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2023年2月16日木曜日

マルチタスクってなんだろう、私にはできないけれど

先日の研修医の先生方の指導に情熱が燃やせないのか、に関連した内容で考察。
こないだ手術麻酔を一緒に担当した初期研修医の先生(Aくん)が、主体性をもって自分で何をしたらいいか考え、そして行動に移しておりました。

どのように書けばこれを読んでくださる方に伝わるかわかりませんが、

・患者さんが手術室に来て手術台の上で仰臥位になる
・その後心電図などのモニターを患者さんにつける(AくんはBISモニターを貼る;私は痛いことは手術室で極力したくないので、完全覚醒下にはBISモニターを貼らないことを是としている。そのため、一緒に麻酔に入る研修医の先生には「これは痛いんだよ」と伝えている。だが、Aくんは私のそういう介入をさせる余地がないほど素早くBISモニターを貼ったのだ)
・自分が麻酔導入用の点滴をとることが当たり前、というようにAくんは点滴をとろうとする。そして実際に取れる。

私の中でなにか変化があったのかもしれませんが、主体性をもって自分でやろうとするのを目の当たりにすると、ただ応援するしか有りません。見守るのも教育か。私も日々教えられている。そんな一日。

麻酔をするときには麻酔をする。
ペインをするときにはペインをする。
発表スライドを作る時には発表スライドを作る。
洗濯物を干すときには洗濯物を干す
本を読むときには本を読む
同時に色々することはあるけれど、常に今やっていることに集中することだね。

2023年2月10日金曜日

X線透視下の硬膜外ブロック

透視で見ながら硬膜外ブロックをするので、椎弓間孔は見えている筈なのですが、見えない何かに阻まれて、予想より多く時間がかかることがあります。

私がX線透視下で硬膜外ブロックをする症例は凡そ以下になります。

・極度の肥満
・腰椎手術後
・ブラインドの硬膜外ブロックだと、毎回のように下肢の脱力が長引く
・午後の外来にいらした方で、歩くのも難儀な腰下肢痛の方

やらないと上手くならない。自主トレをしないと、決してボスにたどり着けない。

2023年2月8日水曜日

落合陽一氏の「0才から100才まで学び続けなくてはならない時代を生きる学ぶ人と育てる人のための教科書」を読む

私より7歳若い落合陽一氏による著作です。
自分のもっているものをギフトとして本にしているのが凄いと思いました。
落合陽一氏の他の著作で書かれていましたが、落合氏は、自分の父親に「ニーチェも読んでないやつと話をしたくない」と言われたそうです。
私は未だにニーチェの著作をきちんと読めていません。

この本のp19だけ記載。

何才になっても新しいことを身につけられるスキルはどうやって培われるのかというと、若い時にいかにたくさん新しいことを習得しようとしたか、それを実際の現場で使おうとしたか、つまりたくさん勉強し実践したかどうかだと思うのです。実際、たくさん勉強をした経験のある人のほうが、新しい物事を習得するのが得意ですし、覚えるまでの期間も短い傾向にあると思います。それは自分なりの学び方とアウトプットの方法を知っているからでしょう。

子供をもつ親として読んでもとても学びが多い本でした。
自分もまだまだ勉強中です。
最近、「リスキリニング」の話題が国会で出ていましたが、医師という職業は「リスキリニング」を仕事から離れなくても毎日できる仕事だと、改めて思いました。日々の仕事をルーチンワークにせず、目の前のことに集中すれば、毎日なにか新しい発見がある。目の前のことに集中すること。それを日々忘れぬよう、大切にしようと思いました。


2023年2月1日水曜日

なぜ初期研修医の手術麻酔指導に情熱が燃やせないのか

私は今、手術麻酔を非常勤医としての立場でしかしていません。

その立場ですが、手術麻酔の勤務先は三次救急を受け入れている非常に忙しい病院ですので、当然ながら熱意のある初期研修医の先生方が沢山集まり、麻酔科にも定期的に研修にいらっしゃいます。

私は一列の麻酔を麻酔担当医として担当する立場ですので、手術中は他の部屋に行くことも出来ず、また行く必要もなく、只々自分が担当する患者さんの手術が安全に行われているかを絶え間なく監視するだけです。大出血などのイベントがなければ、麻酔科医は私一人だけいればいいのです。

