停止、上肢の温度上昇
4.星状神経節ブロック後に予想される合併症を列挙。
・反回神経麻痺(針先が内側すぎると生じる。1-2時間で回復。その間、飲食を控えるよう指導)
・腕神経叢麻痺(針先が深すぎると腕神経叢ブロックに。針先が神経に触れると、paresthesia。C7から刺入すると起こりやすい。1-2時間で回復)
・硬膜外腔やくも膜下腔への誤注入(針先が内側深すぎると生じる。薬液が神経に沿って中枢に流れると、硬膜外ブロック、まれにくも膜下ブロックが生じる。両側の上肢感覚、運動障害)
・血管穿刺、出血(動脈内注入で意識消失、全身痙攣、呼吸停止。頸動脈の圧排、薬液注入前吸引テストを絶対行う。注入もゆっくり。注入中の患者の変化も見逃さない。巨大血腫形成による気道閉鎖は、ゆっくり進行し数時間かけて症状が出ることも)
・感染(咽頭後部膿瘍、椎体炎、椎間板炎などで脊髄圧迫症状や呼吸困難が起こる)
3) 接遇問題
ブロック後に気胸が判明したので、入院加療することになった。この患者に付き添ってきた家族が、今回の入院の原因と治療方針の説明を希望している。家族がすでに部屋で待っていて、その部屋に入っていくところから開始。
・自己紹介し、患者さんに状態を伺う。落ち着いているようであれば、家族に、患者さんとの関係を「失礼ですが…」と尋ねて確認する
・患者さんがどのような状態で当科を受診し、どのような治療を必要とし、どのような治療を行ったかについて、家族がどの程度知っていたかを把握する
・把握が十分でないようならば、家族の理解度を伺いながら、それについてまず十分な説明を行う
・その上で、なぜ気胸が起こったか、そして非常に稀な合併症であることを説明。気胸の増悪がないか胸部Xp等を行いながら経過観察していくことと、もし増悪するような場合には胸腔ドレーンという管を入れる可能性もあること、そしてそれでも回復が見込めないようならば手術が必要な可能性(これについては家族がどの程度の温度でいるのかを説明している感触を確かめながら適切な強調具合で説明するのがよろしいと考えます)について説明する。
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以下の論文とサイトに大変お世話になりました。ありがとうございました。
“帯状疱疹後神経痛の多面的治療はここまで進んでいる”. 日臨麻会誌 Vol. 28: 19-30, (2008)
http://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsca/28/1/19/_pdf/-char/ja/
・Pain Rerief → ペインに関することが非常によくまとめられていて、とても勉強になります。
http://www.shiga-med.ac.jp/~koyama/analgesia/analg-bl-sympa.html#sgb
(麻) 麻酔科専門医認定試験口頭試験2006年-症例2糖尿病患者透析中
以前作った回答を上げておこうかな。こういう問題に当たれば、満点は取れないとしても、全く答えられないということはないので、ありがたいのだけれど。
***
症例
・45 歳男性。169cm、52kg。
・手根管症候群に対して手根管開放術予定。
・糖尿病性腎症で血液透析中。
・BP 170/80mmHg、HR 84bpm。
・空腹時血糖は181mg/dl、血液透析後のHb濃度8.1g/dl、血清K 4.3mEq/l、血清Ca 8.4mg/dl。
質問
1)術前評価と管理
1. この患者の術前状態における問題点を列挙してください。
・血糖コントロール不良の糖尿病かつ血液透析中であること
・調節不良の高血圧
・腎性?貧血
・軽度の低Ca血症(基準値およそ8.5-10.2mg/dl, 2.1-2.5mmol/L程度。血漿イオン化Ca<1.10mmol/L程度以下で低Ca血症)
2. 術前に必要な検査を挙げ説明してください。
・血算(血小板低下の有無)、生化学(肝機能など)、HbA1c値(普段のコントロールの指標に)
・透析に関する情報:スケジュール、週何回なのか、除水量は、dry weightは、HD中の血圧低下や臨床症状はあるのか、
・凝固機能(腕神経叢ブロックを考慮する際には)
・血液ガス分析(代謝性アシドーシスの程度)、
・胸部Xp(肺うっ血所見、胸水貯留所見、心拡大の有無)
・心機能(12誘導心電図、TTEで心嚢水貯留や弁機能、心収縮能・拡張能、壁運動以上をチェック)
問診では
・シャントの位置
・普段の運動耐容能(何METsくらいか推測)
・手根管症候群による正中神経麻痺以外の手足の神経症状
・出血傾向の有無
3. 貧血を是正するか。
・出血量は多くないだろうし、手術も短時間であることが予想されるため是正しない
4. 低Ca血症をどうするか。
ごく軽度なのでそのままでもよいように思う。
5. 糖尿病の評価、コントロールはどうか。
随時血糖値から判断する限りではあまりよろしくないであろう。恐らく末梢神経障害、自律神経障害、眼障害もあるのではなかろうか。冠動脈病変もあることを念頭においた管理が望ましい。
2)麻酔法および術中管理
1. 麻酔法を選択しその理由を説明してください。
2. 麻酔導入の方法と使用する薬剤について具体的に述べてください。
略。喘息患者の抜釘と同様に全麻か腕神経叢ブロックでどちらか安全に施行しうると思う方で説明。
3. 研修医が「スキサメトニウムを使いたい」と言った時、どのようにするか。
・K値が上昇する可能性がある。現時点ではK値は4台なので、恐らく問題とならないだろう。だが、術中使用する他の薬剤によりK値が上昇する可能性があるし、万が一にも赤血球輸血を行う可能性もあるだろうから、より安全に使用できる患者さんに対して使いましょう。
3)周術期危機管理
1. 全身麻酔で管理し、ETCO2が25mmHg で経過していたときにST がさらに低下。どうするか。
・純酸素にしながら、術者にSTが低下している旨を伝える。
・エフェドリン、フェニレフリン等の昇圧剤を投与する。
・ETCO2 35-40mmHg程度になるよう、換気回数を減らす
・冠拡張薬(ニコランジル2-6mg/hや硝酸イソソルビド2-5mg/h)投与開始。血圧が低くなければニトログリセリン使用も
・以上で回復すればそのまま注意深く経過観察。手術再開してもらう。ST低下や血圧低下が持続するようなら、TEEを。(但し食道・胃にTEEの禁忌となるような病気なければ)
2. i) 術前術後の透析スケジュールについて説明。
・術前日に透析を行う。dry weightを目標に。
・術後は術中合併症なく、術後出血も落ち着いているようならば術翌日に行う。
ii) 一般に透析患者に輸液や薬剤を使用する際にどのようなことに注意するか。
・輸液はKなしのものを使用する。生食か1号液。輸液量は除水量から判断して多すぎず少なすぎず、術後のことも考えて。低血圧には昇圧剤を積極的に使用し、輸血の判断も早めに行う。
・腎代謝の薬剤の使用は十分気をつける。筋弛緩薬は通常よりさらに慎重に、またモルヒネは極力使用しない。HD患者へのスガマデクスの投与は推奨されていないので、残存筋弛緩には十分注意して抜管・退室の指示をする。
4)術後管理
術後鎮痛の方法を具体的に説明。
略
***
症例
・45 歳男性。169cm、52kg。
・手根管症候群に対して手根管開放術予定。
・糖尿病性腎症で血液透析中。
・BP 170/80mmHg、HR 84bpm。
・空腹時血糖は181mg/dl、血液透析後のHb濃度8.1g/dl、血清K 4.3mEq/l、血清Ca 8.4mg/dl。
質問
1)術前評価と管理
1. この患者の術前状態における問題点を列挙してください。
・血糖コントロール不良の糖尿病かつ血液透析中であること
・調節不良の高血圧
・腎性?貧血
・軽度の低Ca血症(基準値およそ8.5-10.2mg/dl, 2.1-2.5mmol/L程度。血漿イオン化Ca<1.10mmol/L程度以下で低Ca血症)
2. 術前に必要な検査を挙げ説明してください。
・血算(血小板低下の有無)、生化学(肝機能など)、HbA1c値(普段のコントロールの指標に)
・透析に関する情報:スケジュール、週何回なのか、除水量は、dry weightは、HD中の血圧低下や臨床症状はあるのか、
・凝固機能(腕神経叢ブロックを考慮する際には)
・血液ガス分析(代謝性アシドーシスの程度)、
・胸部Xp(肺うっ血所見、胸水貯留所見、心拡大の有無)
・心機能(12誘導心電図、TTEで心嚢水貯留や弁機能、心収縮能・拡張能、壁運動以上をチェック)
問診では
・シャントの位置
・普段の運動耐容能(何METsくらいか推測)
・手根管症候群による正中神経麻痺以外の手足の神経症状
・出血傾向の有無
3. 貧血を是正するか。
・出血量は多くないだろうし、手術も短時間であることが予想されるため是正しない
4. 低Ca血症をどうするか。
ごく軽度なのでそのままでもよいように思う。
5. 糖尿病の評価、コントロールはどうか。
随時血糖値から判断する限りではあまりよろしくないであろう。恐らく末梢神経障害、自律神経障害、眼障害もあるのではなかろうか。冠動脈病変もあることを念頭においた管理が望ましい。
2)麻酔法および術中管理
1. 麻酔法を選択しその理由を説明してください。
2. 麻酔導入の方法と使用する薬剤について具体的に述べてください。
略。喘息患者の抜釘と同様に全麻か腕神経叢ブロックでどちらか安全に施行しうると思う方で説明。
3. 研修医が「スキサメトニウムを使いたい」と言った時、どのようにするか。
・K値が上昇する可能性がある。現時点ではK値は4台なので、恐らく問題とならないだろう。だが、術中使用する他の薬剤によりK値が上昇する可能性があるし、万が一にも赤血球輸血を行う可能性もあるだろうから、より安全に使用できる患者さんに対して使いましょう。
3)周術期危機管理
1. 全身麻酔で管理し、ETCO2が25mmHg で経過していたときにST がさらに低下。どうするか。
・純酸素にしながら、術者にSTが低下している旨を伝える。
・エフェドリン、フェニレフリン等の昇圧剤を投与する。
・ETCO2 35-40mmHg程度になるよう、換気回数を減らす
・冠拡張薬(ニコランジル2-6mg/hや硝酸イソソルビド2-5mg/h)投与開始。血圧が低くなければニトログリセリン使用も
・以上で回復すればそのまま注意深く経過観察。手術再開してもらう。ST低下や血圧低下が持続するようなら、TEEを。(但し食道・胃にTEEの禁忌となるような病気なければ)
2. i) 術前術後の透析スケジュールについて説明。
・術前日に透析を行う。dry weightを目標に。
・術後は術中合併症なく、術後出血も落ち着いているようならば術翌日に行う。
ii) 一般に透析患者に輸液や薬剤を使用する際にどのようなことに注意するか。
・輸液はKなしのものを使用する。生食か1号液。輸液量は除水量から判断して多すぎず少なすぎず、術後のことも考えて。低血圧には昇圧剤を積極的に使用し、輸血の判断も早めに行う。
・腎代謝の薬剤の使用は十分気をつける。筋弛緩薬は通常よりさらに慎重に、またモルヒネは極力使用しない。HD患者へのスガマデクスの投与は推奨されていないので、残存筋弛緩には十分注意して抜管・退室の指示をする。
4)術後管理
術後鎮痛の方法を具体的に説明。
略
2011年9月26日月曜日
(麻) IABP(intra-aortic baloon pump)メモ
オペ室では時々しか登場しないので、知識を忘れかけた時の記憶トリガー用に。ただIABPバルーンの先端の場所をTEEで確認するだけじゃまずかろうて。
@何はともあれ入れる前に
・適応:心原性ショック、ACS、MIに伴うMV乳頭筋断裂、VSPなど、ハイリスクPCI、ハイリスクCABG、難治性心室性不整脈
・禁忌:2度以上のAR、重篤なAVシャント、大動脈解離、大動脈瘤、コントロールのつかない敗血症や出血、高度の末梢動脈疾患、補助人工心臓適応時(特にECG非同期駆動期)
・効果は多くても自己COの20-30%、長くても1週間くらいで抜去を考慮
・バルーンカテーテルは8.5-9.0Fr。バルーン部位は15-20cm。
・バルーンはヘリウムガスで膨らませる
・バルーンサイズの身長別、およその目安
・<150cm 30ml
・150-160cm 35ml
・160cm< 40ml
・透視が出来る部屋で挿入する。刺入部から第2肋間までの距離を目安に。
・基本的にSeldinger法で
@駆動
*IABP駆動前に、出来る限り洞調律にすることが重要。不適切なタイミングでは心負荷が増えるだけ。
・トリガー信号としてECG、大動脈圧、心臓ペーシングあり。
・基本はECGトリガー。電メス使用時には大動脈圧信号で。
・バルーンinflate(膨張)は大動脈弁閉鎖直後。心収縮期にinflateしたらafterload増えるだけで有害。
・至適タイミング見るべく2:1でIABP開始
<心電図トリガーの時>
