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2012年11月6日火曜日

(麻) Nexfinでは、ショック患者の心拍出量測定は信頼出来ない、とする論文

Nexfinは、指先に装着したデバイスによって、無侵襲に血圧やstroke volume、cardiac output、systemic vascular resistanceなどを計測することができるモニターということです(BMEYEのホームページ参照)。ちょっと前のAnesthesiologyにも精度検証の論文が掲載されており、Q君が抄読会で担当しておりました。これはfree記事。

Noninvasive continuous arterial blood pressure monitoring with Nexfin®. Anesthesiology. 2012 May;116(5):1092-103. PMID: 22415387

そのNexfinについての論文。またしてもDr. Monnetが報告しています。

The estimation of cardiac output by the Nexfin device is of poor reliability for tracking the effects of a fluid challenge.
Critical Care 2012, 16:R212 PMID: 23107227

重症患者でNexfinが
・cardiac outputを予測できるかどうか
・輸液チャレンジ(生食500ml30分)に対してCOの変化を反映することができるか
の2点を、PiCCOで得られたデータと比較して検証しています。タイトル通り、どちらにおいてもNexfinはネガティブだったと結論しております。

・対象患者45人中、7人はNexfinで測定不能だった。
・残り38人中ノルエピネフリン投与患者は17人(45%)、量は0.4γ [四分位範囲:0.21-0.60]。
・ショックの分類:septic shock 33人、hypovolemic shock 5人

これまで、侵襲的モニターと同様にNexfinは信頼できるだろうと報告されていた論文では、手術室、人工呼吸やカテコールアミン投与終了後の心臓外科患者、CRT患者、エコー検査室、健康な人、が対象とされていました。ですが、今回対象となったショック患者においては、同様な結果を示すことができませんでした。それは恐らく敗血症による末梢組織の低灌流(ノルエピネフリン投与の有無にかかわらず)が影響しているのでしょうと考察しています。
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最もデータを測りたい患者さんたちを対象とした本研究において、得られた値の信頼性が乏しかった、とはなんとも悲しいですが、そうした重症な患者さんたちでは侵襲的モニターや薬剤投与ラインが必要ですから、それほど悲観することはないんでしょうね。どちらかと言うと「もう侵襲的モニターいらないよ。でもちょっと心配」っていう状態の患者さんたちでの信頼性が高ければいいような気がします。

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日曜日から鼻汁、咽頭痛、咳嗽が始まりました。
前回風邪が治ってから371日目でした。成人して以降、恐らく最長期間更新です。回復したらまたゼロから記録に挑戦します。

日本麻酔科学会総会用の演題。先週、ひとまず登録しました。締め切りまで3週間と少しありますので、修正を繰り返して完成させてみようかと。