そのようなところに、初期研修医の先生が一緒に麻酔を担当するように麻酔の予定が組まれていることがあります。
名前も顔もよく分からない初期研修医の先生(若い先生)と一緒に麻酔を導入するのは、まあいいのです。
ですが、一通り落ち着いて一緒に麻酔を維持するのは非常に苦痛です。
私は最近、「なぜ私がそれを苦痛と思うのか」についてちょっと離れた場所から考察していたので、その考察(仮説)を幾つかここで提示してみたいと思います。

1.私と病院との業務契約に、初期研修医の指導をすることが含まれていない。もし初期研修医を指導するのであれば契約料金に追加料金をいただきたいと、心のどこかで思っている。
2.初期研修医と一緒に全身麻酔の導入をすると、大抵の場合、自分ひとりで麻酔導入するよりも時間が余計にかかる。私は手術麻酔をするということでこの病院に来ている以上、自分が担当する手術麻酔は一刻も早く麻酔を完了して、一刻も早く執刀してしていただきたい。なのに若い先生に色々とやってもらうので、その目的が達成できない。
3.全身麻酔の維持中に若い先生と話すことがない。それは私が、その人に対して興味がないからかもしれません。興味がないから「どこの出身なの、とか、何科に行こうと思っているの」とか聞く気が起きません。そもそも、場をもたせようとか色々な理由で雑談をする気になれません。手術をしている先生方のノイズになりたくないからです。手術に本当に集中している先生であれば、私の雑談など耳に入らないかと思いますが、こうひきをしなくてもいいような第二助手の先生あたりの耳に私の声が入り「あー、麻酔科医は暇でいいよな」とか思われるのも癪に障るからです。

3を書いている最中にふと思い出しましたが、以前大学病院で働いていた頃は、こんな感情で苦しんだことはありませんでした。
それはなぜでしょう。
思い当たるのは1つ。それは自分が直接に責任をもつ手術麻酔症例が複数あったからです(所謂鵜飼麻酔をしていたからです。今はそのような表現をするのか分かりませんが)。自分が責任を持って担当する手術麻酔が複数あれば、それぞれの手術の進行を頭の中で考え、それぞれの手術室にいる研修医に必要なタイミングで必要な指示を出す必要があるため、一生懸命自分の頭を使うのです。そのため、それぞれの手術室にいる研修医の表情なり麻酔への集中具合を見て、必要なことを必要なだけコミュニケーションをし、また次の部屋に行くのでした。
非常勤医として手術麻酔を担当している今、複数の手術の麻酔管理を担当することがないため、はっきり言って手持ち無沙汰なのです。

それが苦痛なのか。私はなんと贅沢なことを言っているのか。
私ももっと一生懸命やりたいと思います。それが今日の教訓。
せめてもうちょっと積極的に質問してくれればなぁ、と思うけれど、質問をしてくれないような雰囲気を私が作っているのかもしれない。何がなんだかよく分からない。

2023年1月23日月曜日

日々の神経ブロック

今年に入ってから、自分がレントゲン透視下神経ブロックを担当して、自分で完遂できないことが3回ほどありました。
なんというか、どうして上手くいかなかったのかについては、分かることもあるし分からないこともあります。どうして上手くいかなかったのかを言葉で人にうまく伝えられればいいのですが、「骨棘に阻まれた」とか、「目的となる神経の場所を正確に同定しないままに運針した」とかいくらでも言い訳ができるのですが、そういうことは全て自分のことしか考えていない発言であり、神経ブロックが上手くいかない時間、痛みに耐えている患者さんがおり、本当に申し訳ない気持ちになります。
なんとかしてもっと上手くなりたい。
それが私の今年の目標の1つです。
もっと上手くなりたい。神経ブロックで痛みが軽くなる患者さんがいたとして。

2022年12月9日金曜日

島津亜矢のライブにゆく

島津亜矢さんは演歌歌手です。どこかの病院で麻酔の当直をしている合間に細川たかしの「望郷じょんから」のカバーを聴いて以来のにわかファンです。
演歌歌手の場合、コンサートのほうが適切でしょうか。バンドが演奏していたのでライブという表現が適切なような気がしますのでライブと表現します。
ライブに参加している年齢層は自分より高い印象です。
歌手になって今年で37年目だそうです。
以下、不完全ながらセットリスト