・inflate - T波頂点よりやや遅れた地点
・deflate - QRS波の直前
<動脈圧波形トリガーの時>
~兎に角波形をしっかりみて調節するのが重要!誤ったタイミングでは心負荷増えるだけ。
・inflate:開始は動脈圧波形のdicrotic notchに合わせる
・deflate:deflateした時点の収縮期圧が最も低くなるよう、動脈圧波形を見ながら調節
・抗凝固:1:1駆動の際には必要ないかも知れないが、4:1や8:1駆動時には注意が必要。ACTで150-200秒にする
@離脱
・2:1を6-12時間、4:1を2-6時間厳重に監視、具合悪ければ8:1(この比率では殆ど補助効果は期待できないので、使うのはあくまでweaning時)でも様子見る
・中断数時間後に心原性ショックになることがあるので抜去後も注意して観察を。
・離脱基準:自己mAP≧70mmHg、PAWP≦18mmHg、CI≧2.0、反復胸痛なし
・抜去後は15-30分圧迫、その後圧迫器具を更に使用して確実に止血
@合併症
・血管性:下肢虚血、動脈損傷・解離、重篤な出血、血栓塞栓症(腸間膜動脈や腎動脈、脾動脈、上肢下肢)
・非血管性:神経障害(原因不明が多い。前脊髄動脈虚血?)、バルーン破裂(ガス塞栓になり危険!直ちに駆動停止しバルーンカテーテルを抜去)、血小板減少、溶血、内臓虚血
***
参考図書
・補助循環マスターポイント102 改訂2版、メジカルビュー社、2009年 p46-57
・続 麻酔科臨床の書 -A.M.C.心臓手術と麻酔の手引-、MEDSi, 2011年 p199-208
@何はともあれ入れる前に
・適応:心原性ショック、ACS、MIに伴うMV乳頭筋断裂、VSPなど、ハイリスクPCI、ハイリスクCABG、難治性心室性不整脈
・禁忌:2度以上のAR、重篤なAVシャント、大動脈解離、大動脈瘤、コントロールのつかない敗血症や出血、高度の末梢動脈疾患、補助人工心臓適応時(特にECG非同期駆動期)
・効果は多くても自己COの20-30%、長くても1週間くらいで抜去を考慮
・バルーンカテーテルは8.5-9.0Fr。バルーン部位は15-20cm。
・バルーンはヘリウムガスで膨らませる
・バルーンサイズの身長別、およその目安
・<150cm 30ml
・150-160cm 35ml
・160cm< 40ml
・透視が出来る部屋で挿入する。刺入部から第2肋間までの距離を目安に。
・基本的にSeldinger法で
@駆動
*IABP駆動前に、出来る限り洞調律にすることが重要。不適切なタイミングでは心負荷が増えるだけ。
・トリガー信号としてECG、大動脈圧、心臓ペーシングあり。
・基本はECGトリガー。電メス使用時には大動脈圧信号で。
・バルーンinflate(膨張)は大動脈弁閉鎖直後。心収縮期にinflateしたらafterload増えるだけで有害。
・至適タイミング見るべく2:1でIABP開始
<心電図トリガーの時>
・inflate - T波頂点よりやや遅れた地点
・deflate - QRS波の直前
<動脈圧波形トリガーの時>
~兎に角波形をしっかりみて調節するのが重要!誤ったタイミングでは心負荷増えるだけ。
・inflate:開始は動脈圧波形のdicrotic notchに合わせる
・deflate:deflateした時点の収縮期圧が最も低くなるよう、動脈圧波形を見ながら調節
・抗凝固:1:1駆動の際には必要ないかも知れないが、4:1や8:1駆動時には注意が必要。ACTで150-200秒にする
@離脱
・2:1を6-12時間、4:1を2-6時間厳重に監視、具合悪ければ8:1(この比率では殆ど補助効果は期待できないので、使うのはあくまでweaning時)でも様子見る
・中断数時間後に心原性ショックになることがあるので抜去後も注意して観察を。
・離脱基準:自己mAP≧70mmHg、PAWP≦18mmHg、CI≧2.0、反復胸痛なし
・抜去後は15-30分圧迫、その後圧迫器具を更に使用して確実に止血
@合併症
・血管性:下肢虚血、動脈損傷・解離、重篤な出血、血栓塞栓症(腸間膜動脈や腎動脈、脾動脈、上肢下肢)
・非血管性:神経障害(原因不明が多い。前脊髄動脈虚血?)、バルーン破裂(ガス塞栓になり危険!直ちに駆動停止しバルーンカテーテルを抜去)、血小板減少、溶血、内臓虚血
***
参考図書
・補助循環マスターポイント102 改訂2版、メジカルビュー社、2009年 p46-57
・続 麻酔科臨床の書 -A.M.C.心臓手術と麻酔の手引-、MEDSi, 2011年 p199-208
(麻) 麻酔科専門医認定試験口頭試験2007年症例5-分離肺換気中の気胸低酸素血症に関連して
この問題のヤマは低酸素の対応にあると思いますが。問題文中にも患者が肥満体型で肺にブラがある、ということで一側肺換気(OLV)にしたら気道内圧が高くなるぞ~ということが容易に想像できます。でも実際にOLV中に気胸が起こることってどれくらいあるのでしょう?
と思って安直ですが、PubMedを引いてみる。
比較的最近には
Intraoperative contralateral tension pneumothorax during pneumonectomy. Anesth Analg. 2008 Jan;106(1):58-60.
http://www.anesthesia-analgesia.org/content/106/1/58.long
で症例報告されています(free article)。ご存じの方も多いかもしれませんが。
この症例では肺がんに対して左下葉切除術。右用DLT(二腔気管支チューブ)をなんとか挿入(挿管困難だったのではじめは通常の気管チューブ→チューブエクスチェンジャー使用して右用DLTを挿入)し、右側臥位で手術開始。OLV開始後、低酸素や循環破綻なく、高気道内圧になった(ディスカッションでは数少ない報告全てが低酸素や循環破綻が初発症状)。
本報告の症例では右用DLTなので、右上葉換気孔の位置異常による高気道内圧や挿管に伴う気道損傷を疑ったようですが、Xpではしっかりと気胸になっていた、というもの。
本症例における診断治療の流れは・・・
高気道内圧→気管内吸引とファイバーでチューブ位置異常確認なし→高気道内圧持続→両肺換気に→皮下気腫ないけど頚静脈怒張あるぞ→Xp撮ったら緊張性気胸→その後すぐ閉胸して仰臥位にして再度Xpで気胸を確認→右胸腔ドレーン挿入→DLTを左用にチェンジ→ドレーンから持続的な排気なし→循環呼吸安定しているため再度体位をとって手術再開→オペ室で抜管。術後問題なくよかったよかった・・・。
分離肺換気中の低酸素血症はDLTの閉塞、位置異常、気管支痙攣等が鑑別に上がりますが、気胸も大事な鑑別診断の1つに挙げられますね。こんなシチュエーション、いつ何時にでも遭遇しかねない。
因みに麻酔中の気胸は・・・CVC挿入、腕神経叢ブロック、胸部硬膜外カテーテル挿入、手術に伴うもの、が多いようです。
@これまた因みに…分離肺換気の絶対的適応
1. 他肺からの感染性分泌物
・血液の流入阻止
・肺膿瘍・膿胸などの感染症
・大量出血(喀血)
2. 開放気道が存在する場合
・気管支瘻・気管支皮膚瘻
・手術が主要気道に及ぶ場合
・気管・気管支の損傷
3. 一側の肺胞洗浄
・肺胞蛋白症
上記以外は全て相対適応です。
と思って安直ですが、PubMedを引いてみる。
比較的最近には
Intraoperative contralateral tension pneumothorax during pneumonectomy. Anesth Analg. 2008 Jan;106(1):58-60.
http://www.anesthesia-analgesia.org/content/106/1/58.long
で症例報告されています(free article)。ご存じの方も多いかもしれませんが。
この症例では肺がんに対して左下葉切除術。右用DLT(二腔気管支チューブ)をなんとか挿入(挿管困難だったのではじめは通常の気管チューブ→チューブエクスチェンジャー使用して右用DLTを挿入)し、右側臥位で手術開始。OLV開始後、低酸素や循環破綻なく、高気道内圧になった(ディスカッションでは数少ない報告全てが低酸素や循環破綻が初発症状)。
本報告の症例では右用DLTなので、右上葉換気孔の位置異常による高気道内圧や挿管に伴う気道損傷を疑ったようですが、Xpではしっかりと気胸になっていた、というもの。
本症例における診断治療の流れは・・・
高気道内圧→気管内吸引とファイバーでチューブ位置異常確認なし→高気道内圧持続→両肺換気に→皮下気腫ないけど頚静脈怒張あるぞ→Xp撮ったら緊張性気胸→その後すぐ閉胸して仰臥位にして再度Xpで気胸を確認→右胸腔ドレーン挿入→DLTを左用にチェンジ→ドレーンから持続的な排気なし→循環呼吸安定しているため再度体位をとって手術再開→オペ室で抜管。術後問題なくよかったよかった・・・。
分離肺換気中の低酸素血症はDLTの閉塞、位置異常、気管支痙攣等が鑑別に上がりますが、気胸も大事な鑑別診断の1つに挙げられますね。こんなシチュエーション、いつ何時にでも遭遇しかねない。
因みに麻酔中の気胸は・・・CVC挿入、腕神経叢ブロック、胸部硬膜外カテーテル挿入、手術に伴うもの、が多いようです。
@これまた因みに…分離肺換気の絶対的適応
1. 他肺からの感染性分泌物
・血液の流入阻止
・肺膿瘍・膿胸などの感染症
・大量出血(喀血)
2. 開放気道が存在する場合
・気管支瘻・気管支皮膚瘻
・手術が主要気道に及ぶ場合
・気管・気管支の損傷
3. 一側の肺胞洗浄
・肺胞蛋白症
上記以外は全て相対適応です。
(麻) 麻酔科専門医認定試験口頭試験-2006年症例5- 3歳女児の気管支異物
症例
・3 歳女児。100 cm、15 kg。
・節分の豆まきのあと、突然の咳発作に陥り、救急外来を受診。
・気管支異物の疑いで気管支鏡が申し込まれた。
・2時間前に夕食を摂った。
質問
1)術前評価と管理
1. この患児の術前状態における問題点を列挙して下さい。
・full stomach
・豆(かどうかは必ずしもわからないが)による気道閉塞による低酸素の可能性。慢性咳嗽、肺気腫、無気肺、肺炎の原因に。
・嵌頓異物がチェックバルブとなり陽圧換気により肺の過膨張をきたす可能性もある。
2)麻酔法および術中管理
1. フルストマック対策としてどのような処置をしますか?
・夕食後6時間待てるか主治医と相談
・ファモチジン1mg/kg等の前投与
・入室前に静脈路を確保し、rapid sequence induction
・もしくは異物が移動して換気不可能になる可能性もあるため、緩徐導入で麻酔深度が十分になった段階で輪状軟骨圧迫、補助換気が可能なことを確かめてから筋弛緩薬を投与する方が安全な可能性あり
2. 喉頭鏡の種類・サイズ、チューブのサイズはどのようなものを選びますか?
・喉頭鏡:Macintosh 2かMiller 2
・チューブ:4.5か5.0 カフなし
3. 術中の麻酔法はどのようにしますか?
・純酸素、セボフルラン2.5%程度。人工呼吸管理。適宜フェンタニル1ug/kgを静注する。
・手技は硬性気管支鏡もしくは軟性気管支鏡からの鉗子による摘出。断続的に呼吸を止める必要があるので、吸入麻酔薬の濃度低下による術中覚醒と、低酸素血症に注意する。換気中断時に低酸素にならないように純酸素で換気する方がよいと考える。
・豆が気管チューブを通らなければ、ファイバー観察下に気管チューブごと抜去して再挿管することもある。上気道の浮腫が強くなければ、であろうが。
・摘出後に生食で気管内洗浄を十分に。
・異物摘出後は喉頭気道浮腫予防にデキサメサゾン0.2mg/kg投与
3)周術期危機管理
1. 術中低酸素血症の鑑別診断と治療について述べて下さい。
・手術操作による換気中断や低換気
・豆による気管閉塞・無気肺
・喘息発作
・アナフィラキシー
4)術後管理
1. 抜管直後から、吸気時にヒューヒュー音が聴取された。鑑別診断は何か。その治療は何か。
・上気道狭窄によるなので、
・咽頭・喉頭浮腫、喉頭蓋腫脹、喉頭痙攣、
・舌根沈下、扁桃肥大によるもの
などが考えられる。
いずれの場合も100%酸素をマスクで投与、自発呼吸があるようならば、愛護的に、上気道が開通するように顔の向きを修正し下顎挙上を行う。喉頭痙攣を疑うならばマスクを完全にフィットさせLaryngospasm notchを圧迫するように強く下顎挙上、持続PEEPで解除させるのを待つ。低酸素・徐脈になる前にアトロピンとSCCを手元に準備してもらい、再挿管を考慮する。いずれにせよ術操作に伴う気道浮腫増悪の可能性があるため、術直後抜管の判断は慎重に行ったほうがよい。夜間の緊急手術であれば、日中まで鎮静・人工呼吸管理とすることも考慮する。術後の肺炎の発生にも注意が必要である。
@参考にした文献など。大変勉強になりました。
・臨床小児麻酔ハンドブック改訂第2版.2008年.診断と治療社 p182-3
・日臨麻会誌 Vol. 29: 65-68, (2009) .
