なんで映画館で観たかといいますと、周りで何回かこの映画のことが話題に上ったこと、堀辰雄の「風立ちぬ」をKindleで0円で購入して読み始めたこと、そして最終的にはこのプーチン氏が表紙のTIMEのp43-46で紹介された記事に下記の言葉を見つけたことによります。
The wind is rising! We must try to live! (同記事p44)
日本人なのに、外国人による外国人のための映画紹介の英語の記事が行動の最後の一押しになるとは。ちょっと負けた気がします。
そういえばこの新潮文庫の「人間の土地」の表紙の絵、それと巻末p237からの「空のいけにえ」という文章を宮崎駿氏は担当しています。この本は、以前当ブログで触れたことがありました。
サン=テグジュペリの「人間の土地」は、氏の「夜間飛行」とは異なり、未だに私にとっては身近な一冊になっていないのですが、この「空のいけにえ」の文章が妙に心に残っていたことも、映画館に私の足を運ばせた一因でした。この文章です。
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風景は、人が見れば見るほど摩耗する。今の空とちがい、彼等のみた光景はまだすり減っていない空だった。今、いくら飛行機に乗っても、彼等が感じた空を僕等は見る事ができない。広大な威厳に満ちた大空が、彼等郵便飛行士達を独特の精神の持主に鍛えあげていったのだった。
(中略)
人類がいまだに空を飛べなくて、雲の峰が子供達の憧れのままだったとしたら、世界はどうちがっていただろう。飛行機を造って手に入れたものと、なくしたものとどちらが大きいのだろうかとも考える。凶暴さは、僕等の属性のコントロール出来ない部分なのだろうか。(同p241−3)
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この文章が、映画が始まる前から、そして劇中、劇終了後、ずっと私の脳裏にあったものですから、あぁ、これはもう宮崎駿氏が作りたかった映画で一番のものだ、と誠に勝手ながら得心した次第です。これが本当の引退作になってもおかしくないでしょう。また作ると言い出すのかもしれませんが。
この映画には夢も妄想も希望も絶望もありますが、サン=テグジュペリを敬愛する氏の想いを映画にするとしたらこれ以上のものはないでしょう、きっと。
久石譲氏の作った映画のメインテーマ、これも神懸ってますね。音楽を聴きに、もう1回観に行こうかなぁ。