・感謝状
何曲か
・明日があるなら:アルバム「悠悠」収録
・何曲か(予習不足で申し訳ありません)
・都会の雀
・愛燦燦:美空ひばり
・風雪ながれ旅:北島三郎
・裏みちの花
・帰らんちゃよか
・愛の讃歌:エディットピアフ
・I will always love you: ホイットニーヒューストン
・ロックンロールウィドウ:山口百恵
・田園:玉置浩二
・風立ちぬ:松田聖子
・人間:長渕剛
・命の別名:中島みゆき
・Everything:  MISIA
・花として人として
encore
・マイウェイ:フランクシナトラ

ご自身の楽曲の素晴らしいのも勿論ですが、様々なジャンルの楽曲全てが本人の血肉となっている印象でした。私としては、全く知らなかった「帰らんちゃよか」という素晴らしい楽曲に出会えたこと、中島みゆきの歌で「地上の星」でもなく「糸」でもなく「命の別名」が聴けたこと(彼女自身が大変影響を受けた曲と紹介しておりました)、田園にまた新しい命が吹き込まれたように躍動していたこと、などに感謝申し上げます。素晴らしいバンドでした。感謝。

2022年12月5日月曜日

20221204 第20回ナマハゲ伝導士認定試験雑感

土曜日の一日外来を終了後、秋田新幹線こまちに乗り込んで夜の秋田に入りました。秋田駅に着いたのは21時過ぎで、小雨が降っており、道には12/1にドカンと降ったらしい雪があちこちに残っています。




新幹線時間をコールスローサラダとタコスミートのメキシカンサラダで凌いだため、軽く飲める居酒屋に入ろうかとも思っていたのですが、何故かお腹が痛くなっていたのでまずホテルにチェックイン。ドーミーインに宿泊したのですが、21:30からホテルで無料で提供される夜鳴きそばに宿泊客の長蛇の列。夜鳴きそばにありつくまでに相当な時間がかかりそうだったので、ホテル近くの居酒屋にお邪魔しました。21:45に店に入ったところ、料理のラストオーダーは22時と。慌てて秋田の郷土料理のコースと銀杏揚げを頼み、秋田の地酒飲み比べセットで乾杯します。



隣りに座っていたカップルの男性がコースの締めの冷たい稲庭うどんに「うま!」と舌鼓を打っておりました。お店で食べるきりたんぽもたまにいいものです。ハタハタの塩焼きも。



翌12月4日の日曜日。朝5時前に起きると昨日コロナワクチンを打った左三角筋のあたりが痛い。ロキソプロフェンを内服。

試験会場に間に合うためには秋田駅発6時46分の男鹿線に乗らなければなりません。




秋田駅近の吉野家は7時から、その他の飲食店も軒並み7時開店ということで、イートインできる店がない。いろいろ考えて結局セブンイレブンのおにぎりを食べて乗車。朝は雪ではなく小雨でした。
座っての講義が合計3時間弱(30分+60分+50分+30分)予定されているので、途中で寝ないようにメガシャキも購入。



男鹿線に乗ること59分、男鹿駅に到着。電車の暖房が自分には暑くて汗をかくほど。何度かダウンを脱いだりうたた寝したり。




試験会場行きのバスが待ってくださっていました。バスに揺られて20分ちょっとで五風に到着しました。


今日の予定について諸々の説明を受けた後、再びバスに乗ってなまはげ館と真山伝承館の視察研修です。










各地のナマハゲが大集合しているところは、何度みても壮観です。









真山伝承館でのナマハゲ体験は、今年2回目でしたが、何故か涙がこみ上げてきました。
その後は試験会場に戻って講義講義講義です。座って人の話を聴くのが苦手なのですが、聴いたことがない内容ばかりだったのでほぼ寝ないで受講できました。メガシャキにも途中お世話になって。カフェイン多量摂取でしたが、コーヒーをこの日は一度も飲みませんでした。


会場のセイコーグランドホテルに「十和田古代石」が展示してありました。最近化石に興味津々なので嬉しい出会いでした。

試験は15:55から16:55まで。筆記試験です。選択式問題とフリー記述の試験です。講義を聞けば合格できると思いますが、講義なしでは合格できない匂いがプンプンしました。答えられない設問もありましたが、回答用紙全部を埋めたので試験開始から30分すぎには退室。全くお土産を買う暇がなかったので、ホテルの売店を見たりして帰りのバスの時間まで待ちます。

17:15にホテルを出て、30分ほどで男鹿駅に到着。


男鹿線、本数が少ない・・・。
男鹿駅を18:05発。18:56に秋田駅に着き、新幹線こまちの発車時間は19:10。14分しか乗り換え時間がありません。雪が降ってきました。
花善の鶏めしを買って帰りたかったのですが、ダッシュでニューデイズに行っても完売とのこと。仕方なくまたおにぎりを買って帰路。