・気道異物35症例の周術期管理麻酔. 56巻9号 Page1065-1070(2007.09)
・近畿大学医学雑誌30巻1号 Page7-10(2005.06)
・気道異物症例の周術期管理. 日臨麻会誌 Vol. 31: 946-951, (2011) .(2012年3月10日追加)
・3 歳女児。100 cm、15 kg。
・節分の豆まきのあと、突然の咳発作に陥り、救急外来を受診。
・気管支異物の疑いで気管支鏡が申し込まれた。
・2時間前に夕食を摂った。
質問
1)術前評価と管理
1. この患児の術前状態における問題点を列挙して下さい。
・full stomach
・豆(かどうかは必ずしもわからないが)による気道閉塞による低酸素の可能性。慢性咳嗽、肺気腫、無気肺、肺炎の原因に。
・嵌頓異物がチェックバルブとなり陽圧換気により肺の過膨張をきたす可能性もある。
2)麻酔法および術中管理
1. フルストマック対策としてどのような処置をしますか?
・夕食後6時間待てるか主治医と相談
・ファモチジン1mg/kg等の前投与
・入室前に静脈路を確保し、rapid sequence induction
・もしくは異物が移動して換気不可能になる可能性もあるため、緩徐導入で麻酔深度が十分になった段階で輪状軟骨圧迫、補助換気が可能なことを確かめてから筋弛緩薬を投与する方が安全な可能性あり
2. 喉頭鏡の種類・サイズ、チューブのサイズはどのようなものを選びますか?
・喉頭鏡:Macintosh 2かMiller 2
・チューブ:4.5か5.0 カフなし
3. 術中の麻酔法はどのようにしますか?
・純酸素、セボフルラン2.5%程度。人工呼吸管理。適宜フェンタニル1ug/kgを静注する。
・手技は硬性気管支鏡もしくは軟性気管支鏡からの鉗子による摘出。断続的に呼吸を止める必要があるので、吸入麻酔薬の濃度低下による術中覚醒と、低酸素血症に注意する。換気中断時に低酸素にならないように純酸素で換気する方がよいと考える。
・豆が気管チューブを通らなければ、ファイバー観察下に気管チューブごと抜去して再挿管することもある。上気道の浮腫が強くなければ、であろうが。
・摘出後に生食で気管内洗浄を十分に。
・異物摘出後は喉頭気道浮腫予防にデキサメサゾン0.2mg/kg投与
3)周術期危機管理
1. 術中低酸素血症の鑑別診断と治療について述べて下さい。
・手術操作による換気中断や低換気
・豆による気管閉塞・無気肺
・喘息発作
・アナフィラキシー
4)術後管理
1. 抜管直後から、吸気時にヒューヒュー音が聴取された。鑑別診断は何か。その治療は何か。
・上気道狭窄によるなので、
・咽頭・喉頭浮腫、喉頭蓋腫脹、喉頭痙攣、
・舌根沈下、扁桃肥大によるもの
などが考えられる。
いずれの場合も100%酸素をマスクで投与、自発呼吸があるようならば、愛護的に、上気道が開通するように顔の向きを修正し下顎挙上を行う。喉頭痙攣を疑うならばマスクを完全にフィットさせLaryngospasm notchを圧迫するように強く下顎挙上、持続PEEPで解除させるのを待つ。低酸素・徐脈になる前にアトロピンとSCCを手元に準備してもらい、再挿管を考慮する。いずれにせよ術操作に伴う気道浮腫増悪の可能性があるため、術直後抜管の判断は慎重に行ったほうがよい。夜間の緊急手術であれば、日中まで鎮静・人工呼吸管理とすることも考慮する。術後の肺炎の発生にも注意が必要である。
@参考にした文献など。大変勉強になりました。
・臨床小児麻酔ハンドブック改訂第2版.2008年.診断と治療社 p182-3
・日臨麻会誌 Vol. 29: 65-68, (2009) .
・気道異物35症例の周術期管理麻酔. 56巻9号 Page1065-1070(2007.09)
・近畿大学医学雑誌30巻1号 Page7-10(2005.06)
・気道異物症例の周術期管理. 日臨麻会誌 Vol. 31: 946-951, (2011) .(2012年3月10日追加)
2011年9月20日火曜日
(麻) 麻酔科専門医認定試験口頭試験-2006年症例6 脊髄くも膜下麻酔
専門医試験の口頭試問って、どうしてこう、ちょっと肥満な人が多いんだろ。
症例
・71 歳女性。154cm、82kg。
・子宮脱に対して膣式子宮全摘術が予定。
・10 年前から高血圧で内服治療中。術前血圧は166/89 mmHg。
・脊髄くも膜下麻酔が施行された。
質問
1)術前評価と管理
1.この患者の術前の問題点を列挙。
・BMI34.5
・コントロール不良の高血圧
2)麻酔法および術中管理
1. 通常は同手術で,脊髄くも膜下麻酔単独で施行する場合どのように行うか?
・高比重ブピバカイン2.0ml程度をL3/4から側臥位で施行。Th10までの麻酔高上昇を確認。
2. 15 分後に右優位のS 領域の知覚低下のみが得られた。脊麻後の麻酔効果が十分に得られない原因を列挙
・クモ膜下腔に入った薬液量が少ない(途中で針先がずれて孔の一部が硬膜外腔等にある or 途中で薬液がこぼれた、など)
・注入した椎間が低い位置だった
・他疾患の合併(くも膜のう胞)など
3.どのように対処するか?
・初回投与量が2.0ml程度であれば、1椎間上から2.0ml(私ならmax4.0mlにする)を投与して効果判定。2回目で麻酔高の上昇が不十分ならば全身麻酔。
・もしくは本症例では下記のようにTNSの危険因子が複数あるので、再施行せず全身麻酔にする、という方針をとる可能性もある。
3)周術期危機管理
翌日、朝、外科医から連絡があり両側大腿部後面に知覚鈍磨と尿閉があるのとの報告を受けた。
1. 鑑別診断を列挙。
・穿刺による神経損傷
・TNS(transient neurologic symptoms; 一過性神経障害、100例に1例くらい。テトラカインとブピバカイン使用で。リドカイン,砕石位,外来手術,肥満,フェニレフリンの添加が危険因子。症状の特徴は,臀部,大腿,ふくらはぎの外側に放散する痛み,または異常感覚で,脊麻の回復から24時間以内に発症し,数日から1週間で消失する。NSAIDが効く)
・馬尾症候群(11万件に1件くらい)
・脊髄くも膜下血腫
・硬膜外血腫(脊麻後、血液逆流ない場合は320000例に1件くらい。報告によっては3万件に1件)、膿瘍
2.脊髄くも膜下麻酔で手術後の神経障害の考えられる原因を列挙
上記
3.麻酔科医としてどのような指示をするか列挙して下さい。
・神経内科医に併診を依頼して、神経所見・鑑別診断を上げてもらう。
・血腫や腰椎疾患を否定するためにMRIの撮影を行う
・血腫があれば手術を考慮
・血腫がなければビタミンB12やステロイド投与をして経過観察。10数日~数カ月の経過で改善してくる可能性がある。
・連日患者さんの診察に自分で行く
@参考文献
・脊髄くも膜嚢胞のため、脊髄くも膜下麻酔の効果発現が不十分であった帝王切開症例. 麻酔58巻12号 Page1521-1523(2009.12)
・凝固異常のない患者で起こった脊髄くも膜下麻酔後の脊髄くも膜下血腫の1症例. 麻酔58巻4号 Page456-459(2009.04)
・27G穿刺針による脊髄くも膜下麻酔後に硬膜外血腫を生じた1症例. 麻酔58巻4号 Page456-459(2009.04)
・脊髄くも膜下麻酔時の局所麻酔薬による神経障害. 日本医事新報4344号 Page63-69(2007.07)
・硬膜外麻酔ならびに脊髄くも膜下麻酔に伴う神経損傷 麻酔関連偶発症例調査2004の集計結果より. 麻酔56巻4号 Page469-480(2007.04)
(麻) 麻酔科専門医認定試験口頭試験-2006年症例10-DCM 頻拍発作
本当に恐ろしいのは、DCMという診断がついてない状態で手術室に来てしまうことだと思う。
***
症例
・55 歳男性。160 cm、75 kg。
・早期胃癌に対し胃切除術予定。
・拡張型心筋症を合併、術前TTEで左室駆出率は25%。
・血清Crは1.8 mg/dl 。
1)術前評価と管理
1. この患者の術前状態における問題点を列挙。
・1度肥満 BMI29.2
・DCMで低心機能である
・心不全によるものか、腎疾患によるものか不明だが腎機能障害がある。(簡易式ではCCr 49ml/min)
2. 術前に必要な検査。
・血算、生化、凝固、感染症、胸部腹部Xp、心電図(洞調律なのか、心室性不整脈はないか)、BNP値、ドブタミン負荷心エコー(EFの改善度や不整脈の出現の評価)
・Cr値が上昇しているので利益が不利益に勝ればだが、CAGで冠動脈疾患の有無を見たい
・肥満があるため問診と身体所見から睡眠時無呼吸症候群(SAS)が疑われるようならば、術後の低酸素を避けるべく睡眠時ポリソムノグラフィ検査→CPAP導入をしてもよいと考える。胃癌の進行度および、診療体制によるだろうが。
(補:検査ではないが、既往歴、心不全の既往や治療歴、失神の既往、NYHA分類、内服薬、Cr値上昇の理由を知りたい。TTEの情報では弁逆流や左室内、左房内血栓の有無も知りたい)
*DCMの麻酔管理の原則
・麻酔薬による心筋抑制を最小限にする
・後負荷の上昇を避ける
・循環血液量を維持する
2)麻酔法および術中管理
1. 麻酔法の選択およびその理由について。
抗凝固薬等の内服等の禁忌事項がなければ、硬膜外麻酔併用の全身麻酔(気管挿管)を行う。上腹部切開は術後痛が強い。術後の呼吸機能悪化によって心仕事量が増えることは避けたい。また、術後痛がコントロール出来ないと、交感神経活動が亢進し、術後の血行動態が悪化する可能性がある。
2. 麻酔導入はどのように行うか?具体的に。
・局所麻酔下に動脈圧ライン(洞調律で過度のARなければVigileo-FloTracにて)を挿入。
・麻酔導入はフェンタニル0.2-0.3mg(or ± レミフェンタニル)、ミダゾラム5mg(±プロポフォール)、ロクロニウム60mgで行う。喉頭蓋・声門周囲にリドカインスプレーをして、血圧上昇・頻拍を避けるように細心の注意を払って挿管する。早期胃癌であれば急速導入で良いと考えるが、内視鏡所見や自覚症状などから誤嚥の危険性が高いようならば迅速導入を考慮。気道確保は、肥満があるため、手元に経口エアウェイやLMAを準備した状態で。
・麻酔維持は低濃度のセボフルラン1-1.2%程度とレミフェンタニル0.25γ程度で行う。術中の血行動態維持のためDOAやDOB3-5γ程度,塩酸オルプリノン0.2γ程度を併用する。
・麻酔導入後にCVC、PACを挿入する。
・末梢動脈疾患等の禁忌がなければ、IABPはスタンバイしておいた方がよいと考える。
・DCMに合併する致死性不整脈に備えて経皮ペーシングパッドか体外式除細動器を準備しておいたほうが良いと考える。薬剤はアミオダロンかニフェカラントを準備。
3. 術中に必要とされるモニタリングの選択とその理由。
・FloTrac-VigileoによってSVV,SV,CIの経時的評価
・PACで肺動脈圧、PAWP、SvO2の経時的評価
・CVPは過度の上昇がないかチェック。脱水のチェックには利用しない。
・胃の手術なのでTEEは使用しない
4. 本症例での硬膜外麻酔の使用法について。
過度の血圧低下によって致死性不整脈が術中に発生する可能性があるので、少量投与を原則とする。術中はボーラス投与は行わず、4ml/h程度の使用に留め、鎮痛は主にremifentanilやfentanylで行う。術終盤に血行動態が安定していれば2,3mlずつ局麻を投与し、覚醒時の疼痛がないように努める。
3)術後管理
1. 術後鎮痛と術後注意すべきことは。
・手術が短時間で終了し、出血が少なく、低体温でなく、循環動態が安定していれば手術室内抜管を考慮。抜管の有無に関係なくICUに入室する。
・鎮痛:硬膜外麻酔(0.2%ロピバカインor0.25%レボブピバカイン + フェンタニル2-5ug/ml)を4-6ml/h(2-4ml/1 push, lockout 10-20min)で行う
・術後注意点:輸液過多/過小、不整脈の発生、肥満や麻薬過投与による呼吸抑制
@参考文献
・塩酸オルプリノンが有効であった低心機能非心臓手術3症例の麻酔経験. 麻酔54巻7号 Page757-761(2005.07)
・拡張型心筋症を合併する患者の非心臓手術の麻酔管理. 麻酔53巻12号 Page1360-1368(2004.12)
・他
***
症例
・55 歳男性。160 cm、75 kg。
・早期胃癌に対し胃切除術予定。
・拡張型心筋症を合併、術前TTEで左室駆出率は25%。
・血清Crは1.8 mg/dl 。
1)術前評価と管理
1. この患者の術前状態における問題点を列挙。
・1度肥満 BMI29.2
・DCMで低心機能である
・心不全によるものか、腎疾患によるものか不明だが腎機能障害がある。(簡易式ではCCr 49ml/min)
2. 術前に必要な検査。
・血算、生化、凝固、感染症、胸部腹部Xp、心電図(洞調律なのか、心室性不整脈はないか)、BNP値、ドブタミン負荷心エコー(EFの改善度や不整脈の出現の評価)
・Cr値が上昇しているので利益が不利益に勝ればだが、CAGで冠動脈疾患の有無を見たい
・肥満があるため問診と身体所見から睡眠時無呼吸症候群(SAS)が疑われるようならば、術後の低酸素を避けるべく睡眠時ポリソムノグラフィ検査→CPAP導入をしてもよいと考える。胃癌の進行度および、診療体制によるだろうが。
