全く理解不能です。
というのも、ヘスパンダーとサリンヘスの話です。
発売元のフレゼニウス・カービからこのような情報が出されています。
2012年のNEJMで報告された、多施設RCTの論文その他を受けて、我が国くらいでしか使われていないであろう、低分子HESについての使用制限勧告の情報です。
これを真に受けるならば、重症敗血症患者の手術中に、麻酔科医はヘスパンダーおよびサリンヘスを使用してはいけないということになります。
ということは、つまり、severe sepsisの大腸穿孔のような手術の麻酔をする際には、晶質液を入れてみて、輸液反応性が見られなかったらノルアドレナリン、アドレナリン、バソプレシンで昇圧して、それでも循環が保てないようならば、アルブミンや新鮮凍結血漿や赤血球や血小板を入れろ、ということになります。血液製剤を使用すると死亡率が上昇するという報告も、海外では多数されていますが、どうすればいいんですか?晶質液だけで頑張ればいいんでしょうか?それも1回も自分で使ったことのない薬剤での研究結果を受けて。
なぜ、中分子のHESでの報告を真に受けて、低分子HESの使用制限が、しかも発売元から全くの無抵抗のような状態でなされるのか、私には全く理解出来ません。
いま話題になっている、ノバルティスファーマのディオバンについての論文がおかしいからといって、同じ作用機序の他のARBの使用制限がなされていますか?
EBMとおっしゃるのならば、重症敗血症患者において、低分子HESを使用することで腎代替療法率や死亡率が上昇するという大規模前向き研究が、これまでに1つでも行われたんでしょうか?それも日本人を対象として。
中分子HESでの結果が悪かったからといって、別の薬剤であるヘスパンダーおよびサリンヘスまで悪玉にするなんて意味がわかりません。
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でもきっと今後、重症敗血症患者の麻酔でヘスパンダーやサリンヘスを使ったりしたら、その麻酔科医は、外科の先生や集中治療専門医の先生から怒られてしまうのでしょうね。
「麻酔科が術中にヘスパンダー使ったから、この患者さん透析することになってしまった/お亡くなりになってしまったんですかね…」と。
一時期もてはやされていた周術期のベータブロッカーのことを思い出してください。
日本で麻酔をして、お金をもらっているプロの麻酔科医は、少し怒ったほうがいいと思います。このような、木を見て森を見ずな情報、私は全く受け入れることができません。
因みに申し上げますが、私は、フレゼニウス・カービとの利益相反は一切ありません。
私には想像できないほど頭のいい人たちがいろんな判断や決定を下している筈なのですが、このようなことしかできないんでしょうか。
久しぶりに気分が悪くなりました。