<旅のまとめ>
研修と試験で丸一日がかりのハードスケジュールでしたが、生まれ故郷で連綿と受け継がれてきた伝統行事について、勉強することができたのは得難い経験でした。子供の頃はナマハゲは怖い存在でしかなかったけれど、この地に生きる人々に幸福をもたらす励ましの神様であるということに気づきました。今日の研修をスタートとして自分に何ができるか考えながら日々の生活を続けていきたいと思います。2月のなまはげ柴灯まつりにも行きたいけれどちょっと無理だな。試験に合格していますように。

2022年7月11日月曜日

真似ることの大切さ

日本ペインクリニック学会第56回学術集会に、現地参加してきました。
拙いながら演題を出せたのは職場の皆さんのおかげ。
参加させてくださった職場の皆さんに心から感謝。

幸い大会2日目の学会会長講演を拝聴できました。素晴らしい講演。
その中で、私が以前読んだ村上春樹氏の著書「走ることについて語るときに僕の語ること」を引用しておられ、もう一度、氏の著書を読みたいと思いました。感謝。


それ以外に、講演の中で私が素晴らしいと思ったことは
・繋ぐ痛み治療
・型にはめることの大切さ
・難治性疼痛患者:患者背景を知ることが最も大切
・WHOから発表された小児慢性疼痛のガイドライン2021


上記の中で「型にはめることの大切さ」といえば、最近読んだ佐渡島庸平氏の著書「観察力の鍛え方 − 一流のクリエイターは世界をどう見ているか」の中でp75にこう記されていました。

以下引用

4 徹底的に真似る 型に気づく

 繰り返しになるが、優れた仕事に必要なことは、ホームランではない。当たり前を積み重ねることだ。だから、突飛なアイディアを思いつくことよりも、基本を身につけることが、一番重要だ。

 どんなフェーズにいる人も、まずは「真似る」。

引用終わり


学会に参加して、私はまだ、オリジナリティを出す段階ではなく、真似ることで成長する段階であることを再確認しました。挑戦することを恐れずに。

2022年3月15日火曜日

意見と反応



ちきりんの「自分の意見で生きていこう――「正解のない問題」に答えを出せる4つのステップ」を読了しました。
「意見」と「反応」を分けて考えることについて書かれていました。すべての意見(それぞれの立場から発せられるので)は偏っていますが、自分はどこに立つのか。どう考えるのか。それを改めて認識しました。
痛みで困っている患者さんを毎日診ていると正解が分からないことが沢山あります。患者さんによって「意見」が欲しい方と「反応」が欲しい方といらっしゃいます。患者さんは「あなたの意見が欲しいんだ!」とか「反応が欲しいんだ!」とは決しておっしゃいません。それを汲み取れるような外来なり入院治療なりができるようになりたいなぁ、とこの本を読んで改めて思いました。
感謝。

2019年5月10日金曜日

Barré試験とMingazzini試験

というタイトルの論文(臨床神経 2015;55:455-458)を読みました。
なぜ読んだかというと、救急当直をしていて、時々自分で患者さんを相手にこれらの試験をすることがあるからです。
学生の頃からお世話になって、最近になって買い直した「ベッドサイドの神経の診かた」(改訂18版、南江堂)にも、上肢バレー徴候は、私が学生の頃(およそ15年前)に教わった方法が記載されておりました。すなわち両上肢を掌を天井に向け水平挙上させて、障害側の落下を観察する方法です。ですが、この方法は上記論文の中では「上肢バレー徴候」ではなく「pronator drift test (回内落下試験)」という名前で紹介されています。へー、そうなのか。

上記の論文のまとめから引用させていただくと、

歴史的事実としては,器質的不全片麻痺の小徴候としてみられる落下現象を上肢のみならず下肢でも最初に報告したの は Giovanni Mingazzini(1913)であり,後年になり,下腿の落下試験手技の新たな変法を報告したのがJeanA.Barré (1919, 1937)である.すなわち神経学会の作成した手引きに記載された〝上肢バレー徴候〟なるものは無く,上肢では Mingazzini試験,下肢では背臥位による Mingazzini 試験と 6 年後に報告された新たな腹臥位による Barré 変法試験があると結論されよう.

とのことです。この論文を読む限り、著者の廣瀬源二郎先生の主張は正しいように思えます。原著が大切である、と。