(補:検査ではないが、既往歴、心不全の既往や治療歴、失神の既往、NYHA分類、内服薬、Cr値上昇の理由を知りたい。TTEの情報では弁逆流や左室内、左房内血栓の有無も知りたい)
*DCMの麻酔管理の原則
・麻酔薬による心筋抑制を最小限にする
・後負荷の上昇を避ける
・循環血液量を維持する
2)麻酔法および術中管理
1. 麻酔法の選択およびその理由について。
抗凝固薬等の内服等の禁忌事項がなければ、硬膜外麻酔併用の全身麻酔(気管挿管)を行う。上腹部切開は術後痛が強い。術後の呼吸機能悪化によって心仕事量が増えることは避けたい。また、術後痛がコントロール出来ないと、交感神経活動が亢進し、術後の血行動態が悪化する可能性がある。
2. 麻酔導入はどのように行うか?具体的に。
・局所麻酔下に動脈圧ライン(洞調律で過度のARなければVigileo-FloTracにて)を挿入。
・麻酔導入はフェンタニル0.2-0.3mg(or ± レミフェンタニル)、ミダゾラム5mg(±プロポフォール)、ロクロニウム60mgで行う。喉頭蓋・声門周囲にリドカインスプレーをして、血圧上昇・頻拍を避けるように細心の注意を払って挿管する。早期胃癌であれば急速導入で良いと考えるが、内視鏡所見や自覚症状などから誤嚥の危険性が高いようならば迅速導入を考慮。気道確保は、肥満があるため、手元に経口エアウェイやLMAを準備した状態で。
・麻酔維持は低濃度のセボフルラン1-1.2%程度とレミフェンタニル0.25γ程度で行う。術中の血行動態維持のためDOAやDOB3-5γ程度,塩酸オルプリノン0.2γ程度を併用する。
・麻酔導入後にCVC、PACを挿入する。
・末梢動脈疾患等の禁忌がなければ、IABPはスタンバイしておいた方がよいと考える。
・DCMに合併する致死性不整脈に備えて経皮ペーシングパッドか体外式除細動器を準備しておいたほうが良いと考える。薬剤はアミオダロンかニフェカラントを準備。
3. 術中に必要とされるモニタリングの選択とその理由。
・FloTrac-VigileoによってSVV,SV,CIの経時的評価
・PACで肺動脈圧、PAWP、SvO2の経時的評価
・CVPは過度の上昇がないかチェック。脱水のチェックには利用しない。
・胃の手術なのでTEEは使用しない
4. 本症例での硬膜外麻酔の使用法について。
過度の血圧低下によって致死性不整脈が術中に発生する可能性があるので、少量投与を原則とする。術中はボーラス投与は行わず、4ml/h程度の使用に留め、鎮痛は主にremifentanilやfentanylで行う。術終盤に血行動態が安定していれば2,3mlずつ局麻を投与し、覚醒時の疼痛がないように努める。
3)術後管理
1. 術後鎮痛と術後注意すべきことは。
・手術が短時間で終了し、出血が少なく、低体温でなく、循環動態が安定していれば手術室内抜管を考慮。抜管の有無に関係なくICUに入室する。
・鎮痛:硬膜外麻酔(0.2%ロピバカインor0.25%レボブピバカイン + フェンタニル2-5ug/ml)を4-6ml/h(2-4ml/1 push, lockout 10-20min)で行う
・術後注意点:輸液過多/過小、不整脈の発生、肥満や麻薬過投与による呼吸抑制
@参考文献
・塩酸オルプリノンが有効であった低心機能非心臓手術3症例の麻酔経験. 麻酔54巻7号 Page757-761(2005.07)
・拡張型心筋症を合併する患者の非心臓手術の麻酔管理. 麻酔53巻12号 Page1360-1368(2004.12)
・他
2011年9月17日土曜日
(麻) 麻酔科専門医試験の過去5年分の実技試験(並べ直しただけだけど)
公開されている問題を領域別にまとめると以下のようになるようです。
( )内は出題年。
@気道管理関連
・呼気終末二酸化炭素モニター(2007)
・経鼻挿管(2008,2007,2006)
・Difficult airway management (成人、小児) (2010,2009)
・分離肺換気,気管支鏡(2010,2007)
・迅速導入(2008,2007)
・ラリンジアルマスク(2006)
・アンビューバッグ(2006)
・緊急気道確保(2008)
@急変時対応、ACLS(PSVT,AF,VT)(2010,2009,2008,2007,2006)
@カテーテル挿入
・中心静脈カテーテル(試験穿刺まで、超音波装置)(2007,2006)
・肺動脈カテーテル(2010,2009)
@神経ブロック
・硬膜外麻酔(2010,2009, 2006)
・仙骨硬膜外麻酔(2010,2006)
・閉鎖神経ブロック(2008)
@その他
・体位変換(2009)
・IABP(2010)
・ペースメーカ(2010)
この中だと…IABPとDAMをもう少し補強する必要があるな。あとは体位変換とペースメーカーとPACとACLSと…って結局全部になるんだろうが。
・IABPは
“補助循環作動時の麻酔科医の役割”. 日臨麻会誌 Vol. 27: 665-674, (2007) .
http://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsca/27/7/27_665/_article/-char/ja
・DAMは
“Difficult airway management(DAM)におけるファイバースコープガイド下気管挿管の現状と今後”. 日臨麻会誌 Vol. 30: 567-576, (2010) .
http://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsca/30/4/567/_pdf/-char/ja/
“Difficult Airway Management (DAM) スタンダード”. 日臨麻会誌 Vol. 29: 780-787, (2009) .
http://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsca/29/7/780/_pdf/-char/ja/
“小児麻酔におけるリスクマネジメント: 挿管困難”. 日臨麻会誌 Vol. 29: 258-265, (2009) .
http://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsca/29/3/258/_pdf/-char/ja/
他は教科書等で補おうかな・・・。
・小児麻酔Q&A. 麻酔科学レクチャー Vol.2 No.1 2010 p85-90
アンビューバッグとか意外に盲点な気がする。構造とか。
( )内は出題年。
@気道管理関連
・呼気終末二酸化炭素モニター(2007)
・経鼻挿管(2008,2007,2006)
・Difficult airway management (成人、小児) (2010,2009)
・分離肺換気,気管支鏡(2010,2007)
・迅速導入(2008,2007)
・ラリンジアルマスク(2006)
・アンビューバッグ(2006)
・緊急気道確保(2008)
@急変時対応、ACLS(PSVT,AF,VT)(2010,2009,2008,2007,2006)
@カテーテル挿入
・中心静脈カテーテル(試験穿刺まで、超音波装置)(2007,2006)
・肺動脈カテーテル(2010,2009)
@神経ブロック
・硬膜外麻酔(2010,2009, 2006)
・仙骨硬膜外麻酔(2010,2006)
・閉鎖神経ブロック(2008)
@その他
・体位変換(2009)
・IABP(2010)
・ペースメーカ(2010)
この中だと…IABPとDAMをもう少し補強する必要があるな。あとは体位変換とペースメーカーとPACとACLSと…って結局全部になるんだろうが。
・IABPは
“補助循環作動時の麻酔科医の役割”. 日臨麻会誌 Vol. 27: 665-674, (2007) .
http://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsca/27/7/27_665/_article/-char/ja
・DAMは
“Difficult airway management(DAM)におけるファイバースコープガイド下気管挿管の現状と今後”. 日臨麻会誌 Vol. 30: 567-576, (2010) .
http://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsca/30/4/567/_pdf/-char/ja/
“Difficult Airway Management (DAM) スタンダード”. 日臨麻会誌 Vol. 29: 780-787, (2009) .
http://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsca/29/7/780/_pdf/-char/ja/
“小児麻酔におけるリスクマネジメント: 挿管困難”. 日臨麻会誌 Vol. 29: 258-265, (2009) .
http://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsca/29/3/258/_pdf/-char/ja/
他は教科書等で補おうかな・・・。
・小児麻酔Q&A. 麻酔科学レクチャー Vol.2 No.1 2010 p85-90
アンビューバッグとか意外に盲点な気がする。構造とか。
2011年9月10日土曜日
(麻) 高カリウム血症~古の香り漂うこの重要なイシュー
術前は基準値内で経過していたにもかかわらず、麻酔導入後5.1→その3時間後5.8mEq/Lまで上昇したので調べてみた。
定義:一般的には5.5mEq/Lを超えること
一般的に考えられる原因と本症例における考察
・術前内服薬:全くなし。ジギタリス中毒も無い
・高血糖による細胞外移行。インスリン抵抗性:なし
・偽牲高カリウム血症:動脈圧ラインからの採血のため、可能性は低かろう
・CKD:なし
・虚血再還流:なし
・悪性高熱症:なし
・低アルドステロン血症:おそらくなし
・tumor lysis syndrome:なし
・呼吸性/代謝性アシドーシス:なし
となれば、術中使用の薬剤?
薬剤性だとしたら…
@腎臓から排泄低下
ACE inhibitor(レニベース等)
ARB (angiotensin receptor blocker) (ミカルディス等)
cyclosporine(ネオーラル等):主細胞の血管側膜Na-K-ATPaseを抑制し、尿中へのK分泌を減少
K-sparing diuretics(アルダクトンA等):鉱質コルチコイド受容体に結合
heparin(ヘパリンナトリウム等)
NSAIDs(オステラック等)
pentamidine(ベナンバックス等):主細胞の尿管腔側膜Naチャネルをブロックし尿中へのK分泌を減少
sulfamethoxadole-trimethoprim(バクタ等)
@製剤からの摂取
potassium penicillin(ペニシリンGカリウム等)
輸血
@細胞内から移行する
beta blockers(インデラル等)
succinylcholine(サクシン等)
digitalis(ラニラピッド等)
が高カリウム血症の原因薬剤として一般的に挙げられる。本症例で…可能性があるとしたら「動脈圧ライン中のヘパリン」???いや、まさか…。
ヘパリンはアルドステロン合成阻害によって高カリウムになる(ACEIやARBやNSAIDsと同様)が、
Am J Med. 1995 Jun;98(6):575-86. によれば
Heparin and its congeners are predictable, potent inhibitors of aldosterone production. This inhibitory effect is specific for the zona glomerulosa; other corticosteroids are not affected. Aldosterone suppression occurs within a few days of initiation of therapy, is reversible, and is independent of either anticoagulant effect or route of administration. Decreases in aldosterone levels may occur with heparin dosages as low as 5,000 U BID. The most important, but probably not the only mechanism of aldosterone inhibition appears to involve reduction in both the number and affinity of the angiotensin-II receptors in the zona glomerulosa. Prolonged use of heparin causes marked reduction in the width of the adrenal zona glomerulosa.
この記載を根拠とするならば、恐らく、ヘパリンによる高カリウム血症の発症には数日を要する。動脈圧ライン中のヘパリンが体内に移行した量は、精々、2000単位/500mlのうちの20ml=80単位だろう。うーん。可能性は低そうである。
本症例の術中に(高カリウム血症発症前に)使用した薬剤において、添付文書を中心とした解釈では以下のように考えられる。
・プロポフォール:あり(頻度不明)
・ロクロニウム:なし
・レミフェンタニル:あるかも…(http://www.info.pmda.go.jp/fsearchnew/fukusayouMainServlet?scrid=SCR_LIST&evt=SHOREI&pID=8219401%20%20%20%20%20&name=%A5%D5%3F&fuku=&root=3&srtnendo=2&type=1&page_max=100&page_no=1)には報告があるが、いずれもCKDを合併している
・フェンタニル:なし
・セファロスポリン:あり
・リドカイン(局麻):なし
・レボブピバカイン:なし
以上の考察を大雑把にした後に、結局5.8mEq/Lになった時点で痺れを切らして「抗生剤か症例報告モノ的頻度の薬剤性だろう」と結論付けて輸液を1号液と生食にチェンジしてカルシウムを注射してしまった。経過を見ていれば6→7→心停止に突入したのだろうか…。もう少しだけ経過観察してみたかったが、「経過観察中にいきなり骨盤静脈叢から大出血して大量輸血になったら輸血で高カリウムがさらに増悪するかも、そうしたら大出血する前に高カリウム血症を認識しておきながら放置した注意義務違反を法廷で問われるかもしれない。あぁでも心停止するくらいの大量の血液製剤がこの病院ですぐに運ばれてくるのだろうか???すぐこなければ輸血がくるまで生食で押すのか?生食ばっかり入れたらアシドーシスになるだろうから、それに伴って高カリウムになるんだろうか?アルブミン?アルブミン製剤ってカリウム入っているのか…?いや、まてよ、輸血しなくてもこの後いきなり術中にAF tachycardiaになったらどうしよう?ベータブロッカを投与したら細胞内からカリウムが移行して矢張り高カリウム血症になるんだろうか??その場合でも注意義務違反を問われるのだろうか????」という妄想に負けた私。患者さんの為というより自分の精神衛生上の介入だったかも…と、ほんのり自己嫌悪に陥るが、高カリウムは高カリウムだったので、介入してよかったのだろう。
参考webや文献等
・http://www.ne.jp/asahi/akira/imakura/hyperkalemia.htm
・LiSA 2010年3月号p262-271
定義:一般的には5.5mEq/Lを超えること
一般的に考えられる原因と本症例における考察
・術前内服薬:全くなし。ジギタリス中毒も無い
・高血糖による細胞外移行。インスリン抵抗性:なし
・偽牲高カリウム血症:動脈圧ラインからの採血のため、可能性は低かろう
・CKD:なし
・虚血再還流:なし
・悪性高熱症:なし
・低アルドステロン血症:おそらくなし
・tumor lysis syndrome:なし
・呼吸性/代謝性アシドーシス:なし
となれば、術中使用の薬剤?
薬剤性だとしたら…
@腎臓から排泄低下
ACE inhibitor(レニベース等)
ARB (angiotensin receptor blocker) (ミカルディス等)
cyclosporine(ネオーラル等):主細胞の血管側膜Na-K-ATPaseを抑制し、尿中へのK分泌を減少
K-sparing diuretics(アルダクトンA等):鉱質コルチコイド受容体に結合
heparin(ヘパリンナトリウム等)
NSAIDs(オステラック等)
pentamidine(ベナンバックス等):主細胞の尿管腔側膜Naチャネルをブロックし尿中へのK分泌を減少
sulfamethoxadole-trimethoprim(バクタ等)
@製剤からの摂取
potassium penicillin(ペニシリンGカリウム等)
輸血
@細胞内から移行する
beta blockers(インデラル等)
succinylcholine(サクシン等)
digitalis(ラニラピッド等)
が高カリウム血症の原因薬剤として一般的に挙げられる。本症例で…可能性があるとしたら「動脈圧ライン中のヘパリン」???いや、まさか…。
ヘパリンはアルドステロン合成阻害によって高カリウムになる(ACEIやARBやNSAIDsと同様)が、
Am J Med. 1995 Jun;98(6):575-86. によれば
Heparin and its congeners are predictable, potent inhibitors of aldosterone production. This inhibitory effect is specific for the zona glomerulosa; other corticosteroids are not affected. Aldosterone suppression occurs within a few days of initiation of therapy, is reversible, and is independent of either anticoagulant effect or route of administration. Decreases in aldosterone levels may occur with heparin dosages as low as 5,000 U BID. The most important, but probably not the only mechanism of aldosterone inhibition appears to involve reduction in both the number and affinity of the angiotensin-II receptors in the zona glomerulosa. Prolonged use of heparin causes marked reduction in the width of the adrenal zona glomerulosa.
この記載を根拠とするならば、恐らく、ヘパリンによる高カリウム血症の発症には数日を要する。動脈圧ライン中のヘパリンが体内に移行した量は、精々、2000単位/500mlのうちの20ml=80単位だろう。うーん。可能性は低そうである。
本症例の術中に(高カリウム血症発症前に)使用した薬剤において、添付文書を中心とした解釈では以下のように考えられる。
・プロポフォール:あり(頻度不明)
・ロクロニウム:なし
・レミフェンタニル:あるかも…(http://www.info.pmda.go.jp/fsearchnew/fukusayouMainServlet?scrid=SCR_LIST&evt=SHOREI&pID=8219401%20%20%20%20%20&name=%A5%D5%3F&fuku=&root=3&srtnendo=2&type=1&page_max=100&page_no=1)には報告があるが、いずれもCKDを合併している
・フェンタニル:なし
・セファロスポリン:あり
・リドカイン(局麻):なし
・レボブピバカイン:なし
以上の考察を大雑把にした後に、結局5.8mEq/Lになった時点で痺れを切らして「抗生剤か症例報告モノ的頻度の薬剤性だろう」と結論付けて輸液を1号液と生食にチェンジしてカルシウムを注射してしまった。経過を見ていれば6→7→心停止に突入したのだろうか…。もう少しだけ経過観察してみたかったが、「経過観察中にいきなり骨盤静脈叢から大出血して大量輸血になったら輸血で高カリウムがさらに増悪するかも、そうしたら大出血する前に高カリウム血症を認識しておきながら放置した注意義務違反を法廷で問われるかもしれない。あぁでも心停止するくらいの大量の血液製剤がこの病院ですぐに運ばれてくるのだろうか???すぐこなければ輸血がくるまで生食で押すのか?生食ばっかり入れたらアシドーシスになるだろうから、それに伴って高カリウムになるんだろうか?アルブミン?アルブミン製剤ってカリウム入っているのか…?いや、まてよ、輸血しなくてもこの後いきなり術中にAF tachycardiaになったらどうしよう?ベータブロッカを投与したら細胞内からカリウムが移行して矢張り高カリウム血症になるんだろうか??その場合でも注意義務違反を問われるのだろうか????」という妄想に負けた私。患者さんの為というより自分の精神衛生上の介入だったかも…と、ほんのり自己嫌悪に陥るが、高カリウムは高カリウムだったので、介入してよかったのだろう。
参考webや文献等
・http://www.ne.jp/asahi/akira/imakura/hyperkalemia.htm
・LiSA 2010年3月号p262-271
2011年9月7日水曜日
(麻) 麻酔科専門医認定試験2010-症例4‐2 甲状腺癌、挿管困難difficult airway management
症例
・58歳の女性。高血圧に内服中。158cm/88kg
・甲状腺癌
・気管軽度圧迫。気管粘膜までの浸潤はない
・甲状腺摘出術が予定
質問
1) 術前評価
1.この患者の術前での問題点
・高血圧
・3度肥満、BMI35.2
・気管を圧迫する甲状腺癌のため気道確保に注意が必要
・嗄声があるかも
・甲状腺機能異常があるかも(動悸、脱力感や倦怠感、手足振戦、体重減少、異常発汗、便通異常、体毛異常、下腿浮腫)
2) 麻酔管理について
1.導入前10分以上かけて純酸素を十分投与。呼吸循環状態は安定しており、チオペンタール200mg静脈内注射を行った。意識消失したので、マスクを当てて用手的気道確保を行い、バックを押そうとしましたが換気できない。仮に、呼吸停止をきたしてなんら適切な処置がなされなかったとしたら、何分程度でSaO2が90%以下になるか。
・Anesth Analg 1991;72:89-93によれば中等度肥満BMI32.1±0.8にて4.1分。高度肥満者BMI43.2±1.6では2.7分とあり、3-4分で90%以下になると想像される。
因みに非肥満者では6.1分。
2.原因として何を考えるか。その対処法についても述べる。
A.肥満による解剖学的変化
・咽頭周囲の軟部組織の増大による上気道の狭小化
・咽頭開大筋(主にオトガイ舌筋)の活動低下
・顔面の形態異常(顔が大きい)
・頭部後屈制限
対処法:2人法を行っていなければ2人法を行い、バッグ換気と下顎保持を別々に分担する。スニッフィングポジションをしっかりとる。改善しなければLMA等の上喉頭換気デバイスを挿入する。
その後、筋弛緩薬が投与されていなければ、頭高位にして覚醒を待ち、意識下挿管を行う。
もしくは喉頭展開が困難でない(開口が3.5cm以上、甲状頤間距離が6cm以上、頭部後屈十分、小顎でない、動揺歯がない、など)ことが予想されれば、LMA等で十分に酸素化を再度行った後に挿管を試みる。
B.浅麻酔で喉頭痙攣
対処法:麻酔薬を追加して深い麻酔にする。
3) 気道確保
チオペンタールを追加し、マスク換気が可能となった。ロクロニウム80mg投与し、筋弛緩を得て喉頭展開を試みた。開口するが、咽喉頭の視野が確保できない。
1.気管挿管に入る前に何をするか。考えられるものをすべて挙げる。
・まず冷静になり、喉頭鏡に固執して何回も喉頭展開しないように自分を戒める。
・2,3回試行して無理ならば他の麻酔科医に手を変えるか、早々に他のデバイスでの挿管に変更する。
・手元にガムエラスティックブジー、マッコイ喉頭鏡、気管支ファイバー、AWS、挿管用LMA、i-gel等のデバイスをもってきてもらう
2.気管挿管のための補助器具には具体的にどのようなものがあるか。
上記の補助器具。
3.それでも気管挿管ができないときはどうするか。
・上気道デバイスを挿入して気道確保する
・筋弛緩薬をリバースして自発呼吸温存下に経口ないし経鼻挿管を試みる
4) 術後管理について
1.挿管困難であったが気管挿管下で甲状腺摘出術が無事行われた。術後合併症について可能性のある病態を挙げる。
・術後副甲状腺機能低下症、低カルシウム血症
・反回神経麻痺
・両側反回神経麻痺
・術後出血
・気胸
・乳縻
・舌下神経麻痺
・創部感染
・肺炎
2.術後手術部位の出血を認め、気道狭窄症状を呈した。緊急手術の依頼を受ける。どのような管理にするか。
・まず「私が経口or経鼻気管挿管をしなくちゃ!という考えに固執しないこと」を頭に思い浮かべる
・挿管困難だったので、恐らく経口/経鼻挿管は相当困難だろう。
・創解放で頸部圧を解除すると挿管が容易になる場合があり。その際に気管も確認できればそのまま局麻下に気管切開してもらう方法もある。
・手術室の入室を待てない程に切迫した呼吸状態であれば、病棟で気管切開してもらうことも提案する。
・気道も循環も危機的状態になる可能性がありそうならば、PCPSを挿入、管理できる医師に応援を求めるのも一案だろう。
・術後は、上気道の浮腫も合併していれば、気道確保を目的に、術後2‐3日程度は挿管のままの管理をした方が無難だろう。
参考にした論文などです。大変お世話になりました。
・LiSA2010年5月号p.460-463
・LiSA2011年2月号p.122-129
・救命処置・緊急外科的気道管理ガイドブック―換気も挿管もできない!どうする?. 2010年, 真興交易医書出版部
・経皮的心肺補助装置を用いて気道確保し手術を行った甲状腺癌の一例. 頭頸部外科. 2010, Vol. 20, No. 1, p.75-79 .
http://www.jstage.jst.go.jp/article/jjshns/20/1/20_75/_article/-char/ja/
・58歳の女性。高血圧に内服中。158cm/88kg
・甲状腺癌
・気管軽度圧迫。気管粘膜までの浸潤はない
・甲状腺摘出術が予定
質問
1) 術前評価
1.この患者の術前での問題点
・高血圧
・3度肥満、BMI35.2
・気管を圧迫する甲状腺癌のため気道確保に注意が必要
・嗄声があるかも
・甲状腺機能異常があるかも(動悸、脱力感や倦怠感、手足振戦、体重減少、異常発汗、便通異常、体毛異常、下腿浮腫)
2) 麻酔管理について
1.導入前10分以上かけて純酸素を十分投与。呼吸循環状態は安定しており、チオペンタール200mg静脈内注射を行った。意識消失したので、マスクを当てて用手的気道確保を行い、バックを押そうとしましたが換気できない。仮に、呼吸停止をきたしてなんら適切な処置がなされなかったとしたら、何分程度でSaO2が90%以下になるか。
・Anesth Analg 1991;72:89-93によれば中等度肥満BMI32.1±0.8にて4.1分。高度肥満者BMI43.2±1.6では2.7分とあり、3-4分で90%以下になると想像される。
因みに非肥満者では6.1分。
2.原因として何を考えるか。その対処法についても述べる。
A.肥満による解剖学的変化
・咽頭周囲の軟部組織の増大による上気道の狭小化
・咽頭開大筋(主にオトガイ舌筋)の活動低下
・顔面の形態異常(顔が大きい)
・頭部後屈制限
対処法:2人法を行っていなければ2人法を行い、バッグ換気と下顎保持を別々に分担する。スニッフィングポジションをしっかりとる。改善しなければLMA等の上喉頭換気デバイスを挿入する。
その後、筋弛緩薬が投与されていなければ、頭高位にして覚醒を待ち、意識下挿管を行う。
もしくは喉頭展開が困難でない(開口が3.5cm以上、甲状頤間距離が6cm以上、頭部後屈十分、小顎でない、動揺歯がない、など)ことが予想されれば、LMA等で十分に酸素化を再度行った後に挿管を試みる。
B.浅麻酔で喉頭痙攣
対処法:麻酔薬を追加して深い麻酔にする。
3) 気道確保
チオペンタールを追加し、マスク換気が可能となった。ロクロニウム80mg投与し、筋弛緩を得て喉頭展開を試みた。開口するが、咽喉頭の視野が確保できない。
1.気管挿管に入る前に何をするか。考えられるものをすべて挙げる。
・まず冷静になり、喉頭鏡に固執して何回も喉頭展開しないように自分を戒める。
・2,3回試行して無理ならば他の麻酔科医に手を変えるか、早々に他のデバイスでの挿管に変更する。
・手元にガムエラスティックブジー、マッコイ喉頭鏡、気管支ファイバー、AWS、挿管用LMA、i-gel等のデバイスをもってきてもらう
2.気管挿管のための補助器具には具体的にどのようなものがあるか。
上記の補助器具。
3.それでも気管挿管ができないときはどうするか。
・上気道デバイスを挿入して気道確保する
・筋弛緩薬をリバースして自発呼吸温存下に経口ないし経鼻挿管を試みる
4) 術後管理について
1.挿管困難であったが気管挿管下で甲状腺摘出術が無事行われた。術後合併症について可能性のある病態を挙げる。
・術後副甲状腺機能低下症、低カルシウム血症
・反回神経麻痺
・両側反回神経麻痺
・術後出血
・気胸
・乳縻
・舌下神経麻痺
・創部感染
・肺炎
2.術後手術部位の出血を認め、気道狭窄症状を呈した。緊急手術の依頼を受ける。どのような管理にするか。
・まず「私が経口or経鼻気管挿管をしなくちゃ!という考えに固執しないこと」を頭に思い浮かべる
・挿管困難だったので、恐らく経口/経鼻挿管は相当困難だろう。
・創解放で頸部圧を解除すると挿管が容易になる場合があり。その際に気管も確認できればそのまま局麻下に気管切開してもらう方法もある。
・手術室の入室を待てない程に切迫した呼吸状態であれば、病棟で気管切開してもらうことも提案する。
・気道も循環も危機的状態になる可能性がありそうならば、PCPSを挿入、管理できる医師に応援を求めるのも一案だろう。
・術後は、上気道の浮腫も合併していれば、気道確保を目的に、術後2‐3日程度は挿管のままの管理をした方が無難だろう。
参考にした論文などです。大変お世話になりました。
・LiSA2010年5月号p.460-463
・LiSA2011年2月号p.122-129
・救命処置・緊急外科的気道管理ガイドブック―換気も挿管もできない!どうする?. 2010年, 真興交易医書出版部
・経皮的心肺補助装置を用いて気道確保し手術を行った甲状腺癌の一例. 頭頸部外科. 2010, Vol. 20, No. 1, p.75-79 .
http://www.jstage.jst.go.jp/article/jjshns/20/1/20_75/_article/-char/ja/
2011年9月1日木曜日
(麻) 麻酔科専門医認定試験口頭試験2008年症例2 - モルヒネ緩和治療中の直腸癌人工肛門造設術患者の対応
Bloggerの記載フォームがrenewalされている。前のversionより記載スペースが広く見えるようになっており、慣れれば使いやすくなりそうである。
***
こちらもI先生の寄稿を適宜改定させていただきました。この場からも御礼申し上げます。心より感謝いたします。あくまでも回答の一つの案としてご利用ください。リンク先は2011年9月1日現在で開けることを確認しています。
…あと4週間か…。
***
症例
・75歳女性。150cm、46kg。
・直腸癌に対して人工肛門造設術が予定
・脊椎転移の疼痛に対してモルヒネ徐放製剤180mg/日を内服中。
・Hb 8.0g/dl、TP 5.2 g/dl以外に異常検査値なし。
1)術前評価と管理
1.この患者の術前状態における問題点を列挙。
・直腸癌(おそらくイレウス状態または近々イレウスになると予測される)
・ 脊椎への転移ありADLが低下しているだろう。
・ 術前よりオピオイド内服をしている
・ 貧血
・ 低栄養状態
・脱水もあるかもしれない
2.術前に必要な検査を挙げてください。
・ルーチン検査(血算、生化学、スパイロメトリーまたは動脈血液ガス、心電図、胸部レントゲン写真)
*モルヒネを内服しているので、腎機能に注意。(薬理活性をもつM-6G:morphine-6-glucuronideが腎不全患者で代謝が遅延する…というのは筆記試験の過去問でよく出ている)
・活動度が低いと思われるので、深部静脈血栓スクリーニングのためにD-dimmer測定。
・ 現在のオピオイド内服量での疼痛コントロール状況、その他の鎮痛薬や鎮痛補助剤、レスキュードーズの有無、脊椎の痛みだけなのか?など、痛みの評価を行う。
・その他の転移の有無、骨折の有無を確認。必要があれば、画像診断。
2)周術期管理
1.麻酔管理の注意点は。
・麻酔は全身麻酔で行う。脊椎転移があり、また脳転移の可能性もあるので区域麻酔は禁忌となる可能性がある。
・全身麻酔導入時には、誤嚥に注意する。rapid sequence inductionがよいであろう。直腸癌で通過障害があるかもしれないことと麻薬による腸管蠕動の低下の可能性があり、胃内容物はおそらく停滞気味だと予想される。
・術前よりオピオイドを服用しているので、投与経路の変更(経口→経静脈に。モルヒネなら180mg経口→90mg経静脈、と1/2から1/3の量にする *モルヒネの生物学的利用率は33-50%)をして、術前・術中・術後に退薬症状(下痢、鼻漏、発汗、流涙、あくび、身震い、頻脈、高血圧等の自律神経症状や中枢神経症状)を生じさせないようにする。術前はオピオイド基本量は維持する(もしフェンタニルパッチをしていれば、小手術では継続、大手術では数時間前に中止~患者の体温が低下したり体液量の変化を伴うため。因みにフェンタニルパッチ中止後の血中濃度の半減期は16‐17時間)。
・麻酔に使用する鎮静剤と、術前投与の麻薬間との相互作用で、覚醒遅延の可能性がある。BIS測定が有効かもしれない。
・耐性(オピオイドレセプターのダウンレギュレーションが関与しているとされる。)や交差耐性により、手術侵襲に対して術中に使用するオピオイドの投与量の予測が難しい(必ずしも増えるわけではない)。大量投与により、術後の呼吸抑制や覚醒遅延につながる可能性があるので、麻酔覚醒後の呼吸数は12回程度以上あることを確認する。
・禁忌でなければNSAIDを併用する
*モルヒネ(オキシコドンも同様)の退薬症状の経過
・発症:6-18時間
・症状ピーク:36-72時間
・罹患期間:7-10日
*因みにフェンタニルは…
・発症:2-6時間
・症状のピーク:6-12時間
・罹患期間:4-5日
2.術後モルヒネ180mg/日をフェンタニルパッチへ変更する際,何mgフェンタニルパッチを使用したら良いか。(経口のモルヒネ180mg、として回答)
・モルヒネ経口60mg/日 = フェンタニル経皮2.5mg/3daysなので
フェンタニル経皮吸収型製剤(デュロテップMTパッチ)の3日間貼付型製剤8.4mgが妥当であろう。これはフェンタニルとしては50μg/hrの吸収量。(以前のデュロテップパッチで言えば7.5mg/3days)
ただし、作用発現に12-14時間かかるので、開始時期に注意。
*ワンデュロパッチ(1日製剤)なら3.4mgか5mg、フェントステープ(1日製剤)なら4mgか6mg
補) オキシコドン徐放製剤100mg/dayはモルヒネ経口150mg/day。 46C35
3)がん性疼痛を有する患者の全人的ケア
1.がん性疼痛治療におけるWHO 方式の三段階ラダーについて説明。
痛みの強さによる鎮痛薬の選択および鎮痛薬の段階的な使用法を示したものである。
軽度の痛みに対しては、第一段階の非オピオイド鎮痛薬を使用する。
中等度の痛みに対しては、第二段階の「軽度から中等度の強さの痛み」に用いるオピオイドを用いる。
強度の痛みに対しては、第三段階の強オピオイドを用いる。
いずれの段階においても、鎮痛補助薬を必要に応じて追加する。
2.WHO 方式のオピオイド処方時の5 原則を挙げる。
・経口的に
・時間を決めて
・ 除痛ラダーにそって効力の順に
・ 患者ごとの個別的な量で
・ その上で細かい配慮を
3.緩和ケアで用いる麻薬の内,知っているものを挙げてください。
コデイン、モルヒネ、オキシコドン、フェンタニル、トラマドール、ペチジン、ペンタゾシン、ブプレノルフィン
@記載にあたり、参考にしたwebや論文など。大変お世話になりました。
・癌性疼痛患者の周術期オピオイド使用. 合併症患者の麻酔スタンダード、克誠堂出版、2008年、p261-265
・臨床医のくすり箱 医療用麻薬、2011年、南山堂
・Diagnosis and initial treatment of venous thromboembolism in patients with cancer. Clin Oncol. 2009 Oct 10;27(29):4889-94
・オピオイド変換表
http://www.geocities.jp/keisannote/opioidokansanhyou.htm
・ROCKY NOTE
http://rockymuku.sakura.ne.jp/kannwairyou/Durotep.pdf
・Pain Relief
http://www.shiga-med.ac.jp/~koyama/analgesia/analg-opioid.html#narcotic
・がんの痛みの治療
http://blog.livedoor.jp/fumikazutakeda/
***
こちらもI先生の寄稿を適宜改定させていただきました。この場からも御礼申し上げます。心より感謝いたします。あくまでも回答の一つの案としてご利用ください。リンク先は2011年9月1日現在で開けることを確認しています。
…あと4週間か…。
***
症例
・75歳女性。150cm、46kg。
・直腸癌に対して人工肛門造設術が予定
・脊椎転移の疼痛に対してモルヒネ徐放製剤180mg/日を内服中。
・Hb 8.0g/dl、TP 5.2 g/dl以外に異常検査値なし。
1)術前評価と管理
1.この患者の術前状態における問題点を列挙。
・直腸癌(おそらくイレウス状態または近々イレウスになると予測される)
・ 脊椎への転移ありADLが低下しているだろう。
・ 術前よりオピオイド内服をしている
・ 貧血
・ 低栄養状態
・脱水もあるかもしれない
2.術前に必要な検査を挙げてください。
・ルーチン検査(血算、生化学、スパイロメトリーまたは動脈血液ガス、心電図、胸部レントゲン写真)
*モルヒネを内服しているので、腎機能に注意。(薬理活性をもつM-6G:morphine-6-glucuronideが腎不全患者で代謝が遅延する…というのは筆記試験の過去問でよく出ている)
・活動度が低いと思われるので、深部静脈血栓スクリーニングのためにD-dimmer測定。
・ 現在のオピオイド内服量での疼痛コントロール状況、その他の鎮痛薬や鎮痛補助剤、レスキュードーズの有無、脊椎の痛みだけなのか?など、痛みの評価を行う。
・その他の転移の有無、骨折の有無を確認。必要があれば、画像診断。
2)周術期管理
1.麻酔管理の注意点は。
・麻酔は全身麻酔で行う。脊椎転移があり、また脳転移の可能性もあるので区域麻酔は禁忌となる可能性がある。
・全身麻酔導入時には、誤嚥に注意する。rapid sequence inductionがよいであろう。直腸癌で通過障害があるかもしれないことと麻薬による腸管蠕動の低下の可能性があり、胃内容物はおそらく停滞気味だと予想される。
・術前よりオピオイドを服用しているので、投与経路の変更(経口→経静脈に。モルヒネなら180mg経口→90mg経静脈、と1/2から1/3の量にする *モルヒネの生物学的利用率は33-50%)をして、術前・術中・術後に退薬症状(下痢、鼻漏、発汗、流涙、あくび、身震い、頻脈、高血圧等の自律神経症状や中枢神経症状)を生じさせないようにする。術前はオピオイド基本量は維持する(もしフェンタニルパッチをしていれば、小手術では継続、大手術では数時間前に中止~患者の体温が低下したり体液量の変化を伴うため。因みにフェンタニルパッチ中止後の血中濃度の半減期は16‐17時間)。
・麻酔に使用する鎮静剤と、術前投与の麻薬間との相互作用で、覚醒遅延の可能性がある。BIS測定が有効かもしれない。
・耐性(オピオイドレセプターのダウンレギュレーションが関与しているとされる。)や交差耐性により、手術侵襲に対して術中に使用するオピオイドの投与量の予測が難しい(必ずしも増えるわけではない)。大量投与により、術後の呼吸抑制や覚醒遅延につながる可能性があるので、麻酔覚醒後の呼吸数は12回程度以上あることを確認する。
・禁忌でなければNSAIDを併用する
*モルヒネ(オキシコドンも同様)の退薬症状の経過
・発症:6-18時間
・症状ピーク:36-72時間
・罹患期間:7-10日
*因みにフェンタニルは…
・発症:2-6時間
・症状のピーク:6-12時間
・罹患期間:4-5日
2.術後モルヒネ180mg/日をフェンタニルパッチへ変更する際,何mgフェンタニルパッチを使用したら良いか。(経口のモルヒネ180mg、として回答)
・モルヒネ経口60mg/日 = フェンタニル経皮2.5mg/3daysなので
フェンタニル経皮吸収型製剤(デュロテップMTパッチ)の3日間貼付型製剤8.4mgが妥当であろう。これはフェンタニルとしては50μg/hrの吸収量。(以前のデュロテップパッチで言えば7.5mg/3days)
ただし、作用発現に12-14時間かかるので、開始時期に注意。
*ワンデュロパッチ(1日製剤)なら3.4mgか5mg、フェントステープ(1日製剤)なら4mgか6mg
補) オキシコドン徐放製剤100mg/dayはモルヒネ経口150mg/day。 46C35
3)がん性疼痛を有する患者の全人的ケア
1.がん性疼痛治療におけるWHO 方式の三段階ラダーについて説明。
痛みの強さによる鎮痛薬の選択および鎮痛薬の段階的な使用法を示したものである。
軽度の痛みに対しては、第一段階の非オピオイド鎮痛薬を使用する。
中等度の痛みに対しては、第二段階の「軽度から中等度の強さの痛み」に用いるオピオイドを用いる。
強度の痛みに対しては、第三段階の強オピオイドを用いる。
いずれの段階においても、鎮痛補助薬を必要に応じて追加する。
2.WHO 方式のオピオイド処方時の5 原則を挙げる。
・経口的に
・時間を決めて
・ 除痛ラダーにそって効力の順に
・ 患者ごとの個別的な量で
・ その上で細かい配慮を
3.緩和ケアで用いる麻薬の内,知っているものを挙げてください。
コデイン、モルヒネ、オキシコドン、フェンタニル、トラマドール、ペチジン、ペンタゾシン、ブプレノルフィン
@記載にあたり、参考にしたwebや論文など。大変お世話になりました。
・癌性疼痛患者の周術期オピオイド使用. 合併症患者の麻酔スタンダード、克誠堂出版、2008年、p261-265
・臨床医のくすり箱 医療用麻薬、2011年、南山堂
・Diagnosis and initial treatment of venous thromboembolism in patients with cancer. Clin Oncol. 2009 Oct 10;27(29):4889-94
・オピオイド変換表
http://www.geocities.jp/keisannote/opioidokansanhyou.htm
・ROCKY NOTE
http://rockymuku.sakura.ne.jp/kannwairyou/Durotep.pdf
・Pain Relief
http://www.shiga-med.ac.jp/~koyama/analgesia/analg-opioid.html#narcotic
・がんの痛みの治療
http://blog.livedoor.jp/fumikazutakeda/
2011年8月23日火曜日
(麻) 麻酔科専門医認定試験口答試験2010年症例4-1 胸部下行大動脈瘤の切迫破裂
簡単な人には簡単で、難しい人には難しい…のかな、こういう大血管問題って。
明暗が分かれそうですな。
@症例
・76 歳男性。165cm、55kg。
・胸部下行大動脈瘤に対しCPB下での人工血管置換術が予定。
・5 年前に大動脈弁置換術を受けた。
・10 年前よりカプトリル(ACE 阻害薬)、経口血糖降下剤、5年前からワルファリン内服中。明暗が分かれそうですな。
@症例
・76 歳男性。165cm、55kg。
・胸部下行大動脈瘤に対しCPB下での人工血管置換術が予定。
・5 年前に大動脈弁置換術を受けた。
1) 術前評価と管理
1.この患者の術前での問題点を挙げる問題点
・心臓について一通りチェック。運動耐用能はどうか。A弁の動きはどうか、ASやARになっていないか、冠動脈疾患の有無(冠動脈造影所見)、収縮能拡張能はどの程度か、他の弁の動きがどうか。
・高血圧の程度をチェック。術当日のACE阻害薬は中止する
・DMについて程度をチェック。コントロール不良ならばインスリン導入を検討。罹患歴10年と長いので、腎臓・目・末梢神経障害の有無、特に腎機能低下がどの程度かをチェックする。
・抗凝固を術前にヘパリンに変更する
その他で知りたいこと
・頸動脈病変の合併は
・呼吸器や肝機能、腎機能等、他臓器の障害の有無
・TEEを是非使用したいので食道や胃の病変や手術歴の有無
2.手術前にワルファリンを未分画へパリンに変更。ヘパリン開始3 日目に貧血はないが、血小板が22 万から7 万へと低下。原因は?
・血液疾患の可能性もあるが・・・ヘパリン起因性血小板減少症 (heparin-induced thrombocytopenia、以下HIT)を第一に考える。
ヘパリン投与2~3日後の発症ならば、HITのI型の可能性もあるが、I型の場合、10~30%の血小板減少が起こるとされる。本症例では70%程度の減少がみられており、典型的ではない。そのため、時期としては典型例より早い(通常投与開始5~14日後~平均10日位~に発症)が、HIT II型の可能性がある(II型では15万/μl以下の減少、50%の減少)。
以下、聞かれてないのでおまけ:本患者では人工弁のため、抗凝固療法は必須である。 HIT I型ならヘパリンの投与を中止せずとも血小板数は自然に回復し合併症も起こさないが、II型の場合、ヘパリンの持続投与により動静脈塞栓症の危険性が高い。そのため、ヘパリンをただちに中止し、抗PF4・ヘパリン複合体抗体(HIT抗体)を測定し、代替の抗凝固療法(アルガトロバン)の投与を開始するのがよいだろうと考える。
2) 麻酔法および術中管理
1.胸痛が出現し、切迫破裂が疑われたため、緊急手術が行なわれることに。麻酔管理のポイントを挙げる。
(*注)HITではなく、夜間1人で当直している時にかかってきた悪夢のPHS…という設定で答えてみる。
・切迫破裂であればバイタルは安定していると考えられる。抗凝固中で出血の危険性も極めて高いので、待機的に手術できるのであればそちらの方が安全であると考えられる。降圧薬や鎮痛薬投与をして経過観察し、貧血の進行やバイタルの悪化、破裂所見の進行がなければ数日~10数日様子を見て、待機的に手術を行う。
もしショックバイタルなら待てないので当然緊急手術。
~オペ室に来る前にすべきこと~もしショックバイタルなら待てないので当然緊急手術。
・on callの若くてやる気のある麻酔科医(いれば)を呼ぶ。
・輸血の準備を大量にしてもらう(RCC 20U, FFP 20Uをまず)。血小板も必要。麻酔導入時には、輸血が手元にあることが必須。必ず確認。
・ヘパリン置換前、ワルファリン内服中での発症ならビタミンK(ケイツーNなど。10-20mg。アナフィラキシーに注意)を投与してもらう。その際は恐らく止血に大苦戦するだろうからFFPがもっと必要かもしれない。
・術式、体外循環の方法を確認する。下行大動脈ならおそらく右半側臥位のspiral incision(LiSA 2008年6月号p 619)だろうから、分離肺換気を要求されるだろう。左用DLTを入れるためには大動脈瘤で左主気管支が圧排されていないかをCTで確認しておく。また、動脈圧ラインをどこか入れるか(左鎖骨下動脈がクランプされるなら右橈骨動脈から挿入、また大腿動脈の非送血側にA-lineを留置))も予め相談。以上を外科医に確認しておく。・もし家族を呼んで、手術の説明してから手術…であれば、家族を待っている間に外科医に右内頸静脈からCVCとPACを入れてもらう。いろんな余裕があれば気管挿管後の方が安全かもしれないが、その場合でも、麻酔導入前に太い口径の末梢静脈路があった方がよい。
~手術室~
・麻酔導入中に破裂するかもしれないので、麻酔導入前に外科医と機械出しナースが手洗い+ガウン着用をしていることが必要。
・血圧のコントロール。下げすぎず、決して上げすぎず。麻酔導入前にA-lineを必ず挿入。薬はミダゾラム(±ケタミン)、フェンタニル(or レミフェンタニル)、ロクロニウム。もちろんrapid sequenceで。循環変動に即座に対応できるよう、Ca拮抗薬や超短時間作用型βブロッカも吸っておいた方がよいだろう。
・MEPを測定するならプロポフォールやフェンタニルやケタミンで麻酔維持。
・MEPを測定するならプロポフォールやフェンタニルやケタミンで麻酔維持。
2.術中の大動脈遮断により心血管系ではどのような生理学的変化が予想されるか。
・急激な後負荷増大によって、遮断近位側の血圧上昇
左室拡張終期圧の上昇
心負荷の増加
心筋酸素消費量の増加
が起こる
3) 周術期危機管理
1.胸部下行大動脈瘤手術における注意すべき神経学的合併症は何か。その原因と予見するためのモニタリングは何か。・脊髄虚血(Adamkiewicz動脈は90%がTh7-L1)による対麻痺
モニタリング→MEP(motor evoked potential:運動誘発電位):頭皮上に刺激電極を貼って大脳皮質の運動野を刺激して下肢の筋収縮を測定。脊髄運動下降路の障害の有無を経時的にモニタ。術中はMEPの波形が観察されるような血圧で管理を行う必要あり。
(おまけ…SEP(somatosensory evoked potential:体性感覚誘発電位)は脊髄前角の虚血を反映しない。そのためSEPが正常でも対麻痺がおこる可能性がある。)
2.一般的な脊髄保護として考えられる方法を挙げる。
・CSFドレナージ:L3/4かL4/5よりくも膜下にカテーテルを留置。術中は10cmH2Oを超えないようドレナージ。術後数日で抜去する。
・硬膜外冷却法:硬膜外カテーテルから4℃の生食を潅流させる。CSF圧を見ながら。
・低体温(33-34℃程度)
・薬物投与(ナロキソン。ステロイドはヒトにおいてはCSFドレナージと併用でのみ効果あり、とMiller日本語版p1634にあり)
・遠位大動脈潅流
4)接遇問題―歯牙動揺のいきさつと今後の方針を説明をしましょう
~記載のために参考にした文献やWebなど~大変お世話になりました
・ヘパリン起因性血小板減少症患者の大血管手術周術期抗凝固管理. 日本臨床麻酔学会誌 Vol. 28 (2008) , No. 7 951-955
http://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsca/28/7/28_951/_article/-char/ja
・HIT情報センター
http://www.hit-center.jp/contents/hit-genkyo.php
・LiSA別冊'06 胸腹部大動脈瘤手術の脊髄保護戦略
・LiSA2008年6月号p618-629
・心臓手術の実際―外科医が語る術式、臨床工学技士が語る体外循環法(2008年,秀潤社) p154-161
・臨床麻酔2006年9月号 腹部大動脈瘤破裂患者の麻酔管理 p1384-1391
・大動脈外科と脊髄保護─コンセプトの変化と麻酔科の役割─. 日臨麻会誌 Vol. 30: 497-505, (2010) .
http://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsca/30/4/30_497/_article/-char/ja
・脳脊髄循環からみた脊椎外科・大血管外科における脊髄保護. 日臨麻会誌 Vol. 31: 193-201, (2011) .
http://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsca/31/2/31_193/_article/-char/ja/
***
Anesthesiology November 2011 - Volume 115 - Issue 5 - p 1093–1102
にCase Scenario: Anesthetic Considerations for Thoracoabdominal Aortic Aneurysm Repair
が掲載されていますので、知識の復習に。freeです。(2012/2/20追記)
http://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsca/28/7/28_951/_article/-char/ja
・HIT情報センター
http://www.hit-center.jp/contents/hit-genkyo.php
・LiSA別冊'06 胸腹部大動脈瘤手術の脊髄保護戦略
・LiSA2008年6月号p618-629
・心臓手術の実際―外科医が語る術式、臨床工学技士が語る体外循環法(2008年,秀潤社) p154-161
・臨床麻酔2006年9月号 腹部大動脈瘤破裂患者の麻酔管理 p1384-1391
・大動脈外科と脊髄保護─コンセプトの変化と麻酔科の役割─. 日臨麻会誌 Vol. 30: 497-505, (2010) .
http://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsca/30/4/30_497/_article/-char/ja
・脳脊髄循環からみた脊椎外科・大血管外科における脊髄保護. 日臨麻会誌 Vol. 31: 193-201, (2011) .
http://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsca/31/2/31_193/_article/-char/ja/
***
Anesthesiology November 2011 - Volume 115 - Issue 5 - p 1093–1102
にCase Scenario: Anesthetic Considerations for Thoracoabdominal Aortic Aneurysm Repair
が掲載されていますので、知識の復習に。freeです。(2012/2/20追記)
2011年8月18日木曜日
(麻) 麻酔科専門医認定試験口答試験-2007年症例7-喘息患者の橈骨抜釘術
こちらもI先生からいただいたものを加筆したものです。
症例
・56歳男性。178cm、55kg
・左橈骨骨折術後の抜釘術
・小児期から気管支喘息があり、一年に数回、特に季節の変わり目に喘息発作が起こる。1ヶ月前にも発作が起こり、ステロイド吸入と気管支拡張薬の吸入療法を受けた。
1)術前評価
1.術前回診で必要な問診と検査について述べて下さい。
問診)
・現在、調子の良い時期か悪い時期か?分泌量はどうか?
・コントローラーは何を使用しているか?きちんと定期的にコントローラーを使用しているか?
・特にテオフィリン内服患者においては、血中濃度確認。
・レリーバーは何を使用しているか?最終発作とそのときの治療。
・ステロイドの内服歴は?
・喫煙の有無・ アスピリン喘息の可能性は?
・薬剤アレルギーの有無
検査)聴診、胸部レントゲン、スパイログラム
*もし調子の悪い時期であれば、緊急手術ではないので、喘息の状態が改善するまで手術を延期することも患者さんや主治医と相談してよいと考える。
2)麻酔法および術中管理
1.この症例で選択する麻酔方法について理由を付けて説明。
・腕神経叢ブロック。喘息があるので、気道に刺激を与えたくないから。
2.この症例を腕神経叢ブロックで行う場合どのようなアプローチがあるか。選んだアプローチの利点と合併症を挙げる。
斜角筋間アプローチ、鎖骨上アプローチ、鎖骨下アプローチ、腋窩アプローチ
私なら・・・、鎖骨下アプローチ(超音波ガイド下、神経刺激装置併用)で、カテーテルを挿入する。
利点:斜角筋間アプローチや鎖骨上アプローチのような横隔神経麻痺やホルネル症候群が非常に稀。気胸の危険性はあるが、鎖骨上アプローチよりも頻度が少ない。カテーテル挿入位置が感染しにくく、見えやすく、固定性もよく、管理がしやすい。
合併症:気胸、血管損傷、神経損傷、局所麻酔薬中毒、感染、腫脹
3.この症例を全身麻酔で行うとすればどのような麻酔管理をおこなうか。
・気管挿管下にセボフルランとレミフェンタニルで行う。挿管前にセボフルラン濃度をしっかり高くし、レミフェンタニルの血中濃度が十分高くなるようにする。手術侵襲を考えるとLMAやi-Gelでもよいだろうが、術中に喉頭痙攣や重度の喘息発作が起こった時に換気ができなくなる可能性があるため、初めから気管内挿管で行う。
・術中、浅麻酔にならないように十分気を付ける。抜管は、深麻酔下またはしっかりと覚醒させてから行う。深麻酔のうちに、気管内吸引を行なっておく。
・手元にβ刺激薬を準備しておき、術中呼吸回路から使用できるように準備しておく。
・テオフィリンとステロイドを手元に準備しておく。
4.術後鎮痛は。
・腕神経叢ブロックなら…鎖骨下アプローチで後神経束近くにカテーテルを挿入。0.2%ロピバカイン4-6ml/hrを持続投与する。
・全身麻酔なら…アスピリン喘息ならNSAIDsは使用しない。抜釘ならペンタゾシンとアセトアミノフェンの併用で乗り切れるのではないだろうか。
3)周術期危機管理
1.術中に突然SpO2が90%以下に低下。どのように対処するか。
・術者に異常事態であることを告げ、外回り看護師に、他の上級麻酔科医(いれば)を呼んでもらう。
・酸素100%にし、麻酔回路と気管チューブ(もしくはLMA等)が接続されているか確認する。
・パルスオキシメータが患者さんの指にきちんと装着されていることを確認しつつ、換気を手動に替えバッグの重さを触診。聴診してwheezeが聴こえないか確認する。
・テオフィリンやアドレナリンやステロイドやサルブタモール等が手元になければ持ってきてもらう(救急カートにあればカートごと)。血圧がどの程度かも確認する。
・以上の対処をしつつ、麻酔機のトラブル、喘息発作、分泌物による閉塞、気胸、肺塞栓を鑑別する。
・喘息発作が最も疑わしければ、セボフルランを深くし、深くなってから、気管内吸引をする。
β2刺激薬の吸入を行う。アミノフィリン250mgを生食100mlに溶解し、半量を15分で、残りを45分かけて、持続静注する。ただし、もともとテオフィリンを内服しており血中濃度が8μg/mlの場合は、その半量とする。アスピリン喘息でなければ、ヒドロコルチゾン200mgを持続静注。それでも改善しなければアドレナリン1/3A程度を皮下注。
*喘息発作だと思っていても、アナフィラキシーの症状として出ている可能性があることを忘れない方がよいでしょう。覆布の下の患者さんの体に発赤がないか…をチェックするのって焦っていると忘れてしまいがちになる。
参考web
・麻酔と救急のために
http://www.msanuki.com/m/index.php?%E5%96%98%E6%81%AF%E6%B2%BB%E7%99%82%E5%89%A4
・リウマチ・アレルギー情報センター 成人気管支喘息ガイドライン
http://www.allergy.go.jp/allergy/guideline/02/contents_04.html#8
・慶應義塾大学医学部麻酔学教室 術中喘息発作の治療ガイドライン
http://www.keio-anesthesiology.jp/clinical/m09.html
症例
・56歳男性。178cm、55kg
・左橈骨骨折術後の抜釘術
・小児期から気管支喘息があり、一年に数回、特に季節の変わり目に喘息発作が起こる。1ヶ月前にも発作が起こり、ステロイド吸入と気管支拡張薬の吸入療法を受けた。
1)術前評価
1.術前回診で必要な問診と検査について述べて下さい。
問診)
・現在、調子の良い時期か悪い時期か?分泌量はどうか?
・コントローラーは何を使用しているか?きちんと定期的にコントローラーを使用しているか?
・特にテオフィリン内服患者においては、血中濃度確認。
・レリーバーは何を使用しているか?最終発作とそのときの治療。
・ステロイドの内服歴は?
・喫煙の有無・ アスピリン喘息の可能性は?
・薬剤アレルギーの有無
検査)聴診、胸部レントゲン、スパイログラム
*もし調子の悪い時期であれば、緊急手術ではないので、喘息の状態が改善するまで手術を延期することも患者さんや主治医と相談してよいと考える。
2)麻酔法および術中管理
1.この症例で選択する麻酔方法について理由を付けて説明。
・腕神経叢ブロック。喘息があるので、気道に刺激を与えたくないから。
2.この症例を腕神経叢ブロックで行う場合どのようなアプローチがあるか。選んだアプローチの利点と合併症を挙げる。
斜角筋間アプローチ、鎖骨上アプローチ、鎖骨下アプローチ、腋窩アプローチ
私なら・・・、鎖骨下アプローチ(超音波ガイド下、神経刺激装置併用)で、カテーテルを挿入する。
利点:斜角筋間アプローチや鎖骨上アプローチのような横隔神経麻痺やホルネル症候群が非常に稀。気胸の危険性はあるが、鎖骨上アプローチよりも頻度が少ない。カテーテル挿入位置が感染しにくく、見えやすく、固定性もよく、管理がしやすい。
合併症:気胸、血管損傷、神経損傷、局所麻酔薬中毒、感染、腫脹
3.この症例を全身麻酔で行うとすればどのような麻酔管理をおこなうか。
・気管挿管下にセボフルランとレミフェンタニルで行う。挿管前にセボフルラン濃度をしっかり高くし、レミフェンタニルの血中濃度が十分高くなるようにする。手術侵襲を考えるとLMAやi-Gelでもよいだろうが、術中に喉頭痙攣や重度の喘息発作が起こった時に換気ができなくなる可能性があるため、初めから気管内挿管で行う。
・術中、浅麻酔にならないように十分気を付ける。抜管は、深麻酔下またはしっかりと覚醒させてから行う。深麻酔のうちに、気管内吸引を行なっておく。
・手元にβ刺激薬を準備しておき、術中呼吸回路から使用できるように準備しておく。
・テオフィリンとステロイドを手元に準備しておく。
4.術後鎮痛は。
・腕神経叢ブロックなら…鎖骨下アプローチで後神経束近くにカテーテルを挿入。0.2%ロピバカイン4-6ml/hrを持続投与する。
・全身麻酔なら…アスピリン喘息ならNSAIDsは使用しない。抜釘ならペンタゾシンとアセトアミノフェンの併用で乗り切れるのではないだろうか。
3)周術期危機管理
1.術中に突然SpO2が90%以下に低下。どのように対処するか。
・術者に異常事態であることを告げ、外回り看護師に、他の上級麻酔科医(いれば)を呼んでもらう。
・酸素100%にし、麻酔回路と気管チューブ(もしくはLMA等)が接続されているか確認する。
・パルスオキシメータが患者さんの指にきちんと装着されていることを確認しつつ、換気を手動に替えバッグの重さを触診。聴診してwheezeが聴こえないか確認する。
・テオフィリンやアドレナリンやステロイドやサルブタモール等が手元になければ持ってきてもらう(救急カートにあればカートごと)。血圧がどの程度かも確認する。
・以上の対処をしつつ、麻酔機のトラブル、喘息発作、分泌物による閉塞、気胸、肺塞栓を鑑別する。
・喘息発作が最も疑わしければ、セボフルランを深くし、深くなってから、気管内吸引をする。
β2刺激薬の吸入を行う。アミノフィリン250mgを生食100mlに溶解し、半量を15分で、残りを45分かけて、持続静注する。ただし、もともとテオフィリンを内服しており血中濃度が8μg/mlの場合は、その半量とする。アスピリン喘息でなければ、ヒドロコルチゾン200mgを持続静注。それでも改善しなければアドレナリン1/3A程度を皮下注。
*喘息発作だと思っていても、アナフィラキシーの症状として出ている可能性があることを忘れない方がよいでしょう。覆布の下の患者さんの体に発赤がないか…をチェックするのって焦っていると忘れてしまいがちになる。
参考web
・麻酔と救急のために
http://www.msanuki.com/m/index.php?%E5%96%98%E6%81%AF%E6%B2%BB%E7%99%82%E5%89%A4
・リウマチ・アレルギー情報センター 成人気管支喘息ガイドライン
http://www.allergy.go.jp/allergy/guideline/02/contents_04.html#8
・慶應義塾大学医学部麻酔学教室 術中喘息発作の治療ガイドライン
http://www.keio-anesthesiology.jp/clinical/m09